政府は15日の持ち回り閣議で、「地方公務員法等の一部を改正する法律案」「地方公務員の労働関係に関する法律案」を決定し、同時に国会に提出された。
非現業地方公務員への労働協約締結権の付与、人事委員会勧告制度の廃止、消防職員への団結権の付与、などとなっている。
これに対し公務員連絡会地公部会は、次の通り「見解」を示した。
地方公務員制度改革二法案の閣議決定に対する見解
1.本日、政府は地方公務員制度改革二法案(以下、「地公改革二法案」という。)を閣議決定、国会提出した。法案の内容は、非現業地方公務員への労働協約締結権の付与、人事委員会勧告制度の廃止、消防職員への団結権の付与などである。
2.総務省は、2011年6月2日に「地方公務員の労使関係制度に係る基本的な考え方」を公表して以降、12月26日「地方公務員の労働基本権に関する論点」、2012年3月21日「地方公務員の新たな労使関係制度の考え方について」を示した。公務労協・連合は、民主党公務員制度改革・総人件費改革PTにおいて地方公務員制度改革の必要性と関係法案の早期閣議決定を強く訴える一方、地方公務員部会は総務省との間で交渉・協議を継続してきた。
5月11日、法案策定に向けた最終的な検討内容として「地方公務員制度改革について(素案)」(以下、「改革素案」という。)が示された。消防職員について、政府がはじめて団結権付与の姿勢を明確化したことはILO条約による国際労働基準をみたす制度改正という面から評価できるものであったが、中央協議システム、法律の施行時期、労働基準監督機関、自治体現業職員に関わる特例に課題を残すものであり、地方公務員部会は5月22日、これらの課題を中心とした意見書を総務省に提出した。一方、全国知事会、全国市長会、全国町村会、全国人事委員会連合会、全国消防長会、(財)日本消防協会等は、「反対」を決議・意見書等において明らかにした。
3.公務労協・連合は第180通常国会期において地方公務員の自律的労使関係制度に関わる法案の閣議決定をめざし、政府・民主党に対して強く働きかけてきたが、国会最終盤の8月31日の閣議において慮外にも川端総務大臣が「地方三団体の理解が得られていないため、通常国会への法案提出を断念し、次期臨時国会をめざす」という内容の発言を行い、法案提出は見送られることになった。
この発言を受け、総務省は、臨時国会への地公改革法案提出を視野に入れ、有識者で構成される「地方公務員の自律的労使関係制度に関する会議」を9月12日から10月26日まで開催し、11月5日に報告書をまとめた。公務労協は、9月28日の会議におけるヒアリングに応じ、2000年12月の行政改革大綱の閣議決定以降、膨大な時間と労力を注いで議論が積み重ねられており、当会議には、政府・政治の覚悟と決断を促すことを要請したい、10年以上にわたる多くの自治体での独自の給与削減に係る深刻な経緯を踏まえれば、地方三団体の反対の意向は、まったく理解できない、などを主張した。
4.11月12日の稲見総務大臣政務官交渉では、総務省から提案された地公改革法案は、@今年5月の「改革素案」を踏まえたものであること、A消防職員については、とくに地方三団体の反対が強かったことから、団結権を付与するが、協約締結権は付与しないこと、B法案を臨時国会に提出したいことが示された。
交渉では、中央協議システムの具体化等今後の対応に課題を残すことになった。しかし、@すでに国家公務員制度改革関連四法案の国会審議が進んでいること、A地方公務員においては給与の独自削減が長年にわたり常態化し、労働基本権制約の代償措置である人事委員会勧告制度が空洞化していること、B解散総選挙を焦点に臨時国会情勢が緊迫化していること等、民主党を中心とする政権の下で地公改革法案の閣議決定を何としても実現するため、地公部会として、政府側の提案を現時点での到達点ととらえ、了承した。
5.本日の閣議決定では、民主党政権のもとにおいて、政府が歴史上初めて消防職員に団結権を認めたことは評価できる。地公関連二法案は衆議院の解散により廃案とならざるを得ないが、公務員連絡会地方公務員部会は公務労協・連合とともに、引き続き労働基本権の回復をはじめとする民主的な公務員制度改革の実現に全力をあげることとする。
2012年11月15日
公務員連絡会地方公務員部会