公務労協は6月26日17時から、「新たな機構・定員管理の基本方針」の策定に関して、内閣人事局に申入れを行った。
公務労協からは、吉澤事務局長、国公組合の書記長らが出席し、内閣人事局は、若生人事政策統括官らが対応した。
冒頭、吉澤事務局長が若生人事政策統括官に対し、「長年にわたり定員削減が継続されてきたもと、2年連続で年を越えてからの大型補正予算が組まれ、4月からの消費増税との関係では、各職場において事業の前倒しが求められ、現場の状況は極限を超えている。6月3日の閣僚懇談会で、新たな機構・定員管理に関する基本方針において定員合理化計画の策定が提起されたが、これ以上の定員削減は問題だ」とした上で、申入書(別紙)に基づき、以下の通り指摘し、内閣人事局側の見解を求めた。
(1) 国民のニーズに基づく必要な業務に対して、必要な定員を確保する、というのが原則であり、削減ありきの対応を行うべきではない。
(2) 安倍政権が、女性の活躍推進等において両立支援の取組みを進めていることからも、超勤縮減に向け、定員は削減するのではなく、むしろ増員すべきではないか。
(3) 今年の4月から年金支給開始年齢の段階的引上げが始まっている。政府は、年金支給開始年齢に達するまでの雇用の確保について、責任を持たなければならず、定員削減は雇用確保と矛盾する。
これに対し、若生人事政策統括官は以下の通り応えた。
(1) 内閣人事局発足にあたり、内閣の重要政策・課題に対応するための戦略的な人材配置を実現するため、機構・定員管理の基本的な方針の中で、定員合理化の取組み、業務改革の取組み、府省を越えた定員の再配分の取組みを行っていきたい。
(2) ワーク・ライフ・バランスの実現に向けた取組みについては、各省において、合理化の枠組みの中で必要な定員を措置していくものだろうと考える。
(3) 雇用と年金との接続については、定員は業務量に基づいて管理するのが基本であり、業務量が増えれば、それに応じた定員は当然考慮しなければならないが、業務量が増えなければ、定員の中で新規採用者数と再任用者数のバランスを考慮しながら、適切に対応するものと考える。そのほか、短時間勤務による再任用については、ニーズを踏まえて弾力的に対応できるよう努めていきたい。
次に、国公組合の各書記長が@事務量が増加する一方、長期間新規採用が行われていない、A消費増税等に伴う事務量が増加している、B業務過重に伴いメンタルヘルスを抱える職員が増加している、C人員が減る一方、業務量は減らず、加えて業務内容が複雑高度化している、等の現場の実態を訴え、これ以上の定員削減を行わないよう強く求めた。これに対して、若生人事政策統括官は「今後の査定を通じ、担当者から各府省の実態について聞かせていただく。一方、全体の中で合理化を進めることも必要である。各府省には、それぞれの実情に応じた、きめ細かい業務改革をお願いしたい」と述べた。
最後に、吉澤事務局長が「厳しい定員事情の中で労使が懸命に取り組んでいる。内閣人事局は、政府総体として国家公務員の人事行政に責任を持つ機関・立場から我々の意見を聞いて、基本方針を策定するよう求める」と要請し、本日の申入れを終えた。
(別紙)申入書
2014年6月26日
国家公務員制度担当大臣
稲 田 朋 美 様
公務公共サービス労働組合協議会
議 長 加 藤 良 輔
新たな機構・定員管理の基本方針の策定に関する申入れ
新たに設置された内閣人事局において、国家公務員制度の円滑な運営とその改善に向けてご尽力されていることに心から敬意を表します。
さて、安倍総理大臣の指示に基づき、新たな機構・定員管理の基本方針を策定することとし、その中で、定員合理化について、5年で10パーセント以上のペースで合理化の取組みを継続すると聞き及んでおります。
この間、大幅な財政赤字を背景として、総人件費の削減をめざしての定員削減と新規採用者数の縮減によって定員純減が強行されてきました。他方、デフレ経済から脱却し、新たな成長経済に転換させるため、様々な政策が展開され、行政が担う事務・事業は複雑高度化し、職員に対する負荷はますます昂じています。職場では必要な人員が不足する中で、本来、臨時、緊急的な場合に限られる超過勤務が日常化し、しかも予算不足で超過勤務手当が満足に支払われない実態も生じています。心身に不調を訴える組合員も少なくなく、長期病休者の数も高止まりしたままとなっています。
こうした厳しい職場環境の下で、東日本大震災からの一刻も早い復興・再生をはじめ、国民の期待に応えるべく、組合員は粉骨砕身して全力で職務を遂行しています。
いま求められているのは、将来に向けて国民生活の安心・安全を支える良質な公共サービスを確実に提供していくことであり、そのために必要な人材を確保するとともに、適正な雇用・労働条件を保障していくことでなければなりません。
職場や業務運営の実態を顧みることなく、いたずらに数ありきで、定員削減計画の策定を繰り返すことは、公共サービスの面からも、公務員の労働条件の面からも行うべきではありません。つきましては、新たな機構・定員管理の基本方針、とりわけ定員合理化計画の策定に当たっては、公務労協並びに関係労働組合と十分な交渉・協議を行い、下記事項の実現に最大限努力されるよう要請します。
記
1.大震災からの一刻も早い復興・再生をはじめとした国民のニーズに基づく良質な公共サービスを確実に提供するとともに、国家公務員に適正な雇用・労働条件を確保するため、新たな定員削減計画を策定しないこと。
2.事務・事業の効果的で着実な実施と職員のワーク・ライフ・バランスを確保するため、新規採用をはじめ必要な定員を確保すること。
3.公的年金支給開始年齢の段階的な引上げが進行中であることを踏まえ、雇用と年金の確実な接続と定年の段階的な延長に向けて、定員管理を弾力的に行うこと。
以上