公務労協地方公務員部会は、人事院勧告・報告後、各人事委員会が勧告作業に取りかかることを受け、8月9日に野田総務大臣に対して「2017年地方公務員給与の改定等に関わる申入れ」を、10日に全国人事委員会連合会に対して「2017年給与勧告等に関する要請」を行った。
【野田総務大臣への申入れの経過】
野田総務大臣への申入れは9日に行い、二階堂地方公務員部会議長ほか委員長クラス交渉委員が出席した。
冒頭、二階堂議長は、申入書(別紙2)を手交し、「本年の人事院勧告は、4年連続で、月例給、一時金のいずれについても引上げとなり、職員の期待に応えたものと一定評価できる。一方、政府は、財政問題が一層深刻化する中、骨太方針2017において、国・地方を通じた財政資金の効率的配分を検討するとしており、今後、国の財政健全化に向けた歳出抑制と地方一般財源総額の取扱いについて議論されることからも、地方交付税の圧縮が懸念され、地方公務員給与への影響が危惧されるところ。公務・公共サービスの役割が一層高まる中、各現場で粉骨砕身して業務を遂行している職員の士気を確保し、良質な公務・公共サービスを提供していくためにも、月例給、一時金のいずれについても引き上げる勧告が各人事委員会で行われるべきだ。今後、各人事委員会で勧告作業が本格的に進められるが、地方公務員の労働基本権制約の代償措置である人事委員会勧告制度が機能するよう、総務省として適切な対応を図られるとともに、労使間の十分な交渉・協議を通した自主的な給与改定を尊重するよう要請する」と申し入れた。
これに対して野田大臣は、「要請の内容は承った。各要求事項は検討の上、しかるべき時期に回答させていただく」と述べた。
【全国人事委員会連合会への要請の経過】
全人連への要請は10日に行い、二階堂議長(全水道委員長)、加藤事務局長、森本事務局次長および幹事が出席した。全人連は、栗原全人連副会長をはじめ、都道府県人事委員会のブロック代表および政令市の代表者が対応した。
冒頭、二階堂議長は、要請書(別紙3)を手交し、人事院報告・勧告等についての見解、地方公務員給与を取り巻く厳しい情勢等について認識を述べた上で「各人事委員会が、専門機関としての機能を発揮されるよう期待している。2017年の勧告に向け、地方公務員が置かれている現状を十分踏まえ、下記事項の実現に向け最大限の努力をお願いしたい」と、要請した。
続いて、加藤事務局長が要請事項について説明した上で、「本年の人事院勧告で、月例給・一時金ともに4年連続で引き上げることとしたのは民間の賃上げ動向をも踏まえた結果であると考える。職員の士気を高め、良質な公務・公共サービスを提供するためにも、各人事委員会の尽力を期待している」と、全人連としての努力を強く求めた。
こうした地方公務員部会の要請に対し、栗原副会長は別紙1の通り回答し、この日の要請を終えた。
(別紙1)
平成29年8月10日
要請に対する全人連会長回答
全人連副会長を務めております、大阪府人事委員会委員長の栗原です。
所用により全人連会長が不在のため、私から全国の人事委員会を代表してお答えいたします。
ただいまの皆様からの要請につきましては、確かに承りました。
早速、全国の人事委員会にお伝えいたします。
さて、ご存じの通り、8月8日に人事院勧告が行われました。
本年の官民較差は、民間における賃金の引上げを図る動きを反映して、民間給与が公務員給与を平均631円、率にして0.15%上回っており、この較差を埋めるため、初任給の引上げと若年層を中心とした俸給表水準の引上げを行うこととしております。
特別給につきましても、民間事業所における好調な支給状況を反映して、民間が公務を上回ったことから、支給月数を0.1月分引き上げることとし、引上げ分は勤勉手当に配分することとしております。
このほか、公務員人事管理に関する報告では、人材の確保及び育成、働き方改革と勤務環境の整備、高齢層職員の能力及び経験の活用について意見が述べられております。
詳細につきましては、これから人事院の説明を受けますが、国家公務員と地方公務員の立場の違いはありつつも、人事院の勧告は、各人事委員会が勧告作業を行う上で、参考となるものであることから、その内容については、十分に吟味する必要があると考えております。
今後、各人事委員会は、皆様からの要請の趣旨も考慮しながら、それぞれの実情等を勘案し、主体性をもって対処していくことになるものと考えております。
改めて申すまでもありませんが、各人事委員会といたしましては、本年も、中立かつ公正な人事行政の専門機関として、その使命を果たしてまいります。
全人連といたしましても、各人事委員会の主体的な取組を支援するとともに、人事院、各人事委員会との意見交換に十分努めていきたいと考えております。
私からは、以上でございます。
(別紙2)
2017年8月9日
総 務 大 臣
野 田 聖 子 様
公務公共サービス労働組合協議会
地方公務員部会議長 二階堂 健 男
2017年地方公務員給与の改定等に関わる申入れ
貴職の地方公務員の賃金・労働条件の改善に向けたご努力に敬意を表します。
さて、人事院は8月8日、政府と国会に対して2017年の官民較差に基づく国家公務員の給与等に関わる勧告を行いました。月例給、一時金のいずれについても、4年連続の引上げ勧告となり、職員の期待に応えたものと一定評価できます。
一方、政府は、財政問題が一層深刻化する中、骨太方針2017において、「国・地方を通じた財政資金の効率的配分を図ることを検討する」としています。今後、国の財政健全化に向けた歳出抑制と地方一般財源総額の取扱いについて議論されることからも、地方交付税の圧縮が懸念され、地方公務員給与への影響が危惧されます。
地方公務員は、公務・公共サービスの役割が一層高まる中、各現場で粉骨砕身して業務を遂行しています。職員の士気を確保し、良質な公務・公共サービスを提供していくためにも、各人事委員会において、地方公務員給与の引上げ勧告が行われるべきです。
今後、各人事委員会では、2017年の勧告に向けた作業が本格的に進められることとなりますが、地方公務員の労働基本権制約の代償措置である人事委員会勧告制度が機能するよう、総務省として適切な対応を図られるとともに、労使間の十分な交渉・協議を通した自主的な給与改定を尊重するよう要請します。
貴職におかれましては、下記事項の実現に向け最大限のご努力をいただきますようお願いします。
記
1.2017年の地方公務員の給与改定については、地公法第24条2項の趣旨を踏まえた自治体の自己決定が尊重されるよう対応すること。
2.公営企業および技能労務職員の給与については、当該職員に労働協約締結権が保障されていることを踏まえ、労使交渉に基づく自主的・主体的決定を尊重すること。
3.改正地方公務員法等の審議及び附帯決議を踏まえ、臨時・非常勤職員制度の改善に向けた全般的かつさらなる見直しを引き続き検討すること。
以上
(別紙3)
2017年8月10日
全国人事委員会連合会
会 長 青 山 ●(やすし) 様
公務公共サービス労働組合協議会
地方公務員部会議長 二階堂 健 男
2017年給与勧告等に関する要請書
各人事委員会の地方公務員の給与・労働条件の改善に向けたご努力に敬意を表します。
さて、人事院は8月8日、政府と国会に対して2017年の官民較差に基づく国家公務員の給与等に関わる勧告を行いました。月例給、一時金のいずれについても、4年連続の引上げ勧告となり、職員の期待に応えたものと一定評価できます。
一方、政府は、財政問題が一層深刻化する中、骨太方針2017において、「国・地方を通じた財政資金の効率的配分を図ることを検討する」としています。今後、国の財政健全化に向けた歳出抑制と地方一般財源総額の取扱いについて議論されることからも、地方交付税の圧縮が懸念され、地方公務員給与への影響が危惧されます。
地方公務員は、公務・公共サービスの役割が一層高まる中、各現場で粉骨砕身して業務を遂行しています。職員の士気を確保し、良質な公務・公共サービスを提供していくためにも、各人事委員会が、専門機関としての機能を発揮されるよう期待しています。
各人事委員会におかれましては、2017年の勧告に向け、地方公務員が置かれている現状を十分踏まえ、下記事項の実現に向け最大限の努力を払われますよう要請します。
記
1.民間賃金実態に基づき公民較差を精確に把握し、人事委員会勧告制度の下で地方公務員のあるべき賃金を勧告すること。勧告にあたっては、給料表の改善を中心に公民較差を解消すること。また、一時金の公民比較は、月例給と同様に、同種・同等比較を原則とするラスパイレス比較を行うこと。
2.各人事委員会の勧告に向けた調査や作業に当たっては、組合との交渉・協議、合意に基づき進めること。
3.諸手当の改善については、地域の実情を踏まえつつ、組合との十分な交渉・協議に基づくこと。
4.臨時・非常勤職員の任用や処遇改善に関する指針を示すこと。また、改正法を踏まえ、人事委員会として必要な対応を図ること。
5.公立学校教員の賃金に関わり、各人事委員会が参考としうるモデル給料表を作成、提示すること。また、作成に当たっては、関係労働組合との交渉・協議を行うこと。
6.雇用と年金の接続については、当面、フルタイムを基本とする再任用制度の確立と、再任用職員の生活水準を確保するため、給与制度上の措置について必要な検討と報告、勧告を行うこと。また、年金支給開始年齢が63歳になるときまでには定年延長を確実に実現すること。
7.公務における超勤縮減、ワーク・ライフ・バランスの実現に向けて、年間総労働時間を早期に1,800時間程度に短縮し、引き続き次の事項の実現に努めること。
(1) 厳格な勤務時間管理と実効性ある超過勤務縮減のための積極的施策の推進
(2) 年次有給休暇取得の促進
(3) 労働時間短縮のための人員確保等の施策の構築
8.各種休暇制度を新設・拡充し、総合的な休暇・休業制度を確立すること。とくに、家族介護を理由とした離職を防止するための介護休業制度の整備を図ること。また、育児休業・介護休暇に関して男性の取得促進のための必要な措置を講ずること。
9.公務職場における男女平等の実現を人事行政の重要課題と位置づけ、必要な施策の確立を図ること。
10.実効あるハラスメント防止策を引き続き推進するため、積極的な対応を行うこと。
11.公務職場における障がい者、外国人採用を促進すること。
以上