2017年度公務労協情報 17 2017年3月29日
公務公共サービス労働組合協議会

総務省に公共サービス基本法に関わる要請書を提出−3/29

 公務労協は、3月29日10時から、政策・制度専門委員が総務省に対し、公共サービス基本法に関わる要請書を提出した。この要請は、公務労協「良い社会をつくる公共サービスキャンペーン」の取組みの一環として実施したもの。
 特に本年は、近年頻発する大規模災害発生時における公共サービスの重要性を社会に発信するため、熊本地震及び東日本大震災で被害の大きかった被災地での復旧・復興・再生に関する施策等が「公共サービス基本法」の基本理念・基本的施策を十分に活かしたものとなっているのかなどについて、各職場との意見交換を通じて、実情把握と課題・要望等を集約するなどし、要請事項を取りまとめた。
 要請には、公務労協から管野政策・制度専門委員長(全水道書記長)ほか専門委員が出席し、総務省は行政管理局阿南管理官ほかが対応した。

 冒頭、管野専門委員長が要請書を手交したのち、森永専門委員会事務局長(公務労協副事務局長)が要請内容を説明し、総務省の回答を求めた。
(1) 2009年に全会一致で成立した「公共サービス基本法」は、「公共サービスが国民生活の基盤となるものであることに鑑み、公共サービスに関し、基本理念を定め、及び国等の責務を明らかにするとともに、公共サービスに関する施策の基本となる事項を定めることにより、公共サービスに関する施策を推進し、もって国民が安心して暮らすことのできる社会の実現に寄与すること」を目的として整備されたもの。
(2) 他方、同法が制定されてから7年が経過したが、わが国における公共サービスを取り巻く環境は大きく変化している。
  特に、政府の「経済財政運営の改革の基本方針2015」で示された「経済・財政再生計画」における「公共サービスの産業化」等は、公共サービスを「国民の日常生活及び社会生活を円滑に営むために必要な基本的な需要」と再定義した公共サービス基本法の理念に相反するものであると指摘せざるを得ない。
  また、消費税増税再延期等により、内閣府試算による2020年度の基礎的財政収支が8.3兆円の赤字となるなど、わが国の財政は厳しい状況にあり、まさに、国民生活の基盤を喪失しかねない危機的な情勢にあると認識している。
(3) このような情勢を踏まえ、東日本大震災や熊本地震をはじめとする多くの自然災害からの一刻も早い復興と再生に向け、公務・公共サービスに従事する労働組合としての社会的責任と役割を果たすため、今年度の公務労協の「良い社会をつくる公共サービスキャンペーン」の一環として、被災地において実施されてきた施策などが「公共サービス基本法」の基本理念・基本的施策を十分に活かしたものとなっているのか、各職場と意見交換を行い、課題・要望等を把握し、政府への要請書を取りまとめた。
  貴職におかれては、「公共サービス基本法」の趣旨に沿って公共サービスが適切に国民に対して提供されるよう、その環境整備に向けて政府をあげて取り組むよう要請する。

 これに対し阿南管理官は、次の通り回答した。
(1) 要請の主旨は承った。公共サービスは国民生活の基盤となるものであり、現場で精力的に業務に従事されている職員の皆様には、改めて敬意を表する。
(2) 近年、自然災害等が多発しており、公務においても非常時対応のための体制整備が課題とされる一方、厳しい財政状況を鑑み対応せざるを得ないのが実情であり、様々な工夫を施しながら必要な対応を講じていく必要がある。
(3) いずれにしても、「公共サービス基本法」の基本理念は、災害時対応を含む各種施策を講じる上で必要不可欠なものであると認識している。これまで総務省としては、各種施策の策定及び実施を担う各府省や自治体に対し、同法の趣旨や基本理念について周知を行ってきたところであり、引き続き、所管省として適切に対応してまいりたい。

 その後、ヒアリングを行った被災4県から出された要望や、公務労協構成組織の職場を取り巻く状況及び課題等について意見交換を実施した。

 公務労協は、引き続き、公共サービス基本法の趣旨が施策に十分に反映され、より良い公共サービスの構築に向け必要な対応が図られるよう取組みを進めていく。また、被災地職場における課題や要望については、復興庁へも情報提供し意見交換を行うこととしている。

(資料1)

2017年3月29日

総務省行政管理局長
  山 下 哲 夫 様

公務公共サービス労働組合協議会
(公務労協)
事 務 局 長  吉 澤 伸 夫


要 請 書

 貴職におかれましては、日ごろから国民生活の安全・安心を支える良質な公共サービスの提供に尽力されていることに、敬意を表します。
 2009年に全会一致で成立した「公共サービス基本法」が制定されて7年が経過をしましたが、わが国における公共サービスを取り巻く環境は大きく変化しています。特に、現在の厳しい財政状況下にあって、国民生活の基盤を喪失しかねない危機的な情勢にあることを、公務・公共サービスに従事する労働組合の社会的責任として強く認識をしているところです。
 さて、東日本大震災、原発事故の発生から6年が経過しましたが、いまだに約12万人が避難生活を余儀なくされています。加えて、昨年は、新たに熊本地震をはじめとする多くの自然災害が発生しました。これら様々な災害や増大する行政需要に対して、公務公共サービスに従事する労働者は、精力的にそれぞれの職務に取り組んでいます。
 このたび公務労協では、熊本地震及び東日本大震災の被災地において実施されてきた施策などが「公共サービス基本法」の基本理念・基本的施策を十分に活かしたものとなっているのか、各職場との対話を通じて課題・要望の取りまとめを行いました。つきましては、「公共サービス基本法」の趣旨に沿って公共サービスが適切に国民に対して提供されるよう環境整備に向けて政府をあげて取り組むことを要請いたします。


1.公共サービスの透明性を高め説明責任を確保するため、国民の考えや意見の反映に向けた仕組みを充実すること。

2.暮らしに不可欠なインフラを適切に管理し、必要に応じたバックアップ機能を充実すること。

3.国民生活の安定、安全・安心を支える良質な公共サービスを確立するための必要な財源を確保すること。
  また、住民のニーズに対応するため、柔軟に職員を配置すること。

4.公共サービスの実施に従事する者が仕事に誇りを持てる雇用労働条件(ディーセントワーク)を確保するとともに、労働環境の整備に配慮すること。

以上