2017年度公務労協情報 11 2017年3月8日
公務公共サービス労働組合協議会
公務員労働組合連絡会

2017年春季要求事項で幹事クラスが内閣人事局・人事院と交渉−3/8
−中間的回答は具体性がなく、さらに誠意ある回答を求める−

 公務員連絡会は3月8日、内閣人事局内閣審議官、人事院職員団体審議官との交渉を実施し、2月17日に提出した2017春季要求に対する中間的な回答を引き出した。しかし、この日の回答は内閣人事局、人事院ともに抽象的で不満な内容にとどまった。
 このため、公務員連絡会は、書記長クラス交渉委員との交渉ではさらに誠意ある回答を行うよう要求し、回答指定日に向けて交渉を積み上げていくこととした。

<内閣人事局内閣審議官交渉の経過>
 稲山内閣審議官との交渉は、13時過ぎから行われた。
 冒頭、大塚副事務局長が中間的な回答を求めたのに対し、稲山審議官は「主な事項について、現時点における回答をさせていただく」と述べ、次の通り答えた。

1.2017年度賃金について
 国家公務員の給与改定に当たっては、国家公務員の給与を社会一般の情勢に適応させるとの原則の下、人事院勧告制度を尊重することが基本姿勢と考えている。
 本年の給与改定については、人事院勧告も踏まえ、国政全般の観点に立って総合的に検討を行った上で方針を決定してまいりたいと考えている。その際には、皆様とも十分に意見交換を行ってまいりたい。

2.非常勤職員等の雇用、労働条件の改善について
 非常勤職員については、その処遇について把握するため、@勤務時間や任期に関する事項、A募集・採用時における職務内容や勤務条件の説明等に関する事項、B給与等に関する事項等の実態調査を行い、昨年9月にその調査結果を公表したところ、その実態を把握できたことは、一定の意義があるものと考えている。
 なお、各府省等において、非常勤職員を採用する場合、採用予定者に対して、勤務条件等の内容を適切かつ明確に説明する旨、昨年末、課長級の申合せを行ったところ。これは、@国家公務員法、人事院規則、通知等の関係法令等、A労働基準法等に基づく民間での労働条件の説明事項・方法、B実態調査結果を踏まえたものである。
 引き続き、民間の同一労働同一賃金の実現に向けた検討を含む「働き方改革」の動向等も注視しつつ、関係機関と連携し、今後の対応について検討してまいりたい。

3.労働時間、休暇及び休業等及びワークライフバランスの推進、女性の労働権確立について
 「国家公務員の女性活躍とワークライフバランス推進のための取組指針」や「霞が関の働き方改革を加速するための重点取組方針」等に沿って、働き方改革、育児・介護等と両立して活躍できるための改革、女性の活躍推進のための改革に取り組んでいるところ。
 内閣人事局としても、各府省の取組を毎年度フォローアップするとともに、その中から優良事例となるものを選定し、各府省と共有することで、男女全ての職員のワークライフバランスの実現と女性職員の採用・登用の拡大に向け、取組を推進してまいりたい。
 超過勤務の縮減や休暇等の取得促進については、7月・8月に「ワークライフバランス推進強化月間」と「ゆう活」を実施したところ。フォローアップ調査結果から、「ゆう活」の取組が着実に浸透し、ワークライフバランス推進に一定の成果があったと考えている。「ゆう活」の成果を今後の具体的取組につなげていくことが重要であり、「働き方改革」を更に進めてまいりたい。
 加えて、フレックスタイム制が昨年4月から原則として全ての職員を対象に拡充されたところ。また、本年1月より、育児休業等の対象となる子の範囲の拡大、介護休暇を請求できる期間の分割可能化、介護時間の新設が図られたところ。職員がより柔軟な働き方ができるよう、制度の円滑な運用に向けて適切に対応してまいりたい。
 職員の皆さんが、その能力を存分に発揮できるよう、皆様のご意見も伺いながら、超過勤務の縮減等に政府一丸となって取り組んでまいりたい。

4.高齢者雇用施策ついて
 雇用と年金の接続については、引き続き平成25年3月の閣議決定に沿って、定年退職者の再任用を政府全体で着実に推進していく方針である。
 なお、組織の活力を維持しつつ、再任用職員の能力や経験をより一層本格的に活用していくための方策について、各府省の協力を得ながら引き続き検討を進めているところ。
 また、昨年の人事院勧告時の報告において、再任用職員の給与について、民間企業の再雇用者の給与の動向、各府省における再任用制度の運用状況等を踏まえ、引き続き、その在り方について必要な検討を行っていくこととされており、政府としても人事院における所要の検討を踏まえ、適切に対応してまいりたい。
 今後の雇用と年金の接続の在り方については、同閣議決定において、年金支給開始年齢の段階的な引上げの時期ごとに、再任用制度の活用状況や民間の高年齢者雇用確保措置の実施状況等を勘案し改めて検討を行うこととされており、検討に際しては、皆様も含めた関係者の意見も聞きつつ、進めてまいりたい。

5.福利厚生施策の充実について
 職員の勤務能率の発揮及び増進を図るため、昨年3月に改正した「国家公務員健康増進等基本計画」に基づき、職員の心身の健康の保持増進等に努めて参りたい。
 この中で、心の健康づくり対策については、ストレスチェック制度を適正実施するとともに、管理監督者の職場マネジメント業務の一部であることから、管理職員、課長補佐及び係長等に昇任した際に、e−ラーニング講習の活用により、心の健康づくりやハラスメント防止に関する研修の受講を必修化するなど、管理監督者を対象とした研修を強化することとしたところである。
 また、本府省、地方支分部局等を問わず、必要とする職員が専門家に相談できる体制の整備に努めることとしている。
 計画の的確な実施のため、具体的目標を定め、フォローアップを行っていくこととしており、福利厚生施策の効率的かつ効果的な推進に努めて参りたい。

6.退職手当について
 国家公務員の退職手当は、勤続報償的な性格が強いものであるが、職員一般の関心が高い事項であることから、人事院の調査結果及び見解が公表されれば、皆様方(職員団体)から十分に御意見を伺ってまいりたい。

7.公務員制度改革について
 自律的労使関係制度については、国家公務員制度改革基本法第12条において「政府は、協約締結権を付与する職員の範囲の拡大に伴う便益及び費用を含む全体像を国民に提示し、その理解のもとに、国民に開かれた自律的労使関係制度を措置するものとする」とされている。
 この自律的労使関係制度については、多岐にわたる課題があり、引き続き慎重に検討する必要があると考えている。皆様とは、引き続き意見交換をさせていただきたい。

8.その他の事項について
 障害者雇用については、障害の種別をこえた雇用への理解、促進を図るため、本府省の担当者を対象とした連絡会を開催するほか、昨年度に引き続き、内閣人事局で実施している「障害者ワーク・サポート・ステーション」から各府省に障害者を派遣し、実際に業務指示をしてノウハウを取得してもらう等の取組を進めているところ。

 これに対して、大塚副事務局長は次の通り内閣人事局の見解を質した。
(1) 働き方改革実現会議では、高齢者の就業促進がテーマに挙げられている。公務においても、定年延長で高齢職員が活躍することが重要であり、政府が模範的使用者として、民間に先駆けるべきだ。
(2) 公務員に社会的に公正な賃金・労働条件を確保することは内閣人事局の責務であり、人件費や定員の課題についても、解決に努めてもらいたい。
(3) 本年は、2015年の水準を超える賃上げと昨年を上回る格差改善が目標だ。職場の期待は大きい。賃上げが必要だという認識を持って臨んでいただきたい。
(4) 「同一労働同一賃金」に関わって、その目的は非正規労働者の処遇改善だ。非常勤職員のここれまで以上の処遇改善を求める。
(5) 非常勤職員が意欲を持って働けるよう勤勉手当も支給すべきだ。給与改定についても、常勤職員と同様に扱うべきであり、統一的な対応を求める。
(6) 労働時間短縮について、踏み込んだ対応を求める。まずは勤務時間管理をシステム化すべきと考えるが見解如何。
(7) 要員不足の問題を解決しないと超勤縮減は進まない。要員不足ゆえに業務の見直し・合理化、その結果、さらに定員削減という悪循環を断ち切ってもらいたい。
(8) 再任用職員の本格的活用のための方策について、検討結果及び具体化の時期如何。
(9) 退職手当について、官民格差を踏まえ、人事院が見解表明を行った場合には、交渉・協議、合意に基づく対応を求める。
(10) 公務員制度改革は、国家公務員制度改革基本法及び2014年の国公法等改正の際の附帯決議も含め、その検討は政府の責務である。今後とも、われわれとの交渉・協議を継続し、労働基本権の回復を実現していただきたい。

 これらに対して、稲山内閣審議官から次の通り回答があった。
(1) 非常勤職員への勤勉手当の支給については、昨年実施した国家公務員の非常勤職員に関する実態調査の結果や、「働き方改革実現会議」における「同一労働同一賃金」ガイドライン案も踏まえ、関係機関と協議しつつ、検討していきたい。また、給与の改定時期については、府省によって異なっていたという同調査結果も踏まえ、どういうことが出来るか検討していきたい。
(2) 超過勤務の縮減は重要な課題だと認識している。「国家公務員の女性活躍とワークライフバランス推進のための取組指針」等にもとづき取組みをすすめており、昨年9月に改定した「国家公務員の労働時間短縮対策について」にもとづき、超過勤務の事前把握等に努めている。また、勤務時間管理については、局内で民間企業向けのシステムで試行してきたが、新年度からは公務の特性を踏まえたシステム開発をめざしていきたい。
(3) 再任用職員の本格的活用については、再任用職員の増加が見込まれる中で、幅広い業務を担っていただきたいと考えており、検討を加速してしかるべき時期にとりまとめたい。
(4) 人事院が、再任用に関わって年次報告で「再任用定員の過渡的取扱い」に、勧告時報告で「定員の調整を行うための経過的取扱い」に言及していたことについては承知しているが、その後、特段進展があるとは聞いていない。

 最後に、大塚副事務局長は「新年度に向けては、賃上げはもとより、働き方改革、非常勤職員の処遇改善、雇用と年金接続が重要な課題となってくるが、今日の回答は、具体性がなく、方向性が出ていない。今後、さらに議論を積み重ねて、15日の人事政策統括官との交渉では、具体的かつ前向きな回答をお願いしたい」と強く要請し、交渉を終えた。


<人事院職員団体審議官交渉の経過>
 人事院の鈴木職員団体審議官との交渉は、14時30分から行われた。
 冒頭、大塚副事務局長が中間的な回答を求めたのに対し、鈴木審議官は、次の通り答えた。

1.賃金要求について
 今年の春闘では、連合は「それぞれの産業全体の「底上げ・底支え」「格差是正」に寄与する取組を強化する観点から2%程度のベースアップを基準とし、定期昇給相当分を含め4%程度の賃上げを求める」との目標を掲げ、その実現に向けて取組を進めるとしている。
 一方、日本経団連は、賃金については「適切な総人件費管理の下、自社の支払能力を踏まえ、労使での徹底した議論を経て、企業が決定する」ことが大原則であるとし、収益が拡大した企業等に対し、昨年に引き続き「年収ベースの賃金引上げ」の前向きな検討を求め、その検討に当たっては「定期昇給やベースアップ、賞与・一時金の増額、諸手当の見直しを柱に多様な選択肢が考えられる」としている。
 こうした状況の中、3月中旬以降、経営側からの回答・妥結が行われるので、その動向を注視しているところである。
 国家公務員の給与について、本年も情勢適応の原則に基づき、民間給与の実態を精緻に調査した上で、民間給与との精確な比較を行い、必要な勧告を行うという基本的スタンスに変わりはない。
 諸手当については、民間の状況、公務の実態等を踏まえ、職員団体の意見も聴きながら、総合的に検討してまいりたい。
 月45時間を超え60時間を超えない超過勤務に係る超過勤務手当の支給割合については、民調による平成28年4月の民間企業の状況を見ると、割増賃金率を30%以上としている事業所の従業員の割合は、43.6%という状況にあり、今後も民間企業の動向を注視していく必要があると考えている。
 住居手当については、民間の状況に加えて、公務員宿舎の縮減や宿舎料金の引上げ等の影響を含めた公務の実態等を踏まえて検討してまいりたい。

2.非常勤職員等の雇用、労働条件の改善について
 非常勤職員については、適切な処遇等を確保するため、その任用、給与、休暇等について、これまでも職員団体の皆さんや各府省等関係方面の意見等も聴きながら、民間の状況等を踏まえ、法律、人事院規則等を必要に応じて改正し対応してきたところである。今後とも同様の考え方を基本に必要な見直しを行ってまいりたい。
 非常勤職員の給与については、平成20年8月に発出した非常勤職員の給与に関する指針に基づき、各府省において適正な給与が支給されるよう、フォローアップを行い、必要な指導を行ってきている。今後とも、指針に基づき各府省において適正な給与の支給が行われるよう取り組んでまいりたい。
 期間業務職員制度については、各府省において、本制度を設けた趣旨に則った適切な運用がなされるよう、制度の周知徹底や助言指導を行うなどして取り組んでいるところであり、引き続き適切な運用が図られるよう努めてまいりたい。
 また、民間労働者の育児休業について、保育所に入れない場合には例外的に2歳に達するまで休業できるよう改正する法案が今国会に提出されたところであり、非常勤職員の育児休業についても、民間法制と一体的に同一の改正を行う必要があるとして、国家公務員の育児休業等に関する法律の一部改正を、民間の改正法案の附則において行うこととなっている。
 非常勤職員の休暇制度については、民間の状況との均衡や常勤職員の状況を考慮し、必要な措置を行ってきているところであり、引き続き民間の動向等を注視してまいりたい。

3.労働時間の短縮等について
 超過勤務の適正な管理及び超過勤務の縮減については、本年度の勧告時報告で述べたとおり、まず各府省のトップが長時間労働の是正に向けた強い取組姿勢を持ち、組織全体の業務量削減・合理化に取り組むことが重要であり、その上で、現場の管理職員による超過勤務予定の事前確認や具体的指示等の取組を徹底することが有効と考えている。これらの考え方については、昨年11月に開催されたワークライフバランス推進協議会の場でも改めて各府省に示したところである。
 今後とも、関係機関と連携しながら、より実効性のある超過勤務の縮減策について検討を進めてまいりたい。

4.休暇・休業制度について
 両立支援制度を含む職員の休暇、休業制度については、従来より情勢適応の原則の下、民間における普及状況に合わせることを基本に、適宜見直しを行ってきており、本年1月1日から介護休暇等の改正も施行されたところである。引き続き、民間の動向等を注視してまいりたい。
 短時間勤務制度については、育児を行う職員を対象とした制度が既に設けられているが、民間の状況等を注視しつつ、各府省における業務遂行体制や行政サービスへの影響、現行の組織管理や定員管理の在り方、職員の勤務条件の在り方などを含め、引き続き幅広い観点から検討が必要と考えている。今後とも、職員団体の皆さんの意見も聴きながら検討してまいりたい。

5.ワーク・ライフ・バランス、女性の労働権確立について
 人事院としては、公務におけるワーク・ライフ・バランスの推進及び男女共同参画社会の実現に向けた取組を人事行政における重要施策の一つと位置付け、国家公務員法に定める平等取扱の原則、成績主義の原則の枠組みを前提とした女性の参画のための採用・登用の拡大、両立支援策の拡充や超過勤務の縮減の推進など様々な施策を行ってきているところであり、引き続き、各府省の具体的な取組が進むよう支援してまいりたい。

6.高齢者雇用施策について
 国家公務員の雇用と年金の接続については、閣議決定において、当面の措置として、再任用希望者を原則フルタイム官職に再任用するものとされているとともに、年金支給開始年齢の段階的な引上げの時期ごとに雇用と年金の接続の在り方について改めて検討を行うとされている。
 人事院としては、雇用と年金を適切に接続させるためには、60歳を超える職員が60歳以前と同様の能力を発揮し、意欲を持って勤務できるような人事制度を確立していく必要があると考えている。そのためには、平成23年の意見の申出を踏まえ、60歳を超える職員の勤務形態に対する多様なニーズも踏まえた定年延長に向けた仕組みを具体化していくことが必要と考えるが、当面、定員問題等を考慮しつつ、公務においても民間企業と同様にフルタイム中心の勤務を実現することを通じて、各府省において再任用職員の能力及び経験の一層の活用が図られるようにすることが必要と考えている。
 このため、高齢層職員の能力及び経験の一層の活用に向けて、関係機関に働きかけを行うなど引き続き必要な取組を行うとともに、当面は、フルタイム中心の再任用勤務が実現できるよう、再任用の運用実態や参考事例の収集・分析、情報提供を行うなどにより、各府省の取組を支援していくこととしている。
 再任用職員の給与については、平成27年4月から単身赴任手当を支給することとし、また、広域異動手当及び新幹線鉄道等に係る通勤手当についても、再任用職員に係る措置を講じたところである。
 引き続き、再任用職員の増加や在職期間の長期化等の状況を注視しつつ、各府省における円滑な人事管理を図る観点から、民間企業の再雇用者の給与の動向や各府省における再任用制度の運用状況等を踏まえ、職員団体の皆さんの意見も聴きながら、必要な検討を行ってまいりたい。

7.福利厚生施策の充実について
 心の健康づくりをはじめとした健康管理対策やハラスメント対策の推進については、公務全体の共通の課題として、各職場においてきめ細かい対応が重要であるとの認識に基づき、これまでも各府省と協力して、人事院として積極的に取り組んできたところである。各府省においてもこうした取組の必要性の認識は高まっており、人事院としても引き続き、各府省と連携しつつ、適切に対応してまいりたい。
 また、平成27年12月に導入されたストレスチェック制度が各府省において適切に実施されるよう、実施状況のフォローアップをするなどして現場の実情や運用上の課題等を丁寧に把握した上で、必要な措置を講じるとともに、職場環境改善の積極的な取組を促してまいりたい。
 いわゆるパワハラについては、平成27年7月にはパワハラの概念、なり得る言動、相談例等を紹介した「パワー・ハラスメント防止ハンドブック」を作成して各府省に周知し、さらに、昨年12月には、各府省の幹部職員や人事担当部局の職員等に役立つよう、専門家や企業の実務家等によるシンポジウムを開催したところであり、パワハラの防止に向けて取組を行ってきている。
 また、今般、人事院規則10―15(妊娠、出産、育児又は介護に関するハラスメントの防止等)を制定し、職員に対する妊娠・出産等に関する言動により、当該職員の勤務環境が害されることを防止するための措置を定めたところであり、各省各庁の長には、その周知・啓発や相談の内容や状況に応じた適切な対応等を義務づけており、今後、「仕事と育児・介護の両立に関する連絡協議会」などの機会を活用して、各府省に対し、妊娠、出産、育児又は介護に関するハラスメントの防止等に関する所属職員への周知・徹底を求めてまいりたい。

8.退職手当について
 国家公務員の退職給付については、平成26年7月に閣議決定された「国家公務員の総人件費に関する基本方針」において、官民比較に基づき、概ね5年ごとに退職手当支給水準の見直しを行うことを通じて、官民均衡を確保することとされており、平成28年8月1日、内閣総理大臣及び財務大臣から人事院に対し、民間の退職金及び企業年金の実態調査の実施と見解の表明についての要請があった。
 これを受け、10月1日から11月30日まで民間の退職金及び企業年金の実態調査を実施し、現在、調査の集計を行っているところである。見解の表明に向けては、職員団体の皆さん等の意見も伺いながら適切に対処してまいりたい。

 これに対して、大塚副事務局長は、次の通り人事院の見解を質した。
(1) 本年は、2015年の水準を超える賃上げと昨年を上回る格差改善が目標だ。職場の賃上げに対する期待が大きく、人事院として、4年連続で賃上げ勧告を行うべく、積極的な姿勢で臨んでもらいたい。
  官民比較については、改めて現行通りという考えに変わりはないことを確認しておきたい。
(2) 諸手当については、住居手当について課題が残っていることに加えて、「同一労働同一賃金」の議論の中で、非常勤職員への適用を含めて、その在り方が問われることになる。十分な議論と合意に基づく対応を求める。
(3) 「同一労働同一賃金」に関わって、その最大の目的は非正規労働者の処遇改善だ。非常勤職員のこれまで以上の処遇改善を求める。
(4) 3年連続で勤勉手当が引き上げられ、常勤職員と非常勤職員の格差が拡大している。ガイドラインに明記して支給すべきだ。また、非常勤職員の時給37円の賃上げ要求については夏の勧告での改善を求める。
(5) 労働時間の短縮について、まずは勤務時間の客観的な把握が必要であり、民間企業に対しては、厚生労働省が「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」を1月に定め、地方公務員については、総務省が自治体に通知している。人事院の具体策如何。
(6) 再任用職員の給与について、住居手当の課題等を含め整合性のある制度とすべき。
(7) 定年延長に向けた仕組みの具体化に向けた検討状況如何。まずは、フルタイム希望者にフルタイムのポストを保障し、定年延長を具体化すべきであり、改めて、政府に働きかけるべきだ。
(8) ストレスチェックは、集団的分析が着実に行われ、職場環境改善に結びついているのかどうかを含め、丁寧な点検作業を求める。
(9) 退職手当について、調査結果の集計状況如何。格差に基づき、見直しに向けた見解を表明する場合には、公務員連絡会と前広に協議し、合意に基づく対応を求める。

 これに対し、鈴木審議官は次の通り答えた。
(1) 比較対象となる企業規模については、平成18年に企業規模50人以上、事業所規模50人以上に見直したことによって、民間企業従業員の給与をより広く把握し、反映することができた。こうした現行の取扱いが適当であると考えている。
(2) 住居手当を含む諸手当については、民間実態等を踏まえ、皆さんの意見も聞きながら検討してまいりたい。
(3) 非常勤職員の処遇改善について、政府における議論の動向及び民間の状況等を踏まえ、皆さんや各府省等関係方面の意見等もききながら、必要な見直しを行ってまいりたい。
(4) 客観的な勤務時間管理手法等について、人事院としても、様々な観点から必要な方策について検討してまいりたい。また、超勤縮減及び上限規制について、公務は公務運営の確保が不可欠であり、民間における導入に合わせてすべてを措置することは難しいのではないか。
(5) 再任用職員の本格的活用について、各府省や部署によっても異なるが、少しずつ進んでいると認識している。引き続き、一層の活用に向けて必要な取組を行ってまいりたい。
(6) 退職手当について、現在集計中であり、見解の表明に向けては、ご意見を踏まえながら適切に対応してまいりたい。

 また、各交渉委員からは、職場実態を踏まえ、@賃上げに対する職場の期待、A住居手当の支給方法及び宿舎課題への対応、B希望通りのフルタイム再任用の実現、について意見・要望が出された。
 最後に、大塚副事務局長が「春の段階の交渉では、民間の状況を踏まえつつ、夏の人勧期に向けて、課題を確認して、解決の方向性を探っていくことになるが、今日の回答は、具体性がなく、方向性が見えてきていない。今後、さらに議論を積み重ねて、16日の各局長との交渉では、われわれの要求について具体的かつ前向きな回答をお願いしたい」と要請し、本日の交渉を締めくくった。

以上