2015年度公務労協情報 4 2014年11月20日
公務公共サービス労働組合協議会
 公務員労働組合連絡会

内閣人事局・人事院へ2015年度基本要求を提出−11/20

 公務員連絡会は11月20日、内閣人事局、人事院に対して2015年度の賃金・労働条件改善に関わる基本要求を提出し、それぞれ誠意ある回答を示すよう求めた。
 それぞれの申入れの経過は次の通り。

<内閣人事局との交渉経過>
 内閣人事局への「2015年度賃金・労働条件に関わる基本要求事項の申入れ(資料1参照)」の提出交渉は、13時30分から行われ、公務員連絡会からは幹事クラス交渉委員が臨み、内閣人事局からは川淵内閣審議官らが対応した。
 要求提出にあたり、大塚副事務局長が「本年勧告に対する取組みについて区切りが付いたことを踏まえ、2015年度の基本要求を提出する。12月には誠意ある回答をお願いしたい」と述べたうえで、基本要求を次の通り説明した。

(1) 一の雇用と賃金・労働条件の関係では、第1に、公共サービス基本法が制定され5年が経過するなか、基本法に基づいて良質な公共サービスを実施していくためには、公務員や公共サービス従事者に社会的に公正な賃金・労働条件と人件費予算の確保が必要だ。
  第2に、ワークライフバランスや女性の問題と関わって、その基礎としてディーセントワーク、良好な労働条件を確保することが重要だということを強調しておく。
  第3に、本年の春季生活闘争の結果、民間賃金が上がり、公務員給与も7年ぶりの引上げ改定となった。来年度は、この流れを一層加速させて、本年を上回る賃上げを実現することが官民共通の課題だ。内閣人事局としても、来年度の人事院勧告・報告の取扱いについて、われわれと交渉・協議を行って、公務員労働者の賃金を上げるという意気込みで臨んでもらいたい。あわせて、公務員給与について社会的な合意を確立すべく、役割を果たして頂きたい。
(2) 二の労働時間、休暇・休業等では、超過勤務の縮減が最重要課題である。この間、公務員連絡会も、内閣人事局と議論を継続しているが、超勤上限目安時間が守られていないのが実態である。目に見える成果が上がるよう、しっかりと取り組んで頂きたい。
(3) 三のワークライフバランス、女性の労働権の確立では、「取組指針」に基づく各府省の取組計画が年内に策定されるが、中身のある計画にして確実に実施することが重要だ。
(4) 四の福利厚生関係では、心の健康づくりが重要課題だ。職場でメンタルヘルスに不調をおこす職員が出ると、その職場で連鎖的に悪影響を及ぼす。職場全体で問題を共有していくことや職場環境改善の取組みが大事だ。
(5) 六の雇用と年金の接続では、フルタイム勤務を希望する職員が増えている一方、新規採用も必要であり、定員事情の厳しい府省では職員の希望通りになっていない。職員の希望通りの再任用を実現し、生活水準を保障することは政府の責任だ。
  また、高齢期に職員が意欲を持って働くためには再任用でなく、定年延長でなければならない。年金支給開始年齢が62歳となるときまでにはぜひとも定年延長の実現を求める。
(6) 七の非常勤職員だが、給与法等改正に係る附帯決議「非常勤職員の処遇の改善に努めること」を踏まえた対応と、非常勤職員に係る休暇をはじめとした諸制度の改善を求める。
(7) 八の公務員制度改革。国家公務員制度改革基本法の自律的労使関係制度を確立することが課題であり、われわれと十分話し合いながら検討作業を進めて頂きたい

 続けて、各交渉委員から職場実態を踏まえて、@超過勤務縮減、A定員確保、B希望通りの再任用とするための対応などについて、強く訴えた。

 これらに対して、川淵内閣審議官は「内閣人事局としても、賃金・労働条件について何度も協議を重ねてきた。今後もコミュニケーションを密にとっていきたいと考えている。今いただいた要求の趣旨は承った。要求事項は多岐にわたっているため、検討させていただいた上で、各要求事項に対する回答については、しかるべき時期に行いたい」と回答した。

 最後に、大塚副事務局長は「内閣人事局は、総務省人事・恩給局以上に公務員の使用者として人事行政に責任を持つ立場にあることが明確になっている。厳しい勤務環境の下で、度重なる災害対策をはじめとして、国民の期待に応えるために、日夜奮闘している公務員労働者の賃金・労働条件が改善されるよう、12月には誠意ある回答をお願いしたい」と重ねて要請し、要求提出交渉を終えた。

<人事院との交渉経過>
 人事院への「2015年度賃金・労働条件に関わる基本要求事項の申入れ(資料2参照)」の提出交渉は、14時30分から行われ、人事院からは川崎職員団体審議官、鈴木職員団体審議官付参事官が対応した。
 冒頭、大塚副事務局長が、基本要求を次の通り説明した。

(1) 一の給与関係では、第1に、本年の春季生活闘争の結果、民間賃金が上がり、公務員給与も7年ぶりの引上げ改定となった。来年度はこの流れを加速させて、本年を上回る賃上げを実現することが官民共通の課題だ。人事院としても、来年度に向けて公務員給与が引き上がるよう、作業を進めて頂きたい。
  第2に、官民比較方法については、対象業種、職種関係の見直しに区切りが付いたと受け止めている。引き続き、ラスパイレス比較を原則とした民調作業を堅持して頂きたい。
  第3に、諸手当については、然るべき時期に議論をさせて頂くことになるが、住居手当と45時間超60時間未満の超勤手当は、この間の宿題であり、要求として明記した。来年勧告の課題として十分議論させてもらいたい。
(2) 二の労働時間、休暇・休業等では、第1に、超勤縮減について、超勤上限目安時間は絵に描いた餅の状態であり、深刻な事態は改善されていない。この際、720時間は目安時間でなく絶対的上限とし、それ以上の勤務を禁止すべきであるし、最低限全職員が360時間に収まるよう取り組むべきだ。
  第2に、来年度は両立支援に係る休暇・休業制度の改善とフレックスタイムやテレワークなど勤務時間制度の見直し等が課題であり、「公務職場ではディーセントワーク、良好な労働条件が確保されている」と胸を張って言えるよう、結果が見える改善措置を求める。さらには、要件を問わない短時間勤務制度も視野に入れ、前向きに検討してもらいたい。
(3) 三のワークライフバランスの推進、女性の労働権確立については、次世代育成支援対策推進法の行動計画、女性国家公務員の採用・登用拡大指針に基づく各府省の計画、先月決定された「国家公務員の女性活躍とワークライフバランス推進のための取組指針」に基づく各府省取組計画があり、入り組んでいるが、いずれの計画についても、目標の着実な実現に向けて、成果が上がるよう積極的に取り組んでもらいたい。
  また、要求事項には明記していないが、給与法改正法案等に係る附帯決議を踏まえて、育児に責任を有する公務員の処遇の改善を求めておく。
(4) 四の福利厚生等関係では、心の健康づくりが最重要課題であり、職場レベルで認識を共有するとともに、職場環境改善の取組みを拡大して頂きたい。また、労働安全衛生法の改正、施行に係る公務における速やかな対応を求める。
(5) 六の雇用と年金の接続については、公的年金が支給されない中で、生活水準を確保するためには、当面、組合員の希望通りの再任用を実現することが極めて重要だ。給与制度についても更なる改善を求めておく。人事院は本年の報告で現行再任用制度の限界に言及しており、年金支給開始年齢が62歳となるときまでには定年延長が実現されるよう、積極的な役割を果たして頂きたい。
(6) 七の非常勤職員関係では、本年勧告では非常勤職員には通常は支給されない勤勉手当の引上げとなった。給与法等改正に係る附帯決議「非常勤職員の処遇の改善に努めること」を踏まえて対応してもらいたい。加えて、本年、非常勤職員の年次休暇の弾力的運用を報告しており、運用改善に止まらず制度の改善も求めておく。

 申入れに対し、川崎審議官は「本日の要求については承った。十分検討の上、然るべき時期に回答することとしたい」として、現時点での見解を次のように示した。

(1) 給与水準及び配分等に関わる要求について
 今年の冬のボーナスについては、夏のボーナスに引き続き高水準の伸びが期待されるとの報道がある一方で、給与総額は増えているが、実質賃金は減少が続いている。基調判断も下降修正、GDPも2期連続してマイナスになっている。
 更に、今回の政治の動きから、経済、景気対策としての2兆円規模の補正予算や来年度予算の成立の時期も懸念されるなど、非常に厳しい状況となっている。
 国家公務員の給与は民間準拠であり、民間の春闘結果が反映されるものであることから、連合の「定期昇給2%確保、更にベアで2%以上を要求する」という春闘基本構想がどう実現するか注視して参りたい。
 このような状況ではあるが、引き続き職員団体のご意見を伺いながら、人事院としての役割を果たして参りたい。
(2) 超過勤務縮減に関わる要求について
 公務における超過勤務の縮減については勧告時報告でも触れているが、長年取り組まれてきたものの大きな進展は得られていないことから、今回、管理職員を含む職員の目からみた超過勤務が生じている主な要因や縮減の効果的と考えられる取組みについてのWEBによる意識調査を行い、その要因をより詳しく分析し、その要因が解消できるような取組みを検討していくこととしている。
(3) ワークライフバランスの推進、女性の労働権確立に関わる要求について
 女性活躍とワークライフバランスの推進は、政府の重要政策であるが、人事院としても女性国家公務員の採用・登用の拡大については、今年の年次報告の特別テーマとして取り上げた課題である。働く環境、管理職・人事当局の意識・姿勢、女性職員の意識・意欲など全般的な環境整備が必要であり、各府省と一体となって取り組む課題である。人事行政の専門機関として各府省の取組みを下支えする職務を担っているものと考えている。
 また、両立支援についても非常に重要な課題であり、先ほどの超過勤務縮減に関する意識調査でもワークライフコンフリクトについて調査を行うこととしており、テレワークやフレックスタイム制の導入などと合わせて検討を行っていくこととしているが、引き続き職員団体のご意見を伺いながら今後の施策を検討して参りたい。

 これに対し、各交渉委員が職場実態を踏まえて、@定員削減で職員の業務負担、超過勤務の増大が深刻、A宿舎の削減に伴い、必要となる借家等のための住居手当改善、B精神疾患による休職対策など、について積極的な対応を要請した。

 最後に大塚副事務局長が、「労働基本権の制約が維持されている以上、人事院には代償機関としての位置づけを含め、職員の利益保護という役割をしっかりと果たしてもらいたい。公務員の雇用と賃金・労働条件がより良きものとなるよう、われわれと真摯に向き合ってその改善に努めて頂きたい。12月には誠意ある回答をお願いしたい」と求めたのに対し、川崎審議官が了としたことから、提出交渉を終えた。


資料1−内閣人事局への基本要求書

2014年11月20日

内閣総理大臣
 安 倍 晋 三 様

公務員労働組合連絡会
議 長  石 原 富 雄


2015年度賃金・労働条件に関わる基本要求事項の申入れ

 名目賃金は前年比で伸びているものの、消費者物価が3%台の上昇となった結果、実質賃金はマイナスとなり、さらに過度の円安が進むもと、家計は厳しい状況にあります。また、非正規労働者数は4割に迫ろうとし、生活保護受給者数も依然として高水準となっており、社会的格差は許容し得ない状況となっています。
 こうした状況のもと、東日本大震災からの一刻も早い復興・再生はもとより、国民の雇用と生活を支えていくために公務・公共サービスの役割は高まっており、公務員労働者は日夜自らの職務遂行に邁進しているところです。しかし、業務が増え続けているにもかかわらず、予算も人員も大きく削減され、超過勤務の蔓延など公務員労働者の労働条件も悪化し、長期病休者も少なくなく、国民の期待に応えていくには厳しい勤務環境に置かれています。
 行政や公務員労働者が、国民の期待に応え、質の高い公務・公共サービスを確実に提供していくためには、公務労働者の雇用の安定と賃金・労働条件の改善・確保が不可欠です。その意味で、公務員の人事行政に責任を持つことを一層明確化した新たな中央人事行政機関としての内閣人事局がその役割を十全に果たすことが求められています。
 さて、2015年度の基本要求事項においては、公務員労働者の賃金引上げ、超過勤務縮減と休暇・休業制度及び職場環境の改善等によるディーセントワークの確保をはじめ、年金支給開始が62歳となるときまでに定年延長を実現することや非常勤職員等の処遇改善などを最重点課題としています。
 貴職におかれましては、こうした点を十分認識され、下記の基本要求事項の実現に向けて最大限努力されることを強く申し入れます。


一、雇用と賃金・労働条件に関わる事項
(1) 公共サービス基本法に基づいて良質な公共サービスが適正かつ確実に実施されるよう、公務員等公共サービス従事者の社会的に公正な賃金・労働条件と人件費予算を確保すること。
(2) 事務・事業の円滑な遂行とディーセントワークを保障するとともに、雇用と年金を確実に接続させるため、必要な定員を確保すること。
(3) 職務の責任や仕事の内容に相応しい社会的に公正な給与水準を確保することとし、公務員労働者のゆとり・豊かな生活を保障すること。2015年度においては、実質生活水準を確保するため、人事院勧告の取扱いを含めて、公務員連絡会との交渉・協議に基づき公務員労働者の賃金水準を引き上げること。また、使用者の責任において、実態に見合った超過勤務手当の支給、独立行政法人等を含めた公務員給与の改定に必要な財源の確保に努めること。
(4) 公務員給与のあり方に対する社会的合意を得るよう、使用者責任を果たすこと。

二、労働時間、休暇及び休業等に関わる事項
(1) 公務における年間総労働時間1,800時間体制の確立と、ライフステージに応じ、社会的要請に応える休暇・休業制度の改善・拡充などを実現すること。
(2) 政府全体として超過勤務縮減のための体制を確立し、超過勤務命令の徹底やIT等を活用した厳格な勤務時間管理と実効性のある超過勤務縮減策を取りまとめ、直ちに実施することとし、その具体化に向けて公務員連絡会と協議すること。
(3) 公務における本格的な短時間勤務制度の具体的検討に着手すること。

三、ワークライフバランスの推進、女性の労働権確立に関わる事項
(1) 公務におけるワークライフバランスの推進及び女性の労働権確立を人事行政の重要課題と位置づけ、政府全体として積極的に取り組むこと。
(2) 「国家公務員の女性活躍とワークライフバランス推進のための取組指針」に基づく各府省の取組計画における目標達成に向け、使用者として必要な取組みを着実に実施すること。関係諸制度やその運用の見直し等を行う場合には、公務員連絡会と十分交渉・協議すること。
(3) 次世代育成支援対策推進法に基づく現行行動計画の着実な実行、及びより実効性があり、より革新的な次期計画の策定に向け、各府省を指導すること。
(4) 「女性国家公務員の採用・登用拡大に関する指針」に基づく各府省の実施計画における目標達成やメンター制度の実効性確保に向け、使用者として必要な取組みを着実に実施すること。

四、福利厚生施策等に関わる事項
(1) 公務員の福利厚生を勤務条件の重要事項と位置付け、職員のニーズ及び民間の福利厚生の正確な実態把握に基づき、その抜本的な改善・充実を図ること。
(2) 「国家公務員福利厚生基本計画」の着実な実施を図るため、政府全体としての実施体制を確立し、使用者としての責任を明確にして積極的に対応すること。とくに、メンタルヘルスに問題を抱える職員が増加していることから、引き続きその原因追究と管理職員の意識改革に努めることとし、必要な心の健康診断、カウンセリングや「試し出勤」など復職支援施策を着実に実施すること。
(3) 2015年度の予算編成に当たっては、健康診断の充実など、職員の福利厚生施策の改善に必要な予算を確保すること。なお、予算の取扱いについては、公務員連絡会と十分交渉・協議を行い、合意に基づいて進めること。
(4) 福利厚生の重要施策であるレクリエーションについて、予算及び事業が休止されている実態を重く受け止め、その理念の再構築と予算確保や事業の復活に努めること。

五、人事評価制度に関わる事項
 人事評価制度について、円滑に運営されるよう、引き続き制度の周知や評価者訓練の徹底等に努めること。

六、雇用と年金の接続に関わる事項
(1) 雇用と年金の接続について、当面は、2013年3月26日の閣議決定に基づき、組合員の希望通りの再任用を実現するとともに生活水準を確保すること。
(2) 雇用と年金の確実な接続のために必要な定員の確保に向け、弾力的扱いなどについて公務員連絡会と十分交渉・協議すること。
(3) 人事院の意見の申出等を踏まえ、年金支給開始年齢が62歳になるときまでには定年延長を実現することとし、公務員連絡会との交渉・協議に基づいて具体的措置を講じること。

七、非常勤職員制度等に関わる事項
(1) 非常勤職員制度の抜本的改善をめざし、公務員連絡会が参加する検討の場を設置し、政府全体として解決に向けた取組みを推進すること。当面、非常勤職員制度について、法律上明確に位置付けることとし、勤務条件等について常勤職員との均等待遇の原則に基づき、常勤職員に適用している法令、規則を適用すること。
(2) 期間業務職員制度について、当該職員の雇用の安定と処遇の改善となるよう、適切な運用に努め、必要な改善措置を講じること。

八、公務員制度改革に関わる事項
 ILO勧告に則り、国家公務員制度改革基本法に基づく自律的労使関係制度を確立するため、国家公務員制度改革関連四法案(2011年6月3日国会提出)における措置について、国家公務員法等改正法案の附帯決議(2014年3月12日衆議院内閣委員会及び同年4月10日参議院内閣委員会)に基づく、公務員連絡会との合意により実現すること。

九、その他の事項
(1) 障がい者雇用促進法に基づき、障がいの種別をこえた雇用促進を図ること。とくに、知的障がい者及び精神障がい者の雇用促進に関する具体的方策を明らかにすること。
(2) 国が民間事業者等に業務委託や入札等により事務事業の実施を委ねる場合においては、公正労働基準の遵守を必要条件とすること。


資料2−人事院への基本要求書

2014年11月20日

人事院総裁
 一 宮 なほみ 様

公務員労働組合連絡会
議 長  石 原 富 雄


2015年度賃金・労働条件に関わる基本要求事項の申入れ

 名目賃金は前年比で伸びているものの、消費者物価が3%台の上昇となった結果、実質賃金はマイナスとなり、さらに過度の円安が進むもと、家計は厳しい状況にあります。また、非正規労働者数は4割に迫ろうとし、生活保護受給者数も依然として高水準となっており、社会的格差は許容し得ない状況となっています。
 こうした状況のもと、東日本大震災からの一刻も早い復興・再生はもとより、国民の雇用と生活を支えていくために公務・公共サービスの役割は高まっており、公務員労働者は日夜自らの職務遂行に邁進しているところです。しかし、業務が増え続けているにもかかわらず、予算も人員も大きく削減され、超過勤務の蔓延など公務員労働者の労働条件も悪化し、長期病休者も少なくなく、国民の期待に応えていくには厳しい勤務環境に置かれています。
 行政や公務員労働者が、国民の期待に応え、質の高い公務・公共サービスを確実に提供していくためには、公務労働者の雇用の安定と賃金・労働条件の改善・確保が不可欠です。その意味で、人事院が、労働基本権制約の代償機関であることを含め職員の利益保護の役割を十全に果たすことが求められています。
 さて、2015年度の基本要求事項においては、公務員労働者の賃金引上げ、超過勤務縮減と休暇・休業制度及び職場環境の改善等によるディーセントワークの確保をはじめ、年金支給開始が62歳となるときまでに定年延長を実現することや非常勤職員等の処遇改善などを最重点課題としています。
 貴職におかれましては、こうした点を十分認識され、下記の基本要求事項の実現に向けて最大限努力されることを強く申し入れます。


一、賃金に関わる事項
1.給与水準及び配分等について
(1) 給与水準の確保
 @ 職務の責任や仕事の内容に相応しい社会的に公正な月例給与水準を確保することとし、公務員労働者のゆとり・豊かな生活を保障すること。 
 2015年度の給与勧告においては、実質生活水準を確保するため、公務員の賃金水準を引き上げること。
 A 期末・勤勉手当については、民間実態を正確に把握し月数増を実施すること。
(2) 公正・公平な配分
 配分については、別途人事院勧告期に提出する要求も含め、公務員連絡会と十分交渉し、合意すること。
(3) 社会的に公正な官民給与比較方法の確立
 当面、現行の比較企業規模を堅持することとし、社会的に公正な仕組みとなるよう改善すること。また、一時金についても、月例給と同様に、同種・同等比較を原則とするラスパイレス比較を行うこと。

2.諸手当の見直し・検討について
(1) 住居手当については、公務員宿舎の削減及び宿舎使用料等の段階的引上げを踏まえ総合的に改善すること。
(2) 1か月当たり45時間を超え60時間以内の超過勤務に対する割増率については、民間企業の実態を踏まえた引上げを行うこと。なお、超過勤務手当については、全額支給すること。
(3) その他の手当についても、見直し・検討を行う場合は、その可否を含めて公務員連絡会と十分交渉・協議し、合意に基づいて進めること。

二、労働時間、休暇及び休業等に関わる事項
1.年間労働時間の着実な短縮について
 公務における年間総労働時間1,800時間体制を確立することとし、次の事項を実現すること。
(1) 本府省における在庁時間削減の取組みの実施状況を踏まえ、その取組みの強化・徹底を図ることとし、人事院として積極的役割を果たすことにより、在庁時間の一層の削減に努めること。
(2) 超過勤務を縮減するため、超過勤務命令の徹底やIT等を活用した職場における厳格な勤務時間管理を直ちに行うこと。また、他律的業務を含む超勤上限目安時間については、完全に遵守できるよう各府省に対する指導を強化すること。
(3) 新たに上限規制を導入することを含め、政府全体として、より実効性のある超過勤務縮減の具体策を取りまとめ、着実に実施すること。
 
2.休暇・休業制度の拡充等について
 ライフステージに応じ、社会的要請に応える休暇・休業制度の拡充などについて、次の事項を実現すること。
(1) 夏季休暇の日数を増やすこと。
(2) リフレッシュ休暇を新設すること。
(3) 育児短時間勤務、育児時間について、子の年齢要件等取得要件を緩和するとともに、その在り方を改善すること。
(4) 必要な休暇・休業制度が、非常勤職員を含め、男女ともにより活用できるよう、制度の改善や環境整備に努めること。とくに、家族介護を理由とした離職を防止するため、介護休業制度を整備すること。
(5) 休暇の取得手続きについて、公務員の休暇権をより明確にする形で抜本的に改善すること。

3.勤務時間制度等の見直しについて
(1) 公務における本格的な短時間勤務制度の導入に向けて、公務員連絡会と十分交渉・協議すること。
(2) フレックスタイム制度の適用拡大等やテレワークに係る勤務時間の在り方などの見直しに当たっては、公務員連絡会と十分交渉・協議し、合意の下に進めること。

三、ワークライフバランスの推進、女性の労働権確立に関わる事項
 職業生活と家庭生活の両立支援の環境整備を積極的に推進するとともに、公務職場における男女平等の実現を人事行政の重要課題と位置づけ、次の事項を実現すること。
(1) 女性の労働権確立にむけ、女性が働き続けるための職場環境の整備に努めるとともに、職務範囲を拡大すること。
(2) 次世代育成支援対策推進法に基づく現行行動計画の着実な実行、及びより実効性があり、より革新的な次期計画の策定に向け、積極的な役割を果たすこと。
(3) 「女性国家公務員の採用・登用拡大に関する指針」の着実な実施に向けた指導、メンター制度の実効性確保に向けて引き続き取組みを強化すること。
(4) 産前休暇を8週間、多胎妊娠の場合の産後休暇を10週間に延長すること。また、妊娠障害休暇を新設すること。

四、福利厚生施策等に関わる事項
(1) 公務員の福利厚生を勤務条件の重要事項と位置付け、職員のニーズ及び民間の福利厚生の正確な実態把握を行い、その抜本的な改善・充実に向けた提言を行うこと。
(2) 福利厚生の重要施策であるレクリエーションについて、予算及び事業が休止されている実態を重く受け止め、その理念の再構築と予算確保や事業の復活に努めること。
(3) メンタルヘルスに問題を抱える職員が増加していることから、「職員の心の健康づくりのための指針」等に基づいた心の健康診断、カウンセリングや「試し出勤」など復職支援施策の着実な推進を図ること。
(4) 労働安全衛生法の改正を踏まえ、公務においても所要の措置を速やかに実施すること。
(5) パワー・ハラスメント及びセクシュアル・ハラスメント等について、必要な対策を強化すること。

五、人事評価制度に関わる事項
 中立・公正な人事行政や勤務条件を所管する立場から、人事評価制度の実施及び評価結果の活用状況を随時検証し、必要に応じて指導、改善措置等を講じること。

六、雇用と年金の接続に関わる事項
(1) 雇用と年金の接続について、当面は、2013年3月26日の閣議決定に基づき、組合員の希望通りの再任用を実現するとともに生活水準を確保すること。
(2) 再任用職員の給与制度等については、その経済的負担、定年前職員との均衡を考慮して改善することとし、公務員連絡会との十分な交渉・協議、合意に基づいて進めること。
(3) 年金支給開始年齢が62歳になるときまでには定年延長を実現するため、積極的に対応すること。

七、非常勤職員制度等に関わる事項
 非常勤職員制度等の抜本的改善をめざし、次の事項を実現すること。
(1) 非常勤職員制度について、法律上明確に位置付けることとし、勤務条件等について常勤職員との均等処遇の原則に基づいて、関係法令、規則を適用すること。
(2) 「非常勤職員給与決定指針」の実施状況を点検・報告し、着実な処遇改善に努めること。加えて、常勤職員と同等の勤務を行っている非常勤職員の給与を俸給表に位置づけ、国に雇用される労働者の最低給与(高卒初任給相当)を定める人事院規則を制定すること。
(3) 期間業務職員制度について、当該職員の雇用の安定と処遇の改善となるよう、適切な運用に努め、必要な改善措置を講じること。
(4) 非常勤職員の休暇制度の改善について、順次具体化を図ること。

八、その他の事項
 公務遂行中の事故等の事案に関わる分限については、欠格による失職等に対する特例規定を設けること。

以上