公務員連絡会書記長クラス交渉委員は、3月11日15時から、内閣人事局人事政策統括官との交渉を実施し、2月18日に提出した2015春季要求に対する現段階における回答を引き出した。
冒頭、吉澤事務局長が「本日で東日本大震災から4年が経過したが、被災地の復興・再生はまだ道半ばであり、国公も地公もこれからが正念場だ。お互いの果たすべき役割を強く認識しておきたい」と述べたのち、現段階の回答を求めた。これに対し、笹島人事政策統括官は「2月18日に提出された要求書について、現時点における回答をさせていただく」と述べ、次の通り答えた。
1.2015年度賃金について
国家公務員の給与改定に当たっては、国家公務員の給与を社会一般の情勢に適応させるとの原則の下、人事院勧告制度を尊重することが基本姿勢と考えている。
本年の給与改定については、人事院勧告も踏まえ、国政全般の観点に立って総合的に検討を行った上で方針を決定してまいりたいと考えている。その際には、皆様とも十分に意見交換を行ってまいりたい。
2.非常勤職員等の雇用、労働条件の改善について
非常勤職員の処遇改善については、平成22年10月から期間業務職員制度を導入したところであるが、内閣人事局としては、その適正な運用について、引き続き、皆様のご意見も伺って参りたい。
また、人事管理官会議等の場を通じて、期間業務職員制度の適正な運用や非常勤職員に対する適正な給与の支給など、非常勤職員に対する適正な処遇に努めるよう各府省に対し引き続き周知を図ってまいりたい。
3.労働時間、休暇及び休業等について
女性活躍・ワークライフバランスとも密接に関わるものであり、男女全ての職員の「働き方改革」を進めることが重要であるとの観点から昨年10月に「国家公務員の女性活躍とワークライフバランス推進のための取組指針」を取りまとめたところであるが、この中で、超過勤務縮減に向けた取組として、@超過勤務の必要性の事前確認の徹底、A事務次官等による部局ごとの超過勤務等の状況把握、B各府省等にまたがる調整業務による超過勤務の縮減等についても盛り込んでいるところである。各府省においては、同指針を踏まえて策定された取組計画の下、具体的な取組が行われているものと承知している。
引き続き、皆様のご意見も伺いながら、政府一丸となって、超過勤務の縮減に向けて取り組んでまいりたい。
4.ワーク・ライフ・バランスの推進、女性の労働権確立について
女性の活躍推進については、「隗より始めよ」の観点から国が率先して取り組むとともに、職員のワークライフバランスについても一体的に推進しているところ。
各府省においては、昨年10月に取りまとめられた取組指針を踏まえ、それぞれの実情を踏まえて創意工夫し、実効的な取組等を盛り込んだ取組計画を策定したところ。各府省は、この計画に基づき、総合的かつ計画的な取組を進めることとしている。
内閣人事局としても、各府省の取組を毎年度フォローアップするとともに、必要に応じて各府省の取組の促進に資するようなサポートを行うことで、男女全ての職員のワークライフバランスの実現と女性職員の採用・登用の拡大に向け、取組を推進してまいりたい。
5.高齢者雇用施策について
雇用と年金の接続については、平成25年3月の閣議決定に沿って、定年退職者の再任用を政府全体で着実に推進してまいりたい。
なお、平成26年8月の人事院勧告を受け、所要の法改正等を行い、再任用職員に対し、単身赴任手当を支給することとしたところであるが、人事院の報告では、再任用職員の給与水準について、民間の動向等を注視するとともに、各府省における今後の再任用制度の運用状況を踏まえ、諸手当の取扱も含め、必要な検討を行っていくこととされており、政府としても人事院における所要の検討を踏まえ、適切に対応してまいりたい。
また、雇用と年金の接続については、平成26年4月に成立した国家公務員法等の一部を改正する法律の附則第42条の規定において、平成28年度までに、定年の段階的引上げ、再任用制度の活用の拡大その他の措置を講ずることについて検討するものとされているところ。政府としては、同規定及び平成25年3月の閣議決定を踏まえ、再任用制度の活用状況や民間の高年齢者雇用確保措置の実施状況等を勘案し、雇用と年金の接続の在り方について改めて検討しているところであり、検討に際しては、職員団体も含めた関係者の意見を聞いて進めてまいりたい。
6.福利厚生施策の充実について
心の健康づくり対策については、平成22年度から新任管理者等を対象としたe-ラーニングによるメンタルヘルス講習を実施しており、平成25年度からは、それまでの「ラインケア」のほか「相談対応」を加えるなど、内容の拡充を図ったところである。
今後とも、福利厚生施策の効率かつ効果的な推進方策等について、引き続き検討を進めてまいりたい。
7.公務員制度改革について
自律的労使関係制度については、多岐にわたる課題があり、引き続き慎重に検討する必要があると考えている。皆様とは、今回のような意見交換の機会を活用し、引き続き意見交換をさせていただきたい。
8.その他の事項について
障害者雇用については、チャレンジ雇用の取組を推進しているところであり、平成22年度から本府省を対象とした連絡会を開催しているほか、平成25年度から地方ブロックにおいて人事担当課長会議を開催し、障害者の雇用促進を各府省に要請してきたところ。
また、平成26年度においては、複数名の障害者を内閣人事局内のスペースに集めて、各部局から集約した業務を行う「障害者ワーク・サポート・ステーション」を設置するなど、障害者の雇用促進を図る取組を進めているところ。
これに対して、吉澤事務局長らは次の通り内閣人事局の見解を質した。
(1) 自律的労使関係を措置しない国公法等改正が行われた後においては、「人勧尊重」は今までとは意味合いが当然異なってくる。6月に決定される骨太の方針において財政再建計画の策定が予定されており、本年の人勧の内容にかかわらず、公務員給与をめぐる状況は大変厳しい。内閣人事局としても緊張感を持った対応をしてもらいたい。
(2) 公共サービス基本法の趣旨は内閣人事局が定めた様々な方針等に活かされていると認識しているが、見解如何。他方で、財政再建が課題となる中で公共サービス基本法の趣旨が満たされているのか、という問題がある。業務改革を前提とし、定員の扱いを検討するのが基本だが、現場は厳しい状況にある。例えば、長期間新規採用がいない状況では技術の継承が困難であるし、IT化に馴染まない業務の改善には限界がある。厳しい職場実態を踏まえた定員の確保が必要だ。人事行政の運営にあたって、配慮してもらいたい。
(3) 非常勤職員の賃金については、連合の方針に基づき、37円の引上げを求めている。昨年の給与改定で俸給表が改善されたが、新年度からの非常勤給与にも反映されているのか。
(4) 非常勤職員の賃金・労働条件について各府省の対応は統一されていない。内閣人事局としての役割を果たしていくべきだ。
(5) 新年度に向けて再任用の状況はどうか。希望どおりになっているのか。段階的定年延長の人事院の意見の申出は実施されていないが、勧告と権能は同じであり、実施されなければ相当大きな問題だ。2016年4月までの実施を検討すべきだ。
これらに対して、笹島人事政策統括官は次の通り応えた。
(1) 公務員の人件費についての議論は消えたわけではないし、財政再建もまだまだ途上だ。夏以降いろんな議論の展開があると思うので、皆さんと話し合いながら対応してまいりたい。
(2) 公共サービス基本法ができたことに意義があると考えている。「われわれがこうすべきこと」というものが盛り込まれた中身であり、公共サービス基本法の考え方も念頭においてに施策を進めている。
(3) 人事管理官会議で周知徹底することにより、各府省の非常勤職員の賃金・労働条件は改善してきていると考えている。引き続き、内閣人事局として指導してまいりたい。
(4) 再任用については状況を把握し、それも踏まえて検討していくことになる。無年金期間が1年以上に延びるということは職員にとって大きな転換点だ。内閣人事局としての考え方をきちんと整理しなければならない。来年度早々から本格的な議論をはじめ、平成28年4月の年金支給開始年齢の引上げに間に合うように検討していく。
最後に、吉澤事務局長は「24日の国家公務員制度担当大臣からの最終回答にむけ、要求に則した前向きな検討を求める」と強く要請し、本日の交渉を終えた。
以上