公務労協地方公務員部会は３月27日、書記長クラス交渉委員が、��原公務員部長ほかと2017春季段階の最終交渉を行った。冒頭、福島企画調整委員代表が「２月15日、高市総務大臣に要求書を提出し、これまで交渉・協議を積み重ねてきたが、本日はこうした交渉経過を踏まえながら、公務員部長から春の段階の最終回答をいただきたい」と、求めたのに対し、��原公務員部長は次のように答えた。

１．2017年度の賃金改善等について
○　平成29年度の地方財政計画における給与関係経費については、その所要額を適切に計上している。
○　地方公務員の給与については、地方公務員法の趣旨を踏まえ、各団体の議会において条例で定められるべきものである。
○　総務省としては、国民・住民の理解と納得が得られる適正な内容とすべきものとの考え方に立ち、必要な助言を行ってまいりたい。

２．労働時間、休暇及び休業等について
○　育児・介護を行う職員が必要な育児・介護休業等を円滑に取得できるよう、各地方公共団体が職場環境を整備していくことは重要な課題と考えている。
○　本年１月に施行された改正育児・介護休業法では、任命権者等は、職場において、育児休業、介護休業等の制度の利用に関する言動により、職員の勤務環境が害されることのないよう、必要な措置を講じなければならないこと等が規定されたところ。
○　総務省としては、この改正を受け、
　・　職員が、育児・介護休業等に係る制度の内容を確実に知り得るよう、改めての周知を促すとともに、
　・　一般職非常勤職員が育児・介護休業等を取得できるよう、所要の条例等を整備することについて助言を行ったところ。
○　また、男性地方公務員の育児休業取得率の向上も重要な課題である。
　　総務省では、男性の育児休業取得率が高い地方公共団体の取組事例等の収集・提供のほか、各団体が抱える課題の解決に資する意見交換の場の設置等を行う予定である。
○　こうした取組を通じ、各地方公共団体において、両立支援制度を活用しやすい職場環境が整備されるよう支援してまいりたい。
○　メンタルヘルスを含む職員の健康管理体制や職場の労働安全衛生体制の確立については、任命権者が労働安全衛生法の趣旨にのっとり主体的に実施するものであり、各地方公共団体において着実に実施されてきているものと認識している。
○　総務省においては、従来から、地方公共団体における労働安全衛生法の遵守やメンタルヘルス対策に資するため、地方公共団体に対して情報提供や助言を行ってきている。
○　また、ストレスチェック制度の義務化に際して、ストレスチェックは常時使用する労働者が50人未満の事業場については当分の間努力義務とされているが、メンタルヘルス不調で治療中のため、受検の負担が大きいなどの特別な理由がない限り、全ての職員にストレスチェックを実施いただくよう検討をお願いする旨の通知を発出しているところである。
○　なお、ストレスチェックの実施に要する経費については、各地方公共団体の標準的な財政需要となるため、事業場の規模に関わらず普通交付税による措置を講じている。

３．臨時・非常勤等職員の雇用確保と処遇の改善について.
○　総務省の有識者研究会では、民間労働法制の動向について厚生労働省からヒアリング・質疑等も行った上で、報告書をとりまとめていただいているところであり、総務省としては、この研究会報告や地方公共団体からの意見などを踏まえ、３月７日に地方公務員法等の改正法案を国会に提出したところである。
○　改正法案の概要としては、特別職非常勤職員や臨時的任用職員の任用要件を厳格化するとともに、新たに｢会計年度任用職員制度｣を創設することとしており、それに対し必要な任用・服務規律等の整備を行うこととしている。
○　併せて、会計年度任用職員の勤務条件に関して、
　�@　パートタイムの会計年度任用職員については、各団体間の統一的取扱いの確保に留意しつつ、従来の「報酬・費用弁償」の支給に加え、「期末手当」を支給できることとし、また、フルタイムの会計年度任用職員については、「給料・手当」の対象とする。
　　　さらに、支給すべき手当の範囲については、厳しい地方財政の状況等を考慮しつつ、各地方公共団体における定着状況、国・民間における制度・運用状況等を踏まえ、今後必要な見直しを行う、
　�A　休暇・育児休業等については、各団体における「会計年度任用職員制度」の整備に併せて、確実に制度化を進めるよう、助言を行う、
　など継続的に改善を図ることを考えている。
○　このほか、改正法案においては、
　・　パートタイムの会計年度任用職員については、営利企業等の従事制限を適用しない
　・　いわゆる「空白期間」に関して、任期については職務の遂行に必要かつ十分な期間を定めるべき旨の配慮規定を設け、その適正化を図る
　こととしている。
○　また、施行日については、各地方公共団体における制度設計、システム改修、周知期間の確保等の必要性を考慮し、平成32年４月１日としている。

４．公共サービス基本法に基づく適正な労働条件確保等について
○　総務省としては、地方公務員のワーク･ライフ･バランスの実現を目指し、地方公務員の勤務時間の縮減や柔軟な働き方改革について、国家公務員における対応を踏まえつつ、制度改正の推進や必要な助言等を行っている。
○　具体的には、
　・　徹底した超過勤務の縮減と年次有給休暇の取得、また、ゆう活やフレックスタイム制度の拡充等による働き方改革について、女性地方公務員の活躍の観点も含め、助言するほか、
　・　臨時・非常勤職員については、｢会計年度任用職員制度｣を創設することなどにより、任用・服務等の適正化を図るとともに、これまで認められていなかった｢期末手当｣の支給を可能とする改正法案を国会に提出する
　などの取組を進めているところである。
○　総務省としては、今後とも、国家公務員の対応等も踏まえ、必要な対応を行っていく考えである。
○　また、これまでも、地方公共団体に対し、公共サービスの実施に関する業務の委託に当たり、受託事業者等において労働条件への適切な配慮がなされるよう留意すること等について助言を行っており、今後とも、公共サービス基本法の趣旨を踏まえ、必要に応じて、助言等を行ってまいりたい。

５．新たな高齢雇用施策の充実について
○　地方公務員の高齢職員の任用については、公的年金の支給開始年齢が65歳へ引き上げられることに伴い、無収入期間が発生しないよう、国家公務員の対応を踏まえ、再任用により、雇用と年金の接続を図っているところである。
○　平成25年に発出した総務副大臣通知では、「定年退職者が再任用を希望する場合、任命権者は、公的年金の支給開始まで、当該職員を再任用することを基本とすること」「再任用に関する条例が未制定の場合は速やかに条例の制定をすること」など、地方の実情に応じて必要な措置を講ずることを要請しており、各種会議の場などでも助言を行ってきた。
○　この結果、平成28年度の再任用の実施状況をみると、
　�@　再任用に必要な再任用条例の制定率は99.2％となり大多数の団体で制定されていること
　�A　雇用と年金の接続が必要となった平成26年度から再任用職員の数が大幅に増加していること
　から、多くの地方公共団体では、雇用と年金の接続が図られているものと考えている。
○　今後とも、雇用と年金の接続を確実に図ることを目指し、各種会議の場などを通じて、引き続き、地方公共団体に対する助言等を行うとともに、今後の接続の在り方については、国の動向等を踏まえて検討してまいりたい。

　回答を受け、福島企画調整委員代表は次のように述べた。
１．賃金改善について
◯　地方公務員の給与は、労使の協議を経て当該地方自治体の条例で定めるものであることを改めて強調しておく。

２．労働時間、休暇及び休業等について
◯　政府において、働き方改革の議論がなされているが、民間だけでなく公務職場においても超過勤務縮減、多忙化解消等は喫緊の課題である。特に学校現場では、教員の約８割が週60時間以上働いているという調査結果もあり、子どもと向き合う時間の確保が困難な状況である。
〇　そのような背景の中、メンタルヘルス不調に陥る職員も多く、未然に防止するためにも、ストレスチェックの実施について周知徹底されたい。

３．臨時・非常勤職員の雇用確保と処遇の改善について
○　「地方公務員法及び地方自治法の一部を改正する法律案」が国会に提出され、今後審議されるが、長年の課題であった非常勤職員制度の構築、また少なくとも臨時・非常勤職員の処遇等の改善が図られることから、早期成立に向けて尽力されたい。
〇　一方で、改正法案により、課題の全てが解決するものではなく、今後の見直し・検討が必要である。また、地域の実情に応じ自治体において円滑な具体化が図られるよう、通知や説明会等で留意点を示すなど、地方自治体へのていねいな助言及び支援が重要である。あわせて、厳しい地方財政の折、地方財政措置も検討すべきである。

４．公共サービス基本法に基づく適正な労働条件確保等について
◯　公共サービス基本法第11条は、「公共サービスの実施に従事する者の適正な労働条件の確保その他の労働環境の整備に関し必要な施策を講ずるよう努める」ことを求めている。
〇　各自治体職場においては、災害への対応をはじめ、国民・住民の期待に応えるため、それぞれの持ち場で日夜自らの職務に全力を尽くしているが、その労働環境は大変厳しいものとなっている。必要なときに必要な質の高い公務・公共サービスを確実に提供していくためには、公共サービス基本法第11条に基づく職員の適正な労働条件確保等が不可欠であることに留意されたい。

５．新たな高齢雇用施策の充実について
◯　雇用と年金の接続にあたっては、定年延長が最適と考えており、関係機関に意見反映等行っていただくとともに、変更にあたっては国に遅れることのないよう制度設計を進めていただきたい。
◯　当面の措置として、再任用制度が実施されており、条例制定率は99％以上となっているが、条例が制定されていても実際には運用されていない、あるいは勤務形態が固定されている自治体も多いことから、希望する職員全員の雇用を確保するためにも、引き続き周知徹底に努めていただきたい。

　地方公務員部会は、本日の交渉を春の段階の一定の到達点として受け止め、公務労協、公務員連絡会に結集し、人勧期に向けた取組みを検討していくとともに、総務省との交渉・協議・意見交換等を引き続きすすめていく。

以上