2016年度公務労協情報 3 2015年12月2日
公務公共サービス労働組合協議会
公務員労働組合連絡会

内閣人事局と人事院勧告の取扱い及び雇用と年金接続に関する方針を議論−12/2
-書記長クラス交渉委員が内閣人事局人事政策統括官交渉-

 内閣人事局は、12月2日14時から、公務員連絡会に対し、平成27年度人事管理運営方針において、「本年夏を目途にとりまとめる」とした雇用と年金の接続についての政府方針の考え方を示すとともに、本年の人事院勧告の取扱いに関する政府の検討状況を明らかにした。この交渉には、内閣人事局から三輪人事政策統括官らが出席し、公務員連絡会からは書記長クラス交渉委員が対応した。
 冒頭、三輪人事政策統括官が、次の通り説明した。

(1) 国家公務員の雇用と年金の接続については、平成25年3月の雇用と年金の接続に関する閣議決定や、昨年成立した国公法改正法附則第42条に基づき、主に、@民間企業における高年齢者雇用確保措置の実施状況、A再任用制度の活用状況、B公務の運営状況、の3つの観点から検討を進めてきたところ。
(2) 「民間企業における高年齢者雇用確保措置の実施状況」については、厚生労働省から10月下旬に平成27年度の状況が公表された。その結果によると、81.7%の企業は継続雇用制度により対応しているなど、民間企業における状況には大きな変化はみられなかった。
  内閣人事局においても、26年度に民間企業調査を行ったほか、本年夏に有識者からヒアリングを行ったところ、民間においても継続雇用制度によって60歳の前後で勤務条件を切り替えている企業が多く、今後もそのような傾向が続くのではないかとのことであった。
(3) 「再任用制度の活用状況」については、各府省の再任用の実績及び予定について毎年度春に調査を行っているが、27年度は再任用を希望する職員について概ね再任用する予定とのことであった。定期的な調査とは別に、28年度の希望状況についても各府省に聴取したところ、直ちに問題が生じると言っている府省はなかった。
  更に、現役職員に対して60歳以降の就労意向などについて調査を行ったところ、60歳以降も働きたいかどうか、どのような働き方をしたいかについて、職員側には多様なニーズがあることが確認できた。
(4) 「公務の運営状況」に関しては、現在、既に年齢構成における高齢化が進んでいる状況であり、高齢職員の活用と若手の確保・育成が大きな課題だ。人事院の意見の申出のような定年延長は、一律的にそれまでと同じ職位において雇用が継続されることが基本となるため、組織活力の維持が困難になる懸念がある一方、再任用制度は能力や適性に応じた弾力的な人事配置が可能であると考えられる。
(5) 以上の点を踏まえ、平成28年4月から年金支給開始年齢が62歳へと引き上がることへの対応については、引き続き平成25年3月の閣議決定に沿って、希望する職員を再任用することで、雇用と年金の接続を図ることとしたい。
  なお、その旨は、近日中に開催予定の給与の取扱方針を決定する閣議において、河野大臣から発言されることとなる。
(6) 他方、人事院からも、再任用職員の能力及び経験の本格的な活用に関して指摘のあったところであり、組織活力を維持しつつ再任用職員の能力や経験をより一層本格的に活用していくための方策について、各省の協力を得ながら引き続き検討する。
(7) また、人事院勧告を踏まえた本年度の国家公務員の給与改定及びフレックスタイム制を拡充することについては、近日中には、第2回目の給与関係閣僚会議が開催され、取扱方針が決定されることになるが、決定に当たっては、河野大臣から皆様に対して最終的な回答を申し上げることとしたい。

 これに対し、吉澤事務局長は、以下のとおり、三輪統括官の考えを質した。
(1) 雇用と年金接続の円滑な運用については、お互いの共通目標と認識。現行の再任用制度の運用については概ね問題ないとの回答があった。希望者についてはフルタイムが原則であるが、官職やポストの課題もあり、希望したすべての職員に適用されていないのではないか。
(2) 各省庁や職場によって再任用の状況が一律ではなく、国公法改正法附則第42条を踏まえたとき、職員の希望通りの再任用をどう確保していくのかが大きな課題だ。この問題については、政府が任命権者にその責務を課したと認識しており、任命権者には限界があるのも事実であり、改めて、政府の責務において、必要な措置を講じていくべきではないか。
(3) 人事院の意見の申出は、勧告と同じ重みを持つ。人事院も、民間の高齢者雇用の実態を承知した上で意見の申出を行っており、民間の状況を理由として方針決定を先延ばしにしてきた政府の認識を伺う。
(4) 民間は雇用が前提だが、公務はポストが前提となっており、順番が逆になっている。原理が違うのだから、公務は定年延長でないと、うまく機能しないと考えるがどうか。

 また交渉委員から、「再任用制度について、現場で働く職員はそれぞれの新規採用枠・定員事情に鑑み、希望しなかったり、フルタイムを希望したいのに短時間を希望するなど、抑制している。制度全般だけでなく、個別的な課題も理解してもらいたい」と現場の実情を訴えた。

 これに対し三輪統括官は、以下のとおり答えた。
(1) 現行再任用制度については、一定程度対応できていると認識している。しかし、個々にみた場合、職員の希望に添えているのか、能力・経験を活かせているのかなどの点について、100%対応できているとは言い難いのが各省庁の現状であると考えている。また、本年の人事院報告でも同様の指摘がなされており、実態を踏まえて、より良い方法を検討してまいりたい。
(2) 各省庁や職場ごとに、人事や組織、業務内容が異なっており、それぞれの事情を踏まえて対応していると認識している。内閣人事局としては、再任用制度全体の仕組みの中で、各省庁と認識を共有し、協力しながら、定員や業務など、それぞれの実情を踏まえて、きめ細やかに必要な措置を講じてまいりたい。
(3) 内閣人事局として、人事院の意見の申出は重く受け止めている。今後も政府として、人事院の意見の申出も念頭に置きつつ、真摯に検討を行ってまいりたい。
(4) 民間とは経営の観点が違い、公務は国民の税金によって運営されており、予算の問題なども踏まえて任用しなければならない。しかし、高齢化は官民問わない課題であり、そのような現状の中で、隙間なく雇用と年金を接続していく必要があり、一番良い方法を検討してまいりたい。

 さらに、吉澤事務局長が、「臨時国会が開催されなかったことにより、平成28年の定年延長が実現しなかったことは、受け止めざるを得ない。他方、平成25年3月の雇用と年金の接続に関する閣議決定では、年金支給開始年齢の段階的な引上げ時期ごとに定年延長を含めた検討を行うとされている。本日の方針提起は、あくまで現段階での検討結果であり、今後も、同様に検討を行うとの認識で良いか」と確認を求めたのに対し、三輪統括官は「ご指摘いただいた観点も踏まえつつ、年金支給開始年齢の引き上げ時期ごとに、定年延長も含めて検討してまいりたい」と応えた。

 続いて、吉澤事務局長は、本年の人事院勧告取扱いについて、「8月6日、当時の有村国家公務員制度担当大臣に対し、勧告通り実施する旨の閣議決定を行うように求めたのに対し、大臣から「人事院勧告制度を尊重する」、「国政全般の観点から、その取扱いの検討を進める」との回答があった。早期に閣議決定すべきであったのではないか。このように時間がかかったことについて説明してもらいたい」と統括官の見解を質した。
 これに対し、三輪統括官は、「アベノミクスの効果等の経済状況、民間状況の見極め、また経済財政再生計画における政府の収支、プライマリーバランスに関する議論など、例年以上に慎重な議論を要する課題が多々あったことによる。人事院勧告尊重の姿勢に変わりはない。近日中に閣議決定し、所要の法案を国会に提出し、人事院勧告内容の実現のため努力する」と応えた。
 最後に、吉澤事務局長は「民主党政権から現政権へ再交代し、先の国家公務員法改正においても自律的労使関係制度が見送られることなど、人事院勧告尊重の姿勢をより強く示しているのが現政権である。勧告について凍結・値切りというようなことはあり得ない。万一そのようなことがあれば、重大な覚悟を持って対応せざるを得ない。勧告通りの閣議決定、所要法案の早期国会提出という要求に対し、大臣からの万全の回答をお願いしたい」と述べ、交渉を締めくくった。

以上