公務労協地方公務員部会は、2月17日、全国人事委員会連合会(全人連)に対して、2015年度地方公務員の給与勧告等に関する要請を行い、要請書に対する回答を引き出した。また、2月18日には、高市総務大臣に対して、2015春季要求書を提出した。今後、3月25日の回答指定日に向け、総務省との交渉を進めることとする。
交渉の経過はそれぞれ次の通り。
<全国人事委員会連合会要請の経過>
17日14時30分から都内で行われた全人連への要請には、地方公務員部会からは永井議長(全水道委員長)のほか企画調整委員代表、幹事、事務局長が出席し、全人連からは関谷会長(東京都人事委員会委員長)をはじめ、都道府県人事委員会のブロック代表および政令市の代表者が対応した。
冒頭、永井議長は要請書(資料1)を提出し、次の通り述べた。
(1) 安倍内閣は、経済最優先でデフレからの脱却をめざし、景気回復及びその実感を全国津々浦々にまで届けることを明言している。しかし、各種世論調査からも、昨年4月の消費税増税後の家計消費は依然として停滞ぎみであり、未だ地方経済に景気回復が浸透している状況にはない。「経済の好循環実現」のためには、物価上昇や経済成長と整合した賃上げをはかり、広く社会全体の底上げ・底支え、格差の是正が焦眉の課題だ。
(2) 昨年は、ほとんどの人事委員会において月例給、一時金の引上げ勧告が行われたことから、その後の確定期の交渉を通じ、一部を除いて4月に遡及してプラス改定での決着となった。人事院が勧告した「給与制度の総合的見直し」に関しては、多くの人事委員会において、国に準じた勧告を行ったものの、各地域における公民比較の精確な把握と配分という観点から、給与全体の水準に配慮した制度見直しとするなど、専門機関としての機能を発揮されたものと受け止めている。
(3) 行政や公務員労働者が、国民の期待に応え、質の高い公務・公共サービスを確実に提供していくためには、公務労働者の雇用の安定と賃金・労働条件の改善・確保が不可欠だ。そのためにも、各人事委員会が、労働基本権制約の代償機関の立場から、職員の利益保護の役割・使命を十分認識され、これから申し上げる事項の実現に向け最大限の努力を払われるよう要請する。
続いて、加藤事務局長が要請書の趣旨を説明した。
こうした地方公務員部会の要請に対し、関谷全人連会長は以下の通り回答した。
<全人連会長回答>
平成27年2月17日
全人連会長の関谷です。
私から全国の人事委員会を代表してお答えいたします。
ただいまの皆様からの要請につきましては、確かに承りました。
早速、役員道府県市を通じて、全国の人事委員会にお伝えします。
折角の機会ですので、現在の状況認識等について、一言、申し上げます。
既に始まっている本年の春季労使交渉では、ベースアップをはじめ、賃上げに関する様々な議論がなされているところです。昨年12月の政労使会議では、経済の好循環の継続に向け、引き続き賃金上昇に向けた取組を進めていくことを確認するとともに、仕事や役割等に応じた賃金体系の在り方等についても言及しております。
いずれにしても、業種や企業規模の違いを超えてどこまで賃金改善の動きが広がるのか、賃上げの手段等を含め、今後の行方を注視していく必要があると考えております。
現在、人事院及び各人事委員会では、民間給与の実態を的確に把握できるよう、本年の民間給与実態調査の実施へ向け、その準備を進めているところです。
今後、各人事委員会においては、社会経済の動向なども踏まえながら、本日の要請内容も含め、本年の勧告に向けた検討を進めていくことになろうかと思います。全人連といたしましては、本年も各人事委員会の主体的な取組を支援するとともに、人事院、各人事委員会との意見交換に努めてまいります。
あらためて申すまでもありませんが、人事委員会の重要な使命は、公務員の給与等の勤務条件について、社会情勢に適応した適正な水準を確保することであると認識しております。
今後の景気動向や財政健全化に向けた国の取組が与える影響など、地方公務員の給与を取り巻く環境は、不透明な状況におかれておりますが、私ども人事委員会は、本年も中立かつ公正な第三者機関として、その使命を十分に果たしてまいります。
私からは、以上です。
<総務大臣交渉の経過>
18日18時から総務省で行われた高市総務大臣との交渉には、永井議長のほか委員長クラス交渉委員が出席し、要求書(資料2)を提出した。
要求提出に当たって、永井議長は次の通り述べ、3月25日には誠意ある回答を示すよう強く求めた。
(1) 安倍内閣は、経済最優先でデフレからの脱却をめざし、景気回復及びその実感を全国津々浦々にまで届けることを明言している。しかし、各種世論調査からも、昨年4月の消費税増税後の家計消費は依然として停滞ぎみであり、未だ地方経済に景気回復が浸透している状況にはない。
(2) このような中、地方の活性化は不可欠であり、少子・高齢化対策、地域医療の確保、環境保全など、地域の行政需要を的確に反映させ、地域公共サービスの実態に見合った財源保障の実現が必要だ。政府は、当初予算案で、「まち・ひと・しごと創生事業費」に1兆円を計上するなど、地方創生の推進に向けて自治体が必要とする財源の充実をはかった。しかし、景気回復を見込んだ地方交付税の削減がされており、自治体間格差が生じる可能性もある。また、2020年度までに国・地方の基礎的財政収支を黒字化する目標達成に向けた計画の策定においては、消費税率10%への引上げが先送りされたことも踏まえると、歳出削減の圧力が地方財政に向けられるのではないかと危惧される。
(3) 地方公務員は、公務・公共サービスの役割が一層高まる中、各現場で粉骨砕身して業務を遂行している。公務に従事するものの士気を確保し、良質な公務・公共サービスを提供していくために、賃金改善、労働条件等をはじめとする2015年春季の要求を提出する。高市総務大臣におかれては、その実現に向け最大限の努力をいただくよう要求する。
これに対し、高市総務大臣は「ただいま要求書を受けとり、要求内容の要旨を承った。各要求事項については、検討の上、しかるべき時期に回答させていただく」と答え、回答日に向け要求内容に対し検討する姿勢を示した。
(資料1)
2015年2月17日
全国人事委員会連合会
会 長 関 谷 保 夫 様
公務公共サービス労働組合協議会
地方公務員部会議長 永井 雅師
要 請 書
各人事委員会の地方公務員の給与・労働条件の改善に向けたご努力に敬意を表します。
さて、安倍内閣は、経済最優先でデフレからの脱却をめざし、景気回復及びその実感を全国津々浦々にまで届けることを明言しています。しかし、各種世論調査からも、昨年4月の消費税増税後の家計消費は依然として停滞ぎみであり、未だ地方経済に景気回復が浸透している状況にはありません。「経済の好循環実現」のためには、物価上昇や経済成長と整合した賃上げをはかり、広く社会全体の底上げ・底支え、格差の是正が焦眉の課題となっています。
昨年は、ほとんどの人事委員会において月例給、一時金の引上げ勧告が行われたことから、その後の確定期の交渉を通じ、一部を除いて4月に遡及してプラス改定での決着となりました。
人事院が勧告した「給与制度の総合的見直し」に関しては、多くの人事委員会において、国に準じた勧告を行ったものの、各地域における公民比較の精確な把握と配分という観点から、給与全体の水準に配慮した制度見直しとするなど、専門機関としての機能を発揮されたものと受け止めております。
行政や公務員労働者が、国民の期待に応え、質の高い公務・公共サービスを確実に提供していくためには、公務労働者の雇用の安定と賃金・労働条件の改善・確保が不可欠です。
そのためにも、各人事委員会が、労働基本権制約の代償機関の立場から、職員の利益保護の役割・使命を十分認識され、下記事項の実現に向け最大限の努力を払われますよう要請します。
記
1.2015年度の給与改定に当たっては、民間賃金実態を精確に把握するとともに、公民較差については給料表を中心に確実に配分するなど、地方公務員の生活を改善するため、賃金水準を引き上げること。
2.公民給与比較方法について、当面現行の比較企業規模を堅持するとともに、社会的に公正な仕組みとなるよう、抜本的に改善すること。また、一時金の公民比較は、月例給と同様に、同種・同等比較を原則とするラスパイレス比較を行うこと。
3.2015年の勧告において、給与制度の総合的見直しを見送った人事委員会においては、その自主的・主体的判断を堅持すること。
4.諸手当の改善については、地域の実情を踏まえつつ、組合との十分な交渉・協議に基づくこと。
5.臨時・非常勤職員の処遇改善に関わって、総務省通知「臨時・非常勤職員及び任期付職員の任用等について(2014年7月4日、総行公第59号)」を踏まえ、人事委員会として可能な対応を行うこと。
6.雇用と年金の接続について、当面、希望する者の再任用と生活水準を確保するため、給与制度の見直しをはかること。また、年金支給開始年齢が62歳になるときまでには定年延長を実現すること。
7.公立学校教職員の賃金に関わり、各人事委員会が参考としうるモデル給料表を作成する際には、関係労働組合との交渉・協議を行うこと。
8.公務におけるワーク・ライフ・バランスを確保するため、年間総労働時間を早期に1,800時間程度に短縮し、引き続き次の事項の実現に努めること。
(1) 超過勤務規制のために、積極的施策を推進すること。
(2) 1か月当たり45時間を超え60時間以内の超過勤務に対する割増率については、民間企業の実態を踏まえた引上げを行うこと。
9.各種休暇制度を新設・拡充し、総合的な休業制度を確立すること。とくに、家族介護を理由とした離職を防止するための介護休業制度の拡充等必要な措置をはかること。また、育児休業・介護休暇に関して男性の取得促進のための必要な措置を行 うこと。
10.公務職場における男女平等の実現を人事行政の重要課題と位置づけ、必要な施策の確立をはかること。
11.実効あるハラスメント防止策を引き続き推進するため、実態把握の実施と、それに基づいた必要な対策を講じること。
12.公務職場における障がい者、外国人採用の促進をはかるため、職場環境の整備を含め合理的配慮の提供等必要な措置を行うこと。とくに、知的障がい者及び精神障がい者等の雇用促進に関する具体的方策を明らかにすること。
13.各人事委員会の勧告に向けた調査や作業に当たっては、組合との交渉・協議、合意に基づき進めること。
(資料2)
2015年2月18日
総務大臣
高 市 早 苗 様
公務公共サービス労働組合協議会
地方公務員部会議長 永井 雅師
要 求 書
貴職の地方公務員の賃金・労働条件の改善に向けたご努力に敬意を表します。
公務労協地方公務員部会は、より質の高い地域公共サービスを提供するため、日々懸命に努力している職員の処遇改善等の実現をめざして取組みを進めています。
さて、安倍内閣は、経済最優先でデフレからの脱却をめざし、景気回復及びその実感を全国津々浦々にまで届けることを明言しています。しかし、各種世論調査からも、昨年4月の消費税増税後の家計消費は依然として停滞ぎみであり、未だ地方経済に景気回復が浸透している状況にはありません。
このような中、地方の活性化は不可欠であり、少子・高齢化対策、地域医療の確保、環境保全など、地域の行政需要を的確に反映させ、地域公共サービスの実態に見合った財源保障の実現が必要です。政府は、当初予算案で、「まち・ひと・しごと創生事業費」に1兆円を計上するなど、地方創生の推進に向けて自治体が必要とする財源の充実をはかりました。しかし、景気回復を見込んだ地方交付税の削減がされており、自治体間格差が生じる可能性もあります。また、2020年度までに国・地方の基礎的財政収支を黒字化する目標達成に向けた計画の策定においては、消費税率10%への引上げが先送りされたことも踏まえると、歳出削減の圧力が地方財政に向けられるのではないかと危惧されます。
地方公務員は、公務・公共サービスの役割が一層高まる中、各現場で粉骨砕身して業務を遂行しています。公務に従事するものの士気を確保し、良質な公務・公共サービスを提供していくために、下記の通り、賃金改善、労働条件等をはじめとする2015年春季の要求を提出いたします。
貴職におかれましては、その実現に向け最大限の努力をいただきますよう要求します。
記
1.2015年度の賃金改善について
(1) 地方公務員の賃金の改善のために尽力し、所要の財源を確保すること。
(2) 自治体における賃金・労働条件の決定にあたっては、地方自治の本旨に基づき、労使交渉・合意を尊重すること。とくに、地方公務員の給与制度の総合的見直しの導入に関しては、地方自治体の自主的・主体的な決定を尊重すること。
2. 改正地方公務員法について
(1) 人事評価制度の具体的制度設計にあたっては、各自治体における主体的決定を尊重すること。また、設計段階から労使の交渉・協議をはかるなど、職員の理解と周知を促進すること。
(2) 等級別基準職務表の条例化にあたっては、各団体の規模・組織構成が大きく異なることから、各自治体の主体的決定を尊重し、画一的な助言を行わないこと。
3.労働時間、休暇及び休業等について
(1) 公務におけるワーク・ライフ・バランスを確保するため、年間総労働時間1,800時間体制の確立と、ライフステージに応じ、社会的要請に応える休暇・休業制度の拡充などを実現すること。
(2) 各自治体におけるメンタルヘルスを含む職員の健康管理体制や職場の労働安全衛生体制の確立等が一層推進されるよう対応すること。
4.新たな高齢雇用施策の充実について
(1) 段階的定年延長に関わっては、地方自治体においても国に遅れないよう制度設計を進めること。
(2) 年金支給開始年齢の段階的引上げにともない、希望する職員全員の雇用を確保するための自治体における制度整備を喫緊の課題として対応すること。
5.臨時・非常勤等職員の雇用確保と処遇の改善について
(1) 非常勤職員の雇用・身分等の差別的取扱いを解消するため、臨時・非常勤等職員制度についてパート労働法等民間労働法制の趣旨をふまえ、法律上明確に位置づけること。
(2) 勤務条件等について、処遇の改善を進めるため、総務省通知「臨時・非常勤職員及び任期付職員の任用等について(2014年7月4日、総行公第59号)」のさらなる周知をはかること。
以上