公務員連絡会幹事クラス交渉委員は、12月20日、総務省人事・恩給局次長及び人事院職員団体審議官との交渉を実施し、11月26日に提出した2014年度の基本要求に対する回答を引き出した。回答はいずれも具体性がなく不満な内容に止まったが、公務員連絡会は、秋季闘争で解決がつかなかった課題については、春季生活闘争に引き継いでいくこととし、基本要求に関わる交渉・協議に区切りを付けることとした。
<総務省人事・恩給局次長との交渉経過>
総務省人事・恩給局の井波次長との交渉は、13時30分から総務省内で行われ、大塚副事務局長が11月26日の申入れに対する回答を求めたのに対し、井波次長は「この時期における私からの回答をさせていただく」として次の通り答えた。
一、給与に関わる事項
(1) 給与関係について、国家公務員の給与改定に当たっては、従来から、社会一般の情勢に適応させるとの原則の下、人事院勧告制度を尊重することが基本姿勢と考えている。
(2) 本年11月には、給与体系の抜本的改革について早急に具体的な措置を取りまとめるよう人事院に対し要請しているところであり、2014年の給与改定については、人事院勧告も踏まえ、国政全般の観点に立って総合的に検討を行った上で方針を決定していきたいと考えている。今後とも、皆様の意見を十分に伺っていく。
二、労働時間に関わる事項
(1) 労働時間等については、超過勤務の縮減は、職員の健康確保、士気の向上はもとより、ワークライフバランスの推進のために重要であると考えており、「国家公務員の労働時間短縮対策について」に基づき、一層の推進に努めているところだ。
(2) 行政コスト削減の観点から、事務の効率化に向けた管理職員のマネジメント強化を図る必要があると考えている。そこで総務省は、全省庁一斉の超過勤務縮減キャンペーンに取り組むほか、人事評価に当たり、超勤縮減等、コスト意識を持った効率的な業務運営が評価の対象とされるよう徹底を図るとともに、各府省の連絡会議において優良な取組み事例を共有する等を行っているところだ。引き続き、皆さんの意見も伺いながら、政府全体の超勤縮減に向けた取組みを推進していきたい。
三、福利厚生施策等に関わる事項
福利厚生について、心の健康づくり対策については、2010年度から管理職員を対象としたe-ラーニングによるメンタルヘルス講習を実施しており、本年度においては、これまでの「ラインケア」のほか「苦情対応」を加えるなど、その内容の拡充を図り、各府省の新任管理者等約1万人が受講したところだ。さらに、メンタルヘルス対策の予防の観点から自己診断シートの電子化及び各府省への提供も検討しているところだ。
四、雇用と年金の接続に関わる事項
(1) 雇用と年金の接続については、高年齢者のやる気と能力を引き出し、安心して生き生きと働いてもらうためにも、雇用と年金の接続を確実に図ることが重要と考えており、政府全体として、定年退職者の再任用を着実に推進していく。
(2) 再任用職員の給与等の生活水準に関する制度上の措置については、人事院における所要の検討を踏まえて、適切に対処していく。
(3) 雇用と年金の接続のために必要な定員の問題に関しては、ご指摘のような意見があったことについて、折に触れ、定員管理部局にも伝える。
五、非常勤職員制度の改善に関わる事項
(1) 非常勤職員については、本年3月に、期間業務職員制度を導入してから3年目を迎えたこともあり、人事管理官会議幹事会において、制度の趣旨を踏まえた適正な運用を行うよう各府省の人事担当者に周知を図ったところだ。
(2) 本年度末で3年を迎える期間業務職員が多いことが予想されるので、今年度中に人事管理官会議幹事会において、改めて制度の趣旨を踏まえた適正な運用を行うよう、周知を図りたいと考えている。
六、男女平等の公務職場実現に関わる事項
男女平等の公務職場実現については、男女双方が働きやすい勤務環境の整備及び女性国家公務員の採用・登用の拡大を図るため、「採用昇任等基本方針」や「人事管理運営方針」において、各府省に対し、その促進を要請しているところだ。前国会で配偶者同行休業法が成立したことも、環境整備として一助になるかと考えている。今後とも、意欲と能力のある女性国家公務員の採用・登用の拡大等に向けた取組みを政府全体として進めていく。
七、公務員制度改革に関わる事項
公務員制度改革について、自律的労使関係制度については、引き続き、内閣官房において、職員団体を含む関係者と意見交換を行っていくものと考えており、総務省としても必要な協力を行っていく。
八、人事評価制度に関わる事項
(1) 人事評価制度については、制度の適正かつ公正な実施と円滑な運用に資するため、評価者訓練を実施しているところだ。
(2) 制度・運用の改善等について検討するため、「人事評価に関する検討会」を開催しており、来年1月を目途に、検討会報告書を取りまとめられる予定だ。
(3) 今後とも、制度の趣旨が浸透するよう取組みを進める一方、皆様とも十分意見交換し、理解と納得を得られるよう努め、円滑かつ効果的に制度を運用していきたいと考えている。
九、早期退職募集制度に関わる事項
早期退職募集制度については、各府省において適正に運用がなされるよう人事・恩給局長通知を発出するなど指導するとともに、ホームページに制度の概要を掲載するなど周知に努めているところだ。引き続き、各府省等において、本制度の適正な運用がなされるよう取り組んでいく。
これに対して、公務員連絡会側は次の通り質した。
(1) 給与減額支給措置が3月に終了し、4月に消費税が引き上げられるという中で、「減額が終わる」ということが「給与を引上げる」という間違った報道がされた。そうではないということを総務省からも説明してほしい。
(2) 超勤縮減が重要な課題であるとの総務省の認識に変わりはないと受け止める。回答の中で「管理職員のマネジメント強化を図る」とあるが、「管理職員による」なのか、「管理職員に対する」なのか。
(3) メンタルヘルスについて、「相談対応」というのは具体的に誰がどうするということか。e-ラーニングで少し学んだからといって、「相談相手になりうる」とする対応は懸念が残るがどうか。
(4) 雇用と年金の接続について、ぜひとも着実に推進していただききたい。ところで、本年度の定年退職者の再任用の状況は把握しているのか。年金が退職後直ちには支給されない下で、職員の希望通り再任用となる見通しは立っているのか。
(5) 期間業務職員制度について、すでに行った適正な運用を行うことの周知と、今年度中に改めて行う周知の内容について、教えていただきたい。
(6) 期間業務職員制度導入3年目ということで、これら職員が担う業務のピークと職員自身の更新・公募手続きが重なって業務遂行上の問題を生じかねない府省があるとも聞いている。業務の円滑な運営はもとより、雇用の安定と処遇の改善に繋がる運用となるよう各府省を指導すべきだ。
(7) 人事評価は絶対評価となっているが、評価者が数合わせを行っている状況が見受けられる。絶対評価であることを各府省に徹底して欲しい。評価制度の見直しを行う場合、開始時期はいつになるのか。
(8) 各府省が行っている早期退職募集について、問題は生じていないか。
これに対して、井波次長らから次の通り回答があった。
(1) われわれも「下がっていたものが元に戻る」ということを言ってきており、引き続き、誤解のないようにしたい。
(2) 管理職員本人の意識を変えること、管理職員が部下の職員の超勤が続いているときにしっかりとマネジメントができること、という両方の意味がある。
(3) 「相談対応」は、管理職が職員から相談をうけた場合の対応の仕方をe-ラーニングやブロック毎に行う研修会の中で徹底させるもの。ご指摘の懸念についてはもっともだとだと考えるので、内容もしっかりとしたものとなるよう検討していきたい。
(4) 本年度の定年退職者の再任用については、現在、各府省でマッチング作業をしており、現時点ではその状況は把握していない。来年4月には人事院と共同調査を行い、各府省に確認することとしている。閣議決定で決まっていることなので、希望する者の再任用は着実に推進していきたい。
(5) 常勤職員との権衡、通勤手当の支給などの人事院通知が発出されているので、これを徹底するよう周知した。公募を行わない再採用は原則2回までだが、公募を行った結果改めて採用されることは妨げないこととされており、こうしたことを徹底するということだ。
(6) 業務の繁閑の支障にならないよう、適切に行うよう指導している。
(7) 検討会でも絶対評価であることを前提に議論がされている。いつから何をどうするかは決まっていないが、年度はともかく、開始月は評価期間にあわせて4月か10月になる。
(8) 必要な省庁では、早期退職募集制度の周知・募集を開始しているが、募集に対する応募状況は逐一把握していない。実施状況については、毎年度総務大臣が各府省の募集実施状況と認定者数を公表することになっている。引き続き各府省において適切な運用がなされるようにしていきたい。
さらに、公務員連絡会側から以下の要請を行った。
(1) 給与については、デフレから脱却し、日本経済が好循環するかどうかは賃上げに掛かっている。ほとんどの民間組合がベアを要求することになるし、公務部内の組合員も賃上げを強く求めている。消費者物価が足元で1%上がっており、4月から消費税が上がる中、国民の期待に応える公務公共サービスを提供していくためには、実感できる労働条件の改善が必要だ。総務省としても、組合員の思いを受け止めて、賃上げに向けて積極的な姿勢で対応してもらいたい。
(2) 給与制度の総合的見直しについて、政府に要請したとのことであるが、連絡会としては人事院との間で議論をしていくことにしているところ。全般的な話としてはともかく「地域や高齢層は下げろ」というような具体的な要請はやめてもらいたい。
(3) 実際に超勤時間が短くなるかどうかが問題だ。補正予算も予定されており、また超勤が増えるのかという心配の種は尽きないが、本年の組合員調査でも事前の超勤命令を徹底すれば、相当縮減できることがあきらかになっている。組合としても取り組むが、総務省としても各府省に徹底してもらいたい。
(4) 心の健康づくりについて、まずは管理職研修の徹底だが、職場全体で認識を共有し、働きやすい職場作りが必要だ。日々仕事に追われ、余裕が一切ないということでは人間関係もぎすぎすするし、メンタル不調の原因になる。そういう意味でも必要な要員はきちんと確保してもらいたい。セルフケアについては、実施に移していただきたい。
(5) 雇用と年金の接続について、当面は、民間企業と同様に、使用者の責任において、再任用制度の下で確実な接続と生活水準を維持できる給与を確保していただきたい。定年延長については回答がなかったが、年金支給開始年齢が62歳となるときまでには定年延長を実現するよう具体的な対応を求めておく。
(6) 期間業務職員制度については、今後、これまで3年間の運用実態をきちんと検証し、改善すべきところは直してもらいたい。
(7) 公務員制度改革については、基本法12条及び附則2条がある限り、自律的労使関係制度を措置することが政府の責務だ。われわれと議論を行い、できるだけ早く具体案を示すよう、総務省としても努力していただきたい。
(8) 人事評価制度については、公平・公正の確保と職員の納得が何よりも重要だ。検討会報告への対応を含め、公務員連絡会と十分議論し、合意の下に運営して頂くことを確認しておく。
最後に、大塚副事務局長が「来年度の賃金・労働条件の改善に最大限努力することを求めたが、本日の回答の中身は抽象的で、具体性が無く不満だ。これから政府予算案の決定などがあり、年明け以降、春季生活闘争も始まるので、来年2月に改めて春季要求書を提出する。公務員の賃金・労働条件の改善のみならず、人事行政全般の改善に向け、引き続き努力することを強く求めておく」として、基本要求をめぐる交渉には一区切りをつけた。
<人事院職員団体審議官交渉の経過>
人事院の平野職員団体審議官との交渉は、14時25分から行われた。
冒頭、公務員連絡会側が、11月26日の申入れに対する回答を求めたのに対し、審議官は「今後、引き続き検討すべき事項が多いが、主な要求事項について、現時点における検討状況等について申し上げる」として次の通り人事院の現段階の見解を示した。
一、給与に関する事項
1.給与制度の総合的見直しについて
給与制度の総合的見直しについては、職員団体の皆さんの意見も聞きながら、検討を進めて参りたいと考えている。
2.給与水準及び体系等について
(1) 公務員給与の改定については、情勢適応の原則に基づき、民間準拠により適正な給与水準を確保するという基本姿勢に立った上で、職員団体の皆さんの意見も聞きながら適切に対処していきたいと考えている。
(2) 官民の給与の比較に関しては、平成18年の勧告において、民間給与をより適正に公務の給与に反映させるため、民間給与との比較方法について見直しを実施し、これにより、公務と民間で同種・同等の業務を行っている者同士を比較するという民間準拠方式の下で、民間企業従業員の給与をより広く把握し反映させることができたものと考えている。したがって、比較対象企業規模については現行の取扱いが適当と考えている。
なお、官民比較の対象となる従業員の見直しについては、職員団体の意見も聞きながら、検討を進めて参りたい。
3.諸手当の見直し・検討について
諸手当については、民間の状況、公務の実態等を踏まえ、総合的に検討して参りたい。検討に当たっては職員団体の意見も聞きながら行っていきたい。
なお、住居手当については、宿舎使用料が改定され平均使用料が上昇した場合、その状況を参考としつつ、民間の同種手当の状況をはじめ、その他の事情も総合的に勘案した上で、住居手当の見直しの必要性等について検討することになる。
二、労働時間、休暇、休業に関する事項
(1) 超過勤務の縮減は、職員の健康保持、労働意欲や活力の維持、有為の人材の確保等の観点からも重要な課題である。人事院としては今後とも、各府省において管理職員による勤務時間管理を徹底するとともに、業務の改善・効率化などの取組を推進することが肝要と考えており、引き続き関係機関と連携して取り組んで参りたい。
(2) 今夏の報告文の中で、育児や介護に責任を有する職員がそれぞれの事情やニーズに応じて継続的に勤務することができるような選択肢を更に拡充するため、フレックスタイム制、短時間勤務制の適用範囲の拡大など多様で弾力的な勤務時間制度等の整備について、検討を進めることなどを報告した。現段階での検討の状況は、本年の人事院の民間企業の勤務条件制度等調査において、育児や介護のための労働時間の短縮制度の状況について調査を実施しており、また、職員に対しては、「介護のための両立支援制度に関するアンケート調査」及び「介護に関する意識アンケート調査」を実施しているところであることから、今後これらの調査及びアンケート結果を集計し、分析を進めていくとともに、各府省における人事管理や公務運営への影響の検証等を行っていきたいと考えている。
四、雇用と年金の接続に関する事項
雇用と年金の接続に関しては、人事院としては、年金支給開始年齢が62歳に引き上げられる平成28年度までには、平成26年度からの再任用の運用状況を随時検証しつつ、本院の意見の申出に基づく段階的な定年の引上げを含め、再検討がなされる必要があるものと考えている。
なお、再任用職員の給与制度上の措置については、平成26年の職種別民間給与実態調査において公的年金が全く支給されない再雇用者の給与の具体的な実態を把握するとともに、平成26年4月における再任用職員の職務や働き方等の各府省の人事運用の実態等を踏まえ、必要な検討を進めることとしたい。
五、福利厚生施策等に関する事項
(1) 心の健康づくり対策については、心の健康問題に対する職員の意識を高めた上で、心の不調者の発生防止を目指す「1次予防」、早期発見・早期対応を目指す「2次予防」及び円滑な職場復帰と再発防止を目指す「3次予防」を総合的に進めていくことが必要であり、今後は1次予防にもより一層力を入れていくことが適当であると考えているところ。人事院としては、昨年10月には、過度のストレスがなく、いきいきとした職場を実現し、職員のメンタルヘルスの向上を図ることを目的とする「心の健康づくりのための職場環境改善」の取組についての職員福祉局長通知を発出し、本年度から一部の本府省で取組が始まったところである。今後、更なる取組を進めていきたいと考えている。
(2) いわゆるパワー・ハラスメントについては、人事院としても、その防止に向けて、「パワー・ハラスメントを起こさないために注意すべき言動例」(平成22年1月)の作成、公務における実態や職員の問題意識等を把握するため、パワー・ハラスメントに関するアンケート調査(平成23年7月)の実施等により、職員の問題意識の向上や各府省への情報提供などの取組を行ってきた。
今後、公務における実態とともに、平成24年3月の厚生労働省の「職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議における提言(職場のパワー・ハラスメントの予防・解決に向けた提言)」やパワハラに関する裁判例など社会的な動向等にも留意しつつ、パワハラ防止のための施策等について検討して参りたい。
(3) セクシュアル・ハラスメントについては、各府省を対象にセクハラ防止担当者会議やセクハラ相談員セミナーの開催、セクハラ防止研修をはじめとする各種研修の実施などを行うとともに、セクハラ防止週間を毎年設定し、シンポジウム及び講演会の開催、パンフレットや意識啓発用電子媒体資料の配付、職員に対する意識調査の実施等を通して、セクハラ防止についての職員の意識啓発等に取り組んできているもの。なお、意識調査については本年実施し、必要な集計を行っている。
セクハラは、職員の尊厳や人権を侵害する行為であり、人事院としてはその防止を図るため、引き続き取組を進めて参りたい。
六、非常勤職員制度等の改善に関する事項
非常勤職員の任用、勤務条件等については、その適切な処遇等を確保するため、法律、人事院規則等に規定しており、期間業務職員、育児休業など、これまで職員団体の意見も聞きながら見直しを行ってきたところである。今後とも皆さんの意見も聞きつつ、必要な見直しを行っていきたい。
七、男女平等の公務職場実現に関する事項
人事院は、公務における男女共同参画の実現を目指して、第3次男女共同参画計画(平成22年12月17日閣議決定)を踏まえ、「女性国家公務員の採用・登用の拡大等に関する指針」を平成27年度までの5年間に係るものとして改定し、平成23年1月に各府省に通知した。各府省においては、この指針に基づき、平成27年度までの目標や目標達成のための具体的取組等を定めた「女性職員の採用・登用拡大計画」を策定し、現在はこの計画に基づき取組を進めている。人事院としては引き続き、各府省の取組をフォローアップするとともに、公務における男女共同参画の推進が図られるよう、役割を果たして参りたい。
これらの回答に対し、公務員連絡会側は、次の通り人事院の考えを質すとともに重ねての要請を行った。
(1) 給与制度の総合的見直しについては、@十分な交渉・協議と合意、A地域間配分の見直し、地域給与の引下げは反対、B世代間配分については見直しの必要性を含めた幅広い議論、ということが連絡会の要求であることを重ねて表明する。
(2) 2014年度の給与については、組合員も賃上げを強く求めている。国民の期待に応える公務公共サービスを提供していくためには、実感できる労働条件の改善が必要だ。人事院としても、組合員の思いを受け止めて、賃上げに向けて積極的な姿勢で対応してもらいたい。
(3) 官民比較方法については、当面、現行の比較企業規模とラスパイレス比較を堅持すると受け止める。
調査対象従業員の見直しについては、今後、議論をさせていただく。
諸手当については、住居手当は当然見直してもらいたいと考えているが、その他の手当については較差も踏まえつつ、勧告期に向けて十分な議論をさせてもらう。
(4) 超勤縮減の問題については、実際に超勤時間が短くなるかどうかに尽きる。少なくとも全員が360時間以内に収まることを目標に、まずは720時間以上の超勤は禁止すべきだ。本年の組合員調査でも事前の超勤命令を徹底すれば、相当縮減できることがあきらかになっている。組合としても取り組むが、人事院としても各府省に徹底してもらいたい。
あくまでも360時間までが原則で、720時間は例外である。実態として全職場に720時間が適用している府省もあり、問題だ。人事院としてまずは実態を把握すべきではないか。
(5) 多様で弾力的な勤務時間制度について、とくに介護については多くの高齢職員が現実的に直面する課題であり、短時間勤務制度や休業制度について、公務が率先して導入してもらいたい。
(6) 雇用と年金の接続について、本年度の定年退職者の再任用について、職員の希望通り再任用となる見通しは立っているのか。仮に、問題を生じている府省があれば、人事院として、職員の利益を擁護する観点から、積極的に対応してもらいたい。また、年金支給開始年齢が62歳となるときまでには定年延長を実現してもらいたい。意見は申出ているというだけでなく何らか対応が必要ではないか。
(7) 心の健康づくりについては、ワークライフバランスの確保として、まずは超勤縮減が前提であり、加えて職場全体で認識を共有し、働きやすい職場を作っていくことが重要だ。職場環境改善の取組みも多くの府省に広げてもらいたい。
(8) セクハラ、パワハラは被害職員本人にとって深刻な問題であるだけでなく、職場全体の雰囲気や公務能率にも打撃を与える。この間の調査結果等を踏まえ、具体的な防止策を検討すべきだ。
(9) 期間業務職員制度について、3年間の運用実態をきちんと検証し、制度を優先するのではなくて業務や雇用の実態に基づき、円滑な業務遂行を前提として、一層の雇用の安定と処遇の改善を図ってもらいたい。一部府省で業務のピークと公募が重なって、問題が生じかねないと聞いている。人事院として働きかけはしないのか。
(10) 男性の育児休業取得について回答がなかったが、調査結果も踏まえながら、しっかりと取り組んでもらいたい。
これに対し、人事院側は次の通り答えた。
(1) 諸手当について、住居手当は今回の宿舎使用料の引上げもあり、検討の俎上に上がるが、これから民間の状況や公務の実態も踏まえ、手当全体としてどうしていくのかを判断していくことになる。
(2) 超勤に関する職場の実態については、承知した。具体的な話をいただいたので、今後の検討に当たり留意していきたい。
(3) 再任用については、今、まさに各省で作業を進めていると承知している。まだ具体的にどのような結果になっていくのかはまだ把握していない。給与の問題については、人事院としては来年4月時点での再任用制度の運用状態が、各省でどのようになされているのか、関心を持っている。動向を注視していく。
(4) 定年延長について、改めて意見の申出をするということまで考えていない。来年4月以降に現実に状況等の変化があれば、それなりの対応が必要になってくる。
(5) セクハラ、パワハラが職場に及ぼす悪影響は認識している。アンケート調査を行っているので、そういったものを分析する中で、どういった対応が必要であるか検討を進めていきたい。
(6) 期間業務職員の業務のピークと公募が重なる問題については、当該の省とやり取りをしていると承知している。どういった形で整理がつくかは、協議中である。
以上の議論を踏まえ、大塚副事務局長が「来年度の賃金・労働条件の改善に最大限努力していくことを求めたが、本日の回答の中身は抽象的で具体性がなく不満だ。これから政府予算案の決定などがあり、年明け以降、春季生活闘争も始まるので、本日の回答も踏まえ、来年2月に改めて春季要求書を提出する。賃金・労働条件が改善され、組合員が意欲を持って勤務できるよう、引き続き努力することを強く求めておく」と要望し、本日の交渉を締めくくった。
以上