公務労協地方公務員部会は6月12日11時から、4月25日に成立した「地方公務員法及び地方独立行政法人法の一部を改正する法律」に関して、総務省に申入れを行った。
地方公務員部会側は、加藤地方公務員部会事務局長および地方公務員部会幹事が出席し、総務省側は、三橋給与能率推進室長らが対応した。
冒頭、加藤事務局長が三橋室長に対し申入書(別紙)を手交し、趣旨説明と申入書の3つの事項について問い質したのに対し、室長は以下の通り答えた。
(1) 人事評価制度の導入にあたっては、評価の公正性、透明性、客観性、納得性を担保するために、各地方公共団体において、その枠組みを適切に構築することが重要である。また、人事評価制度自体は、労使交渉の対象となる勤務条件に該当するものではないと考えているが、制度の円滑な導入と運用のためには、職員への十分な周知と相互の理解を踏まえながら、進めていくことは重要である。
国の人事評価制度においては、人事評価の公正性、透明性を高め、信頼性の向上を図る仕組みとして、評価基準等の明示、自己申告の実施、評価結果の開示、面談の実施、苦情処理体制の整備、評価者訓練の実施といった取組みが行われている。地方公共団体においても、このような取組みを参考にしながら、今回の改正法の趣旨に則って、制度構築をしてほしいと考えている。
総務省としても先般、今回の改正法に関する説明会を実施(6月9日)し、法改正の概要や人事評価の意義、今後のスケジュールなどについて説明した。今後とも必要な助言や情報提供、説明会等を行っていきたい。
(2) 各地方公共団体における本格実施の前に、一定の試行期間を設け、その試行を踏まえ、制度の構築を行うとともに、本格実施後でも必要に応じて制度の改善を図っていくことが重要である。人事評価制度は、それぞれの地方公共団体がその内容を決めていくべきものであるが、各団体において、法の趣旨を踏まえた適切な制度構築が行われるよう、総務省としても必要な助言等を行っていきたい。
(3) 各地方公共団体の規模や組織構造等に応じて、等級別の基準職務の内容は異なってくるものである。今回の改正法の趣旨に則った適切な等級別基準職務表が整備されるべきものと考えており、総務省としても必要な助言等を行っていきたい。
職員数の公表について、等級別基準職務表に基づく具体の職務の各級への格付け等の運用は、任命権者が行うことになる。このため改正法では、等級および職制上の段階ごとに職員数の公表を義務付けることで、実際の運用に関する地方公共団体の説明責任を強化し、職務給原則の徹底を図ることにしている。総務省としては、職務給原則の徹底を図るという改正法の趣旨を十分に踏まえ、職員数の公表について、各地方公共団体における規模や組織構造等を踏まえ、適切な運用がなされるよう必要な助言等を行っていきたい。
回答に対し、地方公務員部会側は以下の通り問い質した。
(1) 具体の評価項目の設定、評価期間のサイクル、評価段階などについては、各自治体の実情に合わせて設定するということでよいか。
(2) 国と同様な能力・業績あるいは、給与への反映を実施している自治体に関して、今回改正法が成立したので、条例を定めさえすれば、現在実施していることが、今まで通りに運用できるという理解でよいのか。
(3) 今後、運用通知を発出する場合に、何か新しいことが明記されるのか。
(4) 十分な周知のためには、試行の期間が短いのではないか。
(5) 人事評価そのものは勤務条件に当たらないという回答であったが、評価の結果については、給与や勤務条件に影響が出てくるので、給与、勤務条件とともにしっかり労使交渉すべき事項だと考えてよいか。
これに対し、三橋室長は以下の通り答えた。
(1) 人事評価制度の基準や方法について、法律上も「任命権者が定期的に行う」と書いてあり、任命権者が定める標準職務遂行能力を踏まえた人事評価制度になると考えている。各自治体で定める内容や注意する点、留意事項などについては、運用通知等を今後発出したい。
(2) 都道府県や政令市は先行して人事評価制度を導入している団体もあるので、今回の改正法の趣旨や運用通知等に則って、必要な対応をされていくと考えている。
(3) 運用通知の内容は、各自治体の実情を見ながら、どのようなことを留意事項として明記する必要があるのか、現在検討中である。
(4) 国家公務員法で人事評価が導入されたのと同様に試行期間を設けており、「2年以内で政令で定める期間」となっている。政令はこれから作るが、事務的な作業で年度の区切りのよい時期から考えると、2016年4月からの本格実施を想定して進めるのが1つの考え方である。そうすると、試行期間は2015年度中に確保できることになる。必要な制度整備、職員への周知・説明などについて、なるべく今年度の早い時期から準備を進めていくことが必要だと思っている。期間が限られた中で、円滑な導入がなされるように、必要な助言や情報提供を行っていきたい。
(5) 人事評価制度自体が労使交渉の対象となるものではないが、その活用に関しての質問だと思うが、制度の円滑な導入と運用のために、十分な周知と相互の理解を踏まえながら進めていくということが重要だと認識している。
さらに、地方公務員部会幹事からは、「先行して導入している自治体での経験からすると、振り返りが重要で、試行期間が1年では制度の修正の効果がわからないのではないかと危惧している」「大規模な学校では、管理者が100〜150人の職員を評価しなければならない。評価するための授業見学が15分では、評価される側からするときちんと評価されているのか不安」などと現場の問題意識を総務省に訴えた。
最後に、加藤事務局長が「今日申し入れた人事評価制度の導入や等級別基準職務表の条例化については、様々な課題や懸念、思いなどが現場にはある。各自治体によって実情は違うが、導入されて実際に行うのは現場だ。現場が混乱をきたすことのないように、職員への周知、相互の理解を図り、納得できるように進められるようお願いしたい」と要請し、本日の申入れを終えた。
(別紙)申入書
2014年6月12日
総務大臣
新 藤 義 孝 様
公務公共サービス労働組合協議会
地方公務員部会議長 永 井 雅 師
改正地方公務員法に関する申入れ
4月25日、地方公務員法及び地方独立行政法人法の一部を改正する法律案の成立により、地方公務員に人事評価制度が導入されることになりました。
人事評価制度の導入に関しては、勤務条件に関わることであるとともに、人事評価制度の実施とその活用を円滑に行うためには、被評価者たる職員の理解と納得が不可欠であることは言うまでもありません。人事評価は、評価する側だけでなく評価される側も制度の趣旨、目的を理解し、相互に協力しながら適切な運用に努めるべきものであり、評価の透明性、客観性、納得性を確保するための枠組みの構築が必要です。そのためにも、人事評価制度の導入については、職員をはじめとした十分な周知と相互の理解が必要であるとともに、十分な労使協議と合意に基づき進めていくことが重要です。
また、給与条例で定めるとされる等級別基準職務表については、国と地方の職員構成等が違うことから、その内容は各自治体の自主性を尊重すべきです。
地方公務員法の改正に伴う各自治体への人事評価制度の導入及び等級別基準職務表の条例化に関わって、下記の事項について申し入れますので、その実現を強く要請します。
記
1.人事評価制度については、導入の趣旨を踏まえ、制度的に公平性・公正性、透明性、客観性、納得性の担保と、苦情処理制度及び制度設計に関する労使協議制を具備したものとなるよう、組合との十分な交渉・協議、合意に基づき進めること。公正性・透明性を高め、信頼性の向上を図るため、自己目標・自己申告・評価結果の開示・期首面談・苦情処理・評価者訓練等の周知を徹底すること。
2.人事評価制度をより納得性のあるものとするため、十分な試行期間を設けるとともに、実施状況を検証し必要な制度見直しを行うよう、各自治体へ周知を図ること。
また、具体の制度設計については、各自治体の意向を尊重すること。
3.等級別基準職務表の条例化及び職名ごとの職員数の公表に当たっては、自治体の規模・組織構造に違いがあることから、各自治体の主体的判断を尊重すること。
以上