公務員連絡会地公部会は12月20日、2011年地方公務員賃金等の労働条件に関して、総務省公務員部長交渉を実施した。地公部会からは、藤川事務局長、氏家自治労書記長、木下日教組書記次長、吉田都市交書記長、西川全水道書記長、高橋日高教書記長が、総務省側は、三輪公務員部長、植田公務員課長、鈴木高齢対策室長、稲垣安全厚生推進室長らが出席した。
冒頭、企画調整委員代表の氏家自治労書記長から要請書(別紙)を手交し、藤川事務局長が次の4点について、総務省側の見解を求めた。
(1) 公務員連絡会地方公務員部会が、6月13日に提出した「地方公務員の労使関係制度に係る基本的な考え方に対する意見」を踏まえつつ、自律的な労使関係制度に関わる法整備を早期に行うこと。
(2) 臨時・非常勤職員の処遇改善に関わって、片山前総務大臣に100万筆を超える署名を提出したことも踏まえ、地方自治法改正、及び地方公務員へのパート労働法の趣旨が適用されるよう法整備を行うこと。
(3) 人事院において「定年を段階的に65歳に引き上げるための国家公務員法等の改正についての意見の申出」がなされたが、政府において国家公務員について検討がされていることから、地方公務員についても早急に検討をはじめること。
(4) 東日本大震災の被災地では、早期の復旧・復興に向けて、自らが被災者となった職員も含め、地方公務員が現場の第一線で必死に働いている。震災から1年経過した時に、体調を崩して休職・退職する職員が続出する可能性があり、実態として厳しいと感じている。被災地で勤務する地方公務員の労働安全衛生体制について、最大限の努力をお願いしたい。
これらに対して、三輪公務員部長から、次の回答があった。
(1) 総務省として、地方公務員の労働基本権のあり方について、「地方公務員の労使関係制度に係る基本的な考え方」を本年6月2日に取りまとめたところである。この「基本的な考え方」においては、国家公務員についての自律的労使関係制度の措置を踏まえ、地方公務員についても新たな労使関係制度を設けることとしており、今後、引き続き労使双方からの意見も十分伺いながら、制度の具体化に向けて更に検討を進めていきたいと考えている。
(2) 非常勤職員への手当の支給については、地方自治法上、常勤の職員には「給料」と「手当」を、非常勤職員には「報酬」と「費用弁償」をそれぞれ支給することとされている。これは本来、非常勤職員が任期を限って臨時的・補助的業務に任用されるという性格であることによるものである。なお、地方公共団体における住民ニーズの高度化・多様化に対応するため、地方独自の制度として「任期付短時間勤務職員」制度を設けている。任期付短時間勤務職員は、常勤職員と同様の本格的な業務に従事することができ、給料と手当の支給が可能となるものであり、その積極的な活用を促進していきたいと考えている。
パート労働法の適用について、パート労働法は、民間事業主がその雇用する労働者について雇用管理の改善を行うことを目的とするものである。公務員については、住民や国民の意思である法令、条例に基づいて勤務条件が定められており、適用が除外されている。しかしながら、地方公共団体における臨時・非常勤職員の任用に当たっては、民間労働法制の動向も十分に念頭に置くことが必要であると考えている。臨時・非常勤職員の任用や処遇に関して守られるべきことについて、パートタイム労働法の趣旨も踏まえた対応ができるよう、各地方公共団体に対して必要な助言や情報の提供等を行っていきたいと考えている。
(3) 平成25年度から職員の定年を段階的に引き上げ、平成37年度に65歳定年とすること並びに60歳以降の給与の抑制及び定年の引き上げに伴う組織活力の維持のための方策を講じる必要があると指摘をした「定年を段階的に65歳に引き上げるための国家公務員法等の改正についての意見の申出」が、本年9月に人事院から出されたところである。国家公務員については、国家公務員制度改革推進本部において、現在、人事院の申出を受け、60歳以降の職員の雇用と年金の接続に向け、民間の状況等をも踏まえながら検討を進めているところである。地方公務員については、雇用と年金の接続の重要性に留意しながら、国家公務員の検討の動向や、皆様はじめ地方自治体関係者の意見を十分踏まえた上で、その対応を検討してまいりたいと考えている。
(4) 被災された地方公共団体の職員の方は災害対応の中心となって従事していただいており、大変なご苦労があると承知をしている。被災市町村の職員の方々はもちろん、応援のために派遣された職員の方々も大変多く、それぞれ現地で大変なご努力をいただいているところである。このため、本年4月及び7月に通知をし、職員の健康管理、安全衛生対策についてお願いをしているところである。
また、地方公務員災害補償基金の事業として、「心の健康ケア対策事業」を実施している。これは、被災地の自治体に臨床心理士等の専門家を派遣し、心の健康相談や研修会を実施するものであり、8月23日より要望があった自治体から随時実施している。これまでに約20団体で実施している。
被災地では、住民対策が優先であり、職員の健康対策はやり難いとの意見もあるが、そういう意見に対しては、災害対応の中心になるのは職員であり、職員の健康対策に是非取り組んでいただきたい旨強くお願いをしたところである。こうした事業を通じて被災地の自治体職員の安全衛生対策について、今後とも必要な助言や情報の提供等の支援を行っていきたいと考えている。
これらの回答に対して、地公部会各構成組織書記長らがさらに次のように質し、三輪公務員部長が回答した。
(1) 6月2日の「基本的考え方」が総務省から示されたことに対して、もう半年も経過している。法案提出に向けた公務員部が考えるスケジュールを示していただきたい。(自治労)
(回答)6月に「基本的考え方」を出してから少し時間が経っているが、この間、「基本的考え方」について、労使双方から様々な機会を通じてご意見を伺ってきたところである。特に地方団体からは、強い慎重意見が寄せられているところである。総務省としては、これまで地方公務員部会はじめ関係者から様々なご意見、ご指摘をいただいており、現在、論点整理を行っているところである。引き続き、関係の皆様と議論を深めてまいりたいと考えている。
民主党の公務員制度改革・総人件費改革PTの場でも労使双方から意見を聴取するなど議論が行われているところであり、党ともしっかり連携をしながら、この問題に取り組んでいきたいと考えている。
(2) 自治体の臨時・非常勤職員は増加しており、小・中学校教職員では全教職員のうち7分の1、高校教職員では同5分の1が非正規職員である。民間労働法制も踏まえて臨時・非常勤職員の雇用や処遇改善を進めていくようお願いしたい。(日教組)
(回答)臨時・非常勤職員の任用や処遇の取扱については、それぞれの地方公共団体において、職務の内容と責任に応じて、適切に定めていただくべきものと考えている。総務省としては、臨時・非常勤職員の任用や処遇について、平成21年4月に通知を発出し、その後もいろいろな機会をとらえて通知の内容の周知に努めているところである。これからも地方公共団体に対し、必要な助言や情報提供を行っていきたいと考えている。
(3) 定年延長について平成25年度から段階的にしっかり体制が作れるよう臨んでほしい。各地方段階での交渉において、定年延長に関わって具体的な議論にならない。総務省として具体的なスケジュールを示していただきたい。(全水道)
定年延長が平成25年度から段階的にという状況で、待ったなしの状態である。交通職員についても、60歳から段階的にとなると、勤務形態も含めて問題になってくる。各地方段階で交渉ができるように、早く検討を進めてほしい。(都市交)
(回答)10月に総務委員会で質疑があった際に、総務大臣が、「自分が60歳になった後、どうなるか分からないというのは個人にとっては深刻かつ重大な問題であり、対応が遅れないようにしっかりやる」という趣旨の答弁をしており、大きな問題だと認識している。
公的年金の報酬比例部分の支給開始年齢が、平成25年度以降段階的に65歳に引き上げられるのに合わせて、公務においても、雇用と年金の接続を図ることは、大変重要な課題であると認識している。
国家公務員については、国家公務員制度改革推進本部において、人事院の申出を受け、60歳以降の雇用と年金の接続に向けて、民間の状況等をも踏まえながら、対応が遅れないように検討を進めているところである。
地方公務員についても、国家公務員の検討の動向は十分踏まえなければならないが、同時に、地方の様々な事情もあるので、皆様をはじめ地方自治体関係者の意見も伺いながら対応していきたいと考えている。
(4) 福島県においては、職員は放射能汚染の不安などを抱えながら仕事を続けており、ストレスリスクで調子を崩すものが出てくるのではないかと思っている。集中改革プラン等の人員削減で、平時でも厳しい職場環境となっており、その上有事となると、労働安全衛生上も問題が出てくる。公務員が倒れてしまうと、地域の人々に影響が出てしまうため、早急に対応をお願いしたい。(日高教)
労働安全衛生体制の整備については、われわれとしてもアイディアを持っており、われわれも含めて関係組織と協議・情報交換する場を設けるよう総務省としても努力してほしい。(藤川事務局長)
(回答)現地の職員の方は本当に大変な思いで日々仕事をされており、職員の方々に対する安全衛生体制が大変重要であるということはしっかりと認識をしている。また、それに関連して、皆様の方からもいろいろなお考えを頂戴していると伺っており、このことについては感謝を申し上げたい。
先ほど申し上げたように、心の健康ケア対策事業を始めており、できればこういったものを今後さらに充実をさせていきたいと考えている。新年度に向けてあまり時間もないが、早急に方向性を検討していきたいと考えており、今後ともいろいろな形で皆様のご意見も伺いながら、適切に進められるように努力をしていきたい。
最後に、地公部会側から「自律的労使関係制度など、来年は正念場だと思っている。今後とも緊密な協議を行っていってもらいたい」と要請し、交渉を終了した。
(別紙)
2011年12月20日
総務大臣
川 端 達 夫 様
公務員連絡会地方公務員部会
議 長 岡 ア 徹
2011年地方公務員賃金等の労働条件に関する申入れ
貴職の地方公務員の賃金・労働条件の改善に向けたご努力に敬意を表します。
わが国は今、東日本大震災からの復旧・復興、福島第一原発事故の早期収束や除染対策への対応など、極めて深刻な事態に直面しています。早期の復興・復旧を実現するには、被災自治体の職員、国、及び全国の自治体から派遣された職員が、健康で元気に働くことができるよう労働環境を整備することが焦眉の課題となっています。
三位一体改革において、税源移譲額を上回る補助金カットが行われ、さらに交付税の大幅減額に直面したことにより、地方は職員賃金の独自削減や定員削減を行うなどの大変な努力を重ね、地方財政危機を乗り越えてきました。各地方自治体の労働組合は、賃金の独自削減などについて、厳しい地方財政の現状を踏まえ真摯に対応してきました。また、定員が削減される中にあっても、安心・安全で、質の高い公共サービスを提供するために、高い使命感と責任をもって日々の職務に精励しています。
私どもは、このような職員の努力に十分に報いる賃金・労働条件の改善や、ILO勧告をみたした労働基本権の確立と民主的公務員制度改革の早期実現をめざして取組みを進めてきました。
貴職におかれましては、私どもとの十分な交渉・協議のもと、下記の事項の実現に向けて努力されるよう申し入れます。
記
1.労使が責任をもって賃金・労働条件決定ができるよう自律的な労使関係制度に関わる法整備を早期に行うこと。それに当たっては、公務員連絡会地方公務員部会が、6月13日に提出した「地方公務員の労使関係制度に係る基本的な考え方に対する意見」の実現をはかること。
2.自律的労使関係制度が施行されるまでの間においても、各地方自治体における賃金決定に関わって国と同様の取扱いを求めることなく、地域の実情や労使間の十分な交渉・協議を通した自主的な賃金決定を尊重すること。
3.公営企業および技能労務職員の賃金については、当該職員に労働協約締結権が保障されていることを踏まえ、労使交渉に基づく自主的・主体的決定を尊重すること。
4. 臨時・非常勤職員の処遇改善に関わり、地方自治法改正、及び地方公務員へのパート労働法の趣旨が適用されるよう法整備を行うこと。
5.段階的定年延長に関わって、地方自治体においても、国に遅れないよう制度設計を進めること。それに当たって、地方公務員の実情を踏まえたものとすること。
6.地域の公共サービスの質の維持・向上をはかることに留意した定員管理を行うよう各地方自治体に求めること。
7.東日本大震災の被災地で勤務する地方公務員の労働安全衛生体制の充実を早急にはかること。
以上