公務労協・国家公務員関係部会は12月26日、政府が24日に閣議決定した「独立行政法人改革等に関する基本的な方針」について、行革推進本部事務局と交渉を行った。
公務労協から花村国家公務員関係部会事務局長をはじめ、該当組織担当者らが参加、行革推進本部事務局からは市川事務局次長らが対応した。
冒頭、市川次長が「独立行政法人改革等に関する基本的な方針について(概要)」(平成25年12月行革推進本部事務局)を説明したのに対し、国家公務員関係部会側は以下の通り質した。
(1) 「T 独立行政法人改革等の基本的な方向性」で、「経済成長や国民生活の向上に最大限貢献」とある。現行通則法の目的は「国民生活の安定及び社会経済の健全な発展に資すること」であるが、「目的」を変えるということか。
(2) 「U 独立行政法人制度の見直し」の「2.(2)目標設定及び業績評価の在り方」について、総務大臣が策定する目標設定及び業績評価に関する政府統一的な指針(基準や標語等)は大枠の表現にとどめてほしい。
(3) 「U 独立行政法人制度の見直し」の「4.(1)財務運営の適正化、説明責任・透明性の向上、経営努力の促進」で、「中期目標において主務大臣が指示する効率化目標」について、財務省主導とならないようにすべきではないか。
(4) 「U 独立行政法人制度の見直し」の「4.財政規律、報酬・給与等の見直し、調達の合理化及び情報公開の充実」について、賃金・労働条件は自律的労使関係のもとで決定するものであることに鑑み、現行独立行政法人通則法に則るものとしてもらいたい。
(5) 「W その他新たな独立行政法人制度及び組織への移行に当たっての措置等」について、新たな独立行政法人制度及び組織への移行に当たって雇用問題が生じる場合は、国が雇用の承継に責任を持ってもらいたい。
政労連は、特殊法人時代から「雇用は国が責任を持つべき」ということを主張してきた。今回の改革にあたっても、特殊法人改革の際に国として方針化された『横断的雇用の考え方』の経緯を踏まえ責任をもって対応すべきだ。雇用に関してはクビ切りを出さないということを重ねてお願いしたい。
任期制がそぐわないような、基礎的で長期的な研究を独法ではやっているケースがある。そういったところで、任期制がいつの間にか一般化されている実態がある。悪い意味で一般化しないでほしい。
(6) 改革の実施時期が記載されているが、今回の改革で統合が予定されている法人で、平成27年度で中期目標期間が終了する。「平成27年4月以降可能な限り早期の改革実施を目指して」と書いてあるが、中期目標期間の最中なので、平成28年度から統合するということも考えたいが如何。
(7) 「(別紙)各法人等について講ずべき措置」について、酒類総合研究所(財務省所管)が研究開発型の法人ではなく、中期目標管理型の法人としたのはなぜか。
森林総合研究所(研究開発型の法人)の中期目標期間を「5年」としたのはなぜか。また、水源林造成事業について、「受け皿法人の検討について」という記述があるが、今後の見通しはどうなっているのか。これは、改革の見直しがある度に出されていたし、紆余曲折あって実行されないまま来て、また今回の方針の中で浮上していることもあり、この先どうなるのか。「受け皿法人」が森林総研である可能性もあるのか。
これらに対し、市川次長は以下の通り回答した。
(1) 今回の通則法改正において目的規定をどのように定めるかは、これから検討する。ただ、現行通則法第1条の「もって国民生活の安定及び社会経済の健全な発展に資することを目的とする」というのは、幅広い概念であり、今回の見直しの基本的な方針に書いてあることと本質的な違いはない。
(2) 指針については、今後総務省において検討されていくこととなる。総務省は今回の見直しにおいて、主務大臣によるPDCAサイクルを重視してきたことから、主務大臣の役割の重要性に留意したものになるとは思うが、今回の申入れは、総務省にお伝えする。
(3) 効率化目標については、主務大臣と財務大臣で協議して決めていただくという枠組みになっている。
(4) 給与については、独法通則法で支給基準を定める際の考慮事項を規定し、これに則り、具体的な給与水準は、労使交渉を通じて法人が責任を持って決定する枠組みとなっている。今回の見直しでは、考慮事項を増やすこととしているが、枠組みを変えようとするものではない。
(5) 今回の閣議決定では、雇用の安定に配慮するという考え方を書いている。私共は雇用者の立場ではないので責任ある答弁はできないが、雇用の安定について、閣議決定に明記している。
今回強い要請があったことには留意する。
特定国立研究開発法人(仮称)のようなところだと、国際的な競争力を増すために年俸制や任期制の導入が進んでいる。業務の特性によって雇用形態は様々であり、独法といっても一律ではない。
(6) 平成27年4月に改正通則法を施行させたいと考えているが、組織の統合等の具体的な時期については、これから半年かけて主務省で検討していただき、政府全体で調整したい。
「各法人の統廃合等に係る措置については平成27年4月以降可能な限り早期の改革実施を目指して迅速に講ずる」となっているが、これは、統合すると決めておきながら何年も放置しないようにということ。統合に当たっては、システムの統合もあるので、ある程度の時間は必要。
(7) 研究開発型の法人とするかどうかは、研究開発業務がその法人の主たる業務かどうかで決まる。酒類総研は酒類の課税判定等のための分析・鑑定業務が主たる業務であり、研究開発は主たる業務ではないことから、財務省とも協議し、中期目標管理型の法人とした。
森林総研は、特会から移管される森林保険や、暫定的に行っている水源林造成事業等も業務として行っていて、そちらをきちんと管理するためには7年では長すぎるので、農水省とも協議し、5年とした。研究開発の一つ一つのプロジェクトについては、7年だって短いと言う人もいるし、中期目標期間が5年となっても、森林総研の研究に支障は出ないと思っている。
水源林造成事業について、経過事業のままでは済まないので、今回、見直し時期について明確にした。受け皿法人としては、森林総研は排除していない。
最後に、花村事務局長は「今後進められる通則法改正法案、政令案などの策定の節目毎に交渉・協議を行い、合意に基づいて対応していただきたい」と強く要請したのに対し、市川次長は「今後とも皆様と意見交換をしながら、検討を進めて参りたい」と回答したため、本日の交渉を終えた。
【参考資料】
以下のURLを参照。
行政改革推進会議(第8回)(2013年12月20日)
・資料1 独立行政法人改革等に関する基本的な方針について(概要)
・資料2 独立行政法人改革等に関する基本的な方針について(本体)
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/gskaigi/dai8/gijisidai.html
以上