公務員連絡会は12月18日、内閣人事局、人事院との交渉を実施し、11月27日に提出した2016年度の基本要求に対する回答を引き出した。回答はいずれも具体性がなく不満な内容に止まったが、公務員連絡会は、解決が図れなかった課題については、春季生活闘争に引き継いでいくこととし、基本要求に関わる交渉・協議に区切りを付けることとした。
<内閣人事局との交渉経過>
内閣人事局との交渉は、14時から行われ、公務員連絡会からは幹事クラス交渉委員が臨み、内閣人事局からは川淵内閣審議官らが対応した。
要求提出にあたり、大塚副事務局長が「11月27日に、2016年度の基本要求を提出させて頂いたが、本日は内閣審議官から回答を頂きたい」と述べたのに対し、川淵審議官は「先日受け取った基本要求事項について、この時期における私からの回答をさせていただく」と述べ、次の通り答えた。
一、賃金と雇用・労働条件に関わる事項
国家公務員の給与改定に当たっては、国家公務員の給与を社会一般の情勢に適応させるとの原則の下、人事院勧告制度を尊重することが基本姿勢と考えている。
平成28年度の給与改定については、人事院勧告も踏まえ、国政全般の観点に立って総合的に検討を行った上で方針を決定してまいりたいと考えている。その際には、皆様とも十分に意見交換を行ってまいりたい。
二、労働時間、休暇及び休業等に関わる事項
女性活躍ワークライフバランスとも密接に関わるものであり、男女全ての職員の「働き方改革」を進めることが重要であるとの観点から、昨年10月に「国家公務員の女性活躍とワークライフバランス推進のための取組指針」を取りまとめ、超過勤務の縮減や休暇等の取得促進に向けた取組についても盛り込み、新たな取組として、本年7月・8月に「ワークライフバランス推進強化月間」と、これに併せて「ゆう活」を実施したところ。
また、フレックスタイム制については、本年8月に人事院から勧告があり、去る12月4日の給与改定に関する取扱いについての閣議決定において、勧告どおり、来年度から適切な公務運営の確保に配慮しつつ、原則として全ての職員を対象にフレックスタイム制を拡充することを決定した。現在、所要の法案策定作業を進めているところ。
職員の皆さんが、その能力を十分に発揮し、高い士気をもって効率的に勤務し、公務能率の一層の向上につながるよう、皆さまのご意見も伺いながら、政府一丸となって取り組んでまいりたい。
三、ワークライフバランスの推進、女性の労働権確立に関わる事項
女性の活躍推進については、本年9月に成立した女性活躍推進法や「女性活躍とワークライフバランス推進のための取組指針」等に沿って、女性が一層活躍できる環境の整備を進めているところ。
そのためには、男女全ての職員の「働き方改革」によるワークライフバランスの実現が不可欠であり、働き方に対する価値観・意識の改革や働く時間と場所の柔軟化等に政府一体となって取り組んでいるところ。
内閣人事局としても、各府省の取組を毎年度フォローアップするとともに、必要に応じて各府省の取組の促進に資するようなサポートを行うことで、男女全ての職員のワークライフバランスの実現と女性職員の採用・登用の拡大に向け、取組を推進してまいりたい。
四、福利厚生施策等に関わる事項
国家公務員福利厚生基本計画については、5年毎の見直しを来年度を目途に進めているところであり、職員の心身の健康の保持増進が活力ある行政の基盤となるとの考えの下、各府省の健康保持増進施策が的確に行われるよう検討を進めてまいりたい。
心の健康づくり対策については、新任管理者等を対象として「ラインケア」及び「相談対応」を内容とするe-ラーニングによるメンタルヘルス講習を実施しており、受講者の拡大に努めてまいりたい。
新たに実施されるストレスチェックについては、見直しを進めている基本計画に盛り込むこととしており、その実施状況の把握等により、着実な実施に努めたい。
今後とも、福利厚生施策の効率かつ効果的な推進方策等について、引き続き検討を進めてまいりたい。
五、人事評価制度に関わる事項
人事評価制度については、評語区分のレベル感の整理・徹底及び所見欄の充実など、評語区分の趣旨の徹底を図っているところである。
また、人材育成等への一層の活用として、職員の能力開発やスキルアップ、さらには組織のパフォーマンスの向上につながるように指導・助言を行うなど面談での対応の仕方等、被評価者への指導に役立つ評価者訓練の充実等を図っているところである。
今後とも、皆様とも十分意見交換し、御理解をいただきつつ、円滑かつ効果的に制度を運用していきたいと考えている。
六、雇用と年金の接続に関わる事項
雇用と年金の接続については、引き続き平成25年3月の閣議決定に沿って、定年退職者の再任用を政府全体で着実に推進してまいりたい。
なお、組織の活力を維持しつつ、再任用職員の能力や経験をより一層本格的に活用していくための方策について、各府省の協力を得ながら引き続き検討してまいりたい。
また、本年の人事院の報告において、再任用職員の給与水準について、民間の再雇用者の給与の動向や各府省における再任用制度の運用状況等を踏まえ、引き続き、給与のあり方について必要な検討を行っていくこととされており、政府としても人事院における所要の検討を踏まえ、適切に対応してまいりたい。
今後の雇用と年金の接続の在り方については、同閣議決定を踏まえ、年金支給開始年齢の段階的な引上げの時期ごとに、再任用制度の活用状況や民間の高年齢者雇用確保措置の実施状況等を勘案し改めて検討を行うこととされており、検討に際しては、皆様も含めた関係者の意見も聞きつつ、進めてまいりたい。
七、非常勤職員制度等に関わる事項
非常勤職員については、期間業務職員制度の導入、育児休業等の取得、夏季における弾力的な年次休暇付与などの措置が講じられてきているところ。
また、給与については、各府省において、人事院から出された指針を踏まえた給与の支給に努めることとされている。
内閣人事局としては、人事管理官会議等の場を通じて、期間業務職員制度の適正な運用や非常勤職員に対する適正な給与の支給など、非常勤職員に対する適正な処遇に努めるよう各府省に対し、繰り返し周知等を図ってまいりたい。
八、公務員制度改革に関わる事項
自律的労使関係制度については、国家公務員制度改革基本法第12条において「政府は、協約締結権を付与する職員の範囲の拡大に伴う便益及び費用を含む全体像を国民に提示し、その理解のもとに、国民に開かれた自律的労使関係制度を措置するものとする」とされている。
この自律的労使関係制度については、多岐にわたる課題があり、引き続き慎重に検討する必要があると考えている。皆様とは、引き続き意見交換をさせていただきたい。
九、その他の事項
障害者雇用については、障害の種別をこえた雇用への理解、促進を図るため、本府省の担当者を対象とした連絡会、地方ブロックにおける人事担当課長会議を開催するほか、昨年度に引き続き、内閣人事局で実施している「障害者ワーク・サポート・ステーション」から各府省に障害者を派遣し、実際に業務指示をしてノウハウを取得してもらう等の取組を進めているところ。
これに対して、公務員連絡会側は次の通り質すとともに重ねて要請を行った。
(1) 来年度に向けては、昨年、今年に引き続いて賃上げを実現することが課題だ。公務員賃金取扱いの当事者である内閣人事局として、人材確保の観点からも、積極的な姿勢を示してもらいたい。少なくとも、財政赤字や増税を理由とし、先ずは公務員が負担すべきというのは間違った議論だとの認識にたった対応を求める。
(2) 労働時間、休暇・休業等とWLB、女性の労働権は一体の課題であり、まずは、ワークの方をディーセントにすることが重要だ。
拡充されるフレックスタイム制の円滑な運用には、業務や勤務時間の厳格管理が不可欠であり、勤務時間管理方法を刷新し、客観的な仕組みにすべきだ。
昨年、人事院が行った超勤に関する職員意識調査結果では、本府省、地方とも人員不足が原因だとの回答が約6割に達している。超勤縮減、労働条件の確保という観点から具体的対応を求める。
第4次男女共同参画基本計画に向けた「男女平等参画社会形成促進施策の基本的考え方」では、国家公務員について、「超過勤務の縮減に向け、数値目標と達成期限を設定すること」が盛り込まれている。本気で働き方を改革するには、高い目標を掲げるべきだ。
(3) WLB、女性活躍取組指針に基づく取組計画については、成果を検証しつつローリング方式で常に見直しながら進めるべきと指摘してきたところ。来年度が最初となるフォローアップのスケジュール感はどうか。また、第4次男女共同参画基本計画が年内に決定されるが、これに対応した見直しが必要と考えるがどうか。
(4) 心の健康づくりの取組みについて、仕事の内容や進め方、勤務時間など職場の環境や働き方も大きく関わっているという認識に基づく対策が重要。来年度から導入されるストレスチェック制度については、職員個々に対する早期対応はもとより、集団分析に基づく職場環境改善も着実に進めてもらいたい。
レクリエーションについて、職員がみんなで楽しむことによって、職場が活性化し、生産性が上がるという研究成果もある。レクリエーションの意義を再認識し、予算の復活を含めた対応を改めて求める。
(5) 雇用と年金の接続については、引き続き再任用でということであり、極めて残念。閣議決定等に基づき、年金支給開始年齢が63歳になるときまでには、定年延長を確実に実施して頂きたい。当面の再任用についても、「1億総活躍」をめざすというのであれば、希望する職員にはフルタイムで活躍してもらうのが筋であり、定員管理を弾力化し、希望通りの再任用を実現すべきだ。
回答中、「本格的に活用していく」という中身は、フルタイム希望者にはフルタイムで、定年時の職務の級に近づけることをめざすということでよいか。
(6) 非常勤職員の課題について、昨年の給与法等改正案の附帯決議も踏まえ、諸手当を含めて給与指針が完全に順守できる必要な予算を確保して頂きたい。均等処遇が基本であり、「同一価値労働同一賃金」の原則に基づいた対応を求めておく。
来年10月には短時間勤務職員の社会保険の適用が拡大され、非常勤職員のみならず、再任用短時間勤務職員も対象となる。公務については企業規模にかかわらず適用となるよう、関係者への働きかけを要請する。
(7) 公務員制度改革については、自律的労使関係制度を措置することが政府の責務であり、引き続きわれわれとの真摯な議論を求めておく。
これらに対して、川淵内閣審議官から次の通り回答があった。
(1) 内閣人事局としても、拡充されるフレックスタイム制を実効あるものにするためには、超勤縮減策の具体化や適正な勤務時間管理が課題であると認識している。ワークライフバランス推進の観点から、フレックスタイム制の拡充を契機とし、ゆう活の成果も含め、職員団体の皆様と問題意識を共有し、超勤縮減の取組を進めていきたいと考えている。
(2) 各府省の女性職員活躍とワークライフバランス推進のための取組計画について、フォローアップの時期については検討中であるが、継続的にフォローアップを行うとともに、取組計画の状況や取組指針に基づく女性職員の登用状況の分析なども踏まえ、新たな目標設定を含めた見直しを図っていく。また、第4次男女共同参画基本計画に基づく数値目標の設定等については、女性活躍推進法に基づく特定事業主行動計画なども踏まえて、必要に応じて見直してまいりたい。
(3) メンタルヘルス研修の受講率について、部下をもつ職員には、メンタルヘルス対策に関する知識が必須であり、管理職員への昇任ごとに、研修を必須にすることを検討している。
(4) 再任用制度について、本年の人事院勧告時報告でも指摘があったところ。今後、再任用職員の増加が見込まれ、その能力や経験をより一層本格的に活用する必要があり、各府省とも連携しながら、活用方策について引き続き検討してまいりたい。
最後に、大塚副事務局長は「本日の回答については、抽象的で具体性がなく不満。勧告に基づく給与法等の早期成立に向け、特段の努力を求めておく。来年2月に改めて春季要求書を提出するが、公務員の賃金・労働条件の改善のみならず、人事行政全般の改善に向け、引き続き努力することを強く求めておく」と重ねて要請し、要求回答交渉を終えた。
<人事院との交渉経過>
人事院の川崎職員団体審議官との交渉は、15時から行われた。
冒頭、公務員連絡会側が、11月27日の基本要求に対する回答を求めたのに対し、審議官は「今後引き続き検討すべき事項が多いが、主な要求事項について現時点での検討状況等について申し上げる」として次の通り人事院の現段階の見解を示した。
一、賃金に関する事項
(1) 給与水準について
公務員給与の改定については、情勢適応の原則に基づき、民間準拠により適正な給与水準を確保するという基本姿勢に立った上で、職員団体の皆さんの意見も聞きながら適切に対処していきたいと考えている。
(2) 官民の給与の比較方法について
官民の給与の比較に関しては、平成18年の勧告において、民間給与をより適正に公務の給与に反映させるため、比較対象となる企業規模の見直しを行い、民間企業従業員の給与をより広く把握し反映させることができたものと考えており、比較対象企業規模については現行の取扱いが適当と考えている。
(3) 諸手当について
扶養手当については、本年の勧告時の報告において、今後、民間企業における家族手当の見直しの動向や、税制及び社会保障制度に係る見直しの動向等を注視しつつ、扶養手当の支給要件等について引き続き必要な検討を行っていく旨報告したところであり、現在、学識経験者による勉強会の開催や、民間企業における動向の更なる把握などを通じ、必要な検討を行っているところである。今後、職員団体の意見も聞きながら、検討を進めていくこととしたい。
住居手当については、民間の状況や公務における実態等を踏まえ、総合的に検討してまいりたい。
二、労働時間、休暇、休業に関する事項
(1) 超過勤務の縮減について
平成26年に実施した民間企業の勤務条件制度等調査における総労働時間短縮に向けた取組の調査や超過勤務に関する職員の意識調査の結果を踏まえると、超過勤務の縮減については、事前の超過勤務命令等の管理職員による厳正な勤務時間管理を徹底するとともに、管理職員の意識改革を含めた業務の合理化・効率化などの取組を推進することが肝要であり、国会関係業務などについては、関係各方面の理解と協力を得ながら、改善を進めていくことが重要であると考えている。
今後とも、関係機関と連携しながら、より実効性のある超過勤務の縮減策について検討を進めてまいりたい。
(2) 休暇について
職員の休暇、休業については、従来より情勢適応の原則の下、民間における普及状況に合わせることを基本に、適宜見直しを行ってきたところである。ご要求の各休暇についても、引き続き民間の動向等を注視してまいりたい。
三、ワーク・ライフ・バランス、女性の労働権確立に関する事項
両立支援制度の拡充等については、男女ともに働きやすい勤務環境の整備を積極的に進めているところであり、職員の具体的なニーズ、公務運営への影響等を精査しながら、引き続き検討してまいりたい。
また、人事院としては、男女共同参画社会の実現を人事行政における重要施策の一つと位置付け、国家公務員法に定める平等取扱の原則、成績主義の原則の枠組みを前提とした女性の参画のための採用・登用の拡大、両立支援など様々な施策を行ってきているところである。
次世代育成支援対策推進法や女性活躍推進法等に基づく各府省の取組を含めた各府省のワークライフバランスに向けた着実な取組については、人事院として、引き続き支援していくとともに、職業生活と家庭生活との両立支援のための勤務環境整備を積極的に推進してまいりたい。
また、女性職員の採用・登用の拡大については、昨年、内閣人事局長を議長に全府省の事務次官級で構成される女性職員活躍・ワークライフバランス推進協議会が設置され、具体的な施策を盛り込んだ国家公務員の女性活躍とワークライフバランス推進のための取組指針が策定され、これに基づき、各府省において女性職員活躍とワークライフバランス推進のための取組計画が策定されるなど、政府全体で取組が進められていると承知。人事院としても、今後とも、女性職員の登用に向けた研修や両立支援等により、各府省の取組を支援してまいりたい。
四、福利厚生施策に関する事項
(1) 心の健康づくり対策について
心の健康づくり対策については、平成16年に発出した職員の心の健康づくりのための指針を基本として対処しているところであり、管理監督者をはじめとする職員に対する意識の啓発、相談室の運営や試し出勤の活用に取り組んできている。
また、心の不調者の発生を未然に防ぐことが最も好ましいとの観点から、一次予防により一層力を入れ、本年1月には職員がセルフケアに関する知識を身に付けるための自習用研修教材としてe-ラーニング教材を各府省に配布し、さらに、本年12月には、職員に医師等によるストレスチェックの受検機会を付与すること及び職員からの申出に応じて面接指導を実施することを義務付けることなどを内容とするストレスチェック制度を創設したところであり、各府省と連携し、同制度の着実な実施に努めてまいりたい。
(2) ハラスメント対策について
いわゆるパワハラについては、本年7月に、パワハラの概念、なり得る言動、相談例等を分かりやすく解説したパワハラ防止ハンドブックを作成し、職員に配布したところであり、今後とも、パワハラ防止に関する意識啓発をより一層推進してまいりたい。
セクハラについては、従来から、職員の意識啓発等に取り組んできているところであるが、平成26年7月に各府省に対し、意識調査の結果をフィードバックし、合わせてセクハラ防止を目的とした研修の実施の徹底や職員が相談しやすい苦情相談体制の整備を図るようセクシュアル・ハラスメントの防止等についての通知を発出したところである。
ハラスメントは、職員の尊厳や人権を侵害する行為であり、その防止を図るため、引き続き取組を進めてまいりたい。
五、雇用と年金の接続に関する事項
国家公務員の雇用と年金の接続については、平成25年3月の閣議決定において、当面の措置として、再任用希望者を原則フルタイム官職に再任用するものとされているとともに、年金支給開始年齢の段階的な引上げの時期ごとに、その在り方について改めて検討を行うとされているところである。
年金支給開始年齢が62歳となる来年度からの期間については、本年12月4日に国家公務員制度担当大臣より、引き続き再任用することにより対応する方針が示されたところ。
現在の公務の再任用は引き続き短時間勤務が中心であり、フルタイム中心の勤務となっている民間企業の状況とは大きく異なっている。今後、再任用希望者の増加が見込まれる中、このような再任用の運用が続くと、公務能率や職員の士気の低下、生活に必要な収入が得られないなどの問題が深刻化するおそれがあることから、公務においても民間企業と同様にフルタイム中心の勤務を実現することを通じて、再任用職員の能力及び経験を本格的に活用していくことが必要である。
人事院としては、引き続き公務内外における高齢期雇用の実情等の把握に努めつつ、各府省において再任用職員の能力及び経験の一層の活用が図られるよう取り組むとともに、平成23年の意見の申出を踏まえ、雇用と年金の接続の推進のため、関連する制度も含め、適切な措置がとられるよう、引き続き必要な対応を行ってまいりたい。
再任用職員の給与については、転居を伴う異動をする職員の増加と民間の支給状況を踏まえ、本年4月から再任用職員に対して単身赴任手当を支給したところであるが、引き続き、民間企業の再雇用者の給与の動向や各府省における再任用制度の運用状況等を踏まえ、職員団体の意見も聞きながら必要な検討を行っていくこととしたいと考えている。
六、非常勤職員制度等の改善に関する事項
非常勤職員の任用、勤務条件等については、その適切な処遇等を確保するため、法律、人事院規則等に規定しており、期間業務職員制度、育児休業、夏季における弾力的な年次休暇の付与など、これまで職員団体の皆さんの意見も聞きながら見直しを行ってきたところである。
また、非常勤職員の給与については、本年3月に行ったフォローアップ調査の結果、概ね指針の内容に沿った運用が確保されていることが確認できたところである。ただし、一部の官署において、通勤手当に相当する給与の取扱いが常勤職員と異なること等が見られたことから、これらの府省については改善を促したところである。今後も、指針の内容に沿った運用の確保が図られるよう取り組んでまいりたい。
これに対して、公務員連絡会側は、次の通り質すとともに重ねて要請を行った。
(1) 来年度の給与については、昨年、今年に引き続いて賃上げを実現することが課題だ。公務員の賃金は勧告制度の下で民間準拠だが、公務員が国民の期待に応えていくため、賃金の引き上げという形で労働条件を具体的に改善する必要がある。人材確保の観点からも、人事院としての積極的な対応を求める。
官民比較方法について、今年と変わらないと受け止める。
諸手当については、とくに配偶者手当が社会的な争点とされ、人事院に勉強会が設置され、加えて厚生労働省でも検討が始まった。賃金は個別の労使交渉で決めることであるし、公務員は民間の状況を踏まえてというのが基本だ。検討するのであれば、十分な交渉・協議と合意に基づいた対応を強く求める。
(2) 超過勤務については、事前の超過勤務命令を徹底してもらいたい。
第4次男女共同参画基本計画に向けた「男女平等参画社会形成促進施策の基本的考え方」では、国家公務員について、「超過勤務の縮減に向け、数値目標と達成期限を設定すること」が盛り込まれている。社会的気運も高まっており、公務が率先して取り組むよう、人事院としても積極的に対応してもらいたい。秋民調の勤務時間管理の民間調査も含め、勤務時間管理方法を刷新して、客観的な仕組みにした上で、思い切った超勤縮減の取組みを進めるべきだ。
(3) WLB及び女性の労働権に関わっては、まずワークをディーセントにすることが基本だ。来年度から拡充されるフレックスタイムについて、必要とする職員が活用できるようにするためには、業務や勤務時間管理を厳格化するとともに、超勤縮減にしっかりと取り組むべきだ。
また、テレワークについては、勤務時間分割の扱いが課題であり、連絡会と十分議論しながら作業を進めて頂きたい。さらに、要件を問わない短時間勤務制度も引き続きの課題であることを申し上げておく。
育児・介護に関わる両立支援策について、労働政策審議会において国家公務員の制度を参考にとの議論が行われていた。民間企業の模範となるような制度に改善してもらいたい。
(4) 心の健康づくりは、職員個人の問題だけではなく、仕事の仕方、働き方、職場環境、人間関係など複合的な課題だが、基本は無理のない勤務条件を確保することが必要だ。来年度から導入されるストレスチェック制度は、職員個々に対する早期対応はもとより、集団分析に基づく職場環境改善を着実に進めるよう、各府省の取組みを支援してもらいたい。
(5) ハラスメントについては、職場の人間関係が良好か、上司と部下の意志疎通が円滑か、働きやすい職場であるか、などが大きく影響する。そういった職場作りを前提に、全職員に対する啓発活動、地方機関を含めた相談体制の整備が重要だ。
(6) 雇用と年金の接続については、引き続き再任用でということであり、極めて残念。閣議決定等に基づき、年金支給開始年齢が63歳になるときまでには、定年延長を確実に実施して頂きたい。そのためにも追加的な意見の申出を含めた対応を求める。
当面の再任用については、希望する職員にはフルタイムで活躍してもらうのが筋だ。長年の経験で培われてきた職員の能力と意欲を活かし、民間と同様に働けるよう、関係方面への働きかけを強化してもらいたい。
再任用者の給与については、さらなる改善を求める。
(7) 非常勤職員について、昨年の給与法の附帯決議を踏まえるならば、給与指針の見直しが必要だ。均等処遇が基本であり、「同一価値労働同一賃金」の原則に基づいた対応ができるよう改めて頂きたい。あわせて、休暇、休業制度については、運用改善に止めず制度を含めて順次改善を図るべきだ。
これに対し、川崎審議官は次の通り答えた。
(1) 官民比較方法について、現状の取扱いが適当であると考えている。
(2) ハラスメントについては、管理職を含めた職員の意識改革の浸透が重要であり、研修などによる意識改革の徹底に力を入れてまいりたい。
(3) 再任用については、短時間勤務でも従来より勤務時間数を伸ばしたり、係員・主任級よりも更に責任のある仕事を与え、能力・経験が発揮できるようになるなど、従来に比べ徐々に変化してきている。定員事情から全てフルタイムとはなっていない実情にあるが、フルタイムにシフトしてきている省庁もある。勧告時報告でも触れた通り、現在の国家公務員の人員構成は40代〜50代が中心で、将来的に知識・技術の継承ができるかどうかという課題もある。新規採用者への対応だけでなく、再任用者の能力・経験を活用する方法も必要であると考えられる。
(4) 非常勤職員は職種、勤務形態が多様であることから、給与は個別に決定されることとなる。期間業務職員の勤務形態は常勤職員とほぼ同様となっており、平成20年の給与指針発出当時に比べれば、最低賃金に近い水準から行政職(一)1級1号俸をベースとした水準に前進した。通勤手当と期末手当の取扱いは指針の内容にほぼ合致し、勤勉手当に相当する手当も一部の部署で支給されている。引き続き、指針のフォローアップを行ってまいりたい。
以上の議論を踏まえ、大塚副事務局長が「本日の回答については、抽象的で具体性がなく不満。本日の回答も踏まえ、来年2月に改めて春季要求書を提出するが、賃金・労働条件が改善され、組合員が意欲を持って勤務できるよう、引き続き努力することを強く求めておく」と要望し、本日の交渉を締めくくった。
以上