2013年度公務労協情報 2 2013年10月29日
公務公共サービス労働組合協議会

「地方公務員の自律的労使関係制度に関する会議」が終了−10/26

 10月26日10時から、総務省において、第6回「地方公務員の自律的労使関係制度に関する会議」が開催された。会議では、過去5回の会議で検討した内容をとりまとめた「報告書(案)」の検討がなされた。

 最初に、事務局から「報告書(案)」の説明が行われた。「報告書(案)」は、(1)協約締結権を付与する意義、(2)協約締結権付与の便益・費用、(3)協約締結権を付与した場合の懸念に対する考え方、(4)公務における労働組合の役割、(5)消防職員への団結権・協約締結権付与の目的、(6)消防職員に団結権・協約締結権を付与する場合の懸念に対する考え方、の6つの論点について、労使当事者の意見などをもとに同会議としての考え方をまとめるという構成となっている。

 6つの論点のまとめは、概ね以下の通りとなっている。

(1)協約締結権を付与する意義
 勤務条件について、労使が交渉して決定していく制度を構築することにより、労使が共同して組織全体のパフォーマンスを向上させていくことが考えられる。同時に労使関係の透明性を確保する仕組みを措置することにより、住民サービスの向上に資することが重要である。
 なお、協約締結権が憲法で保障された労働者の基本的人権の問題でもあることも十分に認識しておくべきである。現在の労使関係は、労使間の対話が中心となっているのが一般的であり、労働基本権の制約の背景も変わってきている。
 また、これまでの間、地方自治体では人事委員会勧告以上に給与を削減する動きがみられるなど、改めて給与勧告の意義や役割が問われていることにも留意すべきである。

(2)協約締結権付与の便益・費用
 地域の行政サービスに対してどのような影響を与えるのか、またその便益が社会全体にとって便益といえるのかという観点からとらえることが必要である。協約締結権付与の便益としては「意義」として理念的にとらえられるものの他、労使関係の安定に資するという具体的な便益もあげられる。
 一方、「費用」としては、交渉のための時間コストと交渉不調に至った場合の調整コストがあげられるが、交渉時間や紛争調整は合意実現の努力を行うためのものであり、このようなコストを当事者が惜しむべきものではなく、コストの面のみからとらえるべきものではない。なお、「費用」は労使関係が成熟していくことにより変わり得る。

(3)協約締結権を付与した場合の懸念に対する考え方
 「公務員優遇」との批判に対する懸念については、誤解を解くべきである。次に人件費が増嵩するという懸念については、勤務条件条例主義は堅持することとされ、議会の関与が残るため、必ずしも人件費が増嵩するものではないと考える。
 労使が対抗・緊張の関係となる可能性が高いという懸念については、ヒアリング等を踏まえると、地方公共団体においては、現在、労使間の問題は交渉・話し合いで平和裏に解決できる状況が概ね定着しており、協約締結権を付与したからといって、大きく変わるようなことは考えにくい。
 行政コストが増大するとの懸念については、最終的には議会の議決が必要であること、人事委員会による民間給与の調査・公表の仕組みを存続させること等の制度によって、コストを抑制することは十分に可能と考える。
 一方、地方公共団体が新たな制度への移行に不安を感じることは理解できるものである。

(4)公務における労働組合の役割
 労使関係は対決か協調かという関係ではなく、相互補完的な関係であり、公務の労使関係においても共に行政サービスを提供するパートナーとして位置づけていくべきである。

(5)消防職員への団結権・協約締結権付与の目的
 消防職員の団結権については、これまで全国の全ての消防本部において消防職員委員会制度が設けられ、職員間での意思疎通を図る取組が積み重ねられてきている。またILOから消防職員の団結権を巡り指摘が続けられており、多くの国で消防職員に労働基本権が付与されている。
 消防職員に協約締結権を付与することによって、他の一般職と同様、自らの代表者を参画させることが、職員の意欲と能力の向上、優秀な人材の確保、ひいては組織全体のパフォーマンスの向上に資するものと考える。

(6)消防職員に団結権・協約締結権を付与する場合の懸念に対する考え方
 「地方公務員の新たな労使関係制度の考え方について」(平成24年3月21日)において、@必要な指揮命令系統の確保、消防団との連携及び住民からの信頼に影響を与えることは考えにくいのではないか、A団結権の付与が直接の原因となり、職場内の信頼関係が損なわれることは考えにくいのではないか、B団結権の付与が直ちに他の機関との連携に支障をきたすとは考えられないのではないか、としている。


 事務局からの説明の後、各委員から「報告書(案)」に対する意見が出され、それら意見を反映させることを確認のうえ、座長に最終の報告書のとりまとめを一任して会議を終了した。