本日13時30分から、公務労協書記長クラス交渉委員は、退職手当の見直しについて田中総務省人事・恩給局長と交渉を実施した。この交渉は、6月8日に大島総務副大臣に退職手当の見直し等をめぐり要求書を提出したこと、また、退職給付に関わって、有識者会議が報告書をとりまとめたことを受けて、現時点での検討状況を質すために行ったもの。
冒頭、田中局長は以下の通り述べた。
(1) 6月8日に皆様からの要求書を受取り、これまで検討を重ねてきたが、本日は、退職手当の見直し等についての現時点での考えを申し上げる。
退職給付における官民較差については、人事院から示された退職給付に係る官民比較調査の結果及び見解並びに「共済年金職域部分と退職給付に関する有識者会議」の報告の内容を踏まえ、次に申し上げるとおり、その全額を退職手当の引下げにより解消したい。
(2) 退職手当の支給水準の引下げについては、官民の支給水準の均衡を図るために退職手当法上設けられている「調整率」を現行の104/100から87/100に17ポイント引き下げる。調整率は、退職理由及び勤続年数にかかわらず、全ての退職者に適用する。
(3) 再就職あっせんの禁止等に伴い在職期間が長期化している状況等を踏まえ、年齢別構成の適正化を通じた組織活力の維持等を図る観点から、早期退職募集制度を導入する。
この募集に応じ認定された退職者については、現行の定年前早期退職特例措置の内容を拡充し、定年前15年以内に退職する勤続20年以上の者を対象として、定年前1年につき最大3%の割増を適用することとし、具体的には政令で定める。
退職手当に関する支給水準引下げ及び早期退職募集制度の導入の措置を通じ、退職給付の官民較差(平均402.6万円)の全額を解消する。
(4) 施行時期については、退職給付の官民較差を速やかに解消する必要があると考えており、具体的な施行日については、現在検討中である。
(5) 段階的引下げについては、有識者会議報告書において「段階的引下げ措置を講ずるとしても、現下の財政状況の下で国民の理解と納得を得るためには引下げに長期を要するのは適当でなく、その1回当たりの引下げ幅については、これまでの段階的引下げ措置よりも厳しいものにならざるを得ない」との意見があったこと等を踏まえ、今後、政府部内でさらに検討を進めてまいりたいが、いずれにせよ相当厳しいものとせざるを得ないことをご理解いただきたい。
これを受けて、吉澤事務局長は以下の通り質した。
(1) 今回は人事院の調査結果によることとし、402.6万円を全額退職手当で調整するとのことだが、これについては受けざるを得ないと認識している。しかし、将来に向けて、調査の安定性を確保し、国民の納得を得るためには、今後、民間調査と官民比較方法、水準見直しに当たっての基本ルール等を明確化する必要がある。
(2) 退職給付における年金と一時金の比率は官民でバランスが悪く、有識者会議報告でも見直しが言及されている。このような退職給付のあり様そのものについても次回への宿題だという認識をもって、しっかり対応してもらいたい。
(3) 退職手当見直しも廃止される職域年金の過去分をきちんと支払うことが前提でなければならない。有識者会議の報告の中ではその取扱いは極めて曖昧なものとなっているが、仮に過去分が支払われないとすれば、退職給付は退手の400万円減に加えて職域年金の240万円も支給されないことになり600万円以上も引下げとなる。この問題について担当外といえども、過去分の取扱いが明確にされなければ、退手含めて退職給付全体の問題解決は進まない。局長の考え方を明らかにするとともに、所管である財務省にもしっかりと伝え、政府としての考えを明確にしてもらいたい。
(4) 国家公務員改革基本法では定年まで勤務できる環境を整備することが規定され、雇用と年金を接続することも喫緊の課題となっている中で、新たに早期退職募集制度を導入するのは疑問だ。大震災の発生にもかかわらず、定員削減、新採抑制などが行われ、高齢化し、少ない人数で仕事をこなしている職場実態を踏まえて、組織のパフォーマンスを確保するのが今の課題である。そうしたなかで、この制度を導入すれば組織活力が維持できるのか、導入するメリットは何であると考えているのか。
(5) 早期退職募集制度の導入にあたり、官民較差の原資を使うことにしているが、40代後半で辞めても次の職場を見つけられる人はほとんどおらず応募者は少ないのではないか。いずれにしても、あくまで職員の自発的な応募に基づくものとし、強制することは絶対にないということを約束すべき。
これらに対し、田中局長は以下の通り答えた。
(1) 従来から支給水準については、概ね5〜6年毎に官民比較を行い、官民の均衡を図ってきたところであるが、その見直しのルールについては、有識者会議報告書においても「納得性、透明性をより高める見地から、出来る限りルールを明確に定めておくことが重要」との指摘があったところであり、政府としても、その検討の必要性を十分認識している。ルールの明確化については、次回の調査までには皆様方のご意見も伺いながら検討したいと考えている。
(2) 退職給付における年金と一時金の比率の見直しについては、有識者会議報告書において将来的な課題として検討すべきとの意見もあったことを踏まえ、民間の退職給付に占める年金と一時金の割合も見ながら、退職手当の分割支給(年金払い)などについて、皆様方からのご意見も伺いながら、検討を進めてまいりたい。
(3) 共済年金は財務省の所管であるので、皆様の御意見については、財務省に、しっかりとお伝えすることとしたい。
(4) 早期退職募集制度は、在職期間が長期化していることや定年まで勤務できる環境を整備し、雇用と年金の接続を図ることとされている状況等を踏まえ、年齢別構成の適正化を通じた組織活力の維持等を図る観点から導入するものであり、任命権者があらかじめ設定した募集事項に合致し、職員が自発的に応募した場合に退職手当を割り増すもので、全体の人事政策と合わせて行っていくものである。
(5) 本制度は、自発的に退職する意思がある職員を募集するものであって、応募を強制することなどは考えていない。
さらに、公務労協側は、「現場では過酷な環境で公務に従事している。退職手当402.6万円の引下げは、現場の組合員にとって非常に大きな金額であるということも理解してほしい。また、この引下げ額を超えてさらに引き下げるということのないようにお願いしたい」「早期退職募集制度については、全体のビジョンが見えず、付け焼き刃的な対応だ。公共サービスの安定的な提供という第一義的な目的を果たすために、年齢構成、人員配置などをトータルで考えていくことが必要である」と職場実態に基づいて重ねて訴えた。
最後に、吉澤事務局長は、退職手当引下げの経過措置について、「国家公務員給与の臨時特例引下げが実施されている最中にあっては、三段階の経過措置は絶対に必要だ。今日は対立したまま終わらざるを得ないが、大臣との交渉においてしっかりと決着をつけたい。また、昨年の給与引下げ交渉で当時の片山大臣が「交渉で決めるというのが本来の姿である」と明言したが、大臣交渉では私どもが納得できる回答を期待している。さらに、6月8日の大島副大臣交渉で、退手法案が地方公務員の労働基本権付与に関わる法案よりも先に出ていくということは断じてありえないということを申し上げたが、局長からも政務三役に伝えてほしい」と強く述べ、本日の交渉を終えた。
以上