公務員連絡会地方公務員部会は、11月28日及び30日の両日、地方財政確立等に関する地方6団体、各政党への要請ならびに総務省・財務省両大臣政務官申入れを行った。地方6団体要請には幹事クラスが、各政党及び政務官要請には書記長クラスが参加し、@地域公共サービスの実態に見合った財源保障、A東日本大震災復興事業に係る地方財源の確保、B自治体の自主的・主体的な財政健全化の支援、C地方公務員の総人件費の十分な確保、D地方単独事業を含めて社会保障サービスを持続的に提供できる制度、などの実現、また、国公の給与削減措置に準ずる形での、地公給与引下げを前提とした地方交付税や義務教育費国庫負担金削減を行わないこと、について、政府・関係省庁へ働きかけるよう申し入れた(別紙申入書参照)。
各々の要請経過は以下の通り。
1.地方6団体要請の経過
(1) 全国知事会要請の概要
全国知事会への要請は、28日11時30分から行われ、杉原調査第一部長らが対応した。
全国知事会からの回答の概要は以下の通り。
@ 要請内容は、基本的に知事会の主張と同じ。地方財政の確立に向けて、与党支持団体である皆さん方からも働きかけをお願いしたい。
A 財務省の意向もあり、例年以上に地方交付税などは厳しい状況で、地方に財源がまわるのか気がかりである。
B 「税と社会保障の一体改革」で地方消費税の取り分も厳しい状況だ。国の方で地方単独事業を狭くするよう言っている。総務省で6.2兆円と試算しても、厚労省は財務省と手を組んで、400億円と言ったりもしている。介護など直接受けるサービスは、地方単独事業と主張しているが、厚労省は地方に対して厳しい。地方段階でも議員にアプローチしていただかないと厳しい。
(2) 全国都道府県議会議長会要請の概要
全国都道府県議会議長会への要請は13時から行われ、松岡調査第一部長らが対応した。全国都道府県議会議長会からの回答の概要は以下の通り。
@ 要望書については、基本的に同じスタンスだと思う。
A 国と地方の協議の場が、以前は形式的だったが現在は法定化された。年4回実施されることになっていて、本来12月に開催されるはず。
B 国家公務員の給与引下げに関連した地方交付税や義務教育費国庫負担金の削減についても、状況を慎重に見極めながら、国・地方の協議の場で要請していきたい。
C 公務員制度改革については、地方においてどのように変えるのかという具体的な「形」がないと、意見が出せないという立場である。
(3) 全国市長会要請の概要
全国市長会への要請は13時40分から行われ、杉田行政部長、中村財政部長らが対応した。全国市長会からの回答の概要は以下の通り。
@ 市長会としても、11月17日に「真の分権型社会の実現を求める決議」を確認している。この中には、「3.地方税財源の充実強化」、「4.地方交付税総額の確保と法定率の引上げ」、「6.地方公務員給与決定における都市自治体の自主性の尊重」などが含まれている。
A 年末の予算配分の決定にむけて、この決議に基づき申入れを行なっている。
(4) 全国市議会議長会要請の概要
全国市議会議長会への要請は14時10分から行われ、上市政務第一部副部長らが対応した。全国市議会議長会からの回答の概要は以下の通り。
@ 周辺状況に関する認識は同じではないか。市議会議長会としても、総会の際に、「地方税財源の充実強化に関する決議」、「東日本大震災に関する決議」、「原子力発電所事故の早期収束及び再発防止に関する決議」を確認している。
A ただし、「申入れ」の中の労働条件に関わることは、議長会としては、使用者ではないので議論する立場にないことを理解して欲しい。
B 国と地方の協議の場が開催されれば、「地方財源の減額は受け入れられない」と伝えていきたい。
(5) 全国町村会要請の概要
全国町村会への要請は、14時50分から行われ、小川財政部副部長が対応した。全国町村会からの回答の概要は以下の通り。
@ 全国町村会も要請内容と同じ思いである。
A 明後日(11/30)に全国町村長大会を行い、そこで町村会の意見を決議し、政府・国会に要請行動を行う。内容はHPで公開する。
B 交付税について、総額確保したい。財務当局が削減という話をしたときには、個別に申入れを行わなくてはならない。
C 町村長大会では、東日本大震災に係る特別決議を行い、地震・津波・原発など全国的な防災対策について、政府に申し入れていく。
(6) 全国町村議会議長会要請の概要
全国町村議会議長会への要請は、15時30分から行われ、松浦企画調整部副参事らが対応した。全国町村議会議長会からの回答の概要は以下の通り。
@ 全国町村議会議長会は、11月16日大会を開催し、「東日本大震災からの早期復興関する特別決議」、「真の分権型社会の実現に関する決議」、「町村税財源の充実強化に関する特別決議」、「社会保障改革に関する特別決議」、「環太平洋経済連携協定に関する特別決議」を確認している。
A この中では、地方交付税の法定率の引き上げや一括交付金の実施にあたっては、都道府県の実行状況を検証した上で町村の意見を十分取り入れること、社会保障制度改革では、地方の事業を区分することなく社会保障事業として把握することなどを重要課題として要請を行っている。
B 今後、「国と地方の協議の場」が開催されれば、その中でも要請していきたいと考えている。
2.各政党要請の経過
(1) 民主党要請の概要
民主党への要請は、11月30日10時から行われ、鈴木幹事長代理が対応、回答の概要は以下の通り。
@ 前片山大臣との経緯も把握しており、国と地方は別であり制度が違う。国が削減だから地方が削減という形には単純にはならないというのは現在の流れだと理解している。大臣が変わったからと言って、前言が撤回ということにはならないと考える。
A 税と社会保障に関しても、地方はすでに公共サービスをプラスアルファの部分で色々とやっていただいている。地方は努力をしてやっているのであり、たっていられない状態であると思っている。
(2) 社民党要請の概要
社民党への要請は10時40分から行われ、重野幹事長らが対応、要請に対し、重野幹事長は以下の通り見解を述べた。
@ 公務員の関連法案は非常に悩ましい話であり、自民党・公明党は人勧を完全実施の法案を出すと言っていた。それをしながらなお、連合と確認した特例法案と自律的労使関係制度の対応もあり、国会会期があまりない中で、時間が足りない中、延長という話は出ていない。
A 人勧問題に関する構えとしたら、基本的に人勧を守れという考え方ではあるが、しかし、意見交換などはしっかり行っていきたい。国公はカットされるが、地公はすでに行っている。公務員給与は極めて大事で重要な問題。
B 今後詰まってくるかとは思うが、臨時特例法が今国会で果たして出されるのか、理事懇談会でも話題にもなっていない。今後どうなっていくのかがわからない。しかしながら、総務大臣が本会議でも、委員会の答弁でも、「地方自治体はこの間、相当の血を流している」と言っているように、同様の認識を持っている。
(3) 公明党要請の概要
公明党への要請は10時40分から行われ、東副代表らが対応、要請に対して次の通り回答した。
@ 私どもは、人勧は実施すべきで、その上で必要な財源を確保するため平均7.8%引下げを積み上げるという考え方だ。
A 地方には波及させないというのがわが党の基本であり、その上で地方自治体に対して国家公務員に準じた対応を要請するという形の法案を考えている。
(4) 国民新党要請の概要
国民新党への要請は13時から行われ、齋藤事務局長が対応、次の通り見解を述べた。
わが党は連合とも共闘関係にあり、当然民主党とも連立政権ということでもある。われわれも郵政改革法案もあるので、細かい部分で調整を行っている。連合とは大きくは共闘しており、税と社会保障に関しては、消費税増税は絶対反対である。
3.総務省・財務省申入れの経過
(1) 総務省申入れの概要
総務省への申入れは、11月30日13時40分から行われ、福田大臣政務官が対応、以下の通り回答した。
総務省としては地方公務員法にのっとった形ですすめていく。地方公共団体の調査をして地方が単独で行っている税と社会保障の公共サービスに応じていく。
自動車取得税に関しても今はその時期ではないと、総務省としては言っている。来年度なくなるということはない。阻止する。
税と社会保障の一体改革についてもデフレを打開する方策を考えなくてはならない、総合特区制度などフルセットで自治体を応援する仕組みを作っていきたい。
(2) 財務省申入れの概要
財務省への申入れは30日17時30分から行われ、三谷大臣政務官が対応、以下の通り回答した。
国家公務員給与削減法案は、東日本大震災の復興財源対策として被災地を助けるために、また公務員制度改革とセットで、人事院勧告を受け入れることなく、相談をもとに取り決めたことになるが、その主旨に関して総務大臣や総務省とよく相談をしながら、地方の財源を鑑みて、予算編成の過程の中で措置して、またこの話を汲み取りながら、行っていく。
国会でも質疑が行われており、私も答弁にたっている。もちろん、答えは今申し上げたとおりである。片方で国も今大変厳しい財政状況にあり、問われていることではなく、地財計画そのものや、地方交付税交付金をどのように予算措置していくか、ということも含めて考えなければならない。要求されている通りに、地方交付税だけではなく、総額の話があるという点もご承知をしていただきたい。
(別紙)
2011年11月 日
様
公務員連絡会地方公務員部会
議 長 岡 ア 徹
地方財政確立等に関する申入れ
貴職の地方自治確立、地方公務員の賃金・労働条件改善に向けたご努力に敬意を表します。
わが国は今、東日本大震災からの復旧・復興、福島第一原発事故の早期収束や除染対策への対応など、極めて深刻な事態に直面しています。さらに、現在の歴史的な円高は、産業の空洞化を引き起こし、経済活力や雇用を失わせ、確実に地方の力を削いでいます。
三位一体改革において、税源移譲額を上回る補助金カットが行われ、さらに交付税の大幅減額に直面したことにより、地方は職員給与の独自削減や定員削減を行うなどの大変な努力を重ね、地方財政危機を乗り越えてきました。私どもは、給与の独自削減などについて、厳しい地方財政の現状を踏まえ真摯に対応するとともに、定員が削減される中にあっても公共サービスの質の低下を招かないために、懸命な努力を続けてきました。
来年度予算編成においては、地域の主体性を生かし、迅速に復旧・復興が進むよう、十分な財政措置が行われる必要があります。さらに、地方において雇用確保や地域経済対策などを展開し、かつ、社会保障関係費の経費増に対応するための地方の一般財源確保、地域間格差の是正に向け、地方交付税の総額確保など地方が必要とする財源の確保に向けて、下記事項の実現にご尽力を頂きますようお願いします。
記
1.地方財政計画の策定については、自治体との十分な協議のもとに、少子・高齢化対策、地域医療確保、環境保全など地域の行政需要を的確に反映させ、地域公共サービスの実態に見合った財源保障を実現するため、少なくとも地方の一般財源について、実質的に今年度の地方財政計画の水準を下回らないようにすること。また、恒常的な財源不足にもかかわらず長年据え置かれてきた地方交付税の法定率を引き上げること。
2.東日本大震災の復旧・復興事業に係る地方負担分は、被災自治体の状況を勘案して通常の歳入歳出とは別枠とし、地方交付税の加算等により地方財源を確実に確保すること。
3.国の財源確保のための国家公務員の給与減額措置に準ずる形での地方公務員の給与引下げを前提とした地方交付税や義務教育費国庫負担金の削減等は、行わないこと。
4.自治体財政健全化法の運用については、国の関与は最小限に止め、自治体の自主的・主体的な財政健全化に向けて一層の支援を行うこと。
5.医療・福祉・介護、教育、環境などの公共サービスの水準を維持・向上させるため、地方公務員の総人件費(定数・給与)の十分な確保を行うこと。
6.「税と社会保障の一体改革」にあたっては、地方が社会保障制度において果たしている大きな役割を踏まえ、偏在性の少ない地方消費税の充実など地方単独事業を含めて社会保障サービスを持続的に提供できるような制度とすること。
以 上