公務員連絡会委員長クラス交渉委員は、6月21日11時から、一宮人事院総裁との交渉を実施し、「2016年人事院勧告に関わる要求書」(別紙)を提出した。これにより、2016人勧期の取組みは正式にスタートした。
本年の人勧期をめぐっては、民間の賃上げ状況を踏まえ、月例給、一時金の引上げ勧告の実現、超過勤務の着実な縮減等が重要課題となっている。公務員連絡会は、勧告に向けて、交渉を強化することはもとより、7.26中央行動や地方における決起集会などを実施して、要求の実現を図るべく、取組みを進めることとしている。
交渉の冒頭、石原議長は、提出した要求書について次の通り述べ、要求の実現を迫った。
(1) 2016年人事院勧告の要求書提出に当たって、一言考え方を述べさせていただく。
(2) 本年の春季生活闘争において連合は、「底上げ・底支え」「格差是正」の実現をめざし、全力で取り組みを進めてきた。その結果、定昇・賃金カーブ維持分に加え、1,330円(6月1日現在)の3年連続となる賃上げを獲得し、交渉を継続している組合が残っているが、中小・地場組合、非正規労働者にも広く波及しつつあり、大手と中小の賃上げ格差も縮小しているところ。
このような民間動向によって、造幣局及び国立印刷局の賃上げについても、3年連続、0.30%相当額の引上げとする調停案受諾で決着することにつながった。
「デフレ経済からの脱却」と「経済の好循環実現」に向けて、本年も公務員給与について、引上げ勧告を行うことは当然のことだ。
(3) 一方、公務員労働者は、東日本大震災や熊本地震等の災害からの一刻も早い復興・再生はもとより、全国の各地域で、国民生活の安心・安全を確保するため、高い使命感と責任をもって日々の職務に精励している。しかし、職場では、要員不足等により業務過重となり超過勤務が蔓延し、心身に不調を来している組合員も少なくない。良質な公務・公共サービスを確実に提供していくためにも、必要な要員が確保されなければならない。
その上で、ワーク・ライフ・バランス実現の観点からも、超過勤務の着実な縮減を柱とする「働き方改革」を含む労働諸条件の改善が不可欠だ。
(4) 雇用と年金の接続について、職場では、必ずしも希望通りの再任用となっておらず、定年後の生活不安が強まっている。人事院は本年の年次報告で、「過渡的な定員措置」に言及しているが、まずはフルタイム再任用の本格的活用に向け、政府に対する働きかけを強めてもらいたい。そして、一刻も早く再任用から定年延長へ転換していかなければならない。
(5) 本日提出した要求書では、公務員の賃金をはじめとする労働条件をめぐる様々な課題について、具体的な要求事項の実現を求めているので、人事院の使命としてその解決を図っていただきたい。
本日の要求提出を機に、事務レベルで交渉を積み上げさせていただくが、然るべき時期に、要求に対する最終的な回答をいただきたいと考えているので、よろしくお願いする。
続いて吉澤事務局長が要求事項を説明。これを受けて一宮総裁は、「ご要求は確かに受け取った。公務を巡る情勢は依然として厳しい状況にある。人事院としては、国会と内閣に必要な報告・勧告を行うという国家公務員法に定められた責務を着実に果たしていく所存である。今後、本年の勧告に向けて、要求された課題について皆さんの意見も聞きながら、検討を進めて参りたいと考えている」と応えた。
(別紙)2016人勧期要求書
2016年6月21日
人事院総裁
一 宮 なほみ 様
公務員労働組合連絡会
議 長 石 原 富 雄
要 求 書
貴職におかれましては、公務員人事行政にご尽力されていることに敬意を表します。
さて、連合が本年の春季生活闘争に全力で取り組んだ結果、定昇・賃金カーブ維持分に加え、1,330円(6月1日現在)の3年連続となる賃上げを獲得し、この流れは中小・地場組合、非正規労働者にも広く波及しつつあります。
また、造幣局及び国立印刷局の賃上げについては、0.30%相当額の引上げ、とする中央労働委員会の調停案を労使双方が受諾し、決着しています。
このような状況のもと、「デフレ経済からの脱却」と「経済の好循環実現」に向けて、本年も公務員給与の引上げ勧告を行うことは当然のことと考えます。
一方、公務員労働者は、東日本大震災や熊本地震等の災害からの一刻も早い復興・再生はもとより、全国の各地域で、国民生活の安心・安全を確保するため、高い使命感と責任をもって日々の職務に精励しています。しかし、職場では、要員不足等により業務過重となり超過勤務が蔓延するなど、厳しい勤務環境にあります。
良質な公務・公共サービスを確実に提供するためにも、必要な要員を確保した上で、超過勤務の着実な縮減と両立支援策の一層の活用等を柱とする「働き方改革」など、労働諸条件の改善が不可欠です。
つきましては、公務員連絡会は、2016年の人事院勧告に関わる要求を提出します。貴職におかれましては、下記事項の実現に向け、最大限努力されるよう要求します。
記
1.賃金要求について
(1) 月例給与について
2016年の給与改定勧告に当たっては、公務員労働者の月例給与水準の引上げ勧告を行うこと。また、較差の配分等については、早い段階から公務員連絡会と十分交渉・協議し、合意に基づいて行うこと。
(2) 一時金について
一時金については、精確な民間実態の把握と官民比較を行い、支給月数を引き上げること。
(3) 諸手当について
諸手当については、官民較差の見通しを踏まえ、公務員連絡会と十分交渉・協議し、合意に基づいて勧告作業を進めること。また、住居手当及び扶養手当は、つぎのとおり対応すること。
@ 住居手当については、国家公務員宿舎の削減及び宿舎使用料等の段階的引上げを踏まえ、総合的に改善すること。
A 扶養手当については、民間準拠のもと、民間実態を踏まえた対応とすること。見直す場合には、公務員連絡会と十分交渉・協議し、合意に基づいて進めること。
(4) 再任用職員の給与について
再任用職員の給与制度については、経済的負担、定年前職員との均衡を考慮して改善することとし、公務員連絡会と十分交渉・協議し、合意に基づいて行うこと。
(5) 給与制度の総合的見直しに関わる今後の対応について
2017年度以降の措置の具体化に当たっては、公務員連絡会と十分交渉・協議し、合意に基づいて行うこと。
2.労働条件の改善について
(1) 労働時間の短縮及び休業制度等について
公務職場におけるワーク・ライフ・バランスを実現するため、「働き方改革」等をつぎのとおり進めること。
@ 本府省における在庁時間削減の取組みの実施状況を踏まえ、その取組みの強化・徹底を図ることとし、人事院として積極的役割を果たすことにより、在庁時間の一層の削減に努めること。
A 超過勤務を縮減するため、事前の超過勤務命令の徹底、IT等を活用した職場における厳格な勤務時間管理を直ちに実施すること。
B 新たに超過勤務縮減目標等を設定し、上限規制を導入するなど、より実効性のある超過勤務縮減策を着実に実施すること。とくに、他律的業務を含む超勤上限目安時間については、完全に遵守できるよう各府省に対する指導を強化すること。
C 1か月当たり45時間を超え60時間以内の超過勤務に対する割増率については、民間企業の実態を踏まえた引上げを行うこと。あわせて、超過勤務手当の全額支給を徹底すること。
D 育児・介護など両立支援策について、民間に遅れることなく必要な改善を行うこととし、公務員連絡会と十分交渉・協議し、合意のもとに進めること。
E 家族介護を理由とした離職を防止するため、介護休業制度を整備すること。
F テレワークに係る勤務時間の在り方等の見直しに当たっては、公務員連絡会と十分交渉・協議すること。
(2) 女性公務員の採用等の推進について
女性国家公務員の採用・登用・職域拡大の着実な推進に向け、積極的な役割を果たすこと。
(3) 高齢者雇用施策について
雇用と年金の接続について、年金支給開始年齢が63歳になるときまでに確実に段階的定年延長を実現するため、政府に対する具体的な対応を図ること。
(4) 福利厚生施策の充実について
@ 心の健康づくりについては、勤務条件や職場環境の改善など総合的に取り組むこととし、ストレスチェックや「職員の心の健康づくりのための指針」等に基づく施策の着実な推進を図ること。
A ハラスメントについて、一層有効な対策を着実に推進すること。。
3.非常勤職員等の制度及び処遇改善について
(1) 非常勤職員等の給与を引き上げること。
(2) 「非常勤職員給与決定指針」の実施状況を丁寧に点検し、その遵守を徹底すること。
(3) 期間業務職員制度について、当該職員の雇用の安定と処遇の改善となるよう、適切な運用に努め、必要な改善措置を講じること。
(4) 非常勤職員の休暇制度について、常勤職員との均衡を基本として、改善すること。
(5) 非常勤職員制度の改善に関するこれまでの取組みを踏まえ、制度の抜本的改善に向けた検討を継続することとし、公務員連絡会と十分交渉・協議し、作業を進めること。
以上