公務員連絡会書記長クラス交渉委員は3月19日15時から、総務省笹島人事・恩給局長と交渉し、2014春季要求に対する現段階における見解を引き出した。
公務員連絡会側が、本日段階での総務省の見解を求めたのに対し、笹島局長は、「2月19日に提出された要求書について、現時点における回答を行う」として、次の通り回答した。
1.2014年度賃金について
給与改定・臨時特例法に基づく特例給与減額支給措置は、デフレ脱却や経済再生などを含めた国政全般の観点から総合的に検討を行い、労働基本権制約の代償措置の根幹を成す人事院勧告制度を尊重するとの基本姿勢に立ち、法律の規定どおり本年3月をもって終了することとなったもの。
一方で、昨年11月の閣議決定においては、給与体系の抜本的改革について早急に具体的な措置を取りまとめるよう人事院に対し要請しているところであり、本年の給与改定については、人事院勧告も踏まえ、国政全般の観点に立って総合的に検討を行った上で方針を決定していきたいと考えている。今後とも、皆様とも十分に意見交換を行ってまいりたい。
2.非常勤職員の雇用、労働条件について
非常勤職員の処遇改善等については、平成22年10月から期間業務職員制度を導入したところであるが、総務省としては、引き続き、皆様の御意見も伺ってまいりたい。
なお、期間業務職員制度に関しては、人事管理官会議等の場を通じて、制度の趣旨を踏まえた適切な運用を行うこと及び適正な処遇に努めるよう、各府省に周知を図っているところ。
3.労働時間、休暇及び休業等について
超過勤務の縮減については、職員の健康確保、士気の向上はもとより、ワーク・ライフ・バランスの推進のために重要であると認識している。
総務省としては、全省庁一斉の超過勤務縮減キャンペーンに取り組むほか、人事評価に当たり、超過勤務縮減等、コスト意識をもった効率的な業務運営が評価の対象とされるよう、徹底を図るとともに、各府省との連絡会議において優良な取組事例を共有するなど、政府全体の超過勤務縮減に向けた取組みを推進していくこととしており、引き続き、皆さんの御意見も伺いながら、政府全体の超過勤務縮減に向けて取り組んでまいりたい。
4.高齢者雇用施策について
雇用と年金の接続については、昨年3月の閣議決定において、「希望する職員を再任用することで、雇用と年金を確実に接続する」とされているところであり、この方針に沿って、定年退職者の再任用を政府全体で着実に推進してまいりたい。
また、昨年3月の閣議決定に基づいて、年金支給開始年齢の引上げの時期ごとの見直しに向け、民間の高齢者雇用の動向や再任用制度の活用状況を勘案し、段階的な定年の引上げも含め、雇用と年金の接続の在り方について検討しているところである。
なお、再任用職員の給与水準や諸手当等の制度上の措置については、人事院における所要の検討を踏まえ、適切に対応してまいりたい。
雇用と年金の接続のために必要な定員の問題に関しては、御指摘のような意見があったことについて、折に触れ、定員管理部局にお伝えしたい。
5.男女平等の公務職場実現等について
男女平等の公務職場実現等については、今後とも、第3次男女共同参画基本計画(平成22年12月17日閣議決定)で定める成果目標の達成に向け、意欲と能力のある女性国家公務員の採用・登用の拡大等に向けた取組を政府全体として進めてまいりたい。
6.福利厚生施策について
福利厚生施策について、心の健康づくり対策では、平成22年度から管理職員を対象としたe-ラーニングによるメンタルヘルス講習を実施しており、平成25年度より、「ラインケア」と「相談対応」の2コースを実施しているところである。
さらに、平成25年度において、メンタルヘルス対策の自己診断を行うことを目的としたメンタルヘルスシートの電子ファイル化を実施し、各府省に提供するよう準備しているところである。
7.公務員制度改革について
自律的労使関係制度については、引き続き、内閣官房において職員団体を含む関係者と意見交換を行っていくものと考えており、総務省としても必要な協力を行ってまいりたい。
8.人事評価制度について
人事評価制度について、その構築に当たっては、累次の試行や、各府省、職員団体の皆さんとの意見交換等も踏まえ、信頼性の高い制度となるよう制度設計を行ったところである。
一方で、人事評価制度については、昨年10月で本格実施5年目となることを踏まえ、運用状況を検証した上で、その改善を図ることが必要であるとの認識から、昨年7月より「人事評価に関する検討会」を開催し、本年2月に、任用・給与等の人事管理の基礎としての機能をより一層果たすため、評語区分の趣旨の明確化及びその徹底、人材育成等に活用するための評価者訓練の充実等の御提言をいただいたところである。
政府においては、本提言を踏まえた措置を講じていくこととしているが、今後とも、皆様とも十分意見交換し、理解と納得を得られるよう努め、円滑かつ効果的に制度を運用していきたいと考えている。
9.その他の事項について
障害者雇用については、チャレンジ雇用の取組を推進しているところ。また、障害者雇用を推進する観点から、各府省において「精神障害者の職場体験実習」及び「発達障害者の職場体験実習」を実施してきたところである。
また、総務省としては、本年度は本府省の実務担当者の連絡会を開催したほか、地方ブロックにおいて人事担当課長会議を開催し、障害者の雇用促進を各府省に要請したところである。
これに対し、吉澤事務局長をはじめとする交渉委員はは以下の通り局長の考えを質した。
(1) 民間労組が賃上げに取り組んだ今春季生活闘争は、経済の好循環をめざしての政府の働きかけも背景に、近年にない異例の賃上げ状況となっている。公務員給与についても、「人勧制度を尊重し、民間に準拠する」という従来の回答ではなく、踏み込んだ姿勢を示すべきだ。
(2) 非常勤職員の服務は常勤職員と変わらないにも関わらず、その処遇は使用者の裁量で府省毎に変わることに違和感を感じる。また、同じような仕事をしていても、各府省での処遇格差が大きい。これらを解消していく必要があるのではないか。各府省で処遇に違いが生じることの合理性について、「誰が責任を持つのか」という視点が抜け落ちている。非正規労働者の処遇改善は今春季生活闘争の大きなテーマであり、今の制度の中でも改善できるものが何かを考え、努力していくことが求められる。また時間給30円の引上げを求める。
(3) この年度末に定年退職する職員が希望する場合、フルタイム再任用、やむを得ない場合には短時間再任用が行われる。全体の状況はどうなっているのか。定員事情で府省間のバラツキが出ないようにするため、事前調査と調整が必要ではないか。
(4) 2年連続の大型補正予算が組まれたこともあり業務量の増加から、現場は悲鳴どころではない。事業費は増えても、事務経費が確保されず、超勤手当が支払いきれていない。定員と業務のミスマッチが生じている中で、各職場ではそれぞれ組合員が懸命に働いており、こうした課題についても対応していただきたい。
(5) 公務員制度改革をめぐって政治的に混乱する中で、公務に対する評価は厳しかったが、人事・恩給局のこれまでの対応は誠実だったと考えている。内閣人事局が発足しても、公務員連絡会との長い関係を踏まえ、引き続き誠実な対応をお願いしたい。
これに対し、笹島局長は以下の通り答えた。
(1) 公務員給与については、公務員の労働基本権制約の代償措置である人事院勧告制度を尊重し、国政全般の観点から検討する。今回の民間のベアから、賃金の構造や仕組みというものが、社会的に大きな関心を集めたのではないか。公務員給与についても、その構造を含めて、国民の理解を得られる体系にしていくことが重要だと考えている。
(2) 非常勤職員について、適正な給与や手当を支払い、採用される職員に必要な情報を提供するよう、人事管理官会議で徹底を図った。各府省での格差については、職種、技能、専門性に様々な違いがあり、それに応じて処遇にばらつきはあってしかるべきだ。時間給引上げ要求については、常勤職員の俸給表改定が行われれば、非常勤職員の給与も上がることから、民間よりも非常勤職員に行き渡る仕組みとなっているのではないか。
(3) 現在、各府省で今年度退職者の再任用に向け動いている最中で、その結果については、今後検証する。年金支給開始年齢が62歳となれば、職員の生活にとって切実な課題となることから、より強力な検討をしなければならないと考えている。今年の再任用の状況を把握し、雇用と年金の接続がしっかり図れるよう対応していきたい。
(4) 参議院に送付された関係法案が通れば、内閣人事局が発足する。内閣人事局の具体的体制は分からないが、果たすべき責務の範囲も広がり、より責任のある使用者機関となることは間違いない。より建設的な関係を築いていけるよう、発足に向け準備するというわれわれの責務を果たしてまいりたい。
最後に、吉澤事務局長が「27日の総務大臣からの最終回答に向け、誠実な検討を求める」と要請し、本日の交渉を終えた。
以上