2012年度公務労協情報 51 2012年9月24日
公務公共サービス労働組合協議会

第2回「地方公務員の自律的労使関係制度に関する会議」が開催される−9/21
−全国町村会などからのヒアリングを行う−

 9月21日15時から、総務省において第2回「地方公務員の自律的労使関係制度に関する会議」が開催された。
 会議では、前回(9月12日)、委員から質問・要望が出された@現在の地方自治体における労使関係の実情、A消防職員委員会の運営について、総務省から資料提出があり、植田公務員課長が説明した。
 続いて、全労連および全国町村会からのヒアリングが行われた。
 最初に、全労連・公務員制度改革闘争本部から、@ILOからの長年の指摘、A代償措置としての人事院・人事委員会勧告を無視した賃金削減や労使交渉軽視の現状、B権利保障をコスト化して捉えることの不当性と、地方公務員の特性に沿った制度設計が必要であるとの主張などがされた。また、教育職公務員の実態を踏まえた検討(知事および県教育委員会との交渉の保障など)についても言及があった。
 それに対する質疑応答の概要は、下記の通り。
<質問>
(1)自治体に組合が複数ある場合や組織率などによって、交渉のあり方に違いがあるのか。
(2)「国公4法案をそのまま横引きすべきではない」との意見であったが、地公法改正への意見はあるのか。
(3)「すべての地方公務員に労働基本権を回復すべき」との意見であったが、警察職員についてはどう考えるのか。
(4)昨年6月の総務省「基本的考え方」について問題点を多く指摘した意見書を提出されているが、臨時国会に法案を提出せず、議論をさらに深めるべきとの考えなのか。
(5)総務省・文部科学省との「中央交渉」を制度化すべきとの意見であるが、当事者性をどのように考えるのか。例えば中央交渉で決めたことによって、個々の組合を拘束する手法は何か。規約などで統制するのか。
(6)地方三団体からは、「現在の労使関係は安定しており、改革の必要性はない」との意見が出されている。どう考えるか。
<回答>
(1)交渉の手法は様々であり、大規模自治体においては、連合体等を形成して一元化して交渉しているところもある。組織率によって当局側の対応が変わることは基本的にあってはならず、それぞれの組合と交渉はしても、妥結結果の調整は当局の責任によって行われるべき。
(2)本来は、給与決定原則を含め、地公法の改正が必要だと考えている。現行制度はあまりにも細かいところまで規定しているため、原則として、地公企労法程度にまでは緩和すべきである。
(3)基本的には、警察職員にも回復すべきであるが、国民の理解などから見ても、現時点での議論は難しいと考える。
(4)労働基本権回復は急ぐべきである。不十分な点については、引き続き、総務省に対して改善要求していきたい。
(5)法律事項や制度についての総務省等との交渉は必要で、レベル・内容について検討すべき。ただし、中央交渉での妥結を個々の組合に強要する仕組みはない。賃金決定の単位は、あくまでも自治体労使である。
(6)労使関係が安定化するように、組合側としても努力している。しかし、現実として対立はしばしばあり、妥結が難しい事項であっても、徹底して議論が尽くされる仕組みが確保されるべきであり、その意味においても、自律的労使関係の確立は必要である。

 次に、全国町村会からのヒアリングが行われ、新潟県聖篭町の渡邊廣吉町長が、「住民サービスへの影響や、今なぜ制度改正に踏み込まなければならないのかが明確にされておらず、反対と言わざるを得ない」と発言。さらに、「素案」への意見として、@協約締結権付与による労使双方への実益、現行制度を存続することのデメリットが明らかにされていない、A労働組合の認証要件として、同一の地方自治体の職員が組合員の過半数を占めることとしているが、職員以外の者が労使交渉に関与すべきではなく、組合の認証要件としての「過半数」には反対、B人事委員会による調査の具体的内容が示されておらず、人勧に代わる客観的指標足りうるのか疑問、C消防は地域住民の生命と財産を守ることが使命であり、ILOからの指摘よりもその使命確保が重要であるため、職員への団結権付与については、地域防災の観点から反対、などと主張した。
 それに対する質疑応答の概要は、下記の通り。
<質問>
(1)人事院・人事委員会勧告がないなかでの労使交渉への危惧には、具体的にはどのようなものがあると考えるのか。
(2)行政サービスを良くすること、公務を魅力あるものにすることについての裏付けは、労使が納得できる交渉の実施と勤務条件の拡充ではないか。協約締結権の付与はメリットと考えることはできないか。
(3)民間においては、スト権があっても労使関係が安定している。スト権のない、今回の協約締結権付与によって労使関係が大きく変わるとは考えにくいのではないか。
(4)交渉権と協約締結権は本来一体のもの。交渉結果を文書にし、労使がともにそれを守ることが協約締結の意義であり、これは、不透明な労使慣行を是正するという機能も持つ。協約締結権付与によってこれまでとは全く違うレベルの労使関係に移行するというのは考えすぎなのではないか。
<回答>
(1)人勧は非常にいい制度である。賃金決定にあたって、人事院・人事委員会勧告を十分に尊重していることについては、組合も理解しており、拠り所がなくなってしまうことが大きな不安材料だ。
(2)メリットにつながる可能性を否定するわけではないが、組合との信頼関係はすでに確保されている。
(3)公務員は「全体の奉仕者」である。そもそも民間労働者と同等の権利を持つべきとは考えにくい。経済状況が疲弊している中で、公務員の権利のみが拡充されることには、社会一般の理解が得られない。
(4)協約にしなくても、労使間での交渉結果に基づいて、議会において条例化を図っている。人勧がなければ、「この範疇で協約を結ぶべき」という指標がない。

 この後、委員間でのフリーディスカッションとなり、そこでは、@使用者側が反対する要因は、協約締結権付与よりも、人勧がなくなることに対する危惧であり、民間賃金実態調査のあり方などを工夫する余地があるのではないか、A新たに権利が生まれることについての心配に対しては、民営化・独法化の事例が参考になるのではないかなどの意見が出された。
 最後に、稲見総務大臣政務官が、「できるかぎり、知事会などとも本音のやり取りができるよう、引き続き総務省として努力したい」とあいさつし、会議を終了した。
 次回は、今週末にも開催予定であり、連合・公務労協のヒアリングが行われる。