2015年度公務労協情報 27 2015年8月4日
公務公共サービス労働組合協議会
公務員労働組合連絡会

委員長クラスが人事院総裁と最終交渉し回答引き出す−8/4
−官民較差は0.3%台半ば、一時金は勤勉手当を0.1月増、フレックスタイム制の拡充を勧告へ−

 公務員連絡会石原議長ほか委員長クラス交渉委員は、8月4日14時45分から一宮人事院総裁と交渉し、6月18日に提出した本年の人勧期要求書に対する最終回答を引き出した。

 交渉の冒頭、石原議長が「6月18日に本年人勧期の要求書を提出し、今日まで事務レベル交渉を積み上げてきた。直前でもあるので、本日は総裁から最終的な回答を頂きたい」と求めたのに対し、一宮総裁は次の通り回答を示した。

1 民間給与との較差に基づく給与改定等について
 勧告日については、8月6日(木)となる予定である。
(1)民間給与との比較について
 月例給の民間給与との較差は、0.3%台半ばとなる見込みである。
 特別給は、0.10月分の増加になる見込みである。
 増加分は、今年度については、増加分は、12月期の勤勉手当に充てる。
 来年度以降については、0.05月分ずつ、6月期と12月期の勤勉手当に充てる。
(2)月例給の改定内容
 @ 俸給表の改定
  行政職俸給表(一)について、民間の初任給との間に差があることを踏まえ、1級の初任給を2,500円引き上げることとし、若年層についても同程度の改定を行う。その他は、給与制度の総合的見直し等により高齢層における官民の給与差が縮小することとなることを踏まえ、それぞれ1,100円の引上げを基本に改定する。
  その他の俸給表については、行政職(一)との均衡を基本に改定する。
 A 初任給調整手当
  医療職俸給表(一)の改定状況を勘案し、医師の処遇を確保する観点から、所要の改定を行う。
 B 地域手当
  給与制度の総合的見直しを円滑に進める観点から、支給割合について給与制度の総合的見直しによる見直し後の支給割合と見直し前の支給割合との差に応じ、0.5%から2%の範囲内で本年4月に遡及して引き上げる。
(3)その他の課題について
 @ 配偶者に係る扶養手当
  本年の調査の結果を見ると、民間では、配偶者に対して扶養手当を支給し、その際、配偶者の収入による制限を設ける事業所が一般的であると認められることから、現時点では、扶養手当の支給要件を見直す状況にはないものと考えている。
  人事院としては、今後とも引き続き、民間企業における家族手当の見直しの動向や、税制及び社会保障制度に係る見直しの動向等を注視しつつ、扶養手当の支給要件等について、必要な検討を行って参りたいと考えている。
 A 再任用職員の給与
  再任用職員の給与については、民間企業の再雇用者の給与の動向や各府省における再任用制度の運用状況等を踏まえ、引き続き、その在り方について必要な検討を行って参りたいと考えている。

2 給与制度の総合的見直しについて
 平成28年度においては、職員の在職状況等を踏まえ、以下の施策について所要の措置を講ずることとする。
(1)地域手当の支給割合の改定
 地域手当の支給割合については、平成28年4月1日から、給与法に定める支給割合とする。
(2)単身赴任手当の支給額の改定
 単身赴任手当の基礎額については、平成28年4月1日から、4,000円引き上げ、30,000円とする。
 また、単身赴任手当の加算額の限度についても、基礎額の引き上げを考慮して、平成28年4月1日から、12,000円引き上げ、70,000円とする。

3 フレックスタイム制の拡充について
 近年のワーク・ライフ・バランスに対する意識の高まり、働き方に対するニーズの多様化の状況等を踏まえ、人事院は,より柔軟な働き方を可能とするフレックスタイム制の拡充について、各府省や職員団体等の関係者の意見を聴きつつ検討を重ねてきたところである。
 今般、適切な公務運営の確保に配慮しつつ、原則として全ての職員を対象にフレックスタイム制を拡充することが適当であるとの結論に至ったため、給与に関する勧告と合わせて、国会及び内閣に対し、フレックスタイム制の拡充に関する勤務時間法の改正を勧告する予定である。
 フレックスタイム制の拡充の概要等は次のとおり。
(1)概要について
 〇 原則として全ての職員を対象とし、適用を希望する職員から申告が行われた場合、各省各庁の長は、公務の運営に支障がないと認められる範囲内において、始業及び終業の時刻について職員の申告を考慮して4週間ごとの期間につき1週間当たり38時間45分となるように当該職員の勤務時間を割り振ることができること。
   コアタイムは、月曜日から金曜日までの毎日5時間設定すること。
 〇 育児又は介護を行う職員については、割振り単位期間を1週間から4週間までの範囲内において選択して設定できるとともに、日曜日及び土曜日に加えて週休日を1日設けることができることとし、また、コアタイムは、毎日2時間以上4時間30分以下の範囲内で設定すること。
 〇 現行のフレックスタイム制の適用対象とされている職員についても、その申告により新たなフレックスタイム制を適用することができること。
   また、交替制等勤務職員その他業務の性質上特定の勤務時間で勤務することを要する職員として人事院規則で定める職員は、新たなフレックスタイム制の対象から除外すること。
(2)適用に当たっての考え方について
 希望する職員には可能な限り適用するよう努めることが基本となる。なお、業務の性質上適用が困難な場合、必要な体制を確保できない場合等、公務の運営に支障が生じる場合には適用ができないとすることとなる。
 適用する場合には、公務の運営に支障が生じない範囲内で、当該職員の申告を考慮しつつ、勤務時間帯や勤務時間数を割り振ることとなる。また、育児又は介護を行う職員については、できる限り、当該職員の申告どおりに割り振るよう努めることが適当であると考えている。
(3)フレックスタイム制を活用していくための留意点について
 一人一人が責任感と自律心を持って業務を遂行することにより、これまで以上に効率的な仕事の進め方やより柔軟な働き方が推進され、一層効率的な行政サービスが提供されることが期待される。
 また、フレックスタイム制の実施に伴い超過勤務が増加しないようにする必要があるのみでなく、超過勤務を縮減する方向での働き方を推進していくことが重要となる。
(4)フレックスタイム制の拡充の実施時期
 平成28年4月1日から実施する。

4 公務員人事管理に関する報告について
 以上のほか、公務員人事管理に関して報告することとしている。
 報告では、まず、退職管理の見直しや採用抑制等により、40歳・50歳台の在職者の割合が20歳・30歳台の在職者の割合を相当に上回っており、国家公務員の人事管理に大きく影響することが懸念されることについて言及し、人事院は、人事行政の第三者・専門機関の責務として、将来にわたって能率的で活力ある公務組織を確保する観点から、採用から退職に至るまでの公務員人事管理全般にわたって、中・長期的視点も踏まえた総合的な取組を進めていくことについて言及することとしている。
 また、これらを踏まえた人事行政上の個別課題についての人事院の取組の方向性について、
 ○ 人材の確保及び育成のため
  ・ 多様な有為の人材の確保
  ・ 女性の採用・登用の拡大
  ・ 研修の充実
  ・ 能力・実績に基づく人事管理の推進 について
 ○ 柔軟で多様な働き方の実現と勤務環境の整備のため、先程申し上げたフレックスタイム制の拡充のほか、
  ・ テレワークの推進
  ・ 長時間労働慣行の見直し
  ・ 仕事と家庭の両立支援の促進
  ・ 心の健康づくりの推進
  ・ ハラスメント防止対策 について
 それぞれ言及することとしている。
 さらに、高齢層職員の能力及び経験の活用について、
 ・ 国家公務員の雇用と年金の接続については、平成23年に行った意見の申出を踏まえ、適切な措置が講じられる必要があること、
 ・ 公務の再任用は、引き続き短時間勤務が中心であり、民間同様のフルタイム中心の勤務の実現を通じて再任用職員の能力及び経験を本格的に活用する必要があること、
 ・ このため、各府省は定員事情や人員構成の特性等を踏まえ計画的な人事管理に努める等、一層の工夫が必要であること、
 ・ 人事院としては、関連する制度を含め適切な措置がとられるよう引き続き必要な対応を行っていくこと、
 について言及することとしている。

 以上の回答に対し、石原議長は以下の通り公務員連絡会としての見解を述べ、交渉を締めくくった。
(1) いま、本年の月例給、一時金のいずれも改善する等の回答があった。月例給及び一時金を2年連続で引き上げるのは四半世紀ぶりのことであり、組合員の期待に一定程度応えるとともに、民間の賃上げ動向を踏まえた当然の結果である。
 一時金について、昨年に引き続き勤勉手当の引上げに充てたが、育児休業者や非常勤職員等への配慮については課題が残った。
  勤務時間関係について、超勤の縮減に積極的な姿勢を示したことは評価できるが、問題は、真に実効性のある縮減策を具体化できるか否かにある。フレックスタイム制の拡充勧告は、働き方の幅を広げるものであり、女性職員活躍、ワークライフバランス確保の推進等に資するよう、具体化されなければならない。
  再任用について、職員の希望に沿ったフルタイム勤務重視を明確にしたことは当然のことであるが、それを保障する具体策を提案しなかったこと、段階的な定年延長の早期実施に向け踏み込まなかったことは残念だ。
(2) 今日の回答については、機関に持ち帰って報告し、われわれとしての最終的な態度を決定することとしたい。

以上