2014年度公務労協情報 24 2014年3月24日
公務公共サービス労働組合協議会
 公務員労働組合連絡会

2014春季生活闘争中央行動を実施−3/20
−人事院交渉では地域間配分見直しのそもそもの必要性を厳しく追及−

 公務員連絡会は、20日、2014春季要求の実現をめざして中央行動を実施した。13時30分から日比谷大音楽堂で開かれた中央集会には、全国の仲間約3,000人が結集した。給与制度の総合的見直しは公務員連絡会と十分交渉・協議し、合意に基づいて進めることを求め、とりわけ地域間配分の見直しには反対との認識を統一するとともに、連合の取組みに結集し、非常勤職員を含む公務員労働者の賃上げをめざし、27日の回答指定日に向け闘う決意を固めた。
 書記長クラスと人事院各局長との交渉では、民間労組のベア実現を踏まえ公務員労働者の賃上げや超過勤務の縮減などを求めるとともに、「給与制度の総合的見直し」に関わって、とくに地域間配分見直しのそもそもの必要性について、合理的で納得できる説明を強く求めた。しかし、人事院は「高いとの指摘があり、見直しの必要性がある」と繰り返すに止まり、納得できる回答は示されなかった。公務員連絡会では、最終回答に向けて、一層具体的で明確な回答を求めていくこととしている。

 中央集会では、冒頭、主催者を代表して棚村議長が「2月19日に人事院総裁宛の要求書を提出して以降、幹事クラス交渉、ブロック別上京行動などを積み重ねてきたが、未だ納得できる回答は示されていない。多くの民間労働組合の奮闘の上で成し遂げられたベースアップという成果を、われわれも引き継がなければならない。人事院は今年の勧告で地域間、世代間配分の見直しを含む給与制度の総合的見直しを強行しようとしている。人事院は、われわれの署名が180万筆を超えていることの重みを受け止め、公務員労働者の声を真摯に聞き、納得できる説明をする責務がある。これができないというならば、見直しの強行は認められない」と全力で闘うことを訴えた。
 続いて、激励に駆けつけた連合の安永副事務局長が「2014春季生活闘争は、可能な限り多くの組合が回答を引き出せるよう取組み、労使間で真摯な議論を展開した結果が今回の賃上げにつながった。春季生活闘争はまだスタート地点だ。先週の第1先行組合の結果を中小組合、非正規、未組織労働者も含め、すべての働くものの底上げ・底支えにつなげていかなければならない。地方経済においては、公務員給与が地場・中小の賃金闘争に大きく影響をすることを忘れてはならない。全ての働く者の「底上げ・底支え」の実現のため、みなさんの取組みに強く期待したい」と連帯の挨拶を行った。
 このあと基調提起に立った吉澤事務局長は、「人事院の給与制度の総合的見直し報告は、給与構造改革の実施から3年であり、拙速だ。人事院から、いまだに見直しのそもそもの必要性や具体的内容について、納得し得る説明はされていない。改めてわれわれと十分交渉・協議し合意すること、とりわけ地域間配分の見直しは反対の姿勢で臨んでいく」と提起し、取組みへの結集を訴えた。
 構成組織決意表明には、福留国公連合・国税労組書記次長、角村全水道近畿東海地方本部書記長が、それぞれの取り組み課題を報告し、全力で闘い抜く決意を述べた。
 集会を終えた参加者は、人事院前交渉支援行動と霞ヶ関一周のデモ行進に出発。「公務員労働者の賃金を上げろ」「非常勤職員の賃金を上げろ」「超過勤務を短縮しろ」などと力強くシュプレヒコールを繰り返した。
 行動を終えた参加者は再び日比谷大音楽堂に結集し、書記長クラス交渉の報告を受け、団結がんばろうでこの日の行動を締めくくった。
 この日に行われた人事院職員福祉局長、給与局長との交渉経過は次の通り。

<職員福祉局長交渉の経過>
 井上職員福祉局長との交渉は、14時05分から行われた。
 吉澤事務局長が、本日時点での検討状況について回答を求めたのに対し、井上局長は、以下の通り答えた。

1.労働時間の短縮等について
○ 超過勤務の縮減については、職員の健康保持、労働意欲や活力の維持、有為の人材の確保等の観点からも重要な課題であり、人事院としても、引き続きその縮減に向けた取組を進めて行く必要があると考えている。人事院では、各府省における超過勤務縮減の取組を支援し促進するため、政府全体として取り組んでいる在庁時間縮減の取組について、その実施状況を定期的にフォローアップするとともに、各府省において特に効果を上げている取組例の収集やそれに基づく情報提供を行っている。
  超過勤務縮減のためには、各府省における管理職員による勤務時間管理を徹底するとともに、業務の改善・効率化などの取組を推進することが肝要であり、管理職員の意識啓発が重要であると考えている。
  また、昨年10月に「超過勤務の縮減に関する指針」に定める疲労蓄積防止のための早出・遅出勤務について新たに通知を発出し、その活用推進を図るなどしており、引き続き各府省とも連携しながら超過勤務縮減に取り組んで参りたい。
○ 職員の休暇については、従来から情勢適応の原則の下、民間における普及状況に合わせることを基本に、官民均衡の観点から適宜、見直しを行ってきた。引き続き民間の動向等を注視して参りたい。
○ 育児や介護のための両立支援制度については、「育児・介護を行う職員の仕事と育児・介護の両立支援制度の活用に関する指針」に基づき、両立支援のための環境整備の推進や各府省における取組等に関する情報提供、意見交換等を積極的に行っている。なお、昨年秋には、「民間企業の勤務条件制度等調査」における育児、介護を含めた労働時間の短縮制度についての調査とともに職員に対する「介護のための両立支援制度に関するアンケート調査」等も実施し、現在、集計・分析中である。今後は、その結果や各府省、職員団体の意見も踏まえ、引き続き両立支援について必要な検討を進めて参りたい。
2.非常勤職員の労働条件等について
 非常勤職員の休暇については、従来より、臨時・緊急の必要に応じて任用されるという非常勤職員の性格を踏まえ、民間の状況等を考慮し措置してきているところであり、引き続き民間の動向等を注視し、必要な検討を行って参りたい。
3.男女平等の公務職場の実現について
 男性職員の育児参加の促進については、育児参加休暇(特別休暇)や育児介護のための早出遅出勤務の導入、配偶者の就労状況にかかわりなく夫婦が同時に育児休業を取得できる制度等男性職員が育児に参加しやすくなるような仕組みの整備やリーフレットの配布等により、その推進を図ってきたところである。人事院としては、昨年秋に実施した「育児休業を取得しなかった男性職員に対するアンケート調査」の結果も踏まえ、男性職員の育児休業取得促進のために今後行うべき環境整備の内容等について各府省に助言・指導を行うなど、男性職員の育児休業取得率の向上等を推進して参りたい。
4.福利厚生施策の充実について
○ 人事院では、心の健康づくりをはじめとする健康安全対策については、平成16年3月に発出した「職員の心の健康づくりのための指針」を基本に、管理監督者をはじめとする職員に対する研修の充実・強化、職員の意識啓発のためのガイドブックの配布、心の不調への早期対応のための「こころの健康相談室」の運営、「試し出勤」の活用等による円滑な職場復帰の促進等に取り組んでいる。
  このほか、各府省における対策についての取組状況や経験等を共有することにより、各府省における心の健康づくりの施策の効果的な実施を図るため、「心の健康づくり対策推進のための各府省連絡会議」を毎年2回程度開催するとともに、平成26年度にはセルフケアを中心とした職員向けのe-ラーニング教材を作成し配布したいと考えている。
  また、平成24年10月には、過度のストレスがなく、いきいきとした職場を実現し、職員のメンタルヘルスの向上を図ることを目的とする「心の健康づくりのための職場環境改善」の取組についての職員福祉局長通知を発出し、初年度となった平成25年度においては4府省で同取組が実施された。今後も、引き続き、改善効果のPRや研修等を通して参加府省の拡大に向けた取組を進めて参りたい。
  人事院としては、これからも、これらの施策の充実等により、より一層、各府省の心の健康づくり対策の支援を行っていく所存である。

 回答に対し、公務員連絡会側が「2年連続の大型補正予算の早期執行で、現場からは悲鳴の声があがっている。生の声を聞いてもらいたい」「超過勤務縮減に向けた指導、勤務時間管理の徹底、超過勤務手当を支払うための事務経費の確保を求める」と追求したのに対し、局長は「現場からの声を聞き、勤務環境が厳しい状況にあることを受け止める。どういうことができるか検討したい」と応えた。
 最後に、吉澤事務局長から「27日の回答に向け、現場状況を踏まえた積極的な対応をお願いしたい」と要請し、職員福祉局長交渉を締めくくった。

<給与局長交渉の経過>
 古屋給与局長との交渉は、14時20分から行われた。
 吉澤事務局長が、本日時点での検討状況について回答を求めたのに対し、古屋局長は、以下の通り答えた。

1.賃金要求について
○ 雇用情勢については、本年1月の有効求人倍率が1.04倍、完全失業率が3.7%となっており、改善している。また、経済情勢については、2月の「月例経済報告」においては、「景気は、緩やかに回復している」とされている。
○ 本年の春闘は、連合が5年ぶりにベア要求を掲げたのに対し、経団連は、賞与・一時金への反映のみならず、特定層の賃金水準の引き上げや諸手当の改定など、多様な対応が考えられるとの考え方を示した。その際、賃上げをベースアップに限定せず、「年収ベースでみた報酬の引き上げ」と捉えるとともに、自社の支払能力に基づき判断・決定するという原則は揺るがないとした。
  先週、12日の集中回答日以降、順次回答が行われているが、ここまでの大手企業の状況をみると、月例賃金については、自動車、電機等を中心にベア回答が行われる一方、水準については業種・企業によるバラツキも見られるところ。また、一時金については、増額とする企業がある一方、減額となっている企業や業績連動としている企業もあるところ。
  いずれにしても、人事院としては、引き続き民間の動向を注視して参りたい。
○ 国家公務員の給与について、人事院としては例年と同様、情勢適応の原則に基づき、国家公務員の給与と民間企業の給与の実態を精緻に調査した上で、その精確な比較を行い、必要な勧告を行うことを基本に臨むこととしている。
○ 諸手当の見直しについては、民間の状況、官民較差の状況等を踏まえながら対応して参りたい。
○ 給与制度の総合的見直しについては、昨年の報告で言及したとおり地域間・世代間の給与配分の見直し等の諸課題に対応する必要があると考えており、今後も、職員団体を始め、関係者とも意見交換を行いながら内容を詰めていきたいと考えている。
2.非常勤職員の給与の改善について
 非常勤職員の給与については、引き続き、平成20年8月に発出した指針に沿った給与の適正な支給が図られるよう、人事院として取り組んで参りたい。
3.人事評価について
 人事評価は、職員の能力・実績等を的確に把握し、人材配置や人材育成等の人事管理の基礎とするものであり、給与についても昇給、昇格、特別給などの決定に評価結果を活用することとされている。
 人事院としては、そうした人事評価の評価結果の活用が各府省において適正に実施されるよう引き続き必要に応じて指導等を行って参りたい。
4.高齢期雇用等について
○ 定年延長について
 人事院としては、昨年3月に閣議決定された「国家公務員の雇用と年金の接続について」において定年延長ではなく希望者を再任用することとしたことは、雇用と年金の接続を図るための当面の措置として、やむを得ないものと考えるが、年金支給開始年齢が62歳に引き上げられる平成28年度までには、平成26年度からの再任用の運用状況を随時検証しつつ、平成23年に人事院が行った意見の申出に基づく段階的な定年の引上げを含め、再検討がなされる必要があるものと考える。
○ 再任用職員の給与制度について
 再任用職員の俸給水準や手当の見直しについては、本年の「職種別民間給与実態調査」において、公的年金が全く支給されない再雇用者の給与の具体的な実態を把握した上で、本年4月における再任用職員の職務や働き方等の人事運用の実態等を踏まえつつ、必要な検討を進めることとしたい。

 回答に対し公務員連絡会側は、「給与制度の総合的見直し」以外の課題について、次の通り局長の見解を質した。
(1) 本年の春季生活闘争で民間労使は社会的影響も考えて対応したのではないか。人事院は、国家公務員給与はおおよそ580万人に影響すると言っている。社会的な影響を与えるという視点に立って作業を進めるべきだ。民間賃金に準じるとしても、今の段階で、社会的な問題として今年の賃金をどうするという視点はないのか。
(2) 非常勤職員の処遇が使用者の裁量で府省毎に異なっていることは問題である。民間も含めて非正規労働者にどれだけ賃上げを波及させるのかも大きな課題だ。今年は時間給30円の引上げにこだわっている。非常勤職員に関する問題意識を聞かせてほしい。
(3) 雇用と年金の接続の本筋は定年延長であり、年金支給開始年齢が62歳に引き上げられる2016年度までをターゲットにするのは共通の認識だ。今年の勧告では、2011年の「定年延長に関する意見の申出」について改めて何らかの形で言及すべきだ。
 4月からの接続について、確実な対応を図るためには、各府省で再任用の手続きが始まる前の対策が必要ではないか。本年の状況については、前広で丁寧な議論をお願いしたい。

 これに対し古屋局長は、次の通り答えた。
(1) 勧告は、国家公務員法、給与法の基本的な精神に則った人事院の役割に基づき行うことになり、民間準拠という大枠は変えようがない。それ以外に、国民の信頼を得る方法はなかなかないと思う。民調の中で粛々と民間の実態を精確に把握しながら、見直すべきものがあれば見直していく姿勢で臨んでいく。
(2) 非常勤職員の個別の仕事自体はさまざまなので、平成20年の給与指針で最低基準を示した。仕事を見ながら、各府省で決めるよう話をしており、その考え方は徹底してもらう。一方で、給与の額自体の話となると、指針では常勤との均衡としているので、民間でベアがあって、指針の基礎となる行政職(一)俸給表の初号俸などが上がれば、各府省が必要に応じた見直しを行うことになる。
(3) 再任用職員の処遇を含めて考えて行くが、夏の勧告で何を言うかは先の話で、何が必要かは検討していくし、皆さんと議論を積み重ねていきたい。再任用については各府省の4月の実態にも重みがあるので、そういった実態を踏まえながら、検討させていただきたい。

 続いて吉澤事務局長は、「給与制度の総合的見直し」議論の前提として、昨年8月2日の交渉で、給与局長から@給与カーブを民間とぴったり合わせることはできない、A全国ベースで展開している国家公務員という話は、強く意識しているので今後議論させてもらう、B「総合的見直し」はトータルとしての配分の変更で、あくまで人事院主体の検討だという話があったことを確認した上で、以下の通り、見解を質した。

(1) 昨年11月15日の閣議決定で、政府は「総人件費の抑制」を目的に給与制度の見直しを人事院に要請している。「配分の変更」に止まらないのではないか。
(2) 人事院は昨年の報告で「民間賃金の低い地域を中心に、地域の公務員給与が高いのではないかとの指摘が依然としてある」として、地域間配分見直しの理由としている。「指摘がある」というのでは主体的とはいえない。一体誰がどこで指摘しているのか。
(3) 2年前の給与構造改革の検証では「所期の目的を達した」としていたが、2年前と昨年で何が違ったのか、合理的、具体的な説明をしてほしい。あえてこの時期に「総合的見直し」の必要は、まったく理解できない。
(4) 「地域ブロック別で比較すると、政令市が入って高くなる」ことから、都道府県別に低い方から4分の1の12県を1つのブロックとして水準を考えたとのことだが、なぜ12県なのか、合理的に説明してほしい。
(5) 「高い」と指摘されれば、見直し、引下げるというのは論外だ。職員の適切な利益保護も人事院の重要な任務である。東日本大震災からの復旧・復興のため、全国からの支援も含め、職員が懸命に頑張っているのに下げるということはあり得ない。
(6) 「できるだけ早期に」と報告しているが、拙速に今年の勧告ありきなのか。地域間のみならず、世代間、技能・労務の課題等を含めて、われわれが納得するまで十分な議論をしていくべきではないか。

 これらの追及に対し、古屋局長は次の通り答えた。
(1) 全体の給与水準は官民均衡が大前提で、その中で配分について必要な見直しをしていく。それは人材確保の観点もあれば、広い意味での国民の理解を得ることでもある。人事院として、今回の見直しによって、総人件費を縮減するという意図は全くない。
(2) 毎年勧告前の春先から、地方の有識者や経営者、組合など広範な方との意見交換を行っている。地方から「公務員の給与が高い」という意見が依然として出てくる。特例減額があった一昨年も昨年でさえもそういう意見があった。
(3) 公務員給与に対しては絶えず批判があり、国民の理解は非常に重要であり、批判に応えない訳にもいかない。給与構造改革は大きな見直しだったが、それでもなお「高い」という指摘があり、見直しの必要性があるというのが人事院の基本的な考え方だ。
(4) 給与構造改革の時は都道府県別比較も検討し、データの安定性からブロック別になったが、ウエイトが大きい政令市が入っていた。今回、新しい方法として、一度県単位に戻した上で、従来の地域ブロック別と同じぐらいで規模のサンプルが拾えるグループを作るとすれば、低い方から4分の1ということになった。
(5) 今年の勧告も念頭において作業を進めるが、それぞれの課題は重いので、皆さんと議論を積み重ねていきたい。

 最後に、吉澤事務局長は「冒頭申しあげた3つの点も含めて、27日の最終回答に向けて、真摯な回答をお願いしたい」と強く要請し、給与局長交渉を締めくくった。

以上