公務員連絡会書記長クラス交渉委員は、3月16日14時から、内閣人事局人事政策統括官との交渉を実施し、2月19日に提出した2016春季要求に対する現段階における回答を引き出した。
冒頭、吉澤事務局長が現段階の回答を求めたのに対し、三輪人事政策統括官は次の通り答えた。
1.2016年度賃金について
国家公務員の給与改定に当たっては、国家公務員の給与を社会一般の情勢に適応させるとの原則の下、人事院勧告制度を尊重することが基本姿勢と考えている。
本年の給与改定については、人事院勧告も踏まえ、国政全般の観点に立って総合的に検討を行った上で方針を決定してまいりたいと考えている。その際には、皆様とも十分に意見交換を行ってまいりたい。
2.非常勤職員等の雇用、労働条件の改善について
期間業務職員制度の適正な運用や適正な給与の支給など、非常勤職員に対する適正な処遇に努めるよう、これまでも、各府省及び地方支分部局に対し、人事管理官会議等の場を通じて、周知等を図ってきたところ。
期間業務職員制度は導入から一定期間が経過しているが、当該制度が適切に運用されているか、また、人事院の関連通知を踏まえた適切な対応が行われているかを把握するため、非常勤職員の実態調査を平成28年4月1日現在で実施することとしたところ。
3.労働時間、休暇及び休業等及びワーク・ライフ・バランスの推進、女性の労働権確立について
一昨年10月に「国家公務員の女性活躍とワークライフバランス推進のための取組指針」を取りまとめたが、この1月には、女性活躍推進法の成立と第4次男女共同参画基本計画の策定を踏まえた改正を行ったところ。
各府省では、この指針を踏まえた取組計画に基づく取組を進めているが、内閣人事局としても、各府省の取組を毎年度フォローアップするとともに、必要に応じてサポートを行ってまいりたい。
超過勤務の縮減や休暇等の取得促進については、昨年に引き続き、7月・8月に「ワークライフバランス推進強化月間」と「ゆう活」を実施することとしたところ。
また、フレックスタイム制の拡充については、4月1日の施行に向けて準備を進めており、職員がより柔軟な働き方ができるよう適切に運用していきたい。
なお、霞が関の働き方の見直しの議論を通じて、広く日本社会の働き方が変わるきっかけとなることを期待し、河野大臣の下で懇談会を開催することとし、3月14日に第1回目を実施したところ。河野大臣からも、「この時機を捉え、働き方の中身そのものにもわたる改革にも取り組み、改革を加速させていきたい」旨の発言があったところ。
職員の皆さんが、その能力を十分に発揮し、高い士気をもって効率的に勤務し、公務能率の一層の向上につながるよう、皆様のご意見も伺いながら、超過勤務の縮減等に政府一丸となって取り組んでまいりたい。
4.高齢者雇用施策について
雇用と年金の接続については、引き続き平成25年3月の閣議決定に沿って、定年退職者の再任用を政府全体で着実に推進していく方針であるが、特に今後、再任用の期間、再任用職員の数が大幅に増えていくことを想定すれば、組織の活力を維持しつつ、再任用職員の能力や経験をより一層本格的に活用するための取組は待ったなしであると認識しており、有識者から民間事例に関するヒアリング等も行ったうえで、各府省の協力を得ながら引き続き検討してまいりたい。
また、平成27年の人事院の報告において、再任用職員の給与について、民間企業の再雇用者の給与の動向や各府省における再任用制度の運用状況等を踏まえ、引き続き、その在り方について必要な検討を行っていくこととされており、政府としても人事院における所要の検討を踏まえ、適切に対応してまいりたい。
今後の雇用と年金の接続の在り方については、同閣議決定を踏まえ、年金支給開始年齢の段階的な引上げの時期ごとに、再任用制度の活用状況や民間の高年齢者雇用確保措置の実施状況等を勘案し改めて検討を行うこととされており、検討に際しては、皆様も含めた関係者の意見も聞きつつ、進めてまいりたい。
5.福利厚生施策の充実について
先日、国家公務員健康増進等基本計画を決定したところであり、これに基づき、職員の心身の健康の保持増進等に努めてまいりたい。
この中で、管理監督者への昇任の際に、e−ラーニング講習の活用により、心の健康づくりやハラスメント防止に関する研修の受講を必修化するなど、管理監督者を対象とした研修を強化することとしたところである。
また、ストレスチェック制度を適正に実施するとともに、必要とする職員が専門家に相談できる体制の整備に努めることとしている。
今後も福利厚生施策の効率的かつ効果的な推進に努めてまいりたい。
6.公務員制度改革について
自律的労使関係制度については、多岐にわたる課題があり、引き続き慎重に検討する必要があると考えている。皆様とは、引き続き意見交換をさせていただきたい。
これに対して、吉澤事務局長は次の通り人事政策統括官の見解を質した。
(1) 2016年度は、財政健全化に向けた集中改革期間の初年度であるが、あくまで経済成長を前提としたものであり、現在の経済状況を鑑みて、増税先送り論も浮上しているところ。仮に更なる歳出削減となれば、公務員人件費削減が焦点化することも想定されるが、今後の公務員の労働条件確保について、認識を伺いたい。
(2) 総人件費について、骨太の方針2015では、公共サービスの産業化やインセンティブ改革等が掲げられている。他方、公共サービス基本法では、公共サービスに従事する者の適切な労働環境の整備等が規定されており、財政健全化の中にあって、どのように整合性を図っていくのか。
(3) 定員の課題について、まずは業務改革が重要であるとの認識については議論してきた。この業務改革は一定進んできているところであり、今後の定員については、課題である雇用と年金の確実な接続を果たすと同時に、新規採用により必要な人員を確保した上で、ということが基本であると考えるがどうか。
(4) 給与法の改正に伴う非常勤職員給与の改定は、給与ガイドラインを踏まえるといつ頃か、4月への遡及改定が必然ではないか。各府省の対応は統一されるべきである。
(5) 非常勤職員の給与・諸手当について、ガイドラインに則した支給がされていない問題について、この間の経過、今後の対応如何。また、各省のホームページの募集要項の様式や記載内容が統一されていない問題については、早急な対応を求める。
(6) 雇用と年金の接続については「年金支給開始年齢が63歳となるときまでに確実に定年延長する」旨、覚悟を持って要求している。これからの議論の中で積極的な対応を求める。
(7) 「霞が関の働き方改革を加速するための懇談会」の議論は、勤務条件に関わる課題と密接に繋がってくる。逐次、議論の中身、今後の対応の検討について、前広に議論させてもらいたい。
これらに対して、三輪人事政策統括官は次の通り応えた。
(1) 公務員人件費については国会でも様々な議論がなされているが、政府としては、給与制度の総合的見直しをはじめとした様々な取組みによって、総人件費を抑制してきたところであり、今後もこれまでの方針を堅持することが基本であり、現段階で新たな施策等は考えていない。しかし、歳入、歳出ともに更に厳しい状況となることは想定されることであり、方針堅持を基本姿勢としつつ、今後の議論状況をみて、慎重に対応してまいりたい。
(2) 良質な公共サービスを提供するためには、そこで働く労働者の適切な勤務環境、労働条件の確保が大前提であると認識している。また、働きがいのある仕事のためにはワーク・ライフ・バランスが不可欠であり、労働条件の改善・確保と合わせて、しっかりと各種取組みを推進してまいりたい。
(3) 定員については、公共サービスが提供できる体制を確保することが前提である一方、総人件費抑制方針とどう両立させるかが大きな課題である。また、雇用と年金の接続を図りつつ、組織の新陳代謝のためには新規採用も不可欠であり、全体を適切に把握しながら、人員削減や配置等を検討していくことになる。
(4) 改正給与法の成立後、非常勤職員の給与を指針に適合させるという動きが、各府省でなされているものと思われるが、具体的な時期については、把握しているわけではない。非常勤職員に関する実態調査の中で把握していきたい。
(5) 非常勤職員の給与は、「常勤職員との権衡を考慮する」旨の給与法の規定と人事院の指針に基づき、各府省が具体的に措置している。これが統一されていない例があることは断片的に認識しているものの、具体的にどのように統一されていないのか、現段階で申し上げられる状況にない。人事院や各府省と、ご指摘のような問題を含めた議論を深めていくためにも、まずは状況把握に取り組んでまいりたい。調査だけでは分からない実態については、必要に応じ、各府省から具体的にヒアリングすることも検討する。
(6)「雇用と年金の接続」「働き方改革」についてはいずれも大きな課題で、職員の関心が高い。今後の議論の過程において、必要な情報の共有はしっかりと行っていく。
最後に、吉澤事務局長は、「24日の国家公務員制度担当大臣からの最終回答にむけ、要求に則した前向きな検討を求める」と強く要請し、本日の交渉を終えた。
以上