公務員連絡会は11月22日、人事院、内閣人事局に対して「2017年度賃金・労働条件に関わる基本要求事項の申入れ(資料1、2参照)」を提出した。公務員連絡会からは幹事クラス交渉委員が交渉に臨み、それぞれ誠意ある回答を示すよう求めた。
それぞれの交渉経過は次の通り。
<人事院との交渉経過>
人事院への提出交渉は、14時から行われ、人事院からは鈴木職員団体審議官、前薗職員団体審議官付参事官が対応した。
冒頭、大塚副事務局長が、基本要求を次の通り説明した。
(1) 一の給与関係は大きく3つの課題がある。第1は、来年度も、日本経済全体に波及力のある賃上げ実現が官民共通の課題だ。人事院としても、来年度にむけて公務員給与の引上げのため、作業を進めていただきたい。
第2に、官民比較方法については、当面、これを堅持して、ラスパイレス比較を原則とした正確な民調作業を行っていただきたい。
第3に、諸手当については、同一労働同一賃金などの議論が行われていることも含め、社会経済情勢の変化や職員の職務や生活実態を踏まえた改善が必要であることを明記した。十分議論させていただきたい。
(2) 二の労働時間、休暇・休業等の最重要課題は、超過勤務の縮減だ。まずは、客観的かつ厳格に把握できる勤務時間管理の仕組みを確立していただきたい。
本年の報告で人事院は「府省のトップの取組姿勢」の重要性を指摘し、管理職員の役割を強調している。超勤縮減に繋がるよう、各府省と連携した取組みを進めていただきたい。超勤上限目安時間について、とりわけ他律的業務に関わる720時間は絶対的上限としてそれ以上の勤務を禁止すべきだ。
また、本年は、新たに、不妊治療のための休暇の新設と「勤務間インターバル」の確保を求めている。当面、早出遅出勤務の適用拡大と活用で、職員の健康を確保していただきたい。
さらに、1月から施行される両立支援制度の円滑な活用も重要な課題だ。周知徹底を図り、職員が必要な時に活用できるよう、人事院としての役割を果たしていただきたい。両立支援策については、育児支援に関わる制度の取得要件としての子の年齢制限の緩和や離職防止のための介護休業が課題として残っている。
(3) 三のワーク・ライフ・バランスの推進、女性の労働権の確立について、女性が働きやすい職場を構築することは、性別や世代等を超えて働きやすい職場を実現することでもあり、人事院としても積極的に役割を果たしてもらいたい。
(4) 四の福利厚生等関係では、ストレスチェックの実施状況を把握し、一層円滑な実施と職場環境改善に向けて、必要な対応を図っていただきたい。ハラスメントについては、その防止のため、各府省、特に管理職に対する働きかけ等を強めてもらいたい。
(5) 六の雇用と年金の接続については、職員の希望通りの再任用の保障が第一だ。来年4月以降義務的再任用2年目の職員と1年目の職員が重なることについて、円滑に対応できるよう、人事院としての役割を果たしていただきたい。
また、定年延長の早期実現に向けて、本年報告した「定年延長に向けた仕組みの具体化」について、速やかに道筋を描いてもらいたい。
(6) 七の非常勤職員制度に関わっては、勤勉手当についてもガイドラインに明記していただきたい。
申入れに対し、鈴木審議官は「本日の要求については承った。十分検討の上、然るべき時期に回答させていただく。本日は、いくつかの点について現時点での私レベルのコメントを申し上げる」として、現時点での見解を次のように示した。
(1) 賃金に関わる要求について
来年の春闘について、連合は、2017春季生活闘争方針案において、「賃上げ要求水準は、それぞれの産業全体の「底上げ・底支え」「格差是正」に寄与する取組を強化する観点から2%程度を基準とし、定期昇給相当分を含め4%程度とする」との基本構想を打ち出しているものと承知している。
また、今月16日の「働き方改革実現会議」において、総理は経済界に対して「少なくとも今年並みの賃上げ」「ベアの4年連続の実施」を求め、積極的な賃上げを促したところである。
一方、地方公務員給与に係る都道府県人事委員会の給与勧告をみると、昨年は全都道府県が給与引上げを勧告していたのに対し、本年は41道府県で引上げ勧告がなされたものの、5都府県が据え置き、1県は引下げとなっており、来年の春闘を前に、地方経済の先行きに若干の厳しさが見え始めているところである。
また、例えば、大手銀行5グループの2016年度上期の連結決算においては、マイナス金利の影響もあり、いわゆる3メガバンクが7年ぶりに揃って減益となるなど、景気の動向については、依然として予断を許さないものがある。
国家公務員の給与は、情勢適応の原則に基づき、民間準拠により決定されることから、民間の春闘結果が直接反映されることとなるため、連合の「定昇分を除き2%程度、定昇込みで4%」という春闘基本構想がどう実現するか注視して参りたい。
(2) 労働時間、休暇及び休業等に関わる要求について
人事院としては、超過勤務の縮減について、従来から勤務環境の整備に係る重要な課題として、政府全体で連携しつつ取り組んできたところである。
ご案内のとおり、本年の勧告においては、各府省へのヒアリングで判明した人事当局が効果的と考えている施策や職員の健康管理の観点から不可欠と思われる視点を踏まえ、実効性があると考えられる施策について、具体的な内容や手順を含め詳細にお示ししたところである。
いずれにしても、超過勤務の縮減については、引き続き、政府全体で連携しつつ取り組んでいくことが必要であり、人事院としても、今回示した考え方に基づき、適切に役割を果たしてまいりたい。
また、育児や介護を行いながら安心して働き続けることのできる社会の構築は、個々人の希望の実現や労働力の確保・定着、ひいては我が国の経済社会の持続的な発展の上でも官民共通の重要な課題となっているとの認識の下、公務の両立支援制度についても民間労働法制の改正内容に即した改正を行うことが適当と判断し、本年の給与勧告に合わせて両立支援制度の改正に係る意見の申出及び勧告を行ったところである。
ご案内のとおり、関係法案は先週成立したところであり、近日中に関連の人事院規則等を公布することとしている。
(3) ワークライフバランスの推進、女性の労働権確立に関わる要求について
女性活躍とワークライフバランスの推進については、これまで両立支援策の拡充や超過勤務の縮減の推進など、男女ともに働きやすい勤務環境の整備や、女性国家公務員の採用・登用拡大の推進を積極的に進めているところである。
今年の勧告では、両立支援制度の改正に係る意見の申出及び勧告を行ったところであるが、合わせて、こうした両立支援においては、制度の整備のみではなく、職員が必要に応じて円滑に制度を利用できるような職場としての支援体制の整備が重要である旨言及しているところであり、両立支援の選択肢が豊富になっていく中で、職員一人一人の事情に応じて適切な施策が活用されるように呼びかけてまいりたい。
これに対し、各交渉委員が職場実態に基づき、@諸手当等の改善、A実効性のある超過勤務縮減、B育児支援諸制度の取得に関わる子の年齢要件の緩和、C希望どおりの再任用実現、D非常勤職員の処遇改善、などについて積極的な対応を要請した。
最後に大塚副事務局長が、「労働基本権の制約が維持されている以上、人事院には代償機関としての位置づけを含め、職員の利益保護という役割をしっかりと果たしてもらいたい。公務員の雇用と賃金・労働条件がより良きものとなるよう、われわれと真摯に向き合ってその改善に努めてもらいたい。申入れ内容を十分に精査していただいて、12月には誠意ある回答をお願いしたい」と求めたのに対し、鈴木審議官が了としたことから、要求提出交渉を終えた。
<内閣人事局との交渉経過>
内閣人事局への提出交渉は、15時から行われ、内閣人事局からは稲山内閣審議官らが対応した。
要求提出にあたり、大塚副事務局長が「先週、給与法等改正法案が成立し、勧告及び意見の申出通り実施することが確定した。本年の取組みに区切りが付いたことを踏まえ、本日要求書を提出することにしたところ。十分に検討いただいて、12月には誠意ある回答をお願いしたい」と述べたうえで、基本要求を次の通り説明した。
(1) 一の雇用と賃金・労働条件の関係では、第1に、公共サービス基本法に基づき、公務員や公共サービス従事者に社会的に公正な賃金・労働条件と人件費予算の確保が必要だ。
第2に、雇用と年金の接続については、職員の希望通り、すなわちフルタイム希望者にはフルタイムのポストを保障するため、必要な定員を確保してもらいたい。
(2) 二の労働時間、休暇・休業等では超過勤務の縮減が最重要課題だ。まずは、客観的かつ厳格に把握できる勤務時間管理の仕組みを確立していただきたい。9月には「国家公務員の労働時間短縮対策について」が改正されており、内閣人事局として、各府省に対し、管理職による超過勤務の事前命令を徹底していただきたい。超勤上限目安時間について、とりわけ他律的業務に係る720時間は健康を害するレベルであり、厳格に順守されなければならない。
本年は新たに、「勤務間インターバル」を確保することを要求している。公務の場合、勤務が深夜に及んだ場合について、遅出勤務が可能になっているため、当面、この仕組みを活用して、職員の健康を確保していただきたい。
(3) 三のワーク・ライフ・バランス、女性の労働権の確立では、様々な取組みについて、フォローアップも実施されるところであり、一層の改善に向けて、公務員連絡会と十分議論をさせてもらいたい。
(4) 四の福利厚生関係では、国家公務員健康増進等基本計画のフォローアップが行われることになるが、ストレスチェックや管理職に対するハラスメント研修、二次健診の受診率向上などについて、丁寧な点検を求める。
(5) 六の雇用と年金の接続に関わっては、本年4月から公的年金の支給開始年齢が62歳に繰り延べられ、来年4月以降義務的再任用2年目の職員と1年目の職員が重なり、ポストの確保が厳しい。新年度に向けて、内閣人事局としての責任をしっかりと果たしていただきたい。年金支給開始年齢が63歳になるときまでには、公務が率先して定年延長を実現することを強く求める。
(6) 七の非常勤職員制度に関わっては、勤勉手当についてもガイドラインに明記するよう、働きかけていただきたい。また、本年新たに、非常勤職員の給与改定について、政府全体としての統一的対応、常勤職員と同様の対応を求めており、来年度には具体化を図っていただきたい。
(7) 八の公務員制度改革については、国家公務員制度改革基本法の自律的労使関係制度を確立することが課題であり、引き続き、われわれと十分話し合いながら検討作業を進めていただきたい。
続けて、各交渉委員から職場実態に基づき、@業務に見合った定員確保、A希望どおりの再任用実現に向けた対応、などについて強く訴えた。
これらに対して、稲山内閣審議官は「要求の趣旨は承った。要求事項は多岐にわたっているため、検討させていただいた上で、各要求事項に対する回答については、しかるべき時期に行いたい」と回答した。
最後に、大塚副事務局長は「来年度に向けては、われわれの要求に誠実に応え、公務員の労働諸条件を改善することによって使用者としての責任を果たしていただきたい。12月には誠意ある回答をお願いしたい」と重ねて要請し、要求提出交渉を終えた。
資料1.人事院への基本要求書
2016年11月22日
人事院総裁
一 宮 なほみ 様
公務員労働組合連絡会
議 長 石 原 富 雄
2017年度賃金・労働条件に関わる基本要求事項の申入れ
有効求人倍率や失業率が改善しつつあるものの、賃金収入が伸び悩むなか、将来不安から個人消費は低迷し続けています。こうした経済情勢の下、日銀がデフレ脱却の指標としている消費者物価2.0%上昇の達成時期をさらに先送りするなど、日本経済の先行きは不透明度を増しています。また、非正規労働者の割合が4割程度に高止まりし、雇用の質は一向に改善を見ていませんこのため、連合は2017年春季生活闘争について、引き続き「底上げ・底支え」と「格差是正」に重点を置いて取り組むことにしています。
こうした状況のもと、地震等の災害からの復興・再生はもとより、国民の生活を支えていくために公務・公共サービスの役割は高まっており、公務員労働者は日夜自らの職務遂行に邁進しているところです。しかし、定員の削減が継続される中、超過勤務は一向に改善せず、長期病休者も少なくないなど、国民の期待に応えていくには厳しい労働条件、勤務環境に置かれています。
公務員労働者が、国民の期待に応え、質の高い公務・公共サービスを確実に提供していくためには、公務員労働者の雇用の安定と賃金・労働条件の改善・確保が不可欠です。その意味で、人事院が、労働基本権制約の代償機関であることを含め職員の利益保護の役割を十全に果たすことが求められています。
貴職におかれましては、こうした点を十分認識され、下記の基本要求事項の実現に向けて最大限努力されることを強く申し入れます。
記
一、賃金に関わる事項
1.給与水準及び配分等について
(1) 給与水準の確保
@ 職務の責任や仕事の内容に相応しい社会的に公正な月例給与水準を確保することとし、公務員労働者のゆとり・豊かな生活を保障すること。
2017年度の給与勧告においては、生活水準を維持・改善するため、公務員の賃金水準を引き上げること。
A 期末・勤勉手当については、民間実態を正確に把握し、支給月数を引き上げること。
(2) 公正・公平な配分
配分については、別途人事院勧告期に提出する要求も含め、公務員連絡会と十分交渉し、合意に基づき行うこと。
(3) 社会的に公正な官民給与比較方法の確立
当面、現行の比較企業規模を堅持することとし、社会的に公正な仕組みとなるよう改善すること。また、一時金についても、月例給と同様に、同種・同等比較を原則とするラスパイレス比較を行うこと。
2.諸手当について
(1) 諸手当について、社会経済情勢の変化、職員の職務や生活実態を踏まえて改善することとし、公務員連絡会と十分、交渉・協議し、合意に基づいて進めること。
(2) 住居手当については、公務員宿舎の削減及び宿舎使用料等の段階的引上げを踏まえ、総合的に改善すること。
(3) 1か月当たり45時間を超え60時間以内の超過勤務に対する割増率については、民間企業の実態を踏まえた引上げを行うこと。なお、超過勤務手当については、全額支給すること。
二、労働時間、休暇及び休業等に関わる事項
1.年間労働時間の着実な短縮について
公務における年間総労働時間1,800時間体制を確立することとし、次の事項を実現すること。
(1) 超過勤務を縮減するため、超過勤務命令の徹底やICT等を活用した厳格な勤務時間管理を直ちに行うこと。また、他律的業務を含む超勤上限目安時間については、完全に遵守できるよう各府省に対する指導を強化すること。
(2) 本府省における在庁時間削減の取組みの実施状況を踏まえ、その取組みの強化・徹底を図ることとし、在庁時間の一層の削減に向け、人事院として積極的役割を果たすこと。
(3) 新たに勤務時間の上限規制を導入することを含め、政府全体として、より実効性のある超過勤務縮減の具体策を着実に実施すること。
2.休暇・休業制度の拡充等について
ライフステージに応じ、社会的要請に応える休暇・休業制度の拡充などについて、次の事項を実現すること。
(1) 夏季休暇の日数を増やすこと。
(2) リフレッシュ休暇を新設すること。
(3) 産前休暇を8週間、多胎妊娠の場合の産後休暇を10週間に延長すること。また、妊娠障害休暇を新設すること。
(4) 不妊治療のための休暇を新設すること。
(5) 改正両立支援制度の円滑な実施をはかるとともに、育児短時間勤務、育児時間等について、子の年齢要件等取得要件を緩和し、その在り方を改善すること。
(6) 必要な休暇・休業制度が、非常勤職員を含め、男女ともにより活用できるよう、制度の改善や環境整備に努めること。とくに、家族介護を理由とした離職を防止するため、介護休業制度を整備すること。
(7) 休暇の取得手続きについて、公務員の休暇権をより明確にする形で抜本的に改善すること。
3.勤務時間制度等の見直しについて
(1) 公務における本格的な短時間勤務制度の導入に向けて、公務員連絡会と十分交渉・協議すること。
(2) テレワークに係る勤務時間等の在り方などを見直す場合は、公務員連絡会と十分交渉・協議し、合意に基づき進めること。
(3) 公務において、「勤務間インターバル」を確保すること。
三、ワーク・ライフ・バランスの推進、女性の労働権確立に関わる事項
(1) 公務におけるワーク・ライフ・バランスの推進及び男女平等の実現を人事行政の重要課題と位置づけ、人事院としての役割を果たすこと。
(2) 次世代育成支援対策推進法、女性活躍推進法及び「国家公務員の女性活躍とワークライフバランス推進のための指針」等に基づく各府省の「行動計画」「取組計画」等の着実な実行に向け、積極的な役割を果たすこと。
(3) 女性の労働権確立にむけ、女性が働き続けるための職場環境の整備に努め、女性の採用・登用・職域拡大を図るとともに、メンター制度の実効性を確保すること。
四、福利厚生施策等に関わる事項
(1) 公務員の福利厚生を勤務条件の重要事項と位置付け、職員のニーズ及び民間の福利厚生の正確な実態把握を行い、その抜本的な改善・充実に向けた提言を行うこと。
(2) 福利厚生の重要施策であるレクリエーションについて、事業が休止されている実態を重く受け止め、その理念の再構築と予算確保や事業の復活に努めること。
(3) ストレスチェックを確実に実施するとともに、「職員の心の健康づくりのための指針」等に基づいた心の健康づくり、カウンセリングや「試し出勤」など復職支援施策の着実な推進を図ること。
(4) ハラスメントについて、必要な対策を着実に実施すること。
五、人事評価制度に関わる事項
中立・公正な人事行政や勤務条件を所管する立場から、人事評価制度の実施及び評価結果の活用状況を随時検証し、必要に応じて指導、改善措置等を講じること。
六、雇用と年金の接続に関わる事項
(1) 雇用と年金の接続について、当面は、2013年3月26日の閣議決定に基づき、職員の希望通りの再任用を実現するとともに生活水準を確保すること。
(2) 再任用職員の給与制度等については、その経済的負担、定年前職員との均衡を考慮して改善することとし、公務員連絡会との十分な交渉・協議、合意に基づいて進めること。
(3) 年金支給開始年齢が63歳になるときまでには確実に定年延長を実現するため、積極的に対応すること。
七、非常勤職員制度等に関わる事項
非常勤職員制度等の抜本的改善をめざし、次の事項を実現すること。
(1) 非常勤職員制度について、法律上明確に位置付けることとし、勤務条件等について常勤職員との均等処遇の原則に基づいて、関係法令、規則を適用すること。
(2) 「非常勤職員給与決定指針」の実施状況を丁寧に点検し、必要な見直しを行い、着実な処遇改善に努めること。加えて、常勤職員と同等の勤務を行っている非常勤職員の給与を俸給表に位置づけ、国に雇用される労働者の最低給与(高卒初任給相当)を定める人事院規則を制定すること。
(3) 期間業務職員制度について、当該職員の雇用の安定と処遇の改善となるよう、適切な運用に努め、必要な改善措置を講じること。
(4) 非常勤職員の休暇制度の改善について、順次具体化を図ること。
八、その他の事項
公務遂行中の事故等の事案に関わる分限については、欠格による失職等に対する特例規定を設けること。
以上
資料2.内閣人事局への基本要求書
2016年11月22日
内閣総理大臣
安 倍 晋 三 様
公務員労働組合連絡会
議 長 石 原 富 雄
2017年度賃金・労働条件に関わる基本要求事項の申入れ
有効求人倍率や失業率が改善しつつあるものの、賃金収入が伸び悩むなか、将来不安から個人消費は低迷し続けています。こうした経済情勢の下、日銀がデフレ脱却の指標としている消費者物価2.0%上昇の達成時期をさらに先送りするなど、日本経済の先行きは不透明度を増しています。また、非正規労働者の割合が4割程度に高止まりし、雇用の質は一向に改善を見ていません。このため、連合は2017年春季生活闘争について、引き続き「底上げ・底支え」と「格差是正」に重点を置いて取り組むことにしています。
こうした状況のもと、地震等の災害からの復興・再生はもとより、国民の生活を支えていくために公務・公共サービスの役割は高まっており、公務員労働者は日夜自らの職務遂行に邁進しているところです。しかし、定員の削減が継続される中、超過勤務は一向に改善せず、長期病休者も少なくないなど、国民の期待に応えていくには厳しい労働条件、勤務環境に置かれています。
公務員労働者が、国民の期待に応え、質の高い公務・公共サービスを確実に提供していくためには、公務員労働者の雇用の安定と賃金・労働条件の改善・確保が不可欠です。その意味で、公務員の人事行政に責任を持つ中央人事行政機関としての内閣人事局がその役割を十全に果たすことが求められています。
貴職におかれましては、こうした点を十分認識され、下記の基本要求事項の実現に向けて最大限努力されることを強く申し入れます。
記
一、雇用と賃金・労働条件に関わる事項
(1) 公共サービス基本法に基づいて良質な公共サービスが適正かつ確実に実施されるよう、公務員等公共サービス従事者の社会的に公正な賃金・労働条件と人件費予算を確保すること。
(2) 事務・事業の円滑な遂行とディーセントワークを保障するとともに、当面、職員の希望通りの再任用を保障するため、必要な定員を確保すること。
(3) 職務の責任や仕事の内容に相応しい社会的に公正な給与水準を確保することとし、公務員労働者のゆとり・豊かな生活を保障すること。2017年度においては、生活水準を維持・改善するため、人事院勧告の取扱いを含めて、公務員連絡会との交渉・協議に基づき公務員労働者の賃金水準を引き上げること。また、使用者の責任において、実態に見合った超過勤務手当の支給、独立行政法人等を含めた公務員給与の改定に必要な財源の確保に努めること。
(4) 公務員給与のあり方に対する社会的合意を得るよう、使用者責任を果たすこと。
二、労働時間、休暇及び休業等に関わる事項
(1) 公務における年間総労働時間1,800時間体制の確立と、ライフステージに応じ、社会的要請に応える休暇・休業制度の改善・拡充などを実現すること。
(2) 政府全体として超過勤務縮減のための体制を確立し、超過勤務命令の徹底やICT等を活用した厳格な勤務時間管理を直ちに実施すること。
(3) 新たに超過勤務縮減目標等を設定し、より実効性のある超過勤務縮減策を直ちに実施することとし、その具体化に向けて公務員連絡会と協議すること。
(4) 公務における本格的な短時間勤務制度の具体的検討に着手すること。
(5) 公務において、「勤務間インターバル」を確保すること。
三、ワーク・ライフ・バランスの推進、女性の労働権確立に関わる事項
(1) 公務におけるワーク・ライフ・バランスの推進及び女性の労働権確立を人事行政の重要課題と位置づけ、政府全体として積極的に取り組むこと。
(2) 次世代育成支援対策推進法、女性活躍推進法及び「国家公務員の女性活躍とワークライフバランス推進のための取組指針」等に基づく各府省の「行動計画」「取組計画」等の着実な実施に向け、積極的な役割を果たすこと。あわせて、「霞が関の働き方改革を加速するための重点取組方針」を着実に実施すること。
(3) 女性の採用・登用・職域拡大、メンター制度の実効性確保に向け、使用者として必要な取組みを着実に実施すること。
四、福利厚生施策等に関わる事項
(1) 公務員の福利厚生を勤務条件の重要事項と位置付け、職員のニーズ及び民間の福利厚生の正確な実態把握に基づき、その抜本的な改善・充実を図ること。
(2) 「国家公務員健康増進等基本計画」の着実な実施を図るため、政府全体としての実施体制を確立し、使用者としての責任を明確にして積極的に対応すること。
(3) ストレスチェックを確実に実施するとともに、引き続きストレス原因の追究と管理職員の意識改革に努めることとし、必要な心の健康づくり、カウンセリングや「試し出勤」など復職支援施策を着実に実施すること。
(4) 2017年度の予算編成に当たっては、健康診断の充実など、職員の福利厚生施策の改善に必要な予算を確保すること。なお、予算の取扱いについては、公務員連絡会と十分交渉・協議を行い、合意に基づいて進めること。
(5) 福利厚生の重要施策であるレクリエーションについて、事業が休止されている実態を重く受け止め、その理念の再構築と予算確保や事業の復活に努めること。
(6) ハラスメントについて、必要な対策を着実に推進すること。
五、人事評価制度に関わる事項
人事評価制度について、円滑に運営されるよう、引き続き制度の周知や評価者訓練の徹底等に努めること。
六、雇用と年金の接続に関わる事項
(1) 雇用と年金の接続について、当面は、2013年3月26日の閣議決定に基づき、職員の希望通りの再任用を実現するとともに、生活水準を確保すること。
(2) 職員の希望通りの再任用を保障するため、必要な定員の確保に向け、弾力的扱いなどについて公務員連絡会と十分交渉・協議すること。
(3) 人事院の意見の申出等を踏まえ、年金支給開始年齢が63歳になるときまでには確実に定年延長を実現することとし、公務員連絡会との交渉・協議に基づいて具体的措置を講じること。
七、非常勤職員制度等に関わる事項
(1) 非常勤職員制度の抜本的改善をめざし、公務員連絡会が参加する検討の場を設置し、政府全体として解決に向けた取組みを推進すること。当面、非常勤職員制度について、法律上明確に位置付けることとし、勤務条件等について常勤職員との均等待遇の原則に基づき、常勤職員に適用している法令、規則を適用すること。
(2) 期間業務職員制度について、当該職員の雇用の安定と処遇の改善となるよう、適切な運用に努め、必要な改善措置を講じること。
(3) 非常勤職員の給与改定について、政府全体として統一的に対応することとし、常勤職員と同様に措置すること。
八、公務員制度改革に関わる事項
ILO勧告に則り、国家公務員制度改革基本法に基づく自律的労使関係制度を確立するため、国家公務員制度改革関連四法案(2011年6月3日国会提出)における措置について、国家公務員法等改正法案の附帯決議(2014年3月12日衆議院内閣委員会及び同年4月10日参議院内閣委員会)に基づく、公務員連絡会との合意により実現すること。
九、その他の事項
(1) 障がい者雇用促進法に基づく措置を着実に実施するとともに、障がいの別をこえた雇用促進を図ること。
(2) 国が民間事業者等に業務委託や入札等により事務事業の実施を委ねる場合においては、公正労働基準の遵守を必要条件とすること。
以上