公務員連絡会石原議長ほか委員長クラス交渉委員は、8月4日14時30分から一宮人事院総裁と交渉し、6月21日に提出した本年の人勧期要求書に対する最終回答を引き出した。
公務員連絡会は、この回答を受けて、5日に代表者会議を開催し、公務員連絡会としての態度を確認し、声明などを決定する予定である。
交渉の冒頭、石原議長が「本題に入る前に一言申し上げておきたい。まだ、勧告の日程も定まっていない今朝の段階で、日経新聞が勧告内容について、具体的な数字を含めて報道した。極めて遺憾なことだ。人事院の情報管理に問題は無かったのか。見解があれば伺いたい」と求めたのに対し、一宮総裁は「勧告に関して、その情報管理については、これまでも十分に注意を払い検討を進めてきたところだが、今回、このようなマスコミ報道があったことに関し、我々としても遺憾に思っている。これからも、これまでと同様に、職員団体と誠実に意見交換を行っていきたいと考えている」と発言した。
その後、石原議長が「6月21日に本年人勧期の要求書を提出し、今日まで事務レベル交渉を積み上げてきた。直前でもあるので、本日は総裁から最終的な回答を頂きたい」と求めたのに対し、一宮総裁は次の通り回答を示した。
1 民間給与との較差に基づく給与改定について
勧告日については、8月8日(月)となる予定である。
(1)民間給与との比較について
月例給の民間給与との較差は、0.1%台後半となる見込みである。
特別給は、0.10月分の増加となる見込みある。
増加分は、今年度については、12月期の勤勉手当に充てる。
来年度以降については、0.05月分ずつ、6月期と12月期の勤勉手当に充てる。
(2)給与改定の内容について
@ 俸給表の改定
行政職俸給表(一)について、民間の初任給との間に差があること等を踏まえ、総合職試験、一般職試験(大卒程度)及び一般職試験(高卒者)採用職員の初任給を1,500円引き上げることとし、若年層についても同程度の改定を行う。その他は、それぞれ400円の引上げを基本に改定する。
その他の俸給表については、行政職(一)との均衡を基本に改定する。なお、指定職俸給表については改定しない。
A 本府省業務調整手当
給与制度の総合的見直しを円滑に進める観点から、本府省業務調整手当の手当額について、係長級は基準となる俸給月額の4.5%相当額に、係員級は同2.5%相当額に、本年4月に遡及して引き上げる。
B 初任給調整手当
医療職俸給表(一)の改定状況を勘案し、医師の処遇を確保する観点から、所要の改定を行う。
2 給与制度の改正等
(1)給与制度の総合的見直しについて
平成29年度は、本府省業務調整手当の手当額について、係長級は基準となる俸給月額の5.5%相当額に、係員級は同3.5%相当額にそれぞれ引き上げる。
(2)配偶者に係る扶養手当の見直しについて
民間企業及び公務における配偶者に係る手当をめぐる状況の変化等を踏まえ、次のとおり見直しを行うこととする。
@ 配偶者に係る手当額を他の扶養親族に係る手当額と同額の6,500円まで減額し、それにより生じる原資を用いて、子に係る手当額を10,000円に引き上げる。
A 本府省課長級(行(一)9級及び10級相当)の職員には、子以外の扶養親族に係る手当を支給しないこととする。本府省室長級(行(一)8級相当)の職員には、子以外の扶養親族に係る手当額を3,500円とする。
B 皆さんからのご要望も踏まえ、配偶者に係る手当額の減額は、受給者への影響をできるだけ少なくする観点から、平成29年度から段階的に実施し、それにより生ずる原資の範囲内で子に係る手当額を引き上げる。
(3)専門スタッフ職俸給表4級の新設について
政府において、部局横断的な重要政策等の企画及び立案等を支援する職を、現行の専門スタッフ職よりも上位の職制上の段階に相当する新たな専門スタッフ職として、平成29年度から各府省の官房等に設置することが予定されており、この新たな職の専門性、重要度、困難度を踏まえ、専門スタッフ職俸給表4級を新設する。
(4)その他
@ 再任用職員の給与
勤勉手当について、勤務実績を支給額により反映し得るよう、「優秀」の成績率を「良好」の成績率よりも一定程度高くなるように設定する。
A 介護時間制度の新設に伴う給与の取扱い
勤務時間法に基づいて勧告することとしている「介護時間」の給与の取扱いについては、介護時間を承認され勤務しなかった時間は無給とする。また、昇給及び勤勉手当においては、介護時間を承認され勤務しなかった時間がある場合であっても直ちに不利にならない取扱いとなるようにし、あわせて、介護休暇、育児休業等についても同様の取扱いとする。
B 非常勤職員の給与
平成20年に発出した指針の内容に沿った処遇の確保が図られるよう、今後とも各府省を指導してまいりたいと考えている。
3 育児休業法及び勤務時間法の改正について
近年、少子高齢化の進展に伴い、育児や介護と仕事の両立を支援していくことが我が国の重要な課題となっており、家族形態の変化や様々な介護の状況に柔軟に対応できるよう民間労働法制の見直しが行われている。公務においても、適切な公務運営を確保しつつ、働きながら育児や介護がしやすい環境整備を更に進めていくことが必要となっている。
人事院は、このような社会情勢を踏まえ、民間労働法制の改正内容に即して、育児休業等に関する制度、勤務時間及び休暇に関する制度を改正することが適当と認め、給与に関する勧告と併せて、国会及び内閣に対し、育児休業法の改正について意見を申し出るとともに、勤務時間法の改正について勧告することとしている。
制度改正の概要等は次のとおり。
(1)改正概要について
@ 介護休暇の分割
職員の申出に基づき、各省各庁の長が職員が介護休暇を請求できる期間を指定することとし、その期間は、人事院規則の定めるところにより、一の要介護状態ごとに3回以下、かつ、合計6月以下の範囲内で指定することとする。
A 介護時間の新設
日常的な介護ニーズに対応するため、各省各庁の長が、職員が介護のため勤務しないことが相当であると認められる場合、連続する3年以下、1日につき2時間以下で、勤務しないこと(介護時間)を承認できる仕組みを新設する。
なお、公務の運営に支障がある時間については承認しないことを可能とする。
B 育児休業等に係る子の範囲の拡大
育児休業、育児短時間勤務及び育児時間の対象となる子の範囲を、特別養子縁組の監護期間中の子等の法律上の親子関係に準ずる関係にある子にも拡大する。
なお、フレックスタイム制の週休日の特例についても、これらの法律上の親子関係に準ずる関係にある子を養育する職員を対象とするよう措置する。
(2)実施時期について
平成29年1月1日から実施する。ただし、養子縁組里親に係る改正については、平成29年4月1日から実施する。
(3)その他
民間労働法制の改正内容に即して、次のとおり措置を講じる。
@ 介護休暇等の対象となる家族について、祖父母、孫及び兄弟姉妹の同居要件を撤廃すること。
A 介護を行う職員の超過勤務を免除すること。
B 上司や同僚等によるいわゆるマタハラ等を防止する体制等を整備すること。
C 非常勤職員の育児休業及び介護休暇の取得要件の緩和等を措置すること。
4 公務員人事管理に関する報告について
以上のほか、公務員人事管理に関して報告することとしている。
報告では、まず、少子高齢化に直面している我が国では、誰もがその能力を発揮して活躍できるよう働き方改革が重要な課題であることに言及し、公務においても、年齢別人員構成の偏りが生じる中、人事院は、働き方改革をはじめとする諸課題について、関係各機関と連携しつつ、中・長期的視点も踏まえた総合的な取組を引き続き進めていくことについて言及することとしている。
また、これらを踏まえた人事行政上の個別課題についての人事院の取組の方向性について、
○ 人材の確保及び育成のため、
・ 多様な有為の人材の確保
・ 人材育成
・ 能力・実績に基づく人事管理の推進 について
○ 働き方改革と勤務環境の整備のため、
・ 先程申し上げた両立支援制度改正による仕事と家庭の両立支援の充実
・ 心の健康づくりの推進
・ ハラスメント防止対策
・ 非常勤職員の勤務環境の整備 について
言及することとしているほか、
長時間労働の是正について、
・府省のトップが組織全体の業務量の削減及び合理化に取り組むことが重要 であること
・現場の管理職員による超過勤務予定の事前確認や具体的指示等の取組を徹 底することが有効であること
・業務合理化後も長時間の超過勤務をせざるを得ない職員には、人事管理部署と健康管理部署とで情報や方針を共有したり、業務の平準化を図る等の配慮も必要であること
について言及することとしている。
さらに、高齢層職員の能力及び経験の活用について、
・ 60歳を超える職員の勤務形態に対する多様なニーズも踏まえた定年延長に 向けた仕組みを具体化していくことが必要であること
・ 当面は、民間同様にフルタイム中心の再任用勤務の実現を通じて再任用職 員の能力・経験の一層の活用を図る必要があること
・ 各府省は計画的な人事管理や能力・経験を活用し得る配置、職員の意識の 切替え等の取組を推進する必要があること
・ 人事院としては、関係機関への働きかけや各府省への情報提供等により各 府省の取組を支援していくこと
について言及することとしている。
以上の回答に対し、石原議長は以下の通り公務員連絡会としての見解を述べ、交渉を締めくくった。
(1) いま、本年の月例給、一時金のいずれも改善する等の回答があった。月例給及び一時金の3年連続の引上げは、組合員の期待に一定程度応えるとともに、民間企業や造幣局、印刷局の春季交渉結果と賃上げによる経済の好循環をはかる観点から当然の結果である。
一時金について、3年連続で勤勉手当の引上げに充てたが、非常勤職員等への配慮について課題を残したことを改めて指摘しておきたい。
扶養手当制度の見直しは、子に対する手当額を大幅に引き上げる一方、配偶者に対する手当額を半減している。今日の生活環境と働き方の変化に鑑みた見直しであるとともに、扶養手当内での配分の変更であり、経過措置が講じられることに留意したい。
勤務時間関係について、人事院が超勤の縮減にこれまでになく踏み込んでいることは評価できるが、問題は、本府省から地方出先・施設等機関まで、具体的・客観的に超過勤務が縮減できるかどうかである。両立支援制度改正の勧告及び意見の申出については、働き方改革の機運が熟しているにもかかわらず、民間準拠が原則とは言え、民間制度の改正に即した改正に止めたことはあまりに消極的過ぎる。
雇用と年金の接続に関わって、60歳を超える職員が能力を発揮し、意欲を持って勤務できる人事制度の確立に言及し、フルタイム中心の勤務を実現することにしているが、その具体策を提案しなかったことから、今後に課題を残した。
(2) 今日の回答については、機関に持ち帰って報告し、われわれとしての最終的な態度を決定することとしたい。
以上