2016年度公務労協情報 33 2016年8月10日
公務公共サービス労働組合協議会
地方公務員部会

人事院勧告等を受け、地方公務員部会が総務大臣申入れ、全人連要請を実施-8/9・10

 公務労協地方公務員部会は、人事院勧告・報告後、各人事委員会が勧告作業に取りかかることを受け、8月9日に全国人事委員会連合会に対して「2016年給与勧告等に関する要請」を、10日に高市総務大臣に対して「2016年地方公務員給与の改定等に関わる申入れ」を行った。

<全国人事委員会連合会への要請の経過>
要請書を手交する永井議長(左)と栗原副会長(右)
 全人連への要請は9日に行い、永井議長(全水道委員長)、福島企画調整委員(自治労書記長)、加藤事務局長、森本事務局次長および幹事が出席した。全人連は、栗原全人連副会長をはじめ、都道府県人事委員会のブロック代表および政令市の代表者が対応した。
 冒頭、永井議長は、要請書(別紙2)を手交し、人事院報告・勧告等についての見解、地方公務員給与を取り巻く厳しい情勢について認識を述べた上で「各現場で粉骨砕身して業務を遂行している職員の士気を確保し、良質な公務・公共サービスを提供していくためにも、各人事委員会が、専門機関としての機能を発揮されるよう期待している」と、要請の趣旨を述べた。
 続いて、加藤事務局長が要請事項について説明した上で、「本年の人事院勧告で、月例給・一時金ともに3年連続で引き上げることとしたのは民間の賃上げ動向を踏まえた当然の結果である。職員の士気を高め、良質な公務・公共サービスを提供するためにも、各人事委員会の尽力を期待している」と、全人連としての努力を強く求めた。

 こうした地方公務員部会の要請に対し、栗原副会長は別紙1の通り回答した。

 その後、加藤事務局長から、下記の通り意見・要望を行い、この日の要請を終えた。
(1) 先ほど、超勤縮減、ワーク・ライフ・バランスの実現に関する事項説明時にも若干触れたが、特に、学校現場を取り巻く環境が複雑化・多様化し、学校現場における教職員の超勤・多忙化は深刻化している。
  このような状況を踏まえ、文科省は、「学校現場における業務の適正化に向けて」というタスクフォース報告を公表し、さらに「学校現場における業務の適正化の一層の推進に向けた支援」を求める局長通知を発出している。国として、学校現場における超勤・多忙化解消の総合的な施策をはじめて示したものである。
(2) 一方、昨年の人事委員会勧告時の報告で、多くの人事委員会がこうした厳しい実態を言及しているものの、教職員の多忙化解消をはかるよう各教育委員会へ求めたのは4割に満たない状況。
  各人事委員会においても、文科省の報告および通知を踏まえ、学校現場の厳しい状況、教職員の慢性的な長時間労働の実態に問題意識をもって、具体的な策あるいは対応を是非とも講じていただきたい。

<高市総務大臣への申入れの経過>
申入書を手交する永井議長(右)と高市総務大臣(左)
 高市総務大臣への申入れは10日に行い、永井地方公務員部会議長ほか委員長クラス交渉委員が出席した。
 冒頭、永井議長は、申入書(別紙3)を手交し、「本年の人事院勧告は、3年連続で、月例給、一時金のいずれについても引上げと、職員の期待に応えたものと一定評価できる。また、扶養手当の見直しについても言及しているが、地方では、地域実情や自治体における支給実態等を勘案し、検討されるべきものであると考える。一方、消費税増税先送りにより、財政問題が一層深刻化し、地方においても財政不足が懸念され、地方公務員給与に大きな影響を与えかねない状況だ。各現場で粉骨砕身して業務を遂行している職員の士気を確保し、良質な公務・公共サービスを提供していくためにも、月例給、一時金のいずれについても引き上げる勧告が各人事委員会で行われるべきだ。今後、各人事委員会で勧告作業が本格的に進められるが、地方公務員の労働基本権制約の代償措置である人事委員会勧告制度が機能するよう、総務省として適切な対応を図られるとともに、労使間の十分な交渉・協議を通した自主的な給与改定を尊重するよう要請する」と申し入れた。

 これに対して大臣は、「要請の内容は承った。各要求事項は検討の上、しかるべき時期に回答させていただく」と述べた。


(別紙1)

平成28年8月9日


要請に対する全人連会長回答


 全人連副会長を務めております、大阪府人事委員会委員長の栗原です。
 所用により全人連会長が不在のため、私から全国の人事委員会を代表してお答えいたします。

 ただいまの皆様からの要請につきましては、確かに承りました。
 早速、全国の人事委員会にお伝えいたします。

 さて、ご存じの通り、8月8日に人事院勧告が行われました。

 本年の官民較差は、民間における賃金の引上げを図る動きを反映して、民間給与が公務員給与を平均708円、率にして0.17%上回っており、この較差を埋めるため、初任給の引上げと若年層を中心とした俸給表水準の引上げを行うこととしております。

 特別給につきましても、民間における好調な支給状況を反映して、民間が公務を上回ったことから、支給月数を0.1月分引き上げることとし、引上げ分は勤勉手当に配分することとしております。

 また、配偶者に係る扶養手当の見直しとして、平成29年度から、段階的に配偶者に係る手当額を他の扶養親族に係る手当額と同額まで減額し、それにより生ずる原資を用いて子に係る手当額を引上げることとしております。

 加えて本年は、育児や介護にかかる民間労働法制の改正内容に即して、育児休業法改正の意見の申出及び勤務時間法改正の勧告として、介護休暇の分割取得、介護時間の新設、育児休業等に係る子の範囲の拡大等の改正を行うこととしております。

 このほか、公務員人事管理に関する報告では、人材の確保及び育成、働き方改革と勤務環境の整備、高齢層職員の能力及び経験の活用について意見が述べられております。

 詳細につきましては、これから人事院の説明を受けますが、国家公務員と地方公務員の立場の違いはありつつも、人事院の勧告は、各人事委員会が勧告作業を行う上で、参考となるものであることから、その内容については、十分に吟味する必要があると考えております。

 今後、各人事委員会は、皆様からの要請の趣旨も考慮しながら、それぞれの実情等を勘案し、主体性をもって対処していくことになるものと考えております。

 改めて申すまでもありませんが、各人事委員会といたしましては、本年も、中立かつ公正な人事行政の専門機関として、その使命を果たしてまいります。

 全人連といたしましても、各人事委員会の主体的な取組を支援するとともに、人事院、各人事委員会との意見交換に十分努めていきたいと考えております。

私からは、以上でございます。


(別紙2)

2016年8月9日

全国人事委員会連合会
 会 長  青 山  ●(やすし) 様

公務公共サービス労働組合協議会
地方公務員部会議長 永 井 雅 師


2016年給与勧告等に関する要請書

 各人事委員会の地方公務員の給与・労働条件の改善に向けたご努力に敬意を表します。
 さて、人事院は8月8日、政府と国会に対して2016年の官民較差に基づく国家公務員の給与等に関わる勧告を行いました。月例給、一時金のいずれについても、3年連続の引上げ勧告となり、職員の期待に応えたものと一定評価できます。また、扶養手当の見直しについても言及していますが、地方においては、地域の実情や地方自治体における支給実態等を勘案し、検討されるべきです。
 地方公務員は、公務・公共サービスの役割が一層高まる中、各現場で粉骨砕身して業務を遂行しています。職員の士気を確保し、良質な公務・公共サービスを提供していくためにも、各人事委員会が、専門機関としての機能を発揮されるよう期待しています。
 各人事委員会におかれましては、2016年の勧告に向け、地方公務員が置かれている現状を十分踏まえ、下記事項の実現に向け最大限の努力を払われますよう要請します。



1.民間賃金実態に基づき公民較差を精確に把握し、人事委員会勧告制度の下で地方公務員のあるべき賃金を勧告すること。勧告にあたっては、給料表の改善を中心に公民較差を解消すること。また、一時金の公民比較は、月例給と同様に、同種・同等比較を原則とするラスパイレス比較を行うこと。

2.各人事委員会の勧告に向けた調査や作業に当たっては、組合との交渉・協議、合意に基づき進めること。

3.諸手当の改善については、地域の実情を踏まえつつ、組合との十分な交渉・協議に基づくこと。とくに、扶養手当について、地方自治体における支給実態等を勘案し、関係労働組合との十分な交渉・協議、合意に基づき進めること。

4.臨時・非常勤職員の任用や処遇改善に関する指針を示すこと。

5.公立学校教員の賃金に関わり、各人事委員会が参考としうるモデル給料表を作成、提示すること。また、作成に当たっては、関係労働組合との交渉・協議を行うこと。

6.雇用と年金の接続については、当面、フルタイムを基本とする再任用制度の確立と、再任用職員の生活水準を確保するため、給与制度上の措置について必要な検討と報告、勧告を行うこと。また、年金支給開始年齢が63歳になるときまでには定年延長を確実に実現すること。

7.公務における超勤縮減、ワーク・ライフ・バランスの実現に向けて、年間総労働時間を早期に1,800時間程度に短縮し、引き続き次の事項の実現に努めること。
 (1) 厳格な勤務時間管理と実効性ある超過勤務縮減のための積極的施策の推進
 (2) 年次有給休暇取得の促進
 (3) 労働時間短縮のための人員確保等の施策の構築

8.各種休暇制度を新設・拡充し、総合的な休暇・休業制度を確立すること。とくに、家族介護を理由とした離職を防止するための介護休業制度の整備を図ること。また、育児休業・介護休暇に関して男性の取得促進のための必要な措置を講ずること。

9.公務職場における男女平等の実現を人事行政の重要課題と位置づけ、必要な施策の確立を図ること。

10. 実効あるハラスメント防止策を引き続き推進するため、積極的な対応を行うこと。

11. 公務職場における障がい者、外国人採用を促進すること。

以上


(別紙3)

2016年8月10日


総 務 大 臣
 高 市 早 苗 様

公務公共サービス労働組合協議会
地方公務員部会議長 永 井 雅 師


2016年地方公務員給与の改定等に関わる申入れ

 貴職の地方公務員の賃金・労働条件の改善に向けたご努力に敬意を表します。
 さて、人事院は8月8日、政府と国会に対して2016年の官民較差に基づく国家公務員の給与等に関わる勧告を行いました。月例給、一時金のいずれについても、3年連続の引上げ勧告となり、職員の期待に応えたものと一定評価できます。また、扶養手当の見直しについても言及していますが、地方においては、地域の実情や地方自治体における支給実態等を勘案し、検討されるべきです。
 一方、2017年4月から予定されていた消費税増税の見送りにより、財政問題が一層深刻化し、地方においても、歳出に対する歳入が追いつかないという多額の財政不足が懸念され、地方公務員給与に大きな影響を与えかねません。
 地方公務員は、公務・公共サービスの役割が一層高まる中、各現場で粉骨砕身して業務を遂行しています。職員の士気を確保し、良質な公務・公共サービスを提供していくために、少なくとも、月例給及び一時金のいずれについても、引上げる勧告が各人事委員会において行われるべきです。
 今後、各人事委員会では、2016年の勧告に向けた作業が本格的に進められることとなりますが、地方公務員の労働基本権制約の代償措置である人事委員会勧告制度が機能するよう、総務省として適切な対応を図られるとともに、労使間の十分な交渉・協議を通した自主的な給与改定を尊重するよう要請します。
 貴職におかれましては、下記事項の実現に向け最大限のご努力をいただきますようお願いします。



1.2016年の地方公務員の給与改定については、地公法第24条2項の趣旨を踏まえた自治体の自己決定が尊重されるよう対応すること。

2.公営企業および技能労務職員の給与については、当該職員に労働協約締結権が保障されていることを踏まえ、労使交渉に基づく自主的・主体的決定を尊重すること。

3.臨時・非常勤職員の実態調査結果を踏まえ、臨時・非常勤職員の処遇改善、雇用安定につながるよう、措置を講ずること。

以上