公務員連絡会は、26日、全国から3千人の仲間を結集し、人勧期中央行動を実施した。13時30分から、日比谷大音楽堂で中央集会を開催したほか、霞ヶ関を一周するデモ行進と人事院前での交渉支援行動を行った上で、音楽堂に再結集し、人事院交渉の報告集会を行い、要求実現を求めて最後までたたかい抜く決意を固めあった。
この中央行動を背景として行われた書記長クラス交渉委員との交渉で給与局長は、@勧告は例年とおおむね同様の日程、A官民較差は現在集計中であるが、民間の賃上げ率は2%程度のプラスではあるものの昨年を下回っており、一時金は増加傾向にあるものの、最終的にどうなるか注目している、B諸手当については、民間の状況、公務の実態等を踏まえ、総合的に検討する、などの回答を示すにとどまった。また、職員福祉局長は、組織全体での業務量削減や管理職員による業務状況管理等を通じた超勤縮減策の推進、民間法改正内容に即した両立支援制度の充実などについて回答した。
中央集会は、佐藤副議長を集会議長として始まり、冒頭挨拶に立った石原議長は、人事院勧告が目前に迫り、たたかいの正念場とした上で、「民間の月例賃金は3年連続での引上げが実現し、一時金も引上げ傾向にあることは、各種調査を見ても明白となっている。公務員はこの間、通常業務のみならず、大規模災害においても昼夜を問わず被災地の一刻も早い復旧・復興に向け職務を遂行している。良質な公共サービスを提供し、国民の安心、安全を確保するためにも、賃金・労働条件改善は不可欠だ。そのためには、民間状況を踏まえた月例給、一時金両方の引上げ勧告の実現、両立支援制度をはじめとする労働諸条件の改善を行わせることが本年の課題であり、公務員連絡会一丸となって取組みを推進しよう」と訴えた。
続いて激励挨拶に駆けつけた新谷連合副事務局長は、「春季生活闘争の取組みの結果、3年連続で賃金水準を引き上げることができ、大手と中小の賃上げ率の格差も縮小してきたところ。このような状況を踏まえれば、公務においても、3年連続の月例給、一時金両方のプラス勧告が出されて当然だ。公務員賃金が中小、地場組合に与える影響は大きく、「格差是正」や「経済の好循環実現」のためにも、しっかりと人事院勧告に向けて取り組んでいただきたい。また、4月に発災した熊本地震では、連合としてボランティア活動を展開したところであるが、被災地では、公務公共サービスに従事する皆さんが、昼夜問わず復旧・復興に従事されていたことに対し、改めて敬意を表する。しかし、公務員の労働基本権は長年にわたり制約されており、本年6月にはILO結社の自由委員会から10回目の勧告が出されたところ。公務員の労働基本権問題は、すべての働く者の尊厳に関わる問題であり、連合は、公務員連絡会の皆さんと協力し、取組みを一層強化していく」と連帯の挨拶を行った。
基調提起に立った吉澤事務局長は、正念場を迎える本年の人事院勧告について、「民間春闘における賃上げの流れを継続することが、われわれの社会的責任であり、改めて全力をあげて取り組む」と決意を表明した。
構成組織の決意表明には、全水道・神近中国地方本部書記次長、沖縄国公労・高良執行委員長、日高教・石塚栃木高教組書記長が登壇し、たたかう決意を力強く表明した。
集会を終えた参加者は、人事院前交渉支援行動と霞ヶ関一周のデモ行進を行い、「公務員の賃金を上げろ」「超過勤務を削減しろ」「非常勤職員の賃金を上げろ」などと力強くシュプレヒコールを繰り返した。
行動を終えた参加者は日比谷大音楽堂に再結集し、書記長クラス交渉の報告を受けた。吉澤事務局長は交渉の概要を報告した上で「本日の交渉において人事院は具体的な回答を示していない。給与局長との再交渉では、官民較差や扶養手当の見直しをはじめとする諸課題について、具体的な内容を引き出すため全力をあげる」とし、今後の交渉に向けた基本姿勢を明らかにした。
最後に、石原議長の団結がんばろうで集会を締めくくった。
この日に行われた人事院職員福祉局長、給与局長との交渉経過は次の通り。
<人事院職員福祉局長との交渉経過>
千葉職員福祉局長との交渉は、14時30分から行われた。
吉澤事務局長が、現時点での検討状況について回答を求めたのに対し、千葉局長は、以下の通り答えた。
1.労働諸条件の改善について
(1) 労働時間の短縮等について
職員の超過勤務の縮減は、従来から公務における重要課題の一つとして政府全体で連携しつつ取り組んできたところであるが、とりわけ近年は仕事と家庭の両立に向けた長時間労働の是正が我が国全体の課題とされており、将来にわたり誰もが活躍できる働きやすい職場作りを実現していくためにも、公務において、この問題に組織を挙げて取り組む必要があると考えている。
このためには、府省のトップが長時間労働の是正に向けた強い取組姿勢を持ち、組織全体として業務量削減に取り組むことが重要である。
その上で、超過勤務縮減への取組においては、現場の管理職員の意識改革や業務の進捗管理に果たす積極的な役割の重要性が指摘されており、こうした観点からは、管理職員が超過勤務の事由や予定時間の事前承認に取り組んでいる府省において実際に縮減効果が出ていることから、事前に超過勤務として行う業務の内容や予定時間を職員に申告させた上で、必要性や仕事の段取りを精査し、対応方法の具体的指示を行うなどの取組を各部課において徹底することが有効と考えている。
また、業務の効率的運営に関しては、国会対応体制の効率化、資料作成の簡素化、複数幹部への同時説明の導入等を既に進めている府省もあり、これらも参考に各府省において積極的に取り組むことが期待される。
さらに、業務合理化に向けて国会関係業務等の行政部内を超えた取組が必要なものについては、引き続き関係各方面の理解と協力を得ながら改善を進めていくことが重要と考えている。
こうした合理化努力を尽くした上でもなお超過勤務が長時間に及ばざるを得ない例も生じ得ると考えられ、特に、超過勤務が月間80時間を超える場合には、そのような業務に従事する職員の健康への配慮は極めて重要であり、人事管理部署と健康管理部署とで超過勤務実態の情報及び配慮の方針を共有するなど連携して対応する、できる限り業務の平準化を図るなどの人事管理上の配慮も行う必要があると考えている。
(2) 両立支援制度について
育児や家族の介護が必要な時期にも安心して働き続けることのできる社会の構築は、個々人の希望の実現、労働力の確保・定着、ひいては我が国の社会経済の持続的な発展の上でも、官民共通の重要な課題となっているところである。
こうした状況の下で、民間労働法制においては、育児や介護と仕事の両立がしやすい就業環境の整備等を行うため、本年3月、育児・介護休業法等を改正する法律が成立し、来年1月から施行されることとなっている。
人事院としては、公務においても、このような社会情勢を踏まえて仕事と介護の両立支援制度の充実について検討した結果、今般の育児・介護休業法等の改正内容に即して見直すことが適当であると考え、介護休暇の分割取得を可能にすること、介護のために勤務時間の一部を勤務しないことを承認できるよう措置すること等について、各府省や職員団体の意見も踏まえつつ、鋭意検討を進めてきた。
現在、措置案を得るための最終的な詰めを行っているところであり、措置案がまとまり次第、所要の意見表明(勤務時間法第2条に基づく勧告及び国家公務員法第23条に基づく意見の申出)を行うこととしたいと考えている。
(3) 女性公務員の採用等の推進について
人事院としては、男女共同参画社会の実現を人事行政における重要施策の一つと位置づけ、従来から国家公務員法に定める平等取扱いの原則、成績主義の原則の枠組みの下で様々な施策を行ってきている。
また、女性職員の採用・登用の拡大等については、内閣人事局長を議長に全府省の事務次官等で構成される「女性職員活躍・ワークライフバランス推進協議会」において、具体的な施策を盛り込んだ「国家公務員の女性活躍とワークライフバランス推進のための取組指針」に基づき、女性職員の職域拡大も含め、政府全体で取組が進められている。
今後とも、人事院としては、女性を対象とした人材確保活動等の強化や女性職員等を対象とする研修の実施、両立支援等を通じて、女性の活躍推進に資する環境整備に取り組んでまいりたい。
(4) 福利厚生施策の充実について
職員が職務の遂行に当たって最大の能率を発揮するには、心身ともに健康であることが重要であることは言うまでもないが、心の健康の問題により長期病休を取得している者は依然として長期病休者全体の6割を超えている。こうした心の健康の問題については、各府省と連携しながら、早期発見・早期対応及び円滑な職場復帰と再発防止を進めていくとともに、そもそも心の不調者の発生を未然に防ぐことが最も望ましいという観点から、ストレスを自覚する職員への相談室の開設等様々な支援策を講じてきたところである。
今年度からは、職員自身のストレスへの気付きを促すため、ストレスチェック制度を実施することとしており、各府省及び職員に心の不調の防止が重要という趣旨が行き渡るよう周知を行うととともに、その実施状況を踏まえて、更なる対策を進めてまいりたい。また、個々の職員のストレスチェックの結果を職場ごとに積み上げていくことで、過度のストレスの原因となり得る職場環境の課題を明らかにする効果も期待できると考えられ、人事院としても、専門家の支援を得てそうした分析の具体的手法等を示し、各府省における職場環境改善を促進してまいりたい。
職場におけるハラスメントは、職員の尊厳を傷つけ、その能力発揮を防げるとともに、職場の効率的運営にも支障をもたらすものである。
セクハラの防止については、セクハラ防止担当者会議による各府省への働きかけや、講演会等の開催等を通じて、職員一人一人の意識啓発を進めるなど、セクハラを防止するための取組を引き続き実施することを考えている。いわゆるLGBTについては、性的指向や性自認に関する正しい理解の促進等が社会的課題となっている中で、性的指向や性自認を揶揄の対象とする言動等もセクハラに当たり許されないことが関係規程上も明確になるよう措置するとともに、講演会等の機会を活用するなどして公務における周知を図っていくことを考えている。
また、いわゆるパワハラについては、昨年、「パワー・ハラスメント防止ハンドブック」を作成・配布することで予防に向けた意識啓発を図ったところであり、本年度はパワハラ防止に先駆的に取り組んでいる専門家や企業の実務家等によるシンポジウムを開催するなど、公務部内に対する啓発を更に進めてまいりたい。
民間においては、来年1月より、妊娠、出産、育児休業・介護休業等の取得等を理由として、上司・同僚等による不適切な言動等の就業環境を害する、いわゆるマタハラを防止するために必要な措置を講ずることが事業主に義務づけられることとなっている。公務においては、従来より、妊娠中の職員への配慮はもとより、仕事と育児・介護の両立を尊重する職場風土が形成されるよう、人事院と各府省が連携して取り組んでいるが、民間における措置内容を踏まえ、同様の防止策が講じられることとなるよう所要の措置を講ずるとともに、改めて各職場における啓発を図ってまいりたい。
2.非常勤職員制度等について
非常勤職員の仕事と家庭の両立支援制度についても、民間の育児・介護休業法の改正内容を踏まえ、介護休暇の分割取得等、育児休業及び介護休暇を取得できる職員の要件緩和等の改正について、職員団体等の意見も踏まえつつ、鋭意検討を進めてきたところであり、引き続き措置案の詳細について検討を行ってまいりたい。
回答に対し、吉澤事務局長らは、「ワーク・ライフ・バランスや女性活躍などの観点から、両立支援を含む働き方改革についての社会的、政治的な機運が高まっている。この期を逃がさず、公務における課題解決に向け、人事院として主体的に取り組むべきだ」と指摘した上で、次の通り局長の見解を質した。
(1) 両立支援制度について、「民間に即した見直し」との回答であり、少し消極的過ぎるのではないか。民間準拠が原則であることは承知しているが、公務員連絡会の意見や、隗より始めよの観点も含め、より積極的な検討を求める。
(2) 超勤縮減策について、これまで様々な施策が講じられてきたが、職員には超勤が減少したなどの実感はない。管理職員の問題だけではなく、新たな勤務時間管理手法をはじめとする、より実効性のある超勤縮減策を打ち出し、職員がその効果を実感できるよう具体的な対応を図っていただきたい。
(3) 超勤問題は、国会関係業務を除いては、人が足りていないことが根本的な要因だ。業務の見直しと合わせて、厳しい定員管理の中にあっても、必要な定員の確保に踏み込まなければ根本的解決にはならないと考えるがどうか。
(4) 国会関係業務等について、人事院が踏み込んだことは画期的だ。公務員連絡会としても、人事院と連携して丁寧に取り組んでいきたいと考えており、本年の勧告時報告でも、更に具体的な提起をお願いしたい。
(5) 女性職員の幹部登用について、女性が働いていく上で、出産や育児とキャリアアップの時期が重なっていることが課題であり、人事管理についても実態に合わせた抜本的見直しが必要ではないか。
これに対し、千葉局長は次の通り回答した。
(1) 公務員の勤務条件については、情勢適応が原則であり、民間法制に即したものであることが必要だ。公務における現行の両立支援制度には、見方によっては、公務が民間を上回っている部分もあるため、今回の改正については、民間法制に即したものとすることが適当であると考えている。
(2) 超勤縮減について、従来の取組みでは不十分であるとの観点から、組織全体での業務量削減や各府省のトップが強い取組姿勢を持つことが重要であることを打ち出したいと考えているところ。また、管理職員による超勤事由や予定時間、業務の進捗状況にまで踏み込み、改めて、超勤縮減に向けた取組を強化してまいりたい。
(3) 職員の皆さんが、大変な業務状況で職務に従事されていることは認識しており、人員確保など、いただいたご要望については、定員管理部署に対し、しっかりと伝えていくとともに、今後も意見交換を行いながら、人事院としてできることをやってまいりたい。
(4) 女性職員の働き方の課題について、大変重要なご指摘であると考える。本年の勧告時報告でも、同様の問題を意識した報告を行うことを考えており、様々なライフステージを意識しながら、人事管理のあり方を検討していく必要があると考えている。
最後に、吉澤事務局長から「働き方改革や超勤縮減をはじめ、課題は多岐にわたるが、隗よりはじめよの観点も含め、官が民を引っ張るくらいの気概をもち、最終的な総裁回答に向けて、更なる検討をお願いしたい」と強く要請し、職員福祉局長交渉を締めくくった。
<給与局長との交渉経過>
古屋給与局長との交渉は、15時から行われた。
吉澤事務局長が、現時点での検討状況について回答を求めたのに対し、古屋局長は、以下の通り答えた。
1.勧告について
人事院としては、公務員の給与等の適正な水準を確保するため国会と内閣に必要な勧告を行うという国家公務員法に定められた責務を着実に果たすこととしている。
本年の勧告については、例年とおおむね同様の日程を念頭に置いて、鋭意作業を進めているところである。
2.官民較差について
本年の国公実態調査によると、行(一)職員の平均年齢は,高齢層の職員が定年近くまで在職する状況が定着してきたことに加え、新規採用職員が増加したことにより、ほぼ横ばいとなっている。
官民較差については、現在集計を行っているところである。本年の民間企業における春季賃金改定状況について、現時点で発表されている各種調査結果を見ると、定昇分を含む賃上げ率は2%程度のプラスとなっているが、いずれの調査においても賃上げ率は昨年を下回ったものとなっており、最終的に較差がどうなるか注目している。
一時金については、昨年冬のボーナスは、各種調査では、厚生労働省毎月勤労統計調査を除き、前年より増加している。また、本年夏のボーナスは、現時点で発表されている各種調査結果では、前年より増加している傾向が見受けられるが、一時金についても現在集計を行っているところである。
3.諸手当について
扶養手当については、5月26日に「本年の勧告において、配偶者に係る扶養手当について、見直しを行うことを考えている」旨をお伝えし、その後、皆さんのご意見もお聴きしながら検討を行ってきているところであり、本年の勧告に向け作業を進めている。
現在、「扶養手当の在り方に関する勉強会」における議論を踏まえ、
@ 配偶者に係る手当の廃止
A 支給要件の変更
具体的には、収入要件の変更・廃止、育児・介護等の一定の事情がある配偶者に限定するなどの収入要件以外の要件の設定、一定の級以上の職員には支給しないなどの支給対象職員の限定、などが考えられる。
B 配偶者に係る手当額の変更
などの選択肢について、複数の選択肢を組み合わせるということも含めて鋭意検討しているところである。
また、勉強会においては、見直しを行う場合には、見直しによる給与原資は減少させないということについて留意しつつ検討する必要があるのではないか、激変緩和のための経過措置は必要となるのではないかといった意見を頂いたところであり、それらも念頭に置いて検討する必要があると考えている。
その他の手当については、民間の状況、公務の実態等を踏まえ、皆さんのご意見もお聴きしながら総合的に検討してまいりたい。
4.再任用職員の給与について
平成26年の勧告において、公務における人事運用の実態や民間の再雇用者に対する手当の状況を踏まえ、再任用職員に単身赴任手当を支給することとしたところである。
再任用職員の給与については、民間給与の再雇用者の給与の動向や各府省における再任用制度の運用状況等を踏まえ、職員団体の意見も聴きながら、引き続き、その在り方について必要な検討を行ってまいりたい。
5.給与制度の総合的見直しに関わる今後の対応について
給与制度の総合的見直しに関わる今後の対応については、本年の職員の在職状況等を踏まえ、今後の実施内容等について鋭意検討しているところである。
6.高齢者雇用施策について
雇用と年金の接続については、人事院が平成23年に行った意見の申出を踏まえ、高齢層職員の能力及び経験の活用の観点から適切な措置が講じられる必要があると考える。
平成28年4月からの年金支給開始年齢の62歳への引上げに当たっては、昨年12月の閣議発言において、引き続き、定年退職する職員を再任用することにより対応することが適当との考えが示されるとともに、今後、再任用職員の増加が見込まれることを踏まえ、再任用職員の能力及び経験をより一層本格的に活用するための方策の検討に取り組むことが明らかにされたところである。
人事院としては、平成33年度に定年年齢に達する職員から年金支給開始年齢が65歳になる中で、雇用と年金を適切に接続させるためには、60歳を超える職員が60歳以前と同様の能力を発揮し、意欲を持って勤務できるような人事制度を確立していく必要があると考えている。
このため、当面、定員問題等を考慮しつつ、公務においても民間企業と同様にフルタイム中心の勤務を実現することを通じて、各府省において再任用職員の能力及び経験の一層の活用が図られるようにすることが必要と考えているところである。
7.非常勤職員等の処遇改善について
非常勤職員の給与については、平成20年に指針を定め、随時フォローアップを行っているところである。
昨年、期間業務職員の給与についてフォローアップ調査を行ったが、各府省において改善が進んだこともあり、概ね指針の内容に沿った運用が確保されていることが確認できたところである。
ただし、通勤手当に相当する給与の取扱いが常勤職員と異なる官署や、期末手当に相当する給与を支給していない官署等が一部あることが見られたため、これらの府省に対して改善を促したところ、現在では、既に改善した官署も出ており、処遇の改善が図られてきていると考えている。今後も、引き続き、指針の内容に沿った運用の確保が図られるよう、取り組んでまいりたい。
回答に対し、吉澤事務局長らは、次の通り局長の見解を質した。
(1) 勧告日について、例年と同様とのことだが、どのような日程か。
(2) 官民較差の状況はどうか。審議官との交渉における回答と全く同じ回答であり、勧告まで2週間ほどしか時間がない中、この回答には極めて不満であるということを申し上げた上で再回答を求める。
(3) 扶養手当については、昨年度の人事院報告、春季要求に対する回答の中で検討を行う旨を言及し、2016骨太の方針・ニッポン一億総活躍プランを受け、5月末に本年の勧告で見直すことを表明した経緯からして、本日、具体案の提案が何もないのは極めて遺憾であり、抗議する。今後、交渉、協議、合意をもって対応することを前提に、次回提案していただきたい。
(4) 住居手当について、宿舎に入れない職員は民間の借家等を利用せざるを得ず、家賃が高いことや、敷金、礼金、更新料などの負担が重い実態があり、改善すべきだ。
(5) 両立支援制度改正について、「民間に即して」という消極的な対応であったが、給与上の対応についても様々な課題があるので、改善していただきたい。
(6) ニッポン一億総活躍プランにおいて、同一労働同一賃金の観点からの民間法改正、ガイドラインの策定を通じ、正規・非正規の賃金格差を欧米諸国に遜色のない水準をめざすとしているが、公務員関係には何ら言及していない。公務における対応が必要であり、人事院として改善を図るべきではないか。
これに対し、古屋局長は次の通り回答した。
(1) 勧告日については、昨年と同様の日程を念頭に置きながら作業を進めている。
(2) 民間の賃金動向は小さいながらもプラスの傾向。一方国家公務員の平均年齢の伸びは止まっているものの、比較給与内の各種手当の増減などにも留意する必要がある。また、民間の全体の動きが少なくとも去年より低下しているのは明らかであり、最終集計が出るまでは申し上げられない。
(3) 扶養手当については、今後具体案をお示しするので、みなさんから意見をいただき、議論をしてまいりたい。
(4) 住居手当については大きな課題だと受けとめている。一方で、住居手当は民間給与との比較給与項目であることから、住居手当を改善すれば、本俸を含む他の給与を縮小していくということになるので、生活関連手当を今後どうして行くのかという問題の一環としても考える必要がある。現在、公務員宿舎の段階的な値上げ中であるため、引き続きみなさんと協議をさせていただきたい。
(5) 両立支援制度の改正については、給与の面でも何ができるか検討してまいりたい。
(6) 民間では同一労働のものさしをどうするかが難しいが、国家公務員については俸給表や級の区別があり、非常勤職員給与決定指針では、非常勤職員の職務と類似する常勤職員の職務の級の初号を基礎とし、経験等も加味していることから、既に、一定程度のものさしは用意されていると考えている。一部指針どおりになっていない実態も見られるが、フォローアップを地道にしていくことで、各府省における改善を図られるよう取り組んでまいりたい。
最後に、吉澤事務局長から「較差を含め、本日は具体的な回答が示されていないため、改めて局長と議論させてもらいたい」と強く要請し、給与局長も了としたことから、この日の交渉を締めくくった。
以上