2016年度公務労協情報 17 2016年3月8日
公務公共サービス労働組合協議会
公務員労働組合連絡会

2016年春季要求事項で幹事クラスが内閣人事局・人事院と交渉−3/8
−中間的回答は具体性がなく、さらに誠意ある回答を求める−

 公務員連絡会は3月8日、内閣人事局内閣審議官、人事院職員団体審議官との交渉を実施し、2月19日に提出した2016春季要求に対する中間的な回答を引き出した。しかし、この日の回答は内閣人事局、人事院ともに抽象的で不満な内容にとどまった。
 このため、公務員連絡会は、16日〜17日の書記長クラス交渉委員との交渉ではさらに誠意ある回答を行うよう要求し、回答指定日に向けて交渉を積み上げていくこととした。

<内閣人事局内閣審議官交渉の経過>
 川淵内閣審議官との交渉は、13時30分から行われた。
 冒頭、大塚副事務局長が「重点事項についての中間的な回答を伺いたい」と求めたのに対し、川淵審議官は「主な事項について、現時点における回答をさせていただく」と述べ、次の通り答えた。

1.2016年度賃金について
 国家公務員の給与改定に当たっては、 国家公務員の給与を社会一般の情勢に適応させるとの原則の下、人事院勧告制度を尊重することが基本姿勢と考えている。
 本年の給与改定については、人事院勧告も踏まえ、国政全般の観点に立って総合的に検討を行った上で方針を決定してまいりたいと考えている。その際には、皆様とも十分に意見交換を行ってまいりたい。

2.非常勤職員等の雇用、労働条件の改善について
 非常勤職員については、期間業務職員制度の導入、育児休業等の取得、夏季における弾力的な年次休暇付与などの措置が講じられてきているところ。
 また、給与については、各府省において、人事院から出された指針を踏まえた給与の支給に努めることとされている。
 内閣人事局としては、人事管理官会議等の場を通じて、期間業務職員制度の適正な運用や非常勤職員に対する適正な給与の支給など、非常勤職員に対する適正な処遇に努めるよう、各府省及び地方支分部局に対し引き続き周知等を図ってまいりたい。
 また、期間業務職員制度導入後一定期間が経過していることから、国会での議論等も踏まえ、実態を把握することを検討したい。

3.労働時間、休暇及び休業等及びワーク・ライフ・バランスの推進、女性の労働権確立について
 女性の活躍推進については、国が率先して取り組むとともに、職員のワークライフバランスについては、男女全ての職員の「働き方改革」を進めることが重要であり、これらを一体的に進めるため、一昨年10月に「国家公務員の女性活躍とワークライフバランス推進のための取組指針」を取りまとめた。この1月には、女性活躍推進法の成立と第4次男女共同参画基本計画の策定を踏まえた改正を行ったところ。
 各府省においては、この取組指針を踏まえた取組計画に基づき、総合的かつ計画的な取組を進めているが、内閣人事局としても、各府省の取組を毎年度フォローアップするとともに、必要に応じて各府省の取組の促進に資するようなサポートを行ってまいりたい。
 取組指針には超過勤務の縮減や休暇等の取得促進も盛り込んであり、新たな取組として、昨年7月・8月に「ワークライフバランス推進強化月間」と「ゆう活」を実施したところ。本年は、より円滑で実効性ある取組に努めたい。
 また、先般成立した一般職給与法改正に基づくフレックスタイム制の拡充については、4月1日の施行に向けて準備を進めており、育児・介護等職員を始め、公務能率に配慮しつつ、職員がより柔軟な働き方ができるよう適切に運用していきたい。
 なお、霞が関の働き方の見直しの議論を通じて、広く日本社会の働き方が変わるきっかけとなることを期待し、河野大臣の下で懇談会を開催することとした。
 職員の皆さんが、その能力を十分に発揮し、高い士気をもって効率的に勤務し、公務能率の一層の向上につながるよう、皆様のご意見も伺いながら、超過勤務の縮減等に政府一丸となって取り組んでまいりたい。

4.高齢者雇用施策について
 雇用と年金の接続については、引き続き平成25年3月の閣議決定に沿って、定年退職者の再任用を政府全体で着実に推進してまいりたい。
 なお、組織の活力を維持しつつ、再任用職員の能力や経験をより一層本格的に活用していくための方策について、各府省の協力を得ながら引き続き検討してまいりたい。
 また、平成27年の人事院の報告において、再任用職員の給与について、民間企業の再雇用者の給与の動向や各府省における再任用制度の運用状況等を踏まえ、引き続き、その在り方について必要な検討を行っていくこととされており、政府としても人事院における所要の検討を踏まえ、適切に対応してまいりたい。
 今後の雇用と年金の接続の在り方については、同閣議決定を踏まえ、年金支給開始年齢の段階的な引上げの時期ごとに、再任用制度の活用状況や民間の高年齢者雇用確保措置の実施状況等を勘案し改めて検討を行うこととされており、検討に際しては、皆様も含めた関係者の意見も聞きつつ、進めてまいりたい。

5.福利厚生施策の充実について
 職員の勤務能率の発揮及び増進を図るため、国家公務員健康増進等基本計画を去る3月2日に決定したところであり、これに基づき、職員の心身の健康の保持増進等に努めてまいりたい。
 この中で、心の健康づくり対策については、管理監督者の職場マネジメント業務の一部であることから、管理職員、課長補佐及び係長等に昇任した際に、e−ラーニング講習の活用により、心の健康づくりやハラスメント防止に関する研修の受講を必修化するなど、管理監督者を対象とした研修を強化することとしたところである。
 また、ストレスチェック制度を適正に実施するとともに、本府省等、地方支分部局及び施設等機関等を問わず、必要とする職員が専門家に相談できる体制の整備に努めることとしている。
 計画の的確な実施のため、具体的目標を定め、フォローアップを行っていくこととしており、福利厚生施策の効率的かつ効果的な推進に努めてまいりたい。

6.公務員制度改革について
 自律的労使関係制度については、国家公務員制度改革基本法第12条において「政府は、協約締結権を付与する職員の範囲の拡大に伴う便益及び費用を含む全体像を国民に提示し、その理解のもとに、国民に開かれた自律的労使関係制度を措置するものとする」とされている。
 この自律的労使関係制度については、多岐にわたる課題があり、引き続き慎重に検討する必要があると考えている。皆様とは、引き続き意見交換をさせていただきたい。

7.その他の事項について
 障害者雇用の一層の理解促進のため、本府省、地方ブロックにおける会議等での情報共有や要請のほか、一昨年度から内閣人事局において実施している「障害者ワーク・サポート・ステーション」では、今年度は各府省に障害者を派遣して、業務指示をしてもらったところであり、今後はより実際の雇用につながっていくような取組に努めていきたい。

 これに対して、大塚副事務局長は次の通り内閣人事局の見解を質した。
(1) 賃金・労働条件に大きく影響する人件費や定員の課題について、内閣人事局の傘のもとでしっかりと対応していただきたい。定員全体に関わる課題解決に努めてもらいたい。
(2) 本年の春季生活闘争では3年連続の賃上げ実現をめざし、とくに非正規労働者や中小、地場の底上げによる格差是正に重点を置いている。
  職場の賃上げに対する期待は大きい。賃上げが必要だという認識を持って臨んでいただきたい。
(3) 超勤予算について、全額支給に必要な予算確保を求める。
(4) 非常勤職員について調査を行うことを河野大臣が国会で表明しているが、内容について議論を求める。現時点における調査の検討状況如何。
(5) 非常勤職員給与ガイドラインについて、勤勉手当も支給すべき。また、非常勤職員の時給37円の賃上げ要求は連合の格差是正要求をふまえたもので改善を求める。
(6) 第4次男女共同参画基本計画には国家公務員について、超勤縮減の数値目標を設けることの検討が指摘されており、女性活躍・WLB取組方針で具体的に定めるべきだ。その際、客観的な勤務時間の把握が重要であり、勤務時間管理のあり方を刷新すべきだ。
(7) 要員不足を解決しないと超勤縮減は進まない。要員不足ゆえの業務の見直し・合理化、その結果、さらに定員削減、という悪循環を断ち切ってもらいたい。
(8) 両立支援に係る定員枠について、より一層弾力的な対応を促進し、介護休暇も含めて、引き続き枠の拡大に努めて頂きたい。
(9) 「WLB強化月間」について、成果が上がる取組みにするためには、中央・地方で労使間の意思疎通を十分に図る必要がある。超勤縮減を含めて前広に議論をさせて頂きたい。
(10) 年金と雇用の接続については、引き続き再任用とされる一方、「再任用職員の能力及び経験をより一層本格的に活用するための方策」を検討していくことになっている。その検討状況如何。
  新年度に向けて、職員の希望通りの再任用が実現しているか、把握状況、認識を伺いたい。加えて、2017年度には義務的再任用1年目と、2年目の職員が重なるという課題が生じるが対策如何。
  定員事情によって、各府省間で処遇に大きな差が出るのは理不尽なことで、これが一層悪化する懸念もある。公平性の確保のため、具体策を講じるべき。
(11) 公務は再雇用、再任用で民間に遅れている。定年後の公務員は活躍したいのにできないのが実態であり、この際、定年延長を断行し、民間を先導すべき。
(12) 新年度から始まるストレスチェックについて、確実かつ円滑な実施、集団分析による職場環境改善に努めてもらいたい。また、レクリエーションについては、職場を活性化し、仕事に良い影響を与えることがわかっており、「働き方改革」の一環として、その再活性化をめざすべき。
(13) 公務員制度改革は、国家公務員制度改革基本法及び2014年の国公法等改正の際の附帯決議も含め、その検討は政府の責務である。今後とも、われわれとの交渉・協議を継続し、労働基本権の回復を実現していただきたい。

 これらに対して、川淵内閣審議官から次の通り回答があった。
(1) 給与について、人事院勧告制度について様々な議論があるところだが、国民理解を得た制度であると認識しており、民間動向を注視し適切に対応してまいりたい。また、総人件費については様々な制約の中ではあるが、職員の処遇確保に努めてまいりたい。さらに、各府省に対し超勤削減を含めた効率的な働き方などの創意工夫をお願いしているところであり、引き続き、様々な要請に対応してまいりたい。
(2) 非常勤職員調査について、現在内容を検討しているところであるが、給与の支給状況等について、実態を適切に把握してまいりたいと考えており、準備ができ次第、皆様にもご説明させていただく。また、非常勤職員への勤勉手当の支給については、各府省によって差があると想定しており、あわせて調査を行い、皆様からのご意見を踏まえ、様々な観点から検討してまいりたい。
(3) 超勤縮減について、勤務時間外の会議の持ち方など、超過勤務縮減に向けた様々な取組が広がり始めているが、更に取組強化を図ってまいりたい。また、昨年のWLB推進強化月間及びゆう活のフォローアップを踏まえ、本年も取り組むとともに、年間を通じた超勤縮減につなげてまいりたい。
(4) 女性活躍・WLB等の取組計画等については、適切に各府省をフォローしてまいりたい。
(5) 雇用と年金の接続について、2017年度には、義務的再任用の1年目と2年目が重なることになる。今後、再任用職員の増加が想定され、これまで以上に戦力として働いてもらえるよう、各人事当局と課題を共有し、ポストの問題も含め情報交換してまいりたい。
(6) ストレスチェック制度について、各種情報の取扱いについて注意しながら取り組んでまいりたい。

 最後に、大塚副事務局長は「新年度に向けては、いくつか新たな課題も出てきているが、今日の回答は、まだまだ具体性がなく、方向性が見えてきていない。今後、さらに議論を積み重ねて、16日の人事政策統括官との交渉では、具体的かつ前向きな回答をお願いしたい」と強く要請し、交渉を終えた。

<人事院職員団体審議官交渉の経過>
 人事院の川崎職員団体審議官との交渉は、14時55分から行われた。
 冒頭、大塚副事務局長が中間的な回答を求めたのに対し、川崎審議官は、次の通り答えた。

1.賃金要求について
 今年の春闘では、連合は「賃上げ要求水準は、それぞれの産業全体の「底上げ・底支え」「格差是正」に寄与する取組を強化する観点から2%程度を基準とし、定期昇給相当分を含め4%程度とする」との目標を掲げ、その実現に向けて取組を進めるとしている。
 一方、日本経団連は、賃金の引上げの方法は、「月例賃金の一律的な引上げに限られず、さまざまな選択肢が考えられる」とし、賃金については「適切な総人件費管理のもと、自社の支払い能力に基づき、労使による真摯な交渉・協議を経て、企業が決定することが原則である」としている。
 こうした状況の中、3月中旬以降、経営側からの回答・妥結が行われるので、その動向を注視しているところである。
 国家公務員の給与について、人事院としては、本年も情勢適応の原則に基づき、民間給与の実態を精緻に調査した上で、民間給与との精確な比較を行い、必要な勧告を行うという基本的スタンスにかわりはない。
 諸手当については、民間の状況、公務の実態等を踏まえ、職員団体の意見も聴きながら、総合的に検討して参りたい。
 扶養手当については、昨年夏の給与勧告時の報告において、今後、民間企業における家族手当の見直しの動向や、税制及び社会保障制度に係る見直しの動向等を注視しつつ、扶養手当の支給要件等について引き続き必要な検討を行って行く旨報告したところであり、学識経験者による勉強会を3回開催したほか、民間企業における動向の更なる把握などを通じ、必要な検討を行っているところである。
 また、特地勤務手当等については、平成22年の見直しから5年が経過していることから、その後の各官署の状況を踏まえ、特地官署や級別区分等の見直しについて検討を進めているところである。

2.非常勤職員等の雇用、労働条件等の改善について
 非常勤職員については、適切な処遇等を確保するため、その任用、給与、休暇等について、職員団体や各府省等関係方面の意見等も聴きながら、民間の状況等を踏まえ、法律、人事院規則等を必要に応じて改正し対応してきたところである。今後とも同様の考え方を基本に必要な見直しを行って参りたい。
 非常勤職員の給与については、昨年3月に行ったフォローアップ調査の結果、概ね指針の内容に沿った運用が確保されていることが確認できたところである。ただし、一部の官署において、通勤手当に相当する給与の取扱いが常勤職員と異なること等が見られたことから、これらの府省に対しては改善を促したところである。今後も、指針の内容に沿った運用の確保が図られるよう取り組んで参りたい。
 期間業務職員制度については、各府省において、本制度を設けた趣旨に則った適切な運用がなされるよう、制度の周知徹底や助言指導を行うなどして取り組んでいるところであり、人事院として引き続き、より適切な運用が図られるよう努めて参りたい。
 非常勤職員の休暇制度につては、民間の状況との均衡や常勤職員の状況を考慮し、必要な措置を行ってきているところであり、引き続き民間の動向等を注視して参りたい。

3.労働時間の短縮等について
 超過勤務の適正な管理及び超過勤務の縮減については、事前の超過勤務命令等の管理職員による厳正な勤務時間管理を徹底するとともに、管理職員の意識改革を含めた業務の合理化・効率化などの取組を推進することが肝要であり、このような趣旨は、昨年の勧告時報告でも言及しているところである。
 平成26年に実施した民間企業の勤務条件制度等調査における総労働時間短縮に向けた取組の調査や「超過勤務に関する職員の意識調査」を踏まえ、今後とも関係機関と連携しながら、より実効性のある超過勤務の縮減策について検討を進めて参りたい。
 職員の休暇、休業制度等については、従来より情勢適応の原則の下、民間における普及状況に合わせることを基本に、適宜見直しを行ってきたところである。介護休業制度等についても、引き続き、民間の育児・介護休業法の改正の内容や職員の具体的なニーズ、公務運営への影響等を考慮しつつ、職員団体の意見も聞きながら、必要な検討を進めて参りたい。
 短時間勤務制度については、育児を行う職員を対象とした制度が既に設けられているが、民間の状況等を注視しつつ、各府省における業務遂行体制や行政サービスへの影響、現行の組織管理や定員管理の在り方、職員の勤務条件の在り方などを含め、引き続き幅広い観点から検討が必要と考えている。今後とも、職員団体の意見も聴きながら検討して参りたい。
 平成28年4月からのフレックスタイム制の拡充については、各府省担当者へ制度説明会を開催したり、照会に対応するなど制度の周知に努めているところであり、引き続き、円滑な推進に努めてまいりたい。

4.ワーク・ライフ・バランス、女性の労働権確立について
 人事院としては、男女共同参画社会の実現を人事行政における重要施策の一つと位置付け、国家公務員法に定める平等取扱の原則、成績主義の原則の枠組みを前提とした女性の参画のための採用・登用の拡大、両立支援など様々な施策を行ってきている。
 女性職員の採用・登用の拡大については、平成27年12月に第4次男女共同参画基本計画が閣議決定され、また、「女性職員活躍・ワークライフバランス推進協議会」において、具体的な施策を盛り込んだ「国家公務員の女性活躍とワークライフバランス推進のための取組指針」に基づき、政府全体で取組が進められている。
 なお、人事院では、第4次男女共同参画基本計画が閣議決定され、各府省において女性国家公務員の採用・登用の拡大等に向けた具体的取組が進むよう「女性国家公務員の採用・登用の拡大等に向けて」を発出したところである。
 今後とも、女性職員の登用に向けた研修や両立支援等により、各府省の取組を支援して参りたい。

5.高齢期雇用等について
 国家公務員の雇用と年金の接続について、年金支給開始年齢の62歳への引上げに当たっては、引き続き、平成25年の閣議決定に基づき定年退職する職員を再任用することにより対応する方針が政府より示されたところである。
 閣議決定においては、再任用希望者を原則フルタイム官職に再任用するものとされているが、現在の公務の再任用は引き続き短時間勤務が中心であり、フルタイム中心の勤務となっている民間企業の状況とは大きく異なっている。今後、再任用希望者の増加が見込まれる中、このような再任用の運用が続くと、公務能率や職員の士気の低下、生活に必要な収入が得られないなどの問題が深刻化するおそれがあることから、公務においても民間企業と同様にフルタイム中心の勤務を実現することを通じて、再任用職員の能力及び経験を本格的に活用していくことが必要である。
 人事院としては、高齢層職員の能力及び経験の活用の観点から、引き続き公務内外における高齢期雇用の実情等の把握に努めつつ、平成23年の意見の申出を踏まえ、雇用と年金の接続の推進のため、関連する制度も含め、適切な措置がとられるよう、引き続き必要な対応を行っていくこととしている。
 再任用職員の給与については、転居を伴う異動をする職員の増加と民間の支給状況を踏まえ、平成27年4月から再任用職員に対して単身赴任手当を支給しているところである。
 再任用職員の給与の在り方については、民間企業の再雇用者の給与の動向や各府省における再任用制度の運用状況等を踏まえ、職員団体の意見も聴きながら必要な検討を行っていくこととしたい。

6.福利厚生施策の充実について
 心の健康づくりをはじめとした健康管理対策やハラスメント対策の推進については、公務全体の共通の課題として、各職場においてきめ細かい対応が重要であるとの認識に基づき、これまでも各府省と協力して、人事院として積極的に取り組んできたところである。各府省においてもこうした取組の必要性の認識は高まっており、人事院としても引き続き、各府省と連携しつつ、適切に対応して参りたい。
 昨年12月には、各府省に対して、職員に医師等によるストレスチェックの受検機会を付与すること及び職員からの申出に応じて面接指導を実施することを義務付けることなどを内容とするストレスチェック制度を導入したところであり、各府省と連携し、同制度の着実な実施に努めてまいりたい。
 また、いわゆるパワハラについては、昨年7月に、パワハラの概念、相談例、パワハラへの対応等を分かりやすく解説したパワハラ防止ハンドブックを作成、配布したところであり、これを活用してもらうことにより、パワハラ防止に関する意識啓発をより一層推進して参りたい。

 これに対して、大塚副事務局長は、次の通り人事院の見解を質した。
(1) 春季生活闘争では3年連続の賃上げ実現をめざし、本年はとくに非正規労働者や中小、地場の底上げによる格差是正に重点を置いている。
  職場の賃上げに対する期待は大きく、人事院として、夏に向けて、3年連続で賃上げ勧告を行う積極的な姿勢で臨んでもらいたい。なお、原資の配分については公務員連絡会と十分に話し合って、合意のもとに進めてもらいたい。
  比較企業規模については、改めて現行通りという考えに変わりはないことを確認しておきたい。
(2) 諸手当については、公務員宿舎が削減され、住居手当の改善要望が高い。配偶者に対する扶養手当見直しについて、昨日の勉強会でどういう議論がされたのか。民間実態を踏まえるのが原則と考えるがどうか。
(3) 2年連続で勤勉手当が引き上げられ、常勤職員と非常勤職員の格差が拡大している。勤勉手当もガイドラインに明記して支給すべき。また、非常勤職員の時給37円の賃上げ要求は連合の格差是正要求をふまえたものであり、夏の勧告での改善を求める。
(4) 新年度は民間の育児・介護制度の見直し等に合わせた改善が課題になるが、非常勤職員について無給の休暇である、子の看護・短期介護・私傷病休暇の取扱いなどについても、改善を検討すべき。
(5) ワーク・ライフ・バランスの推進、ディーセントワークの実現のためには超過勤務を抜本的に縮減することが不可欠であり、まずは勤務時間の客観的な把握が必要だ。人事院は秋民調で民間の状況を調べており、その結果も含めて、勤務時間管理を刷新すべき。
(6) 第4次男女共同参画基本計画には国家公務員について、超勤縮減など数値目標を設けることの検討が指摘されており、人事院が音頭を取って明確な目標を定めるべき。
(7) 民間の育児・介護制度の改正等を踏まえた、育児・介護制度の改善が夏に向けた重要な課題になる。具体的な改善に向けては意見を提出するので、その意見を踏まえ、積極的な対応を求める。
(8) 国家公務員の短時間勤務制度については、現在、育児と再任用でのみ措置されているが、この際、フレックスタイムの拡充と同様、勤務時間の弾力化、柔軟化の観点から介護及び定年前についても制度化を検討してもらいたい。
(9) 年金と雇用の接続については、引き続き再任用とされた。職員が意欲を持って働き、生活水準を確保するためには、希望通りの再任用の実現が不可欠だ。昨年の勧告時報告にあった、再任用者の本格的な活用についての進展状況と、新年度における再任用の見通しについて、現時点での人事院の認識・評価を伺いたい。
(10) 今後決定される一億総活躍方針の中で定年延長の推進が検討されているが、公務は再雇用、再任用で民間に遅れている。定年後の公務員は活躍したいのにできないのが実態であり、この際、定年延長を断行し、民間を先導すべきだ。人事院として、改めて政府に働きかけるべき。
(11) 心の健康づくりに関わって、新年度にはストレスチェックが実施されるが、プライバシーに配慮しつつ、働きやすい職場づくりにつなげていくことが重要だ。集団的分析を着実に行い、職場環境改善ができるように周知徹底と点検を行っていただきたい。

 これに対し、川崎職員団体審議官は次の通り答えた。
(1) 比較対象となる企業規模については、平成18年に企業規模50人以上、事業所規模50人以上に見直したことによって、民間企業従業員の給与をより広く把握し、反映することができた。こうした現行の取扱いが適当であると考えている。
(2) 住居手当を含む諸手当については、民間実態等を踏まえ、皆さんの意見も聞きながら検討してまいりたい。配偶者に係る扶養手当については、有識者による勉強会を3回実施しており、これから民間企業の動向についてさらに把握しながら、必要な検討を行ってまいりたい。
(3) 超過勤務の縮減については、画期的な取組みは無く、地道な取組みを進めており、超過勤務は徐々に縮減されている状況にある。フレックスタイム制の拡充も意識改革が進むことの契機になるのではないか。
(4) 定年延長については、平成23年に行った意見の申出における基本的な考え方は変わるものではなく、政府にその判断を求めている状態である。また、昨年の勧告時報告においても、高齢層職員を活用しなければ職場における業務が遂行できなくなってしまう危険性もある旨、報告している。

 最後に、大塚副事務局長が「春の段階の交渉では、民間の状況を踏まえつつ、夏の人勧期に向けて、課題を確認して、解決の方向性を探っていくことになるが、今日の回答は、まだまだ具体性がなく、方向性が見えてきていない。今後、さらに議論を積み重ねて、17日の各局長との交渉では、われわれの要求について具体的かつ前向きな回答をお願いしたい」と要望し、本日の交渉を締めくくった。

以上