公務員連絡会書記長クラス交渉委員は、8月2日11時から、2013年人勧期要求をめぐり古屋人事院給与局長と2度目の交渉を行った。
冒頭、吉澤事務局長が「本日は給与局長と最後の交渉になる。7月30日の交渉では、較差、一時金について具体的状況をいえる段階にないという回答であった。これまでの議論を踏まえ、現段階の検討状況を回答願いたい」と求めたのに対し、古屋局長は以下の通り答えた。
1.勧告日について
勧告日は、来週の後半で調整中である。具体的な日程は、事務総長会見の際にお伝えすることができると思われる。
2.官民較差等について
(1) 官民較差と月例給について
勧告の前提となる官民比較については、給与減額支給措置による減額前の給与額に基づき行う予定である。これは、給与減額支給措置が、国公法第28条に基づく民間準拠による給与水準の改定とは別に東日本大震災という未曾有の国難に対処するため、本年度末までの間、臨時特例として行われているものであることを踏まえたものである。
官民較差については、現在、最終的な詰めを行っているところであり、具体的状況を言える段階ではないが、今年の民間企業の春季賃金改定状況は、全体としてみると昨年と比べほぼ横ばいの状況であることから、較差は小さいものとなるのではないかと思われる。
(2) 特別給について
特別給については、最終的な結果を言える段階ではない。まだ、何とも言えないが、民間企業における特別給の支給状況をみると、あまり変化がないのではないかと思われる。
3.本年の勧告時の報告について
前回の会見では、本年の勧告時の報告において、国家公務員の給与制度の総合的な見直しの検討表明を行う予定であることを申し上げ、その総合的見直しの必要性と主な課題についてお示ししたところであるが、本日は、その後の検討結果を踏まえ、主な課題の内容について、もう少し詳しくご説明申し上げる。
改めて主な課題を整理してご説明すれば次のとおり。
(1) 組織形態の変化への対応
民間企業の組織のフラット化等組織形態の変化への対応として、部長、課長、係長等の間に位置付けられる従業員について、来年から官民の給与比較の対象とする方向で、その具体化について検討する。
(2) 地域間の給与配分の在り方
地域の公務員給与については、東京では民間賃金が高いが、民間賃金の低い地域を中心に依然として高いのではないかとの指摘がある。
昨年、地域ブロック別を単位とした官民較差で最も低い地域の較差と全国の較差との率の差をお示ししたが、政令市等の大都市部を含まない地域に着目した官民の給与差で見れば、それより大きな差が生じている状況にある。
そのため、人事院としては、地域における官民給与の実情を踏まえ、適正な給与配分を確保する観点から、更なる給与配分の見直しについて検討することとしたいと考えている。
なお、民間賃金の低い地域の官民給与の較差と全国の較差の率の差については、勧告時の報告で明らかにする予定である。
(3) 世代間の給与配分の在り方
50歳台後半層の公務員の給与水準については、これまでも様々な措置・取組を行ってきたところであるが、給与構造改革における俸給水準の引下げに伴う経過措置が平成26年3月末に廃止された後も、依然として官民の給与差は相当程度残るものと想定される。
そのため、世代間の給与配分を更に適正化する観点から、民間賃金の動向を踏まえ、地域間の給与配分の見直しと併せて、給与カーブの見直しに向けた必要な措置について検討する。
(4) 職務や勤務実績に応じた給与
@ 勤務実績に応じた給与については、人事評価を適切に実施し、その結果を昇給、勤勉手当に反映していくことが肝要である。人事評価の結果の反映については、勤務実績に応じて、実際、どの程度、差を付けていくのが適当であるのか、様々な議論があるところであり、昇給の効果の在り方等について検討する。
A 行政職俸給表(二)が適用される自動車運転手や守衛などについては民間では業務委託等が進み、勤務先となる企業における直接雇用者は少なくなっている中で、常勤従業員であっても直接雇用者と業務委託等による従事者の間には大きな給与差が生じている。
公務においても、今後、業務委託等によることが可能な部署においては、行政職俸給表(二)職員の削減がより一層進められることが必要である。また、行政職俸給表(二)の給与水準については、直接雇用が必要と認められる業務を担当する職員を念頭に、民間の水準を考慮した見直しを検討する必要がある。
B そのほか、公務の勤務実態や民間の手当の状況等を踏まえ、諸手当の在り方についても必要な検討を行う。
主要な課題としては、今、御説明したとおりであるが、これらの諸課題を中心として、給与制度の在り方について総合的に検討を進め、早急に結論を得ることとしたいと考えている。なお、これらの課題の検討に当たっては、職員団体や各府省等の意見も聞きながら進めて参る所存である。
回答に対し吉澤事務局長は、次の通り局長の見解を質した。
(1) 月例給について、民間の状況は、全体として昨年とほぼ横ばいという回答であったが、民間の状況は変化なしという認識でよいか。
また、本年の国公実態については、行(一)職員の平均年齢の上昇が緩和されたことで、平均給与額の伸びは昨年と比べ多少抑えられていると考えてよいか。
(2) 民間水準はほぼ変化がなく、国公実態の伸びは多少なりとも昨年を下回っているということになれば、「較差は小さい」というのは一般論か。
(3) 較差を踏まえた具体的な措置について、昨年は給与臨時特例という大きな削減をやっていることと、較差が小さいという観点から改定なしということだったが、その環境の変化はあるか。
(4) 一時金について、民間状況はあまり変化がないとの回答だったが、本年の民間の支給割合はどうか。前回も申し上げたが、昨年の一時金の実支給月数は3.56月に相当しているという環境は本年も全く変化ないと認識している。そのことを踏まえて、最終的に判断すると思うが、如何。
これに対し古屋局長は、次の通り答えた。
(1) 月例給について、民間の状況は変化なしという認識でよい。国公実態の平均年齢は、額の上昇としては多少抑えられている。
(2) 冒頭の回答以上に申し上げられる状況に至っていない。
(3) 基本的には昨年と同じ環境だ。
(4) 一時金は昨年よりも落ちていないかもしれない。これも、同様の環境での対応となる。
続いて、吉澤事務局長は給与制度の総合的な見直しについて、「30日の交渉の際に「給与構造改革に関する勧告から10年近くが経過」という回答があったが、われわれからすれば、完成してからわずか2年少しではないかというのが率直な問題意識で、なぜこの時点の見直し表明なのか。客観的に、なぜ見直しの検討表明をするのか明らかにされたい」と追及した。
これに対し、古屋局長は以下の通り回答した。
(1) 背景には、給与構造改革以降も民間が高齢者層が増えて給与体系が変わってきたことがあり、それを踏まえ国家公務員について見直しをせざるを得ないということがある。
(2) 地域の問題も依然として、「地方の公務員の給与が高いのではないか」という意見が社会的に多い。給与構造改革の時は、地域・ブロック別の比較を行い、昨年の報告で申し上げたとおりで検証は終わった。しかし、それでも批判が多いのは、例えばブロック別で比較を行っても、政令市等が入っていて給与が高い地域に国家公務員が多く在職しているという事情があって、低い地域を中心に「公務員給与は高い」という批判がある。そのため、比較の仕方を少し変えなければならない。政令市等を除いた地域の比較をしてみると、やはり差が大きいので、見方を変えてもう一度議論させてもらえればと思う。そのようなことがないと国民の理解がなかなか得られない。
(3) 10年経過したからというよりは、常に変化が進んできている。われわれとしては、2年前に給与構造改革が終わったからやらなくていいということではないと考えている。
これを受けて、吉澤事務局長はさらに次の通り追及した。
(1) これまでも給与カーブについて議論してきたが、そもそもの話として、民賃・生計費・仕事という大きく3つの要素を前提にすれば、給与カーブを民間とぴったり重ねることは不合理であり、公務における独自性について社会的に理解を求めていくべき。人事院とわれわれで「こうあるべきだ」という意思の疎通があって、その上でどうするかということでないと、本末転倒になる。
(2) 地域の問題も、国家公務員のステータスからすれば、全国展開をしている民間企業に合わせるべき。今の地域給の在り方そのもの自体にいかがなものかというのが基本的な立場だ。
(3) 給与制度の総合的な見直しは、較差の問題ではなく、トータルとしての配分の変更という理解でよいか。人事院主体の給与制度全般のニュートラルな検討ということでよいか。
これに対し、古屋局長は以下のとおり答えた。
(1) 公務の任用実態は民間と違って60歳まで昇任を含めて行われる。民間の方は55歳定年から移行したような背景を持っているので、役降りをしたり、出向で賃金水準を下げることがある。公務の方が民間のようにできるかといえば、任用実態を考えればそうはいかない。逆にそういう中で今後どうしていくのか、総体としては水準を合わせていくとしても、大きく民間と違うとなると問題なので、全体として考えていく必要がある。その中でも地域間・世代間も含めて、バランスを考えていかなければならない。問題意識は同じではないかと思う。
(2) 全国ベースで展開している国家公務員という話は、強く意識しているので、今後議論させてもらいたい。
(3) トータルとしての配分の変更という理解でよい。人事院主体の問題の検討である。
これに対し、吉澤事務局長は「組織に持ち帰って考えなければならない大きな問題だ。改めて必要性があるかどうかも含めて、しっかり議論させてもらうことを前提として、今日の回答や報告は、あくまでも人事院側の検討素材と認識しておく。仮に今後の議論となった場合には、拙速にならず、真摯な交渉・協議・合意という姿勢を明確にしてほしい」と要求したところ、古屋局長は「十分意見交換しながら成案を得たいと考えている」と回答した。
最後に吉澤事務局長は、「要求からすると、まだまだ納得いく回答になっていない。最終の回答交渉に向け、ぎりぎりまで要求が実現できるように検討していただきたい」と強く求め、本日の交渉を締めくくった。
以上