2014年度公務労協情報 6 2013年11月26日
公務公共サービス労働組合協議会
 公務員労働組合連絡会

総務省・人事院へ2014年度基本要求を提出−11/26

 公務員連絡会は11月26日、総務省、人事院に対して2014年度の賃金・労働条件改善に関わる基本要求を提出し、それぞれ誠意ある回答を示すよう求めた。交渉においては、来年度に向けて労働諸条件を着実に改善するよう、総務省、人事院に対して要求の重点事項を説明し、12月に明確な回答を示すよう要請した。
 それぞれの申入れの経過は次の通り。

<総務省人事・恩給局との交渉経過>
 総務省への「2014年度賃金・労働条件に関わる基本要求事項の申入れ」(資料1参照)交渉は、10時から行われ、公務員連絡会からは幹事クラス交渉委員が臨み、総務省からは井波人事・恩給局次長らが対応した。
 要求提出に当たって、大塚副事務局長が「11月15日の閣議決定で本年の給与と臨時特例減額の扱いについて、決着が付いたので、2014年度の基本要求を提出する」と述べたうえで、基本要求を次の通り説明し、12月には誠意ある回答を示すよう求めた。
(1) 公共サービス基本法に基づいて良質な公共サービスを実施していくためには、公務員や公共サービス従事者に社会的に公正な賃金・労働条件を保障する必要があり、そのためには人件費予算の確保が必要だ。
(2) 独法と地方分権改革については年内にも具体化されることになっており、その際、仮に雇用問題が生じるということになれば、政府として統一的な体制を確立して国が雇用に責任を持っていただきたい。
(3) 総務省としても、来年度の人事院勧告・報告の取扱いについて、われわれと交渉・協議を行って、公務員労働者の賃金水準を改善するという姿勢で臨んでもらいたい。その際、公務員バッシングが繰り返されることのないよう、公務員給与について社会的な合意を確立すべく、公務員の人事行政に責任を持つ立場での役割を果たしていただきたい。
(4) 本府省においては超過勤務が360時間を超える職員が過半数に迫り、720時間を超える職員も6.7%おり、深刻な事態は改善されていない。政府としても本年度から体制を再編し、取組みを強化したと聞いており、来年度に向けては目に見える成果が上がるよう、政府全体として効果的に取組んでいただきたい。
(5) 福利厚生関係では、心の健康づくりについて、管理職に対して2段階のeラーニング研修を実施し、好評だと聞いているが、職場全体で共有していくことが大事だ。職場における啓発活動、職場環境の整備にも取り組んでもらいたい。
(6) 雇用と年金の接続に関わっては、来年度に向けて、フルタイム勤務を希望する職員が増えているが、組織の新陳代謝を確保する観点から新規採用も必要であり、定員事情の厳しい府省では職員の希望通りになっていない実態がある。雇用と年金を接続し、職員の生活水準を保障することは政府の責任であり、人事・恩給局としてもしっかりと役割を果たしてもらいたい。
 また、年金支給開始年齢が62歳となるときまでには定年延長を実現していただきたい。
(7) 期間業務職員について、導入から3年が経過し、年度末に業務の円滑な運営に支障を来しかねないような問題も生じかねないところがあると聞いている。この際、3年間の検証を行い、改善すべき点はきちんと直していただきたい。
(8) 男女平等については、実際に前に進むかどうかが問題であり、目標の実現に向けて目配りをしながらしっかりと取り組んでいただきたい。
(9) 今国会に公務員制度改革についての法案が提出されているが、国家公務員制度改革基本法12条に明記されている自律的労使関係が措置されていないことについては遺憾だ。政府は8度に及ぶILO勧告を真摯に受け止めなければならないし、これらに基づき、政府の責務として具体案を早急に提示していただきたい。
(10) 人事評価制度については、来年早々にも検討会の報告が予定されていること、給与制度の総合見直しでも検討事項となるということであり、われわれと十分話し合いながら、作業を進めてもらいたい。
(11) 早期退職募集制度については、応募者がいないという報道もなされているが、強制しないことが大前提であり、その趣旨を徹底していただきたい。

 続けて、公務員連絡会側から職場実態を踏まえた要請を以下の通り行った。
(1) 独法改革の取りまとめに向けた時期に入っているが、雇用問題は生じてはいけない。独法は制度改革による統廃合の連続である。職員がしっかり安心して働くための環境づくりを政府の責任として行ってほしい。
(2) 雇用と年金の接続について、フルタイム再任用の希望が増えている。希望者が定員事情で働けないことがないようにしてほしい。また、定年延長の実現をお願いしたい。

 これらに対して、井波次長は「趣旨は承った。要求事項も多岐にわたっているので、今後、検討して、然るべき時期に回答したい」と回答した。

 最後に、公務員連絡会は「厳しい勤務環境の下で、国民の期待に応えるために、刻苦勉励している公務員労働者の賃金・労働条件が改善されるよう、12月には誠意ある回答をお願いしたい」とし、要求提出交渉を終えた。

<人事院職員団体審議官との交渉経過>
 人事院への「2014年度賃金・労働条件に関わる基本要求事項の申入れ」(資料2参照)提出交渉は、10時45分から行われ、公務員連絡会からは幹事クラス交渉委員が臨み、人事院からは平野職員団体審議官、藤倉参事官が対応した。
 冒頭、大塚副事務局長が、基本要求を次の通り説明し、12月には誠意ある回答を示すよう求めた。

(1) 給与制度の総合的見直しは重い課題だ。地域給与の引下げには反対であることは明確にしておきたい。いずれにしても、われわれと十分な交渉・協議を行い、合意のもとに進めることを約束してもらいたい。
(2) 人事院としても、来年度に向けて公務員の給与が改善されるよう、作業を進めていただきたい。とりわけ一時金については、ピークから1.5ヵ月分も目減りし、4ヵ月を割り込んでいる。来年度はぜひとも支給月数を引き上げていただきたい。
(3) 官民比較方法については、来年度は新たな職種を調査対象とすることが予定されているが、ラスパイレス比較の原則を堅持するとともに、官民対応関係を含め、われわれと十分交渉・協議し、合意の下に作業していただきたい。
(4) 諸手当については、来年の較差がどうなるかということ、あるいは総合的見直しの中でということであり、そこは然るべき時期に議論をさせていただくことになるが、住居手当については公務員宿舎料が大幅値上げとなることから、見直す必要が出てくると考えており、十分議論させてもらうことを確認しておきたい。
(5) 労働時間関係については、超勤720時間は絶対的上限としてそれ以上の勤務を禁止すべきであるし、少なくとも全員が360時間には収まるよう取り組むべき。
 超勤縮減の取組みについては本年度から体制を再編し、取組みを強化したと聞いており、来年度に向けては目に見える成果が上がるよう、政府全体として効果的に取組んでいただきたい。
(6) 介護について短時間勤務制度や休業制度を整備してもらいたい。要件を問わない短時間勤務制度も視野に入れて前向きに検討してもらいたい。
(7) 人事評価制度については、来年早々にも総務省の検討会の報告が予定されていること、給与の総合見直しでも検討事項となるということであり、われわれと十分話し合いながら、作業を進めてもらいたい。
(8) 再任用職員の給与制度の検討では、最低限現行水準の維持が基本にしてもらいたい。年金支給開始年齢が62歳となるときまでの定年延長実現を実現していただきたい。
(9) 心の健康づくりについて1次から3次までの予防の総合的な推進を強化していただきたい。セクハラ、パワハラの具体的な防止策を強化すべきだ。
(10) 期間業務職員制度運用の検証を行い、改善すべき点はきちんと直していただきたい。あわせて、非常勤職員の休暇制度についても前向きに対応してもらいたい。
(11) 育児休業の男性取得目標の実現に向けて、公務部門でもしっかりと対応していただききたい。

 申入れに対し、平野審議官は「本日の申入れについては承った。十分検討の上、然るべき時期に回答することとしたい」として、次の通り現時点での見解を示した。
(1) 給与については、民間の動向を見ると、本年の冬のボーナスが昨年と比べ上向いているとの報道がなされているが、業種間においてバラツキが見られるなど今後の推移を注視していく。引き続き職員団体の意見も伺いつつ、人事院としての役割を果たして参りたい。
(2) 今年8月の給与等に関する報告で表明した給与制度の総合的見直しについては、現在、報告で言及した諸課題について鋭意検討を進めている。今後、職員団体や各府省など関係各方面とも意見交換を行いながら検討を進め、早期に結論を得たいと考えている。
(3) 公務員の給与改定については、今後とも、情勢適応の原則に基づき、民間準拠により適正な給与水準を確保するという基本姿勢に立ったうえで、適切に対処していく。月例給のラスパイレス比較を含め、基本的な面で従来からのスタンスにかわりはない。
(4) 住居手当の手当額について、宿舎使用料が改定され、平均使用料が上昇した場合には、その状況を参考としつつ、その他の事情も総合的に勘案した上で、住居手当の見直しの必要性等について検討することになる。
(5) 超過勤務や心の健康、両立支援策などの課題については、人事院として重要と考え取り組んできたところであり、引き続き検討していきたい。
(6) 人事評価の実施に関しては、現在、総務省において、有識者を構成員とする「人事評価に関する検討会」が設けられ、人事評価の運用実態の検証、人事評価の厳正な実施に向けた制度・運用の改善方策、職員の成績向上に向けた措置の検討等が行われている。人事院が所掌する人事評価結果の任用や給与への活用に関する制度等の説明等については、必要な協力を行うこととしている。
(7) 雇用と年金の接続について、人事院としては、今夏の給与等に関する報告において、年金支給開始年齢が62歳に引き上げられる平成28年度までには、本院の意見の申出に基づく段階的定年延長を含め再検討がなされる必要がある旨表明している。
 なお、再任用職員の俸給水準や手当の見直しについては、必要な検討を進めることとしたい。
(8) 各府省において期間業務職員制度の適正な運用がなされるよう人事院としても 必要な取組を行ってきたところであり、引き続き、留意していく所存。

 現時点の審議官の見解を踏まえ、公務員連絡会は「国会に国家公務員法等改正法案が提出され、成立すれば内閣人事局が設置されるが、遺憾なことに自律的労使関係は措置されておらず、労働基本権の制約は維持されることになる。公務員連絡会としては、使用者機関たる内閣人事局と交渉をしていくが、基本権の制約が続く以上、代償機関としての人事院の役割は変わらないのでその責務をしっかりと果たしていただきたいし、われわれと真摯に向き合ってもらいたい。申入れ内容を十分に精査していただいて、12月には誠意ある回答をお願いしたい」と要望したのに対し、平野審議官が了としたことから、提出交渉を終えた。


資料1.総務省への基本要求書

2013年11月26日


総務大臣
 新 藤 義 孝 殿

公務員労働組合連絡会
議長 棚 村 博 美


2014年度賃金・労働条件に関わる基本要求事項の申入れ


 日本経済の緩やかな回復と円安傾向の下で、輸入食料や原燃料価格の高騰により、消費者物価は上昇傾向にあります。一方、非正規労働者数は4割に迫ろうとしており、勤労者の所得格差が拡大し、家計は厳しい状況にあり、加えて生活保護受給者も依然として高水準で、社会的格差は許容し得ないものとなっています。
 こうした状況のもと、東日本大震災からの一刻も早い復興・再生はもとより、国民の雇用と生活を支えていくために公務・公共サービスの役割は高まっており、これに応えるため、公務員労働者は、日夜自らの職務遂行に邁進しているところです。しかし、業務が増え続けているにもかかわらず、予算も人員も大きく削減され、超過勤務の増加など公務労働者の労働条件も悪化し、長期病休者も少なくなく、国民の期待に応えていくには厳しい勤務環境に置かれています。
 行政や公務員労働者が、国民の期待に応え、質の高い公務・公共サービスを確実に提供していくためには、公務労働者の雇用の安定と賃金・労働条件の改善・確保が不可欠です。その意味で、公務員の人事行政に責任を持つ中央人事行政機関としての総務省が、その役割を十全に果たすことが求められています。
 さて、2014年度の基本要求事項においては、非常勤職員を含めた公務員労働者の雇用・労働条件と生活水準の改善をはじめ年金支給開始が62歳となるときまでに定年延長を実現することなどを最重点課題としています。
 貴職におかれては、こうした点を十分認識し、本年の基本要求事項の実現に向けて最大限努力されることを強く申し入れます。



一、給与をはじめとする雇用・労働条件確保に関わる事項
(1) 公共サービス基本法に基づいて良質な公共サービスが適正かつ確実に実施されるよう、公務員等公共サービス従事者の社会的に公正な賃金・労働条件と人件費予算を確保すること。
(2) 独立行政法人改革や地方分権改革に当たっては、事務・事業のあり方を十分検証するとともに、見直しに伴って雇用問題が生じる場合には、政府として統一的な体制を確立するなど、国が雇用の承継に責任を持つこと。
(3) 職務の責任や仕事の内容に相応しい社会的に公正な給与水準を確保することとし、公務員労働者のゆとり・豊かな生活を保障すること。2014年度においては、経済の好循環をめざす民間実勢を踏まえ、人事院勧告の取扱いを含めて、公務員連絡会との交渉・協議に基づき公務員労働者の賃金水準を改善すること。また、使用者の責任において、実態に見合った超過勤務手当の支給、独立行政法人等を含めた公務員給与の改定に必要な財源の確保に努めること。
(4) 公務員給与のあり方に対する社会的合意を得るよう、使用者責任を果たすこと。

二、労働時間、休暇及び休業制度の拡充に関わる事項
(1) 公務に雇用創出・多様就業型のワークシェアリングを実現することとし、本格的な短時間勤務制度の具体的検討に着手すること。
(2) 公務におけるワーク・ライフ・バランスを確保するため、年間総労働時間1,800時間体制の確立と、ライフステージに応じ、社会的要請に応える休暇・休業制度の拡充、などを実現すること。
(3) 政府全体として超過勤務縮減のための体制を確立し、超過勤務命令の徹底やIT等を活用した厳格な勤務時間管理と実効性のある超過勤務縮減策を取りまとめ、直ちに実施することとし、その具体化に向けて公務員連絡会と協議すること。

三、福利厚生施策等に関わる事項
(1) 公務員の福利厚生を勤務条件の重要事項と位置付け、職員のニーズ及び民間の福利厚生の正確な実態把握に基づき、その抜本的な改善・充実を図ること。
(2) 「国家公務員福利厚生基本計画」の着実な実施を図るため、政府全体としての実施体制を確立し、使用者としての責任を明確にして積極的に対応すること。とくに、メンタルヘルスに問題を抱える職員が増加していることから、引き続きその原因追究と管理職員の意識改革に努めることとし、必要な心の健康診断、カウンセリングや「試し勤務」など復職支援施策を着実に実施すること。
(3) 2014年度の予算編成に当たっては、健康診断の充実など、職員の福利厚生施策の改善に必要な予算を確保すること。なお、予算の取扱いについては、公務員連絡会と十分交渉・協議を行い、合意に基づいて進めること。
(4) 福利厚生の重要施策であるレクリエーションについて、予算及び事業が休止されている実態を重く受け止め、その理念の再構築と予算確保や事業の復活に努めること。

四、雇用と年金の接続に関わる事項
(1) 雇用と年金の接続について、当面は、3月26日の閣議決定に基づき、希望する者全員の再任用と生活水準を確保すること。
(2) 雇用と年金の確実な接続のために必要な定員の確保に向け、弾力的扱いなどについて公務員連絡会と十分交渉・協議すること。
(3) 人事院の意見の申出等を踏まえ、年金支給開始年齢が62歳になるときまでには定年延長を実現することとし、公務員連絡会との交渉・協議に基づいて具体的措置を講じること。

五、非常勤職員制度等の改善に関わる事項
(1) 非常勤職員制度の抜本的改善をめざし、公務員連絡会が参加する検討の場を設置し、政府全体として解決に向けた取組みを推進すること。当面、非常勤職員制度について、法律上明確に位置付けることとし、勤務条件等について常勤職員との均等待遇の原則に基づき、常勤職員に適用している法令、規則を適用すること。
(2) 期間業務職員制度について、施行から3年が経過することから、制度の課題について検証し、当該職員の雇用の安定と処遇の改善となるよう、適切な運用に努めること。

六、男女平等の公務職場実現に関わる事項
(1) 公務における男女平等の実現を人事行政の重要事項と位置づけ、職業生活と家庭生活の両立支援、女性公務員の採用、登用の拡大、女性の労働権確立や環境整備などを積極的に推進すること。
(2) 「女性国家公務員の採用・登用の拡大に関する指針」に基づく各府省の実施計画における目標達成やメンター制度の実効性確保に向け、使用者として必要な取組みを着実に実施すること。
(3) 「第3次男女共同参画基本計画」及び「日本再興戦略」に基づき、2020年までに男性の育児休業取得率13%を達成できるよう、条件整備や必要な指導を行うこと。
(4) 次世代育成支援対策推進法に基づき各府省が策定した「特定事業主行動計画」の着実な推進に取り組むよう、各府省を指導すること。

七、公務員制度改革に関わる事項
 国家公務員制度改革基本法に基づく公務員制度の検討に当たっては、基本法12条やILO勧告に基づき、公務員の労働基本権、団体交渉に基づく賃金・労働条件決定制度を確立することを着実に検討することとし、具体案を早急に提示すること。また、その検討作業に当たっては、公務員連絡会と十分交渉・協議し、合意に基づいて抜本的な改革を実現すること。

八、人事評価制度に関わる事項
 人事評価制度について、円滑に運営されるよう、引き続き制度の周知や評価者訓練の徹底に努めること。「人事評価に関する検討会」報告に基づいて、制度の見直し等を行う場合には、公務員連絡会と十分交渉・協議すること。

九、早期退職募集制度に関わる事項
 早期退職募集制度について、制度の周知に努め円滑な運用ができるよう、各府省を指導すること。

十、その他の事項
(1) 障がい者雇用促進法に基づき、障がいの種別をこえた雇用促進を図ること。とくに、知的障がい者及び精神障がい者の雇用促進に関する具体的方策を明らかにすること。
(2) 公務における外国人の採用を拡大すること。
(3) 国が民間事業者等に業務委託や入札等により事務事業の実施を委ねる場合においては、公正労働基準の遵守を必要条件とすること。


資料2.人事院への基本要求書

2013年11月26日


人事院総裁
 原  恒 雄 殿

公務員労働組合連絡会
議長 棚 村 博 美


2014年度賃金・労働条件に関わる基本要求事項の申入れ


 日本経済の緩やかな回復と円安傾向の下で、輸入食料や原燃料価格の高騰により、消費者物価は上昇傾向にあります。一方、非正規労働者数は4割に迫ろうとしており、勤労者の所得格差が拡大し、家計は厳しい状況にあり、加えて生活保護受給者も依然として高水準で、社会的格差は許容し得ないものとなっています。
 こうした状況のもと、東日本大震災からの一刻も早い復興・再生はもとより、国民の雇用と生活を支えていくために公務・公共サービスの役割は高まっており、これに応えるため、公務員労働者は、日夜自らの職務遂行に邁進しているところです。しかし、業務が増え続けているにもかかわらず、予算も人員も大きく削減され、超過勤務の増加など公務労働者の労働条件も悪化し、長期病休者も少なくなく、国民の期待に応えていくには厳しい勤務環境に置かれています。
 行政や公務員労働者が、国民の期待に応え、質の高い公務・公共サービスを確実に提供していくためには、公務労働者の雇用の安定と賃金・労働条件の改善・確保が不可欠です。その意味で、労働基本権制約の代償機関として人事院が、その役割を十全に果たすことが求められています。
 さて、2014年度の基本要求事項においては、非常勤職員を含めた公務員労働者の雇用・労働条件と生活水準の改善をはじめ、年金支給開始が62歳となるときまでに定年延長を実現することなどを最重点課題とするとともに、給与制度の総合的見直しについて、公務員連絡会と十分に交渉・協議し、合意に基づいて進めることを強く求めます。
 貴職におかれましては、こうした点を十分認識し、本年の基本要求事項の実現に向けて最大限努力されることを強く申し入れます。



一、給与に関わる事項
1.給与制度の総合的見直しについて
 本年の人事院報告で示された給与制度の総合的見直しの検討にあたっては、公務員連絡会と十分交渉・協議し、合意に基づいて進めること。

2.給与水準及び体系等について
(1) 給与水準の確保
@ 職務の責任や仕事の内容に相応しい社会的に公正な月例給与水準を確保することとし、公務員労働者のゆとり・豊かな生活を保障すること。
 2014年度の給与勧告においては、経済の好循環をめざす民間実勢を踏まえ、公務員の賃金水準を改善すること。
A 期末・勤勉手当については、民間実態を正確に把握し月数増を実施すること。
(2) 公正・公平な配分
 配分については、別途人事院勧告期に提出する要求も含め、公務員連絡会と十分交渉し、合意すること。
(3) 社会的に公正な官民給与比較方法の確立
@ 当面、現行の比較企業規模を堅持することとし、社会的に公正な仕組みとなるよう改善すること。また、一時金についても、月例給と同様に、同種・同等比較を原則とするラスパイレス比較を行うこと。
A 比較対象職種の拡大への対応については、公務員連絡会と十分交渉・協議し、合意に基づいて進めること。
(4) 再任用職員の給与制度等について
 「国家公務員の雇用と年金の接続について」(2013年3月26日閣議決定)に基づく再任用職員の給与制度等の措置についての検討に当たっては、公務員連絡会と十分交渉・協議し、合意に基づいて進めること。

3.諸手当の見直し・検討について
(1) 住居手当については、公務員宿舎使用料引上げに伴って見直す場合には、公務員連絡会と十分交渉・協議し、合意に基づいて進めること。
(2) その他の手当についても、見直し・検討を行う場合は、その可否を含めて公務員連絡会と十分交渉・協議し、合意に基づいて進めること。

二、労働時間、休暇及び休業に関わる事項
1.年間労働時間の着実な短縮について
 ワーク・ライフ・バランスを確保するため、公務における年間総労働時間1,800時間体制を確立することとし、次の事項を実現すること。
(1) 本府省における在庁時間削減の取組みの実施状況を踏まえ、その取組みの強化・徹底を図ることとし、人事院として積極的役割を果たすことにより、在庁時間の一層の削減に努めること。
(2) 他律的業務を含む超勤上限目安時間については、完全に遵守できるよう各府省に対する指導を強化すること。
(3) 超過勤務を縮減するため、超過勤務命令の徹底やIT等を活用した職場における厳格な勤務時間管理を直ちに行うこと。また、新たに上限規制を導入することを含め、政府全体として、より実効性のある超過勤務縮減の具体策を取りまとめ、着実に実施すること。
(4) 1か月当たり45時間を超え60時間以内の超過勤務に対する割増率については、民間企業の実態を踏まえた見直しを行うこと。なお、超過勤務手当については、全額支給すること。

2.本格的な短時間勤務制度の早期実現等について
(1) 公務に雇用創出型・多様就業型のワークシェアリングを実現することとし、本格的な短時間勤務制度の具体的な検討に着手すること。
(2) 両立支援を推進するための多様で弾力的な勤務時間制度等の検討にあたっては、公務員連絡会と十分交渉・協議すること。

3.休暇・休業制度の拡充等について
 ライフステージに応じ、社会的要請に応える休暇・休業制度の拡充などについて、以下の事項を実現すること。
(1) 夏季休暇の日数を増やすこと。
(2) リフレッシュ休暇、リカレント休暇を新設すること。
(3) 休暇・休業制度の利用実態を検証し、より活用できるよう、制度の改善や環境整備に努めること。とくに、家族介護を理由とした離職を防止するため、介護休業制度を整備すること。
(4) 休暇の取得手続きについて、公務員の休暇権をより明確にする形で抜本的に改善すること。

三、人事評価制度の実施・活用に関わる事項
 人事評価制度の実施及び評価結果の活用状況について、中立・公正な人事行政や勤務条件を所管する立場から検証し、必要に応じて指導、改善措置等を講じることとし、公務員連絡会と十分交渉・協議すること。

四、雇用と年金の接続に関わる事項
(1) 雇用と年金の接続について、当面は、3月26日の閣議決定に基づき、希望する者全員の再任用と生活水準を確保すること。
(2) 年金支給開始年齢が62歳になるときまでには定年延長を実現すること。

五、福利厚生施策等に関わる事項
(1) 公務員の福利厚生を勤務条件の重要事項と位置付け、職員のニーズ及び民間の福利厚生の正確な実態把握を行い、その抜本的な改善・充実に向けた提言を行うこと。
(2) メンタルヘルスに問題を抱える職員が増加していることから、「職員の心の健康づくりのための指針」等に基づいた心の健康診断、カウンセリングや「試し出勤」など復職支援施策の着実な推進を図ること。
(3) パワー・ハラスメントについて、民間動向や2011年人事院調査の結果を踏まえ、適切な対策を講じること。また、セクシュアル・ハラスメントについては、実態把握に基づき、必要な対策を強化すること。

六、非常勤職員制度等の改善に関わる事項
 非常勤職員制度等の抜本的改善をめざし、次の事項を実現すること。
(1) 非常勤職員制度について、法律上明確に位置付けることとし、勤務条件等について常勤職員との均等処遇の原則に基づいて、関係法令、規則を適用すること。
(2) 「非常勤職員給与決定指針」の実施状況を点検・報告し、着実な処遇改善に努めること。加えて、常勤職員と同等の勤務を行っている非常勤職員の給与を俸給表に位置づけ、国に雇用される労働者の最低給与(高卒初任給相当)を定める人事院規則を制定すること。
(3) 期間業務職員制度について、施行から3年が経過することから、制度の課題について検証し、当該職員の雇用の安定と処遇の改善となるよう、適切な運用に努めること。
(4) 非常勤職員の休暇制度の改善について検討すること。

七、男女平等の公務職場実現に関わる事項
(1) 公務における男女平等の実現を人事行政の重要事項と位置づけ、職業生活と家庭生活の両立支援、女性公務員の採用、登用の拡大、女性の労働権確立や環境整備などを積極的に推進すること。
(2) 「女性国家公務員の採用・登用の拡大に関する指針」の着実な実施に向けた指導、メンター制度の実効性確保に向けて引き続き取組みを強化すること。
(3) 女性の労働権確立にむけ、次の事項を実現すること。
@ 女性が働き続けるための職場環境の整備に努めるとともに、職務範囲を拡大すること。
A 産前休暇を8週間、多胎妊娠の場合の産後休暇を10週間に延長すること。また、妊娠障がい休暇を新設すること。
(4) 育児休業及び育児のための短時間勤務等について、非常勤職員を含めて制度を十分に活用できるよう、引き続き周知と取得しやすい職場環境の整備を図るとともに、「第3次男女共同参画基本計画」及び「日本再興戦略」に基づき、2020年までに男性の育児休業取得率13%を達成できるよう、実効ある具体的促進策を講じること。
(5) 次世代育成支援対策推進法に基づく行動計画の着実な実行に向け、積極的な役割を果たすこと。

八、その他の事項
 公務遂行中の事故等の事案に関わる分限については、欠格による失職等に対する特例規定を設けること。

以上