3月7日、政府は、「地方公務員法及び地方自治法の一部を改正する法律案」(以下、改正法案)を閣議決定し国会に提出した。連合は、事務局長談話において、改正法案について、「いわゆる「法の谷間」に置かれ、「官製ワーキングプア」とも称される地方公務員の臨時・非常勤職員の諸課題への措置を講じるものである。内容については不十分な点があるものの、積年の諸課題の解決に向けて前進をはかるものでもあり、そのことに鑑みれば、まずは確実に本法律案を成立させることが重要である」と評価した。
改正法案の審議については、参議院先議となり、4月11日の参議院総務委員会で趣旨説明、13日には審議及び採決、14日の参議院本会議で可決された。その後衆議院に送られ、20日の衆議院総務委員会で趣旨説明、5月9日には審議及び採決、11日の衆議院本会議において可決・成立した。また衆参総務委員会では、附帯決議が採択された。
この間、地方公務員部会は、臨時・非常勤職員制度について、雇用の安定と均等待遇原則に基づく労働条件となるよう法整備を求め、抜本的な処遇改善に向けた取組みを進めてきた。特に、改正法案に関わっては、地方公務員部会幹事会において、「労働者性の高い全ての一般職非常勤職員に給料・手当の支給対象となっておらず、少なくとも研究会報告書との整合が問われる内容であるが、臨時・非常勤職員の処遇の改善につながることを踏まえて対応する」、「職場・現場での具体的な対応に向けて、附帯決議も見据えながら、新たな法制度の具体化に向けた国会質疑を行う」という基本的な考え方と取組みを提起し、3月7日、改正法案の国会提出以降、民進党と連携し積極的に国会対策を強化した。また、3月14日には、「官製ワーキングプア」問題解決促進議員連盟へのヒアリングを行い、@課題が全て解決するものではないが、少なくとも臨時・非常勤職員の処遇等の改善につながることから、早期成立に向け対応のこと、A自治体において、円滑な具体化がはかられるための審議に留意すること、B雇用確保の他、法案施行における措置及び課題全般に係る今後の対応等附帯決議に付すこと、について要請した。
参議院総務委員会では、組織内議員である江崎孝参議院議員、那谷屋正義参議院議員が質問に立ち、改正法案の趣旨・目的、制度移行による雇用の安定の確保、臨時的任用職員の空白期間、勤務形態により異なる給付体系、必要な財源の確保等について、また、衆議院総務委員会では、奥野総一郎衆議院議員、近藤昭一衆議院議員、小川淳也衆議院議員が質問に立ち、会計年度任用職員制度への移行の課題、報酬水準の設定、臨時・非常勤職員の全般的な課題に対する今後の検討等について、政府の考え方を質した。
政府からは、「今後、定着状況や民間の動向、国家公務員に係る制度、厳しい地方財政の状況にも留意しつつ、支給すべき手当の範囲や制度全般の在り方なども含めて検討を行う」「マニュアルなどにおいて、現に任用されている臨時・非常勤職員に対し周知を行うべきことを記載し、助言等を行う」「地方公共団体の実態も踏まえながら、地方財政措置についてしっかりと検討していく」「一般職の会計年度任用職員についての課題のみならず、臨時的任用職員を含めた臨時・非常勤職員全体を対象とし、今後とも適正な任用・勤務条件の確保に努めたい」という答弁があり、今後の取組みの足がかりとなる発言を引き出せた。
改正法案の成立は、臨時・非常勤職員の課題を解決するための第一歩であり、地方自治体では、施行(2020年4月1日)に向け、労使交渉を踏まえ条例等の整備、必要な財源の確保などが必要となる。地方公務員部会は、臨時・非常勤職員の任用や勤務条件について、会計年度任用職員制度の新設を踏まえ、全般的かつ必要な検討がなされ、さらなる前進が図られるよう、引き続き総務省交渉・協議を強化していく。
また、臨時・非常勤職員の任用根拠の適正化を図る観点から、特別職非常勤職員については専門性の高い者等に任用の対象を限定し、臨時的任用職員については「常時勤務を要する職に欠員が生じた場合」と要件の厳格化を行った上で、会計年度任用職員制度を新設したことを受け、その制度への移行に際し、現在任用されている職員の雇用や賃金・労働条件が自治体労使交渉における最重要課題となる。夏頃を目途に運用通知、マニュアル、Q&Aなどが発出されることを踏まえ、地方自治体に対する十分な助言・支援及び職員への周知が徹底されるよう総務省と協議を進める。
あわせて、厳しい地方財政事情の中、必要となる財政措置を求めるとともに、地方交付税の拡充など地方財政の確立をめざし、地方団体、政府・政党に対する要請行動・協議等の取組みを強化していく。
以上