2012年度公務労協情報 55 |
2012年10月16日
公務公共サービス労働組合協議会
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第5回「地方公務員の自律的労使関係制度に関する会議」が開催される−10/12
−全国市長会からのヒアリングを行う−
10月12日11時から、総務省において、第5回「地方公務員の自律的労使関係制度に関する会議」が開催された。
最初に、全国市長会からのヒアリングが行われ、奈良県天理市の南佳策市長が、この間の全国市長会の意見書をもとに、「地方公務員制度改革は、地方自治及び運営に関わる重要事項であり、拙速に進めるべきではない。新たな労使関係制度に移行する必要性、住民サービスへの影響等の疑問や懸念が払拭されておらず、単に国家公務員との整合性だけではなく、地方公務員の実情、地方の意見等を十分踏まえ、丁寧に検討いただきたい」と発言。
さらに、「素案」の各論では、@労働組合の認証要件について、同一の地方公共団体の職員のみで構成することも含め、さらに検討が必要、A人勧制度に代わる説得力のある具体策が示されていない、B都道府県労働委員会では、不当労働行為の救済や交渉不調の場合のあっせん等に対して迅速な処理ができないなどの懸念がある、C消防職員への団結権・協約締結権の付与は、指揮命令系統の乱れ等の懸念があり、十分かつ慎重な検討が必要、などを主張した。
それに対する質疑応答の概要は、以下の通り。
<質問>
(1)労使関係は安定しているとのことだが、組合が複数ある場合は共同交渉を行うのか、別々か。仮に別々に交渉している場合に、異なる組合とそれぞれ別の妥結をしたとすると、調整はどうするのか。
(2)労使関係が安定しているのであれば、協約締結権を付与されても、これまでとは変わらず、交渉そのもののコスト増加の懸念はあたらないのではないか。
(3)労使関係を安定していくのは、使用者側の努力として、管理者が労務についてしっかりした知識の取得することが大変重要である。労務管理について管理者側の教育にどのように力を入れているのか。
(4)給与削減に努力したということだが、下げ幅を決めるときに何を基準に決めてきたのか。削減が続いて労使関係が損なわれたことはないのか、それとも話を尽くしたので納得が得られたのか。
(5)消防職員の現場は、交渉自体が難しいということなのか。消防職員について、団結権を持って話し合いをすることで職場が乱れてしまうというのはイメージできない。消防職員委員会で悩みや労働条件を話しているということだが、実際に労使の話し合いが進んでいるのであれば、団結権や協約締結権を付与したとしても、現場の実態は変わらないのではないか。消防団員との信頼関係や協力関係に支障が生じるといった懸念が述べられているが、どういう懸念を一番心配しているのか。
(6)職員の現状の勤務条件を引下げるような場合、理由や資料の提示を行った上で、協議を行うべきで、「交渉コスト」という負のイメージで捉えるべきではない。むしろ、財政の健全性を保つために、職員団体に理解を求めるというのは適正な手続きではないか。見解の中では交渉の長期化などマイナスの面が強調されているが、条件の引下げという重大な問題について、ある程度時間を惜しまず双方が交渉するということは、とても大切なことだと思う。コストという言葉で長期化や紛争という負のイメージだけ取り出して協約締結権を問題ありとしているように読めなくもないが、如何か。
<回答>
(1)天理市でも複数組合があるが、組合との意志の疎通が図られており、人勧制度が定着してきたので安定している。事案によって、双方で情報を交換しながら個々に交渉を行っている。
(2)組合との意思の疎通がはらかれているが、協約締結権を付与すると特異なケースが出てきて、いざことが起きればどういう案件になるかは予測できない。
(3)労務管理に関わる管理者教育はやっていない。
(4)唯一のものさしが人勧制度であるので、人勧に沿って、上げるときは上げる、下げるときは下げるという対応を取ってきている。財政がパンク寸前だった天理市は、職員数を削減することによって、10年かけて人件費を22%減らした。人は減らすが給料は支えるということが職員との信頼関係だろうと思っている。本当に必要な仕事は何かを精査したので、人数を減らしたことに対する不満は一切出ていない。
(5)消防職員は一般の公務員と違い、この街を守っているという意識を持っている。協約締結権は考えられない。付与については、安心・安全の面で懸念がある。消防職員は一般の地方公務員と違う思い入れで街を守っている。消防職員は一度採用されると退職までその職場であり、一般の公務員とは思い入れや信頼関係が違う。今のままでやってもらいたいというのが全国市長会の大多数の思い。
(6)なぜ人勧を改めないといけないのかわからない。公務員は税金で給料をもらっているという意識を持つ職員を作ることが私の本音。
この後、前回に引き続き「議論のポイント」に基づき、委員によるフリーディスカッションが行われ、@公務における労働組合の役割、A協約締結権を付与した場合の懸念に対する考え方、B消防職員への団結権・協約締結権付与の目的などについて議論された。
主な意見として、「労働組合は対決ではなく、共同で行政サービスを高めていくことを積極的に考えていくべき」「消防職員が一般の公務員と同様の扱いであるのは、グローバルスタンダードである」「協約締結権の付与によってコストがすぐに上がることはあまりないと考えるが、コストがかかっても中長期的には安定性に役立ちコスト削減になる」「素案にプラスして工夫を提示し、懸念を払拭してもらうメッセージを出すことが必要」などがあがった。
最後に、稲見総務大臣政務官が、「公務における労働組合の役割は、賃金や労働条件の決定だけではない。職員間の互助サービスや外に出ての社会貢献、行政サービスへの現場からの提言なども積極的に行っている。そういう総合的なことがあって職場は成り立っている」と自治体職員としての自らの経験を踏まえてあいさつし、会議を終了した。