公務員連絡会の棚村議長ほか委員長クラス交渉委員は、本日13時から川端総務大臣と2012春季段階の最終交渉を行った。この交渉で総務大臣は、資料1の通り、春の段階における最終的な回答を示した。
総務大臣からの回答は、総じて基本姿勢を示すに止まったと言わざるを得ないものであったが、公務をめぐり極めて厳しい情勢が続く中、総務大臣が国家公務員の人事行政に責任をもつ立場にあることを明確にしたことや、非常勤職員の処遇改善の検討などについて一歩踏み込んだ回答をしたことは、重い意味を持つものである。
公務員連絡会は、同日開いた企画・幹事合同会議で、「政府の回答は、われわれの要求に直接具体的に答えたものとは言えない。しかし、春の段階の交渉の到達点として受け止め、定年延長による雇用と年金の接続、退職手当の見直し検討などを中心とした諸課題の解決に向けて今後の取組みを一層強化」するとともに、「最大の課題となっている労働基本権の確立については、今通常国会における国家公務員制度改革関連四法案の成立及び地方公務員の労働関係に関する法律案の早期提出・成立を期して、連合、公務労協に結集し、最大限の取組みを推進する」との声明(資料2)を確認した。また29日に第2次全国統一行動を実施し、時間外職場集会等を通して、今後の取組みに対する決意を固め、春季生活闘争後半期の闘いを進めていくことを決定した。
本日行われた総務大臣との交渉経過は次の通り。
<総務大臣交渉の経過>
川端総務大臣との交渉は、本日13時から院内の国会連絡室で行われた。
冒頭、棚村議長が公務員連絡会の春季要求と地公部会の要求書に対する最終回答を求めたのに対し、川端総務大臣は資料1の通りの回答を示した。
この回答に対し、棚村議長は以下の通り見解を述べた。
(1) いま職場では、労使合意に基づく給与引下げのみならず、公務員宿舎の削減、共済の職域年金部分廃止、退職手当の大幅引下げ、新規採用の大幅な抑制などあらゆることが俎上に上げられ、組合員の不安感は深刻なものとなっている。他方、大震災からの一刻も早い復興・再生を第一として、全力で取り組まなければならない政策課題が山積している。
人事行政に責任をもつ総務大臣として、まずは公務員制度改革関連四法案の成立に全力を挙げてもらいたい。そして、公務員労働者が国民の期待に応えられるよう、その労働条件をしっかり確保していただきたい。
(2) 今の回答について、いくつか申し上げておく。
総人件費削減として行われようとしている政策は、いずれも公務員の労働条件と雇用に重要な影響を及ぼすものであり、丁寧な対応が必要である。
また、 超過勤務の縮減は百年河清を待つ実態を根本的に転換しなければならず、非常勤職員の雇用安定・処遇改善は官民を問わない重要課題である。
雇用と年金の確実な接続を保障し、生活水準を確保するためには、公務においては、定年延長が相応しいと考える。退職手当が大幅に引き下げられるとすれば、十分な経過措置が必要だ。
自律的労使関係の確立を念頭に置いて、これらの課題について、公務員連絡会と十分に話し合っていくという明確なメッセージを総務大臣から直接お願いしたい。
これに対し、川端大臣は「今後とも、皆さんと真摯に話し合い、相互の信頼関係の醸成に努めてまいりたい」と述べ、引き続き公務員連絡会と話し合っていく姿勢を明確に示した。
最後に、棚村議長は「大臣から、公務員連絡会と誠実に話し合っていくとの決意が示されたと受け止める。われわれも四法案の成立とそれによる自律的労使関係が確立されることを確信しつつ、公務を取り巻くさまざまな課題に向き合っていきたい。地方公務員のさまざまな課題についても、いただいた回答について積極的な対応をお願いしたい。本日の回答は、総務大臣の春の段階の最終回答として受け止め、組織に持ち帰って協議したい」と述べ、春闘要求をめぐる交渉を締めくくった。
資料1−総務大臣の2012春季要求に対する回答
総務大臣回答
2012年3月28日
(総人件費改革の推進について)
総人件費改革の推進については、行革実行本部を中 心に省庁の垣根を越えた総合的見地からの議論を行い、改革を実行に移すこととされており、総務省としても、同本部における取組に協力してまいりたいと考えているが、その際には、国家公務員の人事行政に責任を持つ立場を踏まえて対応してまいりたい。
国の出先機関の原則廃止については、公務能率の確保に留意しつつ、雇用の確保に努めたい。
(2012年度賃金について)
2012年度賃金については、皆さんのご主張はしっかり受け止めてまいりたい。
(労働時間等について)
超過勤務の縮減に当たっては、引き続き、関係機関とも連携しつつ、政府全体の超過勤務縮減に取り組んでまいりたい。その際、皆様のご意見も伺いつつ、コスト意識を持った抑制策に努めてまいりたい。
(新たな高齢雇用対策について)
雇用と年金の接続方策については、先日、方針が決定したところである。雇用と年金の確実な接続に向け、国家公務員制度改革推進本部を中心に、関係機関との間で取り組んでまいりたい。
(非常勤職員について)
非常勤職員の処遇改善に当たっては、今後とも皆様のご意見を伺いつつ、関係機関とも相談しながら検討してまいりたい。
(退職手当の見直しについて)
退職手当の見直しの検討に当たっては、皆様とも真摯に話し合ってまいりたい。
(公務員制度改革について)
労働基本権の確立に向けては、政府としては、自律的労使関係制度を措置するための法案を早期に国会でご審議いただき、成立させていただきたいと考えている。
地公関係総務大臣回答
2012年3月28日
(2012年度の賃金改善について)
地方財政計画における給与関係経費については、その所要額を適切に計上し、地方公務員の人件費の確保を行ってまいりたい。
地方公務員の給与等については、労使間の交渉や議会における審議等を経て、それぞれの地方公共団体において条例で定められるものである。
総務省としては、地方公務員法の趣旨を踏まえつつ、地方公共団体に対する国民・住民の理解と信頼を得ることが重要であるという観点に立って、必要な助言を行ってまいりたい。
(臨時・非常勤職員等の雇用安定・労働条件改善について)
臨時・非常勤職員は、任期を限って臨時的・補助的業務に任用されるもので、本格的な業務に従事する場合には、手当の支給が可能な任期付短時間勤務職員制度を活用することが可能である。
パート労働法については、公務員は適用が除外されているが、臨時・非常勤職員の任用に当たっては、民間労働法制の動向を十分に念頭に置くことも必要である。
労働基準法等の遵守、社会保険の適用などは各地方公共団体が責任を持って対応していくべきものである。
総務省としても、各地方公共団体に対して必要な助言等を行ってまいりたい。
(新たな高齢雇用施策の充実について)
先に述べたとおり、国家公務員の雇用と年金の接続方策については、先日、方針が決定したところである。
地方公務員についても、雇用と年金の接続に向けて、この国家公務員の基本方針を踏まえつつ、地方の実情にも留意し、皆様方を含め、地方自治体関係者のご意見を十分伺った上で、早期に検討してまいりたい。
(労働基本権確立を含む地方公務員制度改革について)
地方公務員については、国家公務員に係る措置を踏まえ、新たな労使関係制度を設けることとしている。
先週には、「地方公務員の新たな労使関係制度に関する考え方について」をお示ししたところであり、党とも連携しつつ、皆様方を含め、地方自治体関係者のご意見も伺いながら、早期の法案提出に向けて、できる限り早い時期に制度改革の内容の取りまとめを行ってまいりたい。
資料2−2012春季生活闘争に関わる公務員連絡会の声明
声 明
(1) 本日、公務員連絡会は、総務大臣と交渉を持ち、2012年春季要求に対する回答を引き出した。
(2) 政権運営が過去に例のない難渋を極め、一方でポピュリズム化している今日の政治状況のもと、公務を巡る近年にない極めて厳しい情勢の中で、公務員連絡会は、本年の春季生活闘争に取り組んできた。
具体的には、賃金の維持・改善、非常勤職員の雇用安定と処遇改善、超過勤務の縮減、段階的定年延長の実現や国家公務員制度改革関連四法案の成立、地方公務員の労働関係に関する法律案の早期提出と成立などを最重要課題として位置づけ、取組みを進めてきた。
また、国民の安心と安全を確保するための公共サービスの再構築をめざし、公務労協に結集して、公共サービスキャンペーンを春季生活闘争と一体的・連続的に取り組んできた。
(3) 本日の回答で総務大臣は、@総人件費改革について、国家公務員の人事行政に責任を持つ立場を踏まえて対応していくこと、A国の出先機関改革に当たって雇用の確保に努めること、B2012年度賃金については、公務員連絡会の主張をしっかり受け止めること、C政府全体の超過勤務縮減に取り組むこと、D新たな高齢雇用対策について、雇用と年金の確実な接続に向け取り組むこと、E非常勤職員の処遇改善について検討していくこと、F退職手当の見直し検討について、公務員連絡会と話し合うこと、G自律的労使関係制度を措置するための法案を早期に国会で成立させたいとの考えであること、を確認した。
地方公務員については、@地方財政計画における給与関係経費について、その所要額を適切に計上し、地方公務員の人件費の確保を行うこと、A臨時・非常勤職員の処遇改善に係わって、パート労働法は公務員は適用が除外されているが、臨時・非常勤職員の任用に当たっては、パート労働法など民間労働法制を十分に念頭に置く必要があること、B雇用と年金の接続に向けて、地公部会などからの意見を聞きながら早期に検討すること、C新たな労使関係制度を設けるため早期の法案提出に向けて、できる限り早い時期に制度改革の内容の取りまとめを行いたい考えであること、を確認した。
本日の回答は、総人件費改革について、労働条件を確保していくという意味で、総務大臣が国家公務員の人事行政に責任を持つ立場にあることを明確にしたことや非常勤の処遇改善の検討などについては一歩踏み込んだ回答をしたものの、総じて基本姿勢を示すに止まったと言わざるを得ない。しかし、公務をめぐって極めて厳しい情勢が継続しているもとで、重い意味を持つものとして受け止め、今後の取組みを推進していかなければならない。
(4) 以上のとおり、2012年春季要求をめぐる政府の回答は、われわれの要求に直接具体的に応えたものとは言えない。しかし、春の段階の交渉の到達点として受け止め、定年延長による雇用と年金の接続、退職手当の見直し検討などを中心とした諸課題の解決に向けて今後の取組みを一層強化していくこととする。
そして、最大の課題となっている労働基本権の確立については、今通常国会における国家公務員制度改革関連四法案の成立及び地方公務員の労働関係に関する法律案の早期提出・成立を期して、連合、公務労協に結集し、最大限の取組みを推進するものである。
(5) われわれは、各構成組織ごとに今後の取組みへの決意を固めるとともに、東日本大震災からの一刻も早い復興・再生に向けてその役割をしっかりと果たして行くこととする。そして、中小及び地域の仲間、国営関係部会の仲間と連帯して、生活の防衛に向けて、すべての労働者の処遇改善、雇用確保を実現するため、春季生活闘争後半の闘いを進めるものである。
2012年3月28日
公務員労働組合連絡会