政府は、本日7時40分から、第3回給与関係閣僚会議を開いて、本年の人事院勧告を実施するための給与法改正法案は提出しないことを確認し、その後の閣議で正式に決定した。(資料1、2、3)
公務員連絡会は、この閣議決定に対する声明を発し、「人事院勧告を実施しない方針を正式に決定したことは、この間の労使合意に基づく当然の判断」とした上で、@臨時特例法案と自律的労使関係制度を確立するための国家公務員制度改革関連四法案の同時成立、A消防職員への団結権付与を含めた地方公務員制度改革に向けた臨時国会での法案提出、B財政上の措置を含めた地方公務員給与への国家公務員給与引下げの影響遮断を改めて強く求めるとともに、引き続き、連合、公務労協に結集し、自律的労使関係制度を実現に向け、関連法案の成立に全力で取り組んでいくことにしている。(資料4)
なお、連合においてもこの閣議決定について、資料5の通り事務局長談話を発している。
資料1−閣議決定の内容
公務員の給与改定に関する取扱いについて
平成23年10月28日
閣 議 決 定
1 一般職の職員の給与に関する法律の適用を受ける国家公務員の給与については、去る9月30日に人事院勧告が行われ、労働基本権が制約されている現行制度においては人事院勧告制度を尊重することが基本であるとの考え方の下、真摯に検討を進めてきたところである。その結果、我が国の厳しい財政状況と東日本大震災という未曾有の国難に対処するための国家公務員の給与の臨時特例に関する法律案(以下「給与臨時特例法案」という。)が、今般の人事院勧告による給与水準の引下げ幅と比べ、厳しい給与減額支給措置を講じようとするものであり、また、総体的にみれば、その他の人事院勧告の趣旨も内包しているものと評価できることなどを総合的に勘案し、政府としては、既に提出している給与臨時特例法案の早期成立を期し、最大限の努力を行うこととする。
したがって、人事院勧告を実施するための給与法改正法案は提出しないこととする。
2 特別職の国家公務員の給与については、1の趣旨に沿って対応することとする。
3 我が国の財政事情が深刻化している状況に鑑み、行財政改革を引き続き積極的に推進し、総人件費を削減する必要がある。そのため、次に掲げる各般の措置を講ずるものとする。
また、人事評価制度の的確な運用を通じて、能力のある者が登用され、成果を挙げた者が報われるよう、能力・実績に基づく人事管理の徹底を図るものとする。
(1) 予算の執行に当たっては、優先順位の厳しい選択を行い、経費の節減に努めるとともに、今後、なお引き続き、経費の見直し・節減合理化を図ること等により、歳出の削減に努力する。
(2) 国家公務員の定員については、東日本大震災からの復旧・復興等に適切に対応しつつ、引き続き厳しく業務の見直しや効率化に取り組み、可能な限り純減を図る。
(3) 独立行政法人(総務省設置法(平成11年法律第91号)第4条第13号に規定する独立行政法人をいう。以下同じ。)の役職員の給与については、「国家公務員の給与減額支給措置について」(平成23年6月3日閣議決定)に沿って、法人の業務や運営のあり方等その性格に鑑み、法人の自律的・自主的な労使関係の中で、国家公務員の給与見直しの動向を見つつ、必要な措置を講ずるよう要請する。また、中期目標に従った人件費削減等の取組状況を的確に把握するとともに、独立行政法人及び主務大臣は、総務大臣が定める様式により、役職員の給与等の水準を毎年度公表する。
今後進める独立行政法人制度の抜本見直しの一環として、独立行政法人の総人件費についても厳しく見直すこととする。
また、特殊法人等の役職員の給与についても、同様の考え方の下、必要な措置を講ずるよう要請するとともに、必要な指導を行うなど適切に対応する。特殊法人等の役職員の給与等についても、法令等に基づき公表する。
(4) 地方公務員の給与改定については、各地方公共団体において、地方公務員法の趣旨に沿って適切な措置を講じるとともに、地方公共団体の定員についても、行政の合理化、能率化を図り、適正な定員管理の推進に取り組まれるよう期待する。
資料2−官房長官談話
内閣官房長官談話
(平成23年10月28日)
1 去る九月三十日に提出された人事院 勧告の取扱いについては、人事院勧告制度尊重の基本方針の下、真摯に検討を進めてきました。その結果、勧告の内容や趣旨などを総合的に勘案し、既に提出している給与臨時特例法案の早期成立を期し、最大限の努力を行うこととし、人事院勧告を実施するための給与法改正法案は提出しないことを本日の閣議において決定しました。
2 東日本大震災からの復旧・復興は、この内閣が取り組むべき最大かつ最優先の課題です。そして、復旧・復興のための財源は、次の世代に負担を先送りすることなく、今を生きる世代全体で連帯し、負担を分かち合うことが基本であり、まずは、歳出の削減などで財源を捻出する努力を行う必要があります。
3 このような観点から六月三日に国会に提出している国家公務員の給与の臨時特例に関する法律案は、我が国の厳しい財政状況と東日本大震災という未曾有の国難に対処する必要性に鑑み、一層の歳出削減が不可欠であることから、国家公務員の人件費を削減するため、臨時の特例措置として国家公務員の給与減額支給措置を講じようとするものであります。内閣としては、既に提出しているこの法案の早期成立を期し、最大限努力していきたいと思います。
4 最後に、国家公務員の諸君に申し上げます。国家公務員の諸君が震災からの復興を始めとした公務に日夜精励していることは高く評価しています。しかしながら、今般の給与減額支給措置がやむを得ない事情によるものであることを理解いただき、現下の歴史的な国難から日本を再生していくため、引き続き、専門家として持てる力を最大限に発揮し、職務に全力で取り組むことでより一層国民の信頼を勝ち得るようお願いします。
資料3−総務大臣談話
総 務 大 臣 談 話
平成23年10月28日
1 政府は、去る9月30日に提出された人事院勧告を受け、その取扱いについて、労働基本権が制約されている現行制度においては人事院勧告制度を尊重することが基本であるとの考え方の下、真摯に検討を行ってまいりました。
2 本日の閣議において、国家公務員の給与改定については、我が国の厳しい財政状況と東日本大震災という未曾有の国難に対処するための国家公務員の給与の臨時特例に関する法律案が、今般の人事院勧告による給与水準の引下げ幅と比べ、厳しい給与減額支給措置を講じようとするものであり、また、総体的にみれば、その他の人事院勧告の趣旨も内包しているものと評価できることなどを総合的に勘案し、既に提出している給与臨時特例法案の早期成立を期し、最大限の努力を行うこととし、人事院勧告を実施するための給与法改正法案は提出しないことを決定いたしました。
3 政府としては、経費の見直し・節減合理化等による歳出削減、業務の見直し・効率化による国家公務員の定員純減などに取り組んでまいります。
4 地方公務員の給与改定については、各地方公共団体において、地方公務員法の趣旨に沿って適切な措置を講じていただくとともに、地方公共団体の定員についても、行政の合理化、能率化を図り、適正な定員管理の推進に取り組まれるよう期待いたします。
5 なお、地方公共団体においても行財政改革の取組が進められているところであり、各府省におかれては、地方公共団体に定員の増加を来し、人件費の累増をもたらすような施策を厳に抑制されるようお願いいたします。
資料4−公務員連絡会の声明
声 明
(1) 政府は、本日の第3回給与関係閣僚会議で本年の人事院勧告を実施するための給与法改正法案は提出しない方針を確認し、その後の閣議で正式に決定した。
(2) 公務員連絡会は、本年5月に政府からなされた国家公務員給与の引下げ提案に対して、政府自らが表明した「自律的労使関係制度を先取る形」での交渉に真摯に対応し、財政事情や大震災などわが国を取り巻く極めて厳しい環境のもと、「日本の再生のために被災者・被災地とともに歩む」決意を持って合意した。現在、国会に提出されている「国家公務員の給与の臨時特例に関する法律案」(以下「臨時特例法案」という。)は、労使関係の本来のあるべき姿を先取って、政府との間で2013年度末までの間の国家公務員の給与について決着したものである。
(3) われわれは、こうした労使合意とその意義を無視する形で給与改定勧告が強行されたことに遺憾の意を表明するとともに、政府に対し本年の人事院勧告に基づく給与改定は実施しないよう求めてきたところであり、本日の閣議で政府が人事院勧告を実施しない方針を正式に決定したことは、この間の労使合意に基づく当然の判断である。
政府は、給与引下げ交渉において、臨時特例法案と自律的労使関係制度を確立するための国家公務員制度改革関連四法案が同時に成立できるよう全力を尽くすことをわれわれに約束しており、改めてその確実な実現を求めておく。
合わせて、消防職員への団結権付与を含めた地方公務員制度改革について、開会中の臨時国会に法案を提出することを強く求めるものである。
(4) また、地方公務員の給与については、財政上の措置を含め、国家公務員給与引下げの影響を遮断することが政府との約束であり、各自治体の労使交渉を尊重すべきことを改めて確認しておく。独立行政法人等の給与については、労使交渉に基づく自主的決定の取組みを強化していく。
(5) 公務員連絡会は、地方公務員を含めて本来あるべき自律的労使関係制度を実現していくため、公務労協・連合に結集し、関連法案の成立に全力で取り組むものである。
2011年10月28日
公務員労働組合連絡会
資料5−連合の事務局長談話
2011年10月28日
平成23年人事院勧告の実施見送りの閣議決定についての談話
日本労働組合総連合会
事務局長 南雲 弘行
1.政府は、10月28日、本年の人事院勧告を実施するための給与法改正法案を提出しないことを閣議決定した。この間の連合の要請に沿うものであり、適切な対応である。
2.連合は、本年6月、自律的労使関係制度を先取る形で、国家公務員給与を引き下げる臨時特例法案と国家公務員制度改革関連四法案が国会に提出され、継続審議中であるにもかかわらず、その趣旨を否定するかのような平成23年人事院勧告がなされたことに反対し、政府・与党に対して、人事院勧告の実施を見送るよう強く求めてきた。
人事院や一部の与野党議員が、人事院勧告の実施を強く求めていたなかで、政府・与党がリーダーシップを発揮し、良識ある判断を行ったことは評価できる。
3.政府は、人事院勧告の実施を見送る一方で、「すでに提出している給与臨時特例法案の早期成立を期し、最大限の努力を行う」としており、今後は、給与臨時特例法案と国家公務員制度改革関連四法案をセットで成立させなければならない。
4.地方公務員の給与については、国家公務員の給与引き下げと連動させるべきでなく、自治体における労使交渉を尊重すべきである。
5.連合は、引き続き、政府及び与野党に対し、給与臨時特例法案と国家公務員制度改革関連四法案の速やかな成立にむけ働きかけていく。
あわせて、民主的で透明な公務員制度をめざし、消防職員への団結権付与を含む地方公務員制度改革法案の早期提出を求めていく。
以 上