2016年度公務労協情報 29 2016年8月2日
公務公共サービス労働組合協議会
公務員労働組合連絡会

月例給・一時金両方の引上げの見通し、扶養手当見直し内容にも言及−8/2
−人勧期要求をめぐり人事院給与局長と2度目の交渉−

 公務員連絡会書記長クラス交渉委員は、2日13時30分から、2016年人勧期要求に関わり古屋人事院給与局長と2度目の交渉を行った。

 冒頭、吉澤事務局長が「7月26日の交渉では、較差などについて明確な回答がなかった。本日は、前回議論を踏まえた現段階の検討状況を回答願いたい」と求めたのに対し、古屋局長は以下の通り答えた。

1.勧告について
 勧告日は、来週の前半で調整中である。具体的な日程は、総裁会見の際にお伝えすることができると思われる。
2.官民較差について
(1) 官民較差と月例給について
 官民較差については、現在、最終的な詰めを行っているところであるが、今年の民間企業の春季賃金改定状況を反映して、昨年を下回るものの若干のプラスとなる見通しである。
(2) 特別給について
 特別給についても、現在、最終的な集計を行っているところであるが、民間企業のボーナスの支給状況を反映して、支給月数が引上げとなる見通しである。
 なお、支給月数の引上げがある場合には、勤勉手当に配分することを考えている。
3.本年の改定の考え方について
 仮に、引上げ改定を行うとした場合には、基本的な給与である俸給の引上げを考えている。
 その場合、本年も、給与制度の総合的見直しにおける俸給表水準の引下げに伴い経過措置額を受ける職員については、俸給表の引上げ改定を行っても実際に支給される額は増加せず、なお較差が残ることから、この較差を解消するため、給与制度の総合的見直しを円滑に進める観点から、本府省業務調整手当の支給額の引上げの一部を、本年4月に遡及して実施することが考えられる。
4.諸手当について
(1)扶養手当について
 扶養手当については、これまでの議論を踏まえ、次のとおり見直しを行うことを考えている。
○ 配偶者に係る手当をめぐる状況の変化等を踏まえ、配偶者に係る手当額について、他の扶養親族より特別に高い手当額を設定する取扱いを見直し、他の扶養親族に係る手当額と同額の6,500円にすること。
○ また、子に要する経費の実情や、我が国全体として少子化対策が推進されていることに配慮し、配偶者に係る手当額を減額することにより生ずる原資を用いて、子に係る手当額を引き上げ10,000円にすること。
○ 扶養親族を有することによる生計費の増嵩の補助という扶養手当の趣旨に鑑み、一定以上の給与水準にある行(一)9級・10級及びこれらに相当する職務の級の職員に対しては、子を除き、その他の扶養親族に係る扶養手当を支給しないこととすること。
○ 行(一)8級及びこれに相当する職務の級の職員については、子を除き、その他の扶養親族に係る手当額を行(一)7級以下の職員に支給される手当額のおおむね半額である3,500円にすること。
○ 配偶者がない場合の1人目の扶養親族に係る手当額の特例は廃止すること。
(2)初任給調整手当
 国の医療施設に勤務する医師に対する初任給調整手当について、医療職俸給表(一)の改定状況を勘案し、医師の処遇を確保する観点から、所要の改定を行うことを考えている。
5.再任用職員の給与について
 勤勉手当の支給月数の引上げがある場合には、再任用職員の勤勉手当について、勤務実績を支給額により反映し得るよう、本年の勤勉手当の支給月数の引上げ分の一部を用いて、「優秀」の成績区分を適用される者の成績率を「良好(標準)」の成績区分を適用される者の成績率よりも一定程度高く設定することを考えている。
6.給与制度の総合的見直しに関わる今後の対応について
 平成29年度においては、職員の在職状況等を踏まえ、本府省業務調整手当の支給割合の一部を引き上げることを考えている。
7.両立支援制度改正を踏まえた給与の取扱いについて
 勤務時間法に基づき勧告を行うことを予定している「介護時間」の給与の取扱いについて、介護時間を承認され勤務しなかった時間は無給とすることとしている。その上で、
○ 昇給区分の決定に当たっては、当該勤務しなかった時間を「勤務していない日数」として取り扱わないこと。
○ 勤勉手当の期間率の算定に当たっては、当該勤務しなかった時間を日に換算して30日に達するまでの期間を勤務期間から除算しないこと。
 とすることを考えている。
 あわせて、昇給制度における介護休暇・育児休業の取扱い及び勤勉手当における育児時間の取扱いについても、介護時間を承認され勤務しなかった時間がある場合と同様の取扱いとすることを考えている。
8.専門スタッフ職4級の新設について
 政府においては、高度な専門的知識、経験が求められる特定の行政分野において、部局横断的な重要政策等についての企画及び立案等を支援する職を、現行の専門スタッフ職よりも上位の職制上の段階に相当する新たな専門スタッフ職として、平成29年度から、各府省の官房等に設置することが予定されている。これを受け、人事院としては、この新たな職の専門性、重要度、困難度を踏まえ、専門スタッフ職俸給表に新たな級(4級)を設けることを考えている。

 回答に対し、吉澤事務局長らは、「すべての職員に配分するという考えを前提として本俸重視である」との基本的考え方を述べた上で、次の通り局長の見解を質した。
(1) 給与制度の総合的見直しを含め、世代間の配分の見直しで厳しい状況がある。加えて、実質賃金の低下により世代を問わず影響を受けており、世代全体に配慮した配分を行うべきだ。また、非常勤職員との関係においては初任の級に重点的な配分を行うべきだ。
(2) 一時金の引上げを勤勉手当に充てると、育児休業後の職員、あるいは非常勤職員の処遇に反映されない。非常勤職員にも勤勉手当を支給すべきであり、重ねて見解を伺う。給与引上げは、常勤・非常勤、世代の問題に関わらず、すべからく国家公務員全体に反映すべきであり非常勤職員制度そのものに根本的問題がある。今回の措置に関わって、今後、議論していくことを重ねて求めておく。
(3) 扶養手当の見直しについては、扶養手当内の配分の変更であり、本俸や他の手当等については削減することはないとの理解でよいか。また、見直しによって、手当が減額となることに対し、配慮が不可欠ではないか。
(4) 今回の見直しは、あくまで人事院による主体的な対応であることを確認したい。近年では、女性活躍推進等が話題となっているが、給与は公正・中立が基本であり、今日の生活環境と働き方の変化に鑑みた見直しであると理解してよいか。

 これに対し、古屋局長は次の通り回答した。
(1) われわれも基本的な考え方は同じである。少ない較差の中での対応にならざるを得ないが、世代全体へ広く対応すべきということについては受け止めさせていただく。
(2) 非常勤職員の給与について、予算の制約が現実問題としてある中で、従来から期末手当を支給するよう各府省を指導している。また、一般職員と同じではないにしても、何らかの勤務成績の判定を行い勤勉手当を支給するよう促しているところ。
(3) ご指摘の通り、扶養手当の見直しは、扶養手当内での配分の変更である。また、見直しについては、勉強会においても委員の先生から、激変緩和の観点から、経過措置を設けることが必要ではないかという意見を頂いたところであり、その点について検討しているところである。
(4) 扶養手当の見直しについて、政府から検討要請があったことは事実だが、人事院としては、この間、勉強会の開催や職種別民間給与実態調査等を行い、民間企業の動向や社会的な状況変化等を踏まえ、給与制度全体の中でこれからの扶養手当のあり方を検討してきたところであり、人事院として主体的に見直すことにするものである。
 最後に吉澤事務局長が、配分については別途議論するよう求めたのに対し、給与局長がこれを了としたことから、「最終の総裁回答交渉では、厳しい環境で必死に奮闘している組合員の期待に応える前向きな回答を求める」と強く要請し、この日の交渉を締めくくった。

以上