公務員連絡会は、9月18日13時30分から、8月7日の人事院勧告の取扱い、稲田国家公務員制度担当大臣(当時)に提出した要求書に関する政府の検討状況を質すため、内閣人事局交渉を実施した。公務員連絡会からは幹事クラス交渉委員が出席し、内閣人事局からは堀江審議官らが対応した。
冒頭、公務員連絡会の大塚副事務局長が、本年の人事院勧告の取扱いについて@本年の給与改定については、勧告通り実施すること、A給与制度の総合的見直しに関わる勧告・報告については、その実施を見送る方針決定を行うこと、を改めて要求した上で、8月15日に行われた第1回の給与関係閣僚会議において「引き続き検討する」としてから1か月が経過した現時点における検討状況を明らかにするよう求めたのに対し、堀江審議官は次の通り回答した。
(1) 本年の給与の取扱いについては、8月7日に人事院から国家公務員の給与についての報告および勧告が提出されたことを受け、8月15日に第1回の給与関係閣僚会議を開催したところである。同会議においては、勧告の内容について内閣人事局から説明を行った後、関係閣僚からご発言があり、稲田国家公務員制度担当大臣からは、「労働基本権制約の代償措置の根幹を成す人事院勧告制度を尊重するとの基本姿勢に立って、国政全般の観点から誠意をもって検討を進め、早急に結論を出す必要がある」旨の発言をいただいたところであり、今後、適切な時期に改めて給与関係閣僚会議を開催することとなっている。
(2) なお、人事院勧告どおり給与制度の総合的見直しを実施する場合には、退職手当については、平成17年以降の改正経緯を踏まえ、職員の公務への貢献度をより的確に反映するよう、現行支給水準の範囲内で「調整額」を拡大する方向で検討しているところ。
これに対し、大塚副事務局長は以下のとおり公務員連絡会の考えを表明した。
(1) 官民較差に基づく月例給と一時金の引上げ改定については、公務員の勤務条件の決定が人事院勧告制度の下にある限り、勧告通り実施することは当然のことであり、速やかに完全実施の結論を出していただきたい。
(2) 他方、総合的見直しについては、その必要性を含めてわれわれと人事院の間で合意が得られず、一方的な勧告となった。大臣に要求書を提出した際に議長から申し上げたが、被災地をはじめ、地域で全力で奮闘している公務員労働者の納得を得ないまま、しかもわれわれが少なくとも東日本大震災の集中復興期間終了後に改めて議論すべきと求めたのに対し、人事院が、本年勧告を行ったことは極めて遺憾だ。給与が下がるだけの職員から見れば、人事院がいうような士気が向上するはずがなく、中央・地方の格差も一層拡大する。さらに、地域手当の指数と支給割合の関係、勤務地と居住地の関係、賃金水準の格差と物価指数のズレ、地域経済への影響など多くの問題を抱えている。
(3) 公務員連絡会としては、総合的見直し勧告の実施は見送るべきと考えているが、こうした問題について、使用者である人事局とも十分な議論をさせてもらいたい。今、総合的見直しの実施を前提に退職手当を見直すというような話があったが、順番が違うのではないか。本年の給与改定の実施を決めることが先であり、それを前提に総合的見直しについて十分議論した上で、退職手当をどうしようかということになるのであり、今回の提案は極めて遺憾である。
さらに、公務員連絡会の各交渉委員は、次のとおり総合的見直しの問題点を追及し、その実施見送りを迫った。
(1) 引き下げ幅が大きい中高年層は職場において中心的な役割を担っており、見直しによってこれら職員のモチベーションが低下するのみならず職場全体の雰囲気の悪化につながる可能性が大きい。人事院がいうような士気の向上はありえない。
(2) 職員の多くは地方で働いており、給与が下がるだけだ。現場には強い不満があり、実施すべきでない。
(3) 震災復興で全国から職員が派遣されており、使命感を持って被災地で活動しているにも関わらず給与が下がるようなことがあれば、モチベーションを保つことができない。総合的見直しは政府の判断で実施を見送るべきだ。
これに対し堀江審議官は、「本日は、様々な御指摘、御意見を承った。引き続き、皆さんの御意見等も伺いながら、誠意をもって検討してまいりたい」と応えた。
最後に大塚副事務局長は、「われわれの要求を踏まえて、まずは本年の給与改定を勧告通り実施することを速やかに決めてもらいたい。また、総合的見直しについては、われわれと引き続き十分な議論をするよう強く要請する。今後の政策統括官との交渉では誠意ある回答をお願いしたい」と締めくくった。
以上