公務員連絡会は3月24日、委員長クラス交渉委員が有村国家公務員制度担当大臣、一宮人事院総裁と2015春季段階の最終交渉を行った。この交渉で国家公務員制度担当大臣、人事院総裁は、それぞれ資料1、2の通り、春の段階における最終的な回答を示した。
公務員連絡会は、同日開いた代表者会議で、「政府、人事院の回答は、課題認識を共有するとともに公務員連絡会の意見を聞く姿勢を確認したものの、われわれの要求に明確に応えていない。しかし、人事院勧告による賃金・労働条件決定制度のもと、予断を許さない公務をめぐる極めて厳しい情勢の中で、春の段階における交渉の到達点と受け止め、今後の人事院勧告期、賃金確定期に向け闘争態勢を継続・強化していく」との声明(資料3)を確認。25日の第3次全国統一行動では、人勧期の取組みの決意を固める時間外職場集会等の行動を実施することを決定した。
この日行われた国家公務員制度担当大臣、人事院総裁との交渉経過と回答内容は次の通り。
<人事院総裁交渉の経過>
一宮総裁との交渉は、15時から行われた。
冒頭、石原議長が、2015春季段階の最終回答を求めたのに対して、総裁は本年の民間春闘の動向について見解を述べた上で、現段階の考え方等を資料1の通り回答した。
この回答に対し、石原議長は次の通り見解を述べた。
(1) 連合の春季生活闘争では、先行・大手組合が昨年を上回る賃上げを獲得し、引き続き、「底上げ・底支え」「格差是正」を実現するため、中小組合や地域での取組みが粘り強く進められている。こうした民間の成果や物価上昇のもと、組合員の賃上げに対する期待は昨年以上に高まっている。夏の勧告では、非常勤職員を含めて賃上げが実現するよう、積極的な対応を求める。なお、官民比較については従前通りと受け止める。
(2) 本年は、女性の活躍とワークライフバランスの推進が、政府全体の重要課題となり、人事院においても新たな制度を含めた検討が進められている。それが実りあるものとなるためには、超過勤務の確実な縮減が不可欠だ。東日本大震災からの復興・再生もまだまだこれからであり、その着実な推進のためにも、公務員労働者が健康を害することなく職務に臨めるよう、関係者への働きかけを含めて、良好な労働条件を確保していただきたい。
(3) 先週決定された「少子化社会対策大綱」については、公務が率先して取り組めるよう、総裁の積極的な対応をお願いしたい。
(4) 新年度の定年退職者からは62歳になるまで公的年金が支給されず、雇用と年金のギャップは最長2年間に伸びることになる。残された時間は少ないが、人事院の意見の申出に基づいた定年延長を実現するよう、政府及び国会に対する具体的な対応を図る必要があることを改めて申し上げておく。
最後に石原議長は、「きょうの回答で、諸課題について、お互いに認識の共有ができたと考えるので、公務員連絡会の意見を聞きながら検討を進めていただきたい。本日の回答は、人事院の春の段階の最終回答として受け止め、組織に持ち帰って協議したい」と述べ、人事院総裁交渉を締めくくった。
<国家公務員制度担当大臣交渉の経過>
有村国家公務員制度担当大臣との交渉は、16時から行われた。
冒頭、石原議長が、2015春季段階の最終回答を求めたのに対して、有村国家公務員制度担当大臣は、資料2の通り回答した。
この回答に対し、石原議長は次の通り見解を述べた。
(1) 連合の春季生活闘争では、先行・大手組合が昨年を上回る賃上げを獲得し、引き続き、「底上げ・底支え」「格差是正」を実現するため、中小組合や地域での取組みが粘り強く進められている。こうした民間の成果や物価上昇のもと、組合員の賃上げに対する期待は昨年以上に高まっている。有村大臣におかれては、賃上げによる処遇改善が良質な公務・公共サービスにつながるとの認識のもと、積極的な役割を果たしていただきたい。
(2) 本年は、女性の活躍とワークライフバランスの推進が、政府全体の重要課題となり、様々な施策が展開される。それが実りある取組みとなるためには、超過勤務の確実な縮減が不可欠だ。東日本大震災からの復興・再生もまだまだこれからであり、その着実な推進のためにも、公務員労働者が健康を害することなく職務に臨めるよう、必要な定員や予算の確保を含めて、良好な労働条件を確保していただきたい。
(3) 先週決定された「少子化社会対策大綱」については、公務において、目標や課題を確実に達成できるよう、大臣に先頭に立っていただいて、強力な取組みをお願いしたい。
(4) 新年度の定年退職者からは62歳になるまで公的年金が支給されず、雇用と年金のギャップは最長2年間に伸びることになる。残された時間は少ないが、一昨年の閣議決定と、附則で「平成28年度までに」とされている検討期限を踏まえ、作業を急ぎ、ぜひとも定年延長を実現してもらいたい。
そのうえで石原議長は、「きょうの回答では、大臣から、引き続き、労使関係に基づいて、公務員連絡会の意見を聞きながら、誠意をもって話し合っていくとの決意が示されたことを確認する。本日の回答は、国家公務員制度担当大臣の春の段階の最終回答として受け止め、組織に持ち帰って協議したい」と公務員連絡会としての意見を表明した。
これに対し、有村大臣が、「ご要望は承りました。今、議長から女性の活躍とワークライフバランスの推進や超過勤務の縮減について、お話がありました。政府としては、国全体の女性の活躍を推進するため、「女性活躍推進法案」の今国会での早期の成立をお願いしているところです。また、私達の職場においても、国会関係業務を含め、超過勤務の縮減のため、いろいろな知恵と工夫が必要と考えています。引き続き、さまざまな面での皆様のご理解、ご支援をお願いいたします」と応えたことを受けて、この日の交渉を終えた。
資料1−人事院の2015春季要求に対する回答
人事院総裁回答
2015年3月24日
1.賃金等の改善について
○ 人事院としては、労働基本権制約の代償機能としての勧告制度の意義及び役割を踏まえ、情勢適応の原則に基づき、必要な勧告を行うことを基本に臨むこととしている。
○ 俸給及び一時金については、国家公務員の給与と民間企業の給与の実態を精緻に調査した上で、その精確な比較を行い、適切に対処して参りたい。
○ 諸手当については、民間の状況、官民較差の状況等を踏まえながら対応して参りたい。
2.労働時間の短縮等について
○ 超過勤務の縮減については、管理職員による勤務時間管理を徹底するとともに、業務の改善・効率化などの取組を推進することが重要であると考えている。
平成26年には、民間企業における総労働時間短縮に向けた取組の調査を実施したほか、公務においても「超過勤務に関する職員の意識調査」を実施したところであり、今後は、これらの調査結果を踏まえ、関係機関と連携しながら、より実効性のある超過勤務の縮減策について検討を進めて参りたい。
○ 職員の休暇、休業等については、これまで民間の普及状況等をみながら、改善を行ってきた。今後も、皆さんの意見も聞きながら引き続き必要な検討を行って参りたい。
3.非常勤職員の処遇改善について
○ 非常勤職員の給与については、平成20年8月発出の指針に沿った運用が、各府省において適正かつ円滑に図られるよう、引き続き取り組んで参りたい。
また、非常勤職員の休暇等については、従来より民間の状況等を考慮し、措置してきたところであり、今後ともこうした考え方を基本に必要な検討を行って参りたい。
4.高齢期雇用等について
○ 平成25年3月26日の閣議決定では、現行の再任用の仕組みにより、希望者を原則再任用するものとされている。
このため、職員の能力と経験を公務内で活用できるよう、業務運営や定員配置の柔軟化や60歳前からの退職管理を含む人事管理の見直しなどを進めていく必要があり、また、フルタイム中心の勤務を公務で実現していくためには、関連する制度と合わせて雇用と年金の接続の在り方を検討していく必要があると考える。
また、昨年4月に公布された国家公務員法等の一部を改正する法律の附則では、政府は平成28年度までに平成23年9月の人事院の意見の申出を踏まえつつ、雇用と年金の接続のための措置を講ずることについて検討するものとされており、人事院としても、引き続き、再任用の運用状況や問題点等の把握に努めるとともに、民間企業における継続雇用等の実情、定年前も含めた人事管理全体の状況等を詳細に把握し、雇用と年金の接続のため、適切な制度が整備されるよう、必要な対応を行って参りたい。
5.男女平等・共同参画、ワーク・ライフ・バランスの推進について
○ 公務における男女共同参画の推進については、政府全体として積極的に取り組むべき重要な課題とされ、様々な取組が推進されているところである。
人事院においても、昨年6月に国会及び内閣に提出した平成25年度年次報告書において、「女性国家公務員の採用・登用の拡大に向けて」と題し、女性国家公務員の採用・登用の促進に資する方策等を示したほか、女子学生を対象とした人材確保活動の充実や、女性職員の登用に向けた研修の充実を図るなど、必要な取組を講じてきた。
また、昨年10月には、「国家公務員の女性活躍とワークライフバランス推進のための取組指針」が策定され、これに基づき、各府省において取組計画が策定されたものと承知している。
人事院としては、今後も引き続き、女性職員の登用に向けた研修や両立支援等により、各府省の取組を支援するとともに、男女ともに働きやすい勤務条件の整備について、所要の検討を進めて参りたい。
6.健康・安全確保等について
○ 心の健康づくりをはじめとする健康安全対策については、各職場において推進すべき重要な事項であるとの立場から、これまでも積極的に取り組んできた。特に、心の健康づくり対策については、平成25年度から、過度のストレスがなく、いきいきとした職場を実現し、職員のメンタルヘルスの向上を図る「心の健康づくりのための職場環境改善」の取組を行っているところであり、引き続きその取組を推進したいと考えている。また、本年1月には、職員がセルフケアに関する知識を身につけるための自習用の研修教材としてe−ラーニング教材を作成し、全府省に配布したので、各職場で活用してもらいたいと考えている。
また、セクハラ、パワハラ等についても、引き続き、その防止のための施策等について検討を行って参りたい。
人事院としては、引き続き、各府省と連携しつつ、これらの健康安全対策の推進に努めて参りたい。
資料2−政府の2015春季要求に対する回答
国家公務員制度担当大臣回答
2015年3月24日
○ 平成27年度の給与については、本年の人事院勧告も踏まえ、国政全般の観点から検討を行った上で方針を決定してまいりたいと考えています。その際には、皆様とも十分に意見交換を行ってまいりたいと考えています。
○ 非常勤職員の処遇改善については、制度の適正な運用の周知を図りつつ、今後とも皆様のご意見も伺いながら、関係機関とも相談しつつ検討してまいりたいと考えています。
○ 女性活躍とワークライフバランスの推進については、超過勤務の縮減を含む「働き方改革」を進めることが重要であり、政府一丸となって取り組んでまいります。その際、皆様のご意見も伺いつつ、実効ある施策を推進してまいりたいと考えています。
○ 雇用と年金の接続については、一昨年に閣議決定した方針に沿って、定年退職者の再任用を政府全体で着実に推進してまいります。
あわせて、同決定及び国家公務員法等の一部を改正する法律の附則第42条に基づき、雇用と年金の接続の在り方についての検討を速やかに進めてまいりたいと考えています。
○ 自律的労使関係制度については、多岐にわたる課題があることから、皆様と意見交換しつつ、慎重に検討してまいりたいと考えています。
○ 最後になりますが、今後とも公務能率の向上と適正な勤務条件の確保に努めるとともに、安定した労使関係を維持する観点から、職員団体とは誠意を持った話合いによる一層の意思疎通に努めてまいりたいと考えています。
資料3−2015春季生活闘争に関わる公務員連絡会の声明
声 明
(1) 本日、公務員連絡会は、国家公務員制度担当大臣、人事院総裁と交渉を持ち、2015年春季要求に対する回答を引き出した。
(2) 連合の2015春季生活闘争は、先行組合が昨年を上回る賃金引上げを獲得し、それを中小、地場に確実に広げていくため、引き続き、懸命の闘いが進められている。
公務員連絡会も、連合に結集し、「底上げ・底支え」と「格差是正」を図るため、非常勤職員を含む公務・公共部門で働くすべての労働者の処遇改善をめざし、公務員労働者の賃金引上げ、定員の確保と超過勤務の抜本的な縮減、希望通りの再任用と定年延長などを最重要課題として位置づけ、具体的な取組みを進めてきた。
(3) 委員長クラス交渉委員による最終交渉で、国家公務員制度担当大臣は@2015年度賃金については、公務員連絡会の意見を聞く、A非常勤職員の処遇改善については、公務員連絡会の意見を聞きながら検討していく、B超過勤務の縮減を含む「働き方改革」を進める、C再任用を着実に推進し、定年の引上げを含め速やかに検討する、D公務員連絡会とは誠意を持った話合いによる一層の意思疎通に努めていくと回答した。また、人事院総裁は@賃金等については、情勢適応の原則に基づき、必要な勧告を行う、Aより実効性のある超過勤務縮減策を検討する、B非常勤職員給与の適正かつ円滑な運用に取組み、休暇について検討していく、C雇用と年金の接続は適切な制度が整備されるよう必要な対応を行う、D女性職員の登用、両立支援等で各府省を支援し、男女ともに働きやすい勤務環境の整備を検討すると回答した。
これらの回答は、課題認識を共有するとともに公務員連絡会の意見を聞く姿勢を確認したものの、われわれの要求に明確に応えていない。
しかし、人事院勧告による賃金・労働条件決定制度のもと、予断を許さない公務をめぐる極めて厳しい情勢の中で、春の段階における交渉の到達点と受け止め、人事院勧告期、賃金確定期に向け闘争態勢を継続・強化していく。
(4) 東日本大震災から4年が経過したが、復興・再生は道半ばである。被災地を含め、国民のセーフティネットである公共サービスに課せられた役割は大きい。われわれはその責務をしっかりと果たしていく。
連合・公務労協に結集し、中小及び地域民間構成組織、独立行政法人等関係組合と連帯し、すべての労働者の賃金引上げ、雇用の安定確保を実現するため、全力をあげる。
2015年3月24日
公務員労働組合連絡会
以上