公務員連絡会は本日13時から、2012年夏季要求をめぐり人事院給与局長、職員福祉局長と交渉を行った。交渉経過は次の通り。
なお、本日の交渉において、官民較差、一時金等について具体的な回答が示されなかったことから、後日改めて交渉を行うことにしている。
<給与局長交渉の経過>
古屋給与局長との交渉は、13時から行われ、公務員連絡会側は書記長クラス交渉委員が臨んだ。
冒頭、公務員連絡会吉澤事務局長が今日時点での局長の回答を求めたのに対し、古屋局長は、以下の通り回答した。
1.勧告について
人事院としては、公務員の給与等の適正な水準を確保するため国会・内閣に必要な勧告を行うという国家公務員法に定められた責務を着実に果たすこととしている。
本年の勧告については、例年と同様の日程を念頭に置いて、鋭意作業を進めているところである。
2.官民較差について
本年の国公実態においては、高齢層での退職者の減少、新規採用の抑制等の影響によって、行(一)職員の平均年齢は上昇している。
官民較差は、民間給与に対して、現行の給与法に基づく額、給与改定特例法に基づく減額後の額のそれぞれと比較することとし、現在集計を行っている。したがって、官民較差について今の段階では何ともいえないが、本年の民間企業における春季賃金改定状況についてみると、各種調査では、全体では昨年からほぼ横ばいといった状況にある。他方、公務員給与については上昇しているものの、高齢層の抑制措置を講じてきていることから、こうしたことが民間との給与較差にどのように反映するのか注目している。
また一時金についても、現在集計中であり、現段階では何ともいえない。
3.50歳台後半層の給与について
50歳台後半層においては、依然として、公務の給与水準が民間を上回っていることから、官民の給与差を縮小するため、昨年の勧告時の報告で表明した高齢層における昇給、昇格制度の見直しを行うこととしたい。
具体的な措置の概要は、24日の職員団体審議官会見でお示しした内容となるが、改めて説明する。
@ 昇給制度の見直し
55歳を超える職員の昇給区分別の昇給号俸数について、現行では昇給区分Aが「4号俸以上」、昇給区分Bが「3号俸」、昇給区分Cが「2号俸」、昇給区分Dが「1号俸」、昇給区分Eが「0号俸」となっているが、今回の見直し案では昇給区分Aを「2号俸以上」、昇給区分Bを「1号俸」とし、昇給区分C以下は「0号俸」で昇給なしとする。
なお、行政職俸給表(二)及び医療職俸給表(一)が適用される職員については、57歳を超える職員を措置の対象とする。
A 昇格制度の見直し
各職務の級の最高号俸を含めた上位17号俸(5基幹号俸分の号俸)から、初任の級を除く級に昇格する場合に決定される号俸について、昇格に伴う俸給額の上昇を抑制するため、昇格後の号俸を現行より下位の号俸に決定するものとする。
具体的には、上位17号俸のうち、最高号俸付近から昇格する場合の昇格メリットの上限を8号俸とし、下位の号俸にいくに従い、抑制を徐々に緩和する。
B 実施時期
昇給、昇格制度の見直しの実施時期は、平成25年1月1日とする。
4.非常勤職員等の処遇改善について
非常勤職員の給与については、平成20年に指針を定め、必要に応じてフォローアップを行っているところであり、指針に沿った給与の適正な支給が図られるよう取り組んでいる。
5.その他
「職種別民間給与実態調査」の対象となる産業や職種(役職)、官民比較における対応関係の見直し等については、引き続き検討を行い、来年に向けて、必要な対応を行っていくこととしたい。検討に当たっては、職員団体の皆さんの意見も聞きながら進めていく所存である。
回答に対し吉澤事務局長は、次の通り局長の見解を質した。
(1) 本年のスケジュールはどのようになるのか。
(2) 官民較差について、国家公務員においては行(一)職員の平均年齢が上昇しているとのことだが、どのような傾向にあるのか。
(3) 較差の配分について、一昨年なども含め、ここ数年では較差の数字が示されるのがギリギリになり、ほとんど議論できない状況にある。できる限り早く示してもらい、十分な議論をさせていただきたい。
(4) 本年の官民給与比較においては、給与法本則に基づく見た目の給与と臨時特例減額がなされ現に支給されている給与の2つについて較差を示していただきたい。
これに対し古屋局長は、次の通り答えた。
(1) 勧告日程については、例年ベースの8月前半ということを念頭において現在作業を進めているところである。
(2) 官民較差については、ラスパイレス比較においては、役職や勤務地、年齢など平均年齢では測れない要素があり、平均年齢が上がったからといって、比較ベースとなる給与が必ず上がるというものでもないため、国公平均年齢の上昇実態がラス比較に及ぼす影響を推測することは難しい。現在、較差についてどのような傾向にあるかを示すことは難しい。
(3) 本年の官民較差は、先程も述べた通り、民間給与に対して、現行の給与法に基づく額、給与改定特例法に基づく減額後の額のそれぞれと比較した数字を示したいと考えている。
続いて、50歳台後半層の給与引下げについて、吉澤事務局長は「50歳台給与の見直しについては、われわれとしても50歳台の官民給与差には課題があるということは認識し、これまで世代間配分の問題として十分な議論を行い、拙速な措置を行わないよう求めてきた。今回の昇給、昇格制度の見直し提案については、今後もしっかり議論をさせていただきたい」と述べた上で、次の通り追及した。
(1) 民間と公務では役職構成や人事管理が異なる中で、官民の給与差をどこまで埋めるつもりなのか。民間で50歳台後半層の給与が下がる実態にある一方で、官の給与を現行の人事管理の枠内で下げることは難しいのではないか。50歳台職員にもしっかり頑張ってもらわなければ公務が回らないという実態にある中、民間の給与水準と公務の人事管理のあり方、高齢層職員のモチベーションとのバランスをしっかり維持していくべきではないか。
(2) 給与構造改革において55歳昇給停止を廃止して評価によって処遇するしくみを導入したことと、今回の高齢層における昇給、昇格制度の見直し提案とでは原理原則において矛盾するのではないか。どのように整合性をとるのか。
これらに対し、古屋局長は次の通り回答した。
(1) 50歳台の官民の給与差については、昨年の報告でも述べている通り、公務と民間の昇進管理等には相違もあることから年齢別の給与差が一定程度生ずるのはやむを得ない面もあるが、なお50歳台の官民の給与差が相当程度ある中で、国民の理解や若年層から見たときのバランスといった面もある。この間、配分で対応してきたがもやは制度も見直さないといけない状況になってきた。したがって、高齢層における官民の給与差を縮小する方向で、早急に昇給、昇格制度を見直すことが必要だ。
(2) 民間においては、昇給制度を持っている企業のうち約4割が昇給停止を実施している実態にあり、定年を55歳から60歳に延ばしたときに、給与を下げたことも内包されているということもある。評価結果の処遇への反映という点では、今回の昇給制度の見直しにおいて、55歳を超える職員は全く昇給しないというのではなく、昇給区分AやBによる昇給を残しており、また勤勉手当への反映ということもあり、55歳を超える職員において評価による差がなくなってしまうわけではない。
古屋局長の回答に対し、公務員連絡会側はさらに50歳台後半層の給与の抑制に関わる問題について追及したが、古屋局長は上記の見解を繰り返すに止まり、交渉は平行線をたどった。
そのため、最後に吉澤事務局長が「50歳台給与のあり方については、課題があることは理解しているが、民間と公務の違いを十分に踏まえ、しんどい職場が元気になるよう配慮しつつ、人事管理のあり方を含めた根本的な議論をしっかりすべきだ。また、今日の段階でも、官民較差、一時金等について具体的に答えておらず不満だ。再度給与局長交渉を行い、具体的な見解を示してもらいたい」とし、再度給与局長交渉を行い具体的に回答するよう迫り、給与局長もこれに同意したことから、本日の交渉を締めくくった。
<職員福祉局長交渉の経過>
井上職員福祉局長との交渉は、13時50分から行われた。
吉澤事務局長が「本日時点における検討状況を質したのに対して、井上局長は、以下の通り回答した。
1.労働時間の短縮等について
超過勤務の縮減については、これまで政府全体として在庁時間縮減に取り組んでいるところであり、本年度においても引き続きその取組がなされている。人事院としては、今後とも、各府省において管理職員による勤務時間管理を徹底し、幹部職員の率先した早期退庁などにより在庁時間削減の取組を進めることが必要と考えており、引き続き各府省と連携して取り組んで行く。なお、勤務時間管理については、管理職員の役割が重要であり、管理職員が部下の在庁状況を把握し、その業務内容や在庁理由を確認し、必要以上に在庁しているようなことがあれば、退庁するよう指導を行うことなどを通じて徹底されるものと考える。このような趣旨は、各府省に浸透しつつあると思うが、人事院としては引き続き管理職員等の意識啓発を促していきたい。
2.男女平等の公務職場の実現について
人事院は、平成22年12月に閣議決定された第3次男女共同参画基本計画を踏まえ、平成23年1月に「女性国家公務員の採用・登用の拡大等に関する指針」を改定した。
各府省は、この指針に基づき、平成27年度までの目標と目標達成に向けての取組等を定めた5か年の計画を策定し、具体的な取組を進めている。
人事院としては、各府省人事担当課長からなる「女性国家公務員の採用・登用拡大推進会議」を本年2月にも開催し、各府省の計画の内容や具体的な取組例について意見交換を行ったところであり、引き続き、定期的に会議を開催するなどして、こうした各府省の取組が実効性のあるものとなるよう積極的に支援していくとともに、各府省の取組をフォローアップして参りたい。
メンター制度については、メンター導入の手引き及びモデル例を各府省に通知するとともにメンター養成研修を実施している。
今後とも引き続き、人事院としても各府省の取組をフォローアップしつつ、支援して参りたい。
育児休業及び育児のための短時間勤務を含む各種両立支援策については、これらの制度がより活用されるよう、「育児・介護を行う職員の仕事と育児・介護の両立支援に関する指針」(職員福祉局長通知)の改正やリーフレットの配布等による制度周知を図っているとともに、各府省における取組等に関する情報交換の場として「仕事と育児・介護の両立支援に関する連絡協議会」を設置(平成17年3月)している。今後ともこれらを活用し、各府省の着実な取組を促していきたい。
また、男性の育児休業の取得率については、「新成長戦略」(平成22年6月18日閣議決定)等において、政府全体として平成32年までの目標を13%としており、人事院としても、各府省において男性職員が育児休業を取得しやすい職場の環境整備が進められ、男性の育児休業取得率の向上が図られるよう支援して参りたい。
先般の「女性の活躍による経済活性化を推進する関係閣僚会議」で、配偶者の転勤に伴う職員への対応として、休業制度など制度面も含めて必要な事項について人事院に検討要請があり、今後検討をしていくこととしている。
3.福利厚生施策について
人事院では、心の健康づくりをはじめとする健康安全対策等は、各職場において推進すべき重要な事項であると認識し、各府省と連携しつつ、施策の推進に努めてきたところである。
特に、心の健康づくりについては、平成16年3月に発出した「職員の心の健康づくりのための指針」を基本として対処しているところであり、@こころの健康相談室の設置(昨年度より女性医師による相談室を増設)、A円滑な職場復帰と再発防止のため、心の健康管理医(精神科医等の専門医)による職場復帰相談室の設置、さらに、B早期発見・早期対応を目的としたガイドブックの配布等を行っている。また、研修については、心の健康づくり対策における最も有効な取組の一つであり、昨年3月、各府省に対し、研修の強化を求める通知を発出するとともに、研修教材(管理監督者向け、職員向け、健康管理者向け)の全面改訂を行い、その活用の促進を図っているほか、昨年1月から「心の健康づくり対策推進のための各府省連絡会議」を年2回程度開催している。
より円滑な職場復帰支援を実現する観点から平成22年7月に改定した「円滑な職場復帰及び再発の防止のための受入方針」に基づく「試し出勤」について、各府省に周知し、活用を促すなど復職支援施策の着実な推進を図っている。人事院としては、引き続き、こうした取組を通じて心の健康づくりをはじめとする健康安全対策等の推進に努めていく。
また、パワー・ハラスメントに関しては、平成23年7月に各府省に対してアンケート調査を行い、その結果について各府省にフィードバック(情報提供)を行った。パワハラ、セクハラ等については、今後ともその防止のための方策等について検討を行っていきたいと考えている。
4.非常勤職員制度等について
非常勤職員の休暇については、従来から民間の状況等を考慮して措置してきているところであり、引き続き民間の動向等を注視していきたい。
これらの回答に対して、吉澤事務局長は「また、公務員連絡会としても、勤務時間管理が重要だということをずっと指摘してきたところであり、人事院もいろいろな取組みをしているが、この間超勤実態は年230時間台から一向に減らない。これは何故か。根本的には、一つには政治との関係、二つには私どもの働き方の文化の問題がある。職員が自分で自分に超勤命令をしている実態を直さなくてはならないし、人事院としても各府省に対し事前の超勤命令を徹底すべきだ。いまの国家公務員は定員削減が続けられる一方、仕事は減らず、大震災からの復旧・復興でギリギリの状況にある中で、寝食忘れて業務にあたっているが、国民からは厳しいバッシングを受けている。各府省を本気にさせるためには、超過勤務についての人事院の大胆な取組みがなければ前に進まない。また、昨年の報告で超勤予算の確保について指摘しているように、予算上の超過勤務手当では足りず、超過勤務を行った全てが支払われていないのが現実であり、これらについてどう考えているのか」と局長の考えを追及した。
これに対し、井上局長は「問題は職場の実態、職務遂行のプロセスで発生しているということを踏まえ、対応していかなければならない。昨年の報告では、必要な超勤予算は確保される必要があると言っている。超過勤務の縮減については、人事院の取組みだけで解決するという問題ではない。超勤縮減には管理職の役割が重要である。自分の経験に照らしてみればこれまで公務の管理職員はややもすれば与えられた仕事はこなすが部下のマネジメントについては関心がないという者も少なくなかった。マネジメント能力の評価を人事評価制度に組み入れることで、ベースとしての管理責任を担保しつつ、部下ともコミュニケーションを図っていくことが必要ではないか。こうした制度と制度官庁の対応が連動すること、また、労働組合も一緒にいろんな観点で取り組んでいく体制を作っていくことが必要」と答えた。
また、公務員連絡会側は「10年前から超過勤務が減っていない部署があり、労使で超勤縮減の取組みを進めているが、人事院がその後押しをしてほしい。一気に超勤ゼロにすることは難しくても、できるだけ早く縮減できるようにしてほしい」「公務職場ではただ働きさせている実態があることを認識してもらわなければ何も変わらない。局長が言うように、問題は現場で起きている。超勤問題について、各府省当局は権限ある制度官庁ではないことを理由に逃げてしまうことが多いが、逆に人事院を中心とする制度官庁が逃げるなと現場の労使に言うべきではないか」と人事院の具体的な対応を求めた。
最後に、吉澤事務局長が「もう一度現場実態を見つめ直してほしい。昨年の5月23日の交渉で、片山前総務大臣は「超過勤務については、働いてもらったらそれに対して支払うというのは当たり前のことであり、使用者がきちんと認識しなければいけない。総務省としては、各省に対し、必要なことがあれば要請してほしいと言っている。超勤が多く、仕事がまわらないならば、定数増も必要であるし、超勤をなくすよう仕事も減らさなければならない。これまでのようなルーズなやり方はよくない」とはっきり明言されており、私どもも正にその通りだと思っている。本日は超過勤務について厳しく追及をしたが、要求書に掲げたその他の課題についても、適切な措置を講じてほしい」と強く訴えた。
これに対し、井上局長が、「ご指摘の点については十分噛みしめ、適切な措置を図っていくよう努めたい。めざすべきところは同じはずであり、今後もいろんな形で意見交換をしていきたいと考えている」と応えたことからこれを確認し、本日の交渉を終えた。
以上