公務労協地方公務員部会は3月25日、書記長クラス交渉委員が、北崎公務員部長ほかと2016春季段階の最終交渉を行った。冒頭、福島企画調整委員代表が「2月19日、高市総務大臣に要求書を提出し、これまで交渉・協議を積み重ねてきたが、本日はこうした交渉経過を踏まえながら、公務員部長から春の段階の最終回答をいただきたい」と、求めたのに対し、北崎公務員部長は次のように答えた。
1.2016年度の賃金改善等について
(1) 自治体における賃金・労働条件の決定について
○ 平成28年度の地方財政計画における給与関係経費については、その所要額を適切に計上している。
○ 地方公務員の給与については、地方公務員法の趣旨を踏まえ、各団体の議会において条例で定められるべきものである。
○ 総務省としては、国民・住民の理解と納得が得られる適正な内容とすべきものとの考え方に立ち、必要な助言を行ってまいりたい。
(2) 公共サービス基本法について
○ 総務省としては、地方公務員のワーク・ライフ・バランスの実現をめざし、地方公務員の勤務時間の縮減や柔軟な働き方改革について、国家公務員における対応を踏まえつつ、制度改正の推進や必要な助言等を行っている。
○ 具体的には、
・ 徹底した超過勤務の縮減と年次有給休暇の取得、また、ゆう活やフレックスタイム制度の拡充等による働き方改革について、女性地方公務員の活躍の観点も含め、助言、
・ 労働安全衛生法の改正により、平成27年12月から地方公共団体にも義務付けられた「ストレスチェック」の円滑な実施に向けた助言、
・ 平成26年7月の通知で、臨時・非常勤職員の任用・勤務条件に関して留意すべき事項を示し、各地方公共団体における取組の検討と必要な対応を要請、
などの取組を進めているところである。
○ 総務省としては、今後とも、国家公務員の対応等も踏まえ、必要な対応を行っていく考えである。
2.労働時間、休暇及び休業等について
(1) ストレスチェックについて
○ 総務省においては、ストレスチェック制度が義務化されたことから、メンタルヘルス不調で治療中のため、受検の負担が大きいなどの特別な理由がない限り、全ての職員にストレスチェックを実施いただくよう検討をお願いする旨の通知を発出した。
○ また、ストレスチェックの実施に要する経費については、各地方団体の標準的な財政需要となるため、事業場の規模に関わらず普通交付税による措置を講じることとしている。
(2) 東日本大震災に関連するメンタルヘルス対策5か年事業について
○ 「東日本大震災に関連するメンタルヘルス対策5か年事業」について、被災自治体等に対する周知に当たっては、全国会議において説明したほか、これに加えて、被災3県には個別に説明を行ったところである。
○ 今後とも、被災地の状況や被災自治体等の要望も踏まえながら、被災自治体の職員に対するメンタルヘルス対策をしっかりと進めてまいりたい。
(3) フレックスタイムについて
○ 本年1月に勤務時間法が改正され、国家公務員については、4月1日から、フレックスタイム制を原則として全ての職員を対象に拡充することとされている。
○ 今回のフレックスタイム制の拡充は、ワークライフバランスの充実による職員の意欲や士気の向上、効率的な時間配分による超過勤務の縮減が期待されるなど、公務能率の向上に資するもの。
○ また、働き方改革の推進、特に育児・介護を行う職員への対応や、徴税事務など時間外における勤務への対応等、様々なニーズが考えられるところ。
○ このため、各地方公共団体においては、まずは、条例による制度を設けていただくことが重要と考えている。
○ 総務省としては、人事院勧告以降、様々な場で、制度の趣旨等を説明するとともに、改正勤務時間法や関連する人事院規則の改正等を踏まえ、2月25日付けで勤務時間条例(例)を発出したところである。
○ 今後とも、各地方公共団体における円滑な導入に向け、先進事例の提供も含め、必要な助言・情報提供等を行ってまいりたい。
3.改正地方公務員法について.
(1) 人事評価制度について
○ 改正地方公務員法においては、人事評価の具体的な基準や方法などは各任命権者において定めることとされているが、評価の公正性、透明性、客観性、納得性を確保するため、各地方公共団体においてその枠組みを適切に構築することが重要であると考えている。
○ また、人事評価制度の円滑な導入と運用のためには、職員への十分な周知と理解を踏まえながら進めていくことは重要であると考えている。平成26年8月に地方公共団体に対して発出した人事評価制度の運用に関する通知の中でも、職員への十分な周知と理解を踏まえながら導入を進めることが重要であることなどについて助言している。
○ 今後とも、人事評価制度の円滑な導入と運用が図られるよう、必要な助言を行ってまいりたい。
(2) 等級別基準職務表について
○ 今回の法改正においては、能力・実績に基づく人事管理を徹底するという観点から、個々の職務を給料表の各等級へ分類する際の具体的な基準として、等級別基準職務表を各地方公共団体が給与条例に規定することを制度化したもの。これは、議会審議等を通じて、民主的チェックや住民への説明責任を強化し、地方公務員給与における職務給原則を一層徹底させようとするものである。
○ 地方公共団体の規模や組織構造等に応じて、等級別の基準職務の内容は異なってくるものであるが、等級別基準職務表の規定にあたっては、地方公務員法における職務給の原則や均衡の原則を踏まえ、適切に職務の格付けを行うよう助言している。
○ 各地方公共団体においては、この趣旨を踏まえて、適切に等級別基準職務表を整備すべきものと考えている。
4.臨時・非常勤等職員の雇用確保と処遇の改善について
○ パート労働法は、民間事業主がその雇用する労働者について「主体的に」雇用管理の改善を行うものであるが、公務員については、国民や住民の意思である法令、条例等に基づいて勤務条件が定められていることから、同法の適用は除外されているものと承知している。
○ しかしながら、地方公共団体における臨時・非常勤職員の任用にあたっては、民間労働法制の動向も十分に念頭に置くことが必要であると認識している。
○ こうしたことも踏まえて、平成26年7月に発出した通知においては、臨時・非常勤職員の報酬等について、パートタイム労働法の趣旨に言及しながら、「(常勤の職員の給料と同様に)職務給の原則の趣旨を踏まえ、職務の内容と責任に応じて適切に決定されるべき」等の助言を行っているところである。
○ 各地方公共団体においては、同通知を踏まえて、それぞれの実情に応じた対応について検討を進めていただいているものと承知している。
○ 今後、各地方公共団体の取組状況を見極め、適切な時期に実態について調査を実施して、取組の進捗状況についてフォローアップを行いながら、臨時・非常勤職員の必要な処遇の確保に取り組んでまいりたい。
5.新たな高齢者雇用施策の充実について
○ 雇用と年金の接続については、国家公務員の取扱に関する閣議決定を受け、平成25年3月に各地方公共団体に対し総務副大臣通知「地方公務員の雇用と年金の接続について」を発出したところである。
○ 通知では、「定年退職者が再任用を希望する場合、任命権者は、公的年金の支給開始まで、当該職員を再任用することを基本とすること」「再任用に関する条例が未制定の場合は速やかに条例の制定をすること」等、地方の実情に応じて必要な措置を講ずることを要請し、各種会議でその徹底を図ってきたところである。
○ この結果、平成27年度の再任用の実施状況をみると、
@再任用に必要な再任用条例の制定率は99%となり、大多数の団体で制定されていること
A雇用と年金の接続が必要となった平成26年度から再任用職員数が大幅に増加していること
から、多くの地方公共団体で、雇用と年金の接続が図られているものと考えている。
○ 今後とも、雇用と年金の接続を確実に図ることを目指し、各種会議の場などを通じて、引き続き、地方公共団体に対する助言等を行ってまいりたい。
○ また、平成28年度からの雇用と年金の接続の在り方については、昨年12月、国家公務員、地方公務員ともに再任用により対応することとされたところである。
これは、平成25年の国家公務員の取扱に関する閣議決定において、「年金支給開始年齢の引上げ時期ごとに、段階的な定年の引上げも含め雇用と年金の接続の在り方について検討を行う」とされたことを踏まえて検討が行われたもの。
今後の接続の在り方については、国の動向等を踏まえて、改めて検討してまいりたい。
回答を受け、福島企画調整委員代表は次のように述べた。
1.賃金改善について
◯ 地方公務員の給与は、労使の協議を経て当該地方自治体の条例で定めるものであることを強調しておく。
◯ 公共サービス基本法第11条は、「公共サービスの実施に従事する者の適正な労働条件の確保その他の労働環境の整備に関し必要な施策を講ずるよう努める」ことを求めており、国家公務員に準じた地方公務員の勤務条件の取扱いとは次元が異なることを指摘する。
2.労働時間、休暇及び休業等について
◯ 「フレックスタイム制」については、働き方改革の1つであるととらえているが、さまざまな形態のある地方職場において、あくまで職員の申告制であるとはいえ、その導入に関しては労使の十分な協議が必要であることを申し上げておく。
3.改正地方公務員法について
○ 改正地方公務員法は、2016年4月施行であり、施行により人事評価制度の導入が義務付けられることとなる。職場の混乱につながらないよう、労使の交渉や協議を通して、十分な周知と理解のもとで、円滑かつ効率的に運用することが肝要と考える。また、等級別基準職務表の条例化等についても、地方公共団体の規模や構造等に応じ、内容は異なってくるのは当然のこと。各自治体の主体的決定を尊重するべきである。
4.臨時・非常勤職員の雇用確保と処遇の改善について
◯ 臨時・非常勤職員の雇用確保と処遇の改善に向け、2014年7月に発出された通知を活用しながら、労使交渉・協議を行っているところだが、いまだに雇用不安が払拭されていない。今後も、お互いが十分な意思疎通を図りながら、処遇改善をはじめ、雇用不安の解消に努めていきたい。また、国においては、非常勤職員の処遇改善について実態を把握するための調査を行うとのことだが、地方への調査を行う場合は、地方公務員部会との意見交換等行っていただきたい。
5.新たな高齢雇用施策の充実について
◯ 今年度(2015年度)の定年退職者から、雇用と年金のギャップは最長2年間に延びることとなるが、再任用制度に関する条例を制定されていない団体や小規模自治体を中心に実際には運用されていない自治体も多いことから、引き続き周知徹底に努めていただきたい。
◯ 雇用と年金の接続にあたっては、定年年齢の延長が最適と考えており、関係機関に意見反映等行っていただくとともに、変更にあたっては国に遅れることのないよう制度設計を進めていただきたい。
地方公務員部会は、本日の交渉を春の段階の一定の到達点として受け止め、公務労協、公務員連絡会に結集し、人勧期に向けた取組みを検討していくとともに、総務省との交渉・協議・意見交換等を引き続きすすめていく。
以上