2013年度公務労協情報 34 2013年9月5日
公務公共サービス労働組合協議会

独立行政法人改革に関して行革推進本部事務局と交渉−9/4
−年末に向けた「検討」について、節目毎の交渉・協議と合意に基づく対応を強く要請−

 公務労協は9月4日、政府が6月14日に閣議決定した「経済財政運営と改革の基本方針」において、「独立行法人改革については、2015年4月からの改革実施を目指して、必要な法制上の措置を早期に講ずるものとする」としたことについて、行革推進本部事務局と交渉を行った。
 公務労協から花村副事務局長をはじめ、該当組織書記長・担当者らが参加、行革推進本部事務局からは市川事務局次長らが対応した。

 冒頭、花村副事務局長が独立行政法人改革に関する要求書(別紙)を手交し、その主旨を説明したのに対し、市川次長は「年末に向けて個別法人の組織見直しを進めるとともに、中間的整理を踏まえた制度改正の具体的な設計を行う。いただいた御意見を参考に、独法制度本来の趣旨に則った見直しを進め、職員が誇りを持って職務にあたっていただけるよう配慮したい」と述べた上で、以下の通り回答した。

(1) 独立行政法人改革について、今後も皆さんからの意見を伺いつつ、検討の参考にさせていただきたい。
(2) 事務・事業及び法人の廃止・民営化の「削減ありき」という考え方は採っていない。無理矢理、数合わせのための削減の姿勢で臨んではいない。
(3) 6月5日に出された「独立行政法人改革に関する中間とりまとめ」は、「独法制度創設時に想定された自主的・裁量的な業務運営の仕組みや法人の主体的な経営努力を促進するインセンティブがきちんと機能し、独法が期待される政策実施機能を十分に発揮できるようにする」という考えの下で制度改正を行うことが1つのポイントとなっている。
(4) 賃金・労働条件については、要求書でいただいた話も参考にしつつ、中間とりまとめの内容を踏まえて、今回見直す独法通則法をどういう書きぶりにするのがいいのか、考えていきたい。
(5) 雇用についても、今後の検討において、しっかり見ていきたい。
(6) 過去の閣議決定(2007年や2012年等)は凍結されているものだが、今回の独法改革の検討に当たっては、こうした過去の見直しも参考にして検討することとしている。
(7) 今回の「中間とりまとめ」でも、業務における法人の自主性ということは明記をし、主務大臣が目標を設定して評価をするという流れも明記してある。もちろん主務大臣自身が、法人のことをよく知ることは重要なことである。
 一方で、主務大臣と法人とが馴れ合っていると見られてしまっては、法人にとっても、主務府省にとってもいいことではない。総務大臣があらかじめ第三者機関の意見を聞いた上で、目標設定や業績評価に関する指針を策定するということも、「中間とりまとめ」の中で記載されている。こうしたものを踏まえ、制度設計をしていきたい。
(8) 基本的には現行の通則法においても、職員の給与の支給基準は法人の業績を考慮するなどとなっているが、具体的な額は法人が責任を持って決めている。今回の見直しでは、こうした枠組みを前提としながら、さらにより柔軟な給与制度で、事務・事業の特性に応じた給与制度を導入することを促すことが目的で、法人の自主性や労使関係を否定するものではない。
(9) 各府省の所管を超えた統合をしても、所管省庁の組織がそのままでは結果的に非効率になるという指摘もあったが、一方で所管が絶対的なしばりになってしまうのも、柔軟な組織見直しを阻害することになる。両面を踏まえながら、検討していきたい。
(10) 研究開発を行う独法について、主務大臣が最終的な責任を負うのは変わりないが、総合科学技術会議がどれだけ関与するのかは、今後、研究開発法人にかかる制度というものを具体的に考える中で検討していきたい。

 これに対し公務労協側は、次の通り、現場の現状を訴えた。
○ 印刷局や造幣局の事業は、国の責任で行われてきた。また、私たちは、国民の皆さんの信頼、信用を得ていくことが責務と考えている。単年度と長期の事業を検討されているようだが、開発の周期は自ら作り出していくことはできなく、研究・技術伝承等には時間が必要だ。中長期的なスパンで改めて考えていただきたい。
○ 私たちの傘下組合は特殊法人時代からの長い歴史の中で労使関係を築いてきている。この間のさまざまな見直しにおいては、その都度、努力をしてサービスの水準を保ってきた。今後の見直しの中で、無理な組織の改廃・統合や人員削減等によって、現場に負荷がかかり、国民へのサービスの質が低下することが絶対あってはならないと考えている。
○ 研究開発独法は、基礎研究では8〜10年かかるなどスパンが長い。その法人に応じた目標設定をお願いしたい。
○ 10数年来、改革のための見直し・検討が続き、落ち着いて仕事ができない状況が続いている。
○ 今後ヒアリングを行う予定はあるか。また、スケジュールはどうなっているのか。

 これらに対し、市川次長は以下の通り回答した。
○ 組織の見直しを中心に、今年の秋以降政府としてヒアリングを行うことになるとと思う。検討作業は年末までに終えなければいけないが、詳細なヒアリングのスケジュールは検討中である。
 平成27年4月から改革を実施するためには、遅くとも来年の通常国会には独法通則法改正案と整備法を提出する必要がある。なお、組織見直しに関する個別法についても早くできればそれに越したことはないが、見直しが大きいものなどは時間がかかる可能性がある。 ○ 独法が当初の期待されていた政策実施機関として国民にサービスを提供し、十分に責任を果たせるようにする視点は非常に大事だと思っている。
○ 「独法が独法として有効に機能するための制度・組織の見直し」を行っていくことが重要だが、それとともに、公共サービスに従事するものの自浄作用として時代の流れによって官でやる必要性の低くなった業務を抱え込んでいないかなどをよく検討し、「行政の効率性を高めるための改革」も両立していかなければならないと思っている。
○ 「改革疲れ」は私どもも承知している。改革の集大成としてぜひ年末に向けていい結論を出し、各法人、各役所が、国民のためにいい仕事ができるようにしたい。

 最後に、花村副事務局長は「年末に向けて、組織見直しなどを含む「最終とりまとめ」の検討と法案策定作業が進められる。今後とも、節目毎の交渉・協議と、合意に基づいて対応願いたい」と強く要請し、本日の交渉を締めくくった。


(別紙)要求書

2013年9月4日

行政改革担当大臣
 稲 田 朋 美 様

公務公共サービス労働組合協議会
議 長  加 藤 良 輔

独立行政法人改革に関する要求書


 日頃の、国政全般における貴職のご尽力に心から敬意を表します。
 さて、政府は、独立行政法人改革について、「行政改革推進会議における中間的整理を踏まえ、各法人の共通の規律を前提としつつ、各法人の事務・事業の特性を踏まえた制度を構築し、各法人に期待される政策実施機能を高めるべく、平成 27 年4月からの改革実施を目指して、必要な法制上の措置を早期に講ずるものとする」(「経済財政運営と改革の基本方針(6月14日閣議決定)」)とし、年末に向けて組織見直しなど検討を進めていくとしています。
 この改革は、国民生活を支える公共サービスのあり様と法人に勤務する職員の雇用・労働条件に直接影響を生じさせることとなります。
 つきましては、独立行政法人改革の検討と具体化に対し、下記事項の実現を強く要求します。



1.独立行政法人改革については、公務労協及び当該構成組織と十分な交渉・協議を行い、合意に基づいて対応すること。

2.政策と一体的に事務・事業を推進するための組織を維持することとし、「削減ありき」で事務・事業及び法人の廃止・民営化を行わないこと。

3.法人運営にあたっての自主性・主体性を確保すること。

4.賃金・労働条件は自律的労使関係のもとで決定するものであることに鑑み、独立行政法人通則法に則るものとすること。

5.法人組織の見直しや廃止によって雇用問題が生じる場合は、国が雇用の承継に責任を持つこと。

6.独立行政法人整理合理化計画(2007年12月24日閣議決定)と今次独立行政法人改革との関わりについて明らかにすること。

7.「独立行政法人改革に関する中間とりまとめ」を踏まえた要求事項
(1) 主務大臣が目標案又はその変更案を作成するにあたっては、独法制度創設の趣旨を十分踏まえ、法人の組織運営上の裁量・自主性に十分配慮すること。また、主務大臣が所管法人と十分意思疎通を図り、達成が十分可能な目標を定めることができるよう留意すること。

(2) 法人の業績評価にあたって外部有識者の意見を聞く仕組みを設けるなど、公平・公正な評価システムとすること。

(3) 職員の給与にかかる「業績評価を活用したより一層の信賞必罰の徹底」については、法人の自主性と労使関係を尊重すること。

(4) 法人運営が真に効率的に行われるために、同一類型に位置付けられた法人であっても各府省の所管を超えた統合は行わないこと。

(5) 研究開発法人の見直し検討にあたっては、主務省の政策との整合性、および、予算要求・目標設定・評価結果等が尊重されるよう、総合科学技術会議の関与は「助言」に止めること。

以上