2017年度公務労協情報 4 2016年12月20日
公務公共サービス労働組合協議会
公務員労働組合連絡会

2017年度基本要求に対する回答を引き出す−12/20

 公務員連絡会は12月20日、幹事クラス交渉委員が人事院、内閣人事局との交渉を実施し、11月22日に提出した2017年度の基本要求に対する回答を引き出した。回答は多岐にわたるものの展望を開くものとはなっておらず、不満な内容に止まったが、公務員連絡会は、春季生活闘争に引き継いでいくこととし、基本要求に関わる交渉・協議に区切りを付けることとした。
 それぞれの交渉経過は次の通り。

<人事院との交渉経過>
 人事院との交渉は13時30分から行われ、人事院は鈴木職員団体審議官、前薗職員団体審議官付参事官が対応した。
 冒頭、大塚副事務局長が、基本要求に対する回答を求めたのに対し、鈴木審議官は「今後引き続き検討すべき事項が多いが、主な要求事項について現時点での検討状況等について申し上げる」として次の通り人事院の現段階の見解を示した。

一、賃金に関する事項
(1) 給与水準について
 公務員給与の改定については、情勢適応の原則に基づき、民間準拠により適正な給与水準を確保するという基本姿勢に立った上で、職員団体の皆さんの意見も聞きながら適切に対処していきたいと考えている。
 新聞報道等によれば、連合の「2017春季生活闘争基本構想」を受けて、自動車総連と電機連合は来春の春闘におけるベア要求を月額3,000円以上とする方向で調整を始めたとされており、このような民間の動向も注視してまいりたい。
(2) 官民の給与の比較方法について
 官民給与の比較方法については、公務と民間で同種・同等の業務を行っている者同士を比較するという民間準拠方式の下、民間企業従業員の給与をより広く把握し国家公務員の給与に反映させるため、必要な見直しを行ってきている。具体的には、平成18年の勧告において、比較対象企業規模を100人以上から50人以上に改めるなどの見直しを実施したほか、平成25年に調査対象産業を全ての産業に拡大し、平成26年に比較対象従業員に中間職を追加するなどの見直しを行ってきており、比較対象企業規模を含め、現行の取扱いが適当と考えている。
(3) 諸手当について
 諸手当については、民間の状況、公務の実態等を踏まえ、職員団体の意見も聞きながら、総合的に検討してまいりたい。
二、労働時間、休暇、休業に関する事項
(1) 超過勤務の縮減について
 近年は、長時間労働の是正が我が国全体の課題とされており、公務においても、この問題に組織を挙げて取り組む必要があると認識している。
 本年の勧告時報告で述べたとおり、まず各府省のトップが長時間労働の是正に向けた強い取組姿勢を持ち、組織全体の業務量削減・合理化に取り組むことが重要であり、その上で、現場の管理職員による超過勤務予定の事前確認や具体的指示等の取組を徹底することが有効と考えている。これらの考え方については、11月に開催されたワークライフバランス推進協議会の場でも改めて各府省に示したところである。
 また、超過勤務の上限目安時間を定める「超過勤務の縮減に関する指針」では、公務においては、適正な公務運営の確保が不可欠であることから、当該時間を拘束力のある上限とはしていないが、各府省においてこれを超えて超過勤務させないよう努めることを要請してきており、人事院としても、今後とも、関係機関と連携しながら、より実効性のある超過勤務の縮減策について検討を進めてまいりたい。
(2) 休暇、休業について
 職員の休暇、休業については、従来より情勢適応の原則の下、民間における普及状況に合わせることを基本に、適宜見直しを行ってきたところである。ご要求の各休暇についても、引き続き民間の動向等を注視してまいりたい。
(3) 両立支援制度について
 改正両立支援制度の円滑な実施に関して、各府省担当者へ制度説明会を開催するとともにホームページ上にわかりやすく制度の説明を掲載するなど、制度の周知を図り、改正後の制度が円滑に活用されるよう努めてまいりたい。
(4) 勤務時間制度について
 いわゆる勤務間インターバル規制については、職員の健康及び福祉の確保に資するものと思われる一方、各府省の適切な業務運営に支障が生ずることがないような配慮が必要と考えている。従前、職員の疲労蓄積の防止のための早出・遅出勤務について各府省にモデル例を示して活用を依頼する等の取組を行ってきたところであり、引き続き、各府省において、公務の円滑な運営に配慮するとともに、職員の健康及び福祉を十分に考慮した組織運営が行われるよう、一層の配慮を要請してまいりたい。
三、ワーク・ライフ・バランス、女性の労働権確立に関する事項
 人事院としては、公務におけるワーク・ライフ・バランスの推進及び男女共同参画社会の実現に向けた取組を人事行政における重要施策の一つと位置付け、国家公務員法に定める平等取扱の原則、成績主義の原則の枠組みを前提とした女性の参画のための採用・登用の拡大、両立支援など様々な施策を行ってきているところである。
 今後とも、女性を対象とした人材確保活動や女性職員の登用に向けた研修、両立支援等により、次世代育成支援対策推進法や女性活躍推進法等に基づく各府省の取組の支援や、両立支援策の拡充や超過勤務の縮減の推進など、男女ともに働きやすい勤務環境の整備についての所要の検討などを進めてまいりたい。
 女性の採用拡大については、女性を対象とした人材確保活動を強化するとともに、働き方改革の取組やワーク・ライフ・バランスの実践例等を様々な媒体を活用して発信するなど効果的できめ細かな募集活動を行うこととしており、また、女性の登用拡大については、平成26年度から、係長級の女性職員に対し、マネジメント能力開発の機会や自らのキャリアアップについて考える機会を付与する「女性職員キャリアアップ研修」を実施する等、新たな取組を行っているところである。
四、福利厚生施策に関する事項
(1) 心の健康づくり対策について
 心の健康づくり対策については、平成16年に発出した「職員の心の健康づくりのための指針」を基本として対処しているところであり、管理監督者をはじめとする職員に対する意識の啓発、「相談室」の運営や「試し出勤」の活用に取り組んできている。
 さらに、本年度より、各省各庁の長に対して、職員に医師等によるストレスチェックの受検機会を付与すること及び職員からの申出に応じて面接指導を実施することを義務付けることなどを内容とするストレスチェック制度が実施されているところであり、各府省と連携し、同制度の着実な実施に努めてまいりたい。
(2) ハラスメント対策について
 いわゆるパワー・ハラスメント(以下、パワハラ)については、人事院としても、その防止に向けて取組を行っており、平成22年1月に「パワー・ハラスメントを起こさないために注意すべき言動例」を作成し、各府省に対し職員への周知を求めている。また、昨年7月には、職員一人ひとりが防止等について一層の認識を持つとともに、パワハラを受けた場合には、一人で悩まずに相談できるよう、パワハラの概念、なり得る言動、相談例、相談先等を紹介する「パワー・ハラスメント防止ハンドブック」を作成し各府省に提供するなど、一層の周知を図っている。
 さらに、本年12月7日には、パワハラの防止は、特定当事者間の問題にとどまらず、職場全体の意欲を向上させるトップマネジメントの一環であるとの問題意識に基づき、各府省の幹部職員や人事担当部局の職員等に役立つよう、専門家や企業の実務家等によるシンポジウムを開催したところである。
 セクシュアル・ハラスメント(以下、セクハラ)については、従来から、セクハラ防止週間の設定、シンポジウムや講演会の開催、啓発資料の配付、職員に対する意識調査の実施等を通して、セクハラ防止についての職員の意識啓発等に取り組むとともに、各府省に対しては、セクハラ防止担当者会議を毎年開催し、人事当局に対してセクハラ防止対策の実施を要請してきている。
 また、今般、人事院規則10―15(妊娠、出産、育児又は介護に関するハラスメントの防止等)を制定し、職員に対する@妊娠・出産、A妊娠・出産に関する制度利用、B育児・介護に関する制度利用に関する言動により、当該職員の勤務環境が害されることを防止するための措置を定めたところであり、各省各庁の長には、@方針の明確化及びその周知・啓発、A苦情を含む相談窓口の設置、B相談の内容や状況に応じた適切な対応、C再発防止、D業務体制の整備等原因や背景となる要因を解消するための措置を義務づけており、今後、「仕事と育児・介護の両立に関する連絡協議会」などの機会を活用して、各府省に対し、妊娠、出産、育児又は介護に関するハラスメントの防止等に関する所属職員への周知・徹底を求めてまいりたい。
 ハラスメントは、職員の尊厳や人権を侵害する行為であり、その防止を図るため、引き続き取組を進めてまいりたい。
五、雇用と年金の接続に関する事項
 国家公務員の雇用と年金の接続については、平成25年3月の閣議決定において、当面の措置として、再任用希望者を原則フルタイム官職に再任用するものとされているとともに、年金支給開始年齢の段階的な引上げの時期ごとに、その在り方について改めて検討を行うとされているところである。
 人事院としては、雇用と年金を適切に接続させるためには、60歳を超える職員が60歳以前と同様の能力を発揮し、意欲を持って勤務できるような人事制度を確立していく必要があると考えている。そのためには、平成23年の意見の申出を踏まえ、60歳を超える職員の勤務形態に対する多様なニーズも踏まえた定年延長に向けた仕組みを具体化していくことが必要と考えるが、当面、定員問題等を考慮しつつ、公務においても民間企業と同様にフルタイム中心の勤務を実現することを通じて、各府省において再任用職員の能力及び経験の一層の活用が図られるようにすることが必要と考えている。
 このため、高齢層職員の能力及び経験の一層の活用に向けて、関係機関に働きかけを行うなど引き続き必要な取組を行うとともに、当面は、フルタイム中心の再任用勤務が実現できるよう、再任用の運用実態や参考事例の収集・分析、情報提供を行うなどにより、各府省の取組を支援していくこととしている。
 再任用職員の給与については、平成26年の勧告に基づき、平成27年4月から単身赴任手当を支給することとし、また、広域異動手当及び新幹線鉄道等に係る通勤手当についても、再任用職員に係る措置を講じることとしたところである。
 再任用職員の増加や在職期間の長期化等の状況を注視しつつ、各府省における円滑な人事管理を図る観点から、民間企業の再雇用者の給与の動向や各府省における再任用制度の運用状況等を踏まえ、職員団体の意見も聞きながら、引き続き再任用職員の給与の在り方について必要な検討を行ってまいりたい。
六、非常勤職員制度等に関する事項
 非常勤職員の任用、勤務条件等については、その適切な処遇等を確保するため、法律、人事院規則等に規定しており、期間業務職員制度、育児休業など、これまで職員団体の皆さんの意見も聞きながら見直しを行ってきたところである。
 非常勤職員の給与については、平成20年8月に発出した非常勤職員の給与に関する指針に基づき、各府省において適正な給与が支給されるよう、フォローアップを行い、必要な指導を行ってきている。今後とも、指針に基づき各府省において適正な給与の支給が行われるよう取り組んでまいりたい。
 非常勤職員の休暇については、業務の必要に応じてその都度任期や勤務時間が設定されて任用されるという非常勤職員の性格を考慮しつつ、民間の状況との均衡や常勤職員の状況を踏まえて、必要な措置を行ってきているところであり、引き続き民間の動向や、同一労働同一賃金に関する政府の検討会の動向等を注視してまいりたい。
 なお、非常勤職員の仕事と家庭の両立支援制度については、民間の育児・介護休業法の改正内容を踏まえ、介護休暇の分割取得や育児休業及び介護休暇を取得できる職員の要件緩和等について所要の措置を人事院規則等によって講じている。
 人事院は、期間業務職員を含む非常勤職員の任用、勤務条件等について、今後とも、関係方面と協力しながら、適切に対応してまいりたい。

 これに対して、公務員連絡会側は、次の通り質すとともに重ねて要請を行った。
(1) 来年度に向けても、着実に賃上げを実現し、日本経済の自律的成長と国民生活の安定を図っていくことが課題だ。公務員の賃金は勧告制度の下で民間準拠だが、公務員が国民の期待に応えていくため、賃金の引き上げという形で労働条件を具体的に改善する必要がある。とくに地方で人材確保が困難になっているという状況もあり、人事院の積極的な対応を求める。
  官民比較方法については、今年と変わらないと受け止める。
(2) 超過勤務については、客観的な勤務時間管理と事前命令の徹底が重要だ。新年度に向けては、踏み込んだ対応を求める。
  2015年度の超勤実態を見ると、平均233時間程度で、前年度より4時間増えており、国家公務員全体では1年間で勤務時間が80万時間増えた計算になる。本年の勧告時報告等でも、府省のトップの取組み姿勢が強調され、管理職による部下職員の業務管理の重要性が指摘されており、業務運営や勤務時間管理について管理職の果たすべき役割は大きい。使用者が使用者としての管理責任を果たすよう、人事院としての働き掛けを強めていただきたい。
  目安時間について、「公務運営の確保」の観点から、「拘束力ある上限とはしていない」との回答であり、結局、「公務優先」になってしまうのではないか。民間で労働時間の上限規制の強化が課題となっており、この際、720時間を上限として規制すべきだ。
  今回新たに要求した勤務間インターバルについても、業務運営への配慮が言われているが、一般論として、業務と健康を天秤に掛けるのであれば、健康を優先すべきではないか。加藤担当大臣も積極的な発言をしており、人事院としても積極的に対応してもらいたい。
  また、「不妊治療のための休暇」については、この秋に実施した公務労協の組合員アンケートでも、個別に必要性が訴えられており、実現に向けた検討を求めたい。
(3) WLB及び女性の労働権では、ワークをディーセントにすることが基盤となる。
  来年1月からは育児や介護に関わる制度が改善されるが、わかりやすいリーフレットの作成など、周知に努めてもらいたい。また、職場からは管理職の理解不足、あるいは業務量に比べて人が足りない中では取得しづらいという声も寄せられている。必要な時に必要な制度が迷わずに利用できるよう、しっかりと取り組むべきだ。
  また、テレワークについても、政府全体として進められており、円滑に活用されるよう、人事院としてもその役割を果たしていただきたい。さらに、要件を問わない短時間勤務制度も引き続きの課題であることを申し上げておく。
(4) 心の健康づくりは、職員個人の問題ではなくて、仕事の仕方、職場環境、人間関係など複合的な課題だが、基本は無理のない勤務条件が確保されているかどうかだ。今年度から実施されているストレスチェックについて、確実に実施され、期待された効果が上がっているかどうか、各府省の取組みについて検証してもらいたい。
(5) ハラスメントについては、職場の人間関係が良好かどうか、上司と部下の意志疎通が円滑かどうかなどが大きく影響する。つまり管理職が果たす役割が大きいということになるが、全職員に対する啓発活動、地方機関を含めた相談体制の整備を推進するなど、人事院としての役割もしっかりと果たしていただきたい。
(6) 雇用と年金の接続について、人事院は年次報告や勧告時報告で、「再任用定員の過渡的取扱い」等に言及しているが、来年4月に向けた再任用の見通しはどうか。
  「参考事例の収集・分析等」をしているとのことであるので、とくに定員が厳しい府省において、役に立つ手法があれば教えていただきたい。
  いずれにしても、まずは、職員の希望通りの再任用を保障し、おそくとも年金支給開始年齢が63歳になるときまでには、定年延長を確実に実施していただきたい。そのためにも追加的な意見の申出を含めた対応を求める。
(7) 非常勤職員について、民間企業においては、非正規労働者の処遇改善が課題とされ、「同一労働同一賃金」の観点からガイドラインの設定等が検討されており、給与指針の見直しも必要ではないか。均等処遇が基本であり、「同一価値労働同一賃金」の原則に基づいた対応ができるよう改めていただきたい。

 これに対し、鈴木審議官は次の通り答えた。
(1) 官民比較方法について、現行の取扱いが適当であると考えている。
(2) 実効性のある超勤縮減策や超勤目安時間の上限規制、勤務間インターバル等様々な点についてご指摘いただいたところ。人事院としても、引き続き、取り組んでまいりたい。また、管理職員による事前の超過勤務予定の事前確認の徹底や勤務時間管理等についても、どのような工夫ができるのか検討していく必要があると考えている。さらに、不妊治療のための休暇については、本日いただいたご意見について、担当局と共有を図ってまいりたい。
  いずれにしても、職員の健康維持等のために、今後も人事院として必要な検討を行ってまいりたい。
(3) 両立支援制度について、当面は人規等説明会時に使用した資料等をホームページ上に掲載することなどにより、制度の周知を図ることとしている。また、リーフレットの作成については、今後検討していく。
  テレワークについては、この間様々な措置を行ってきているが、引き続き、円滑な活用となるよう、皆さんとも意見交換してまいりたい。
(4) 心の健康づくりについて、人事院としてもストレスチェック制度の実施状況のフォローアップを行うこととしており、各府省における実情や運用上の課題を把握・検証し、様々な検討を行ってまいりたい。
(5) 再任用について、現在、各府省において来年度の希望者調査を行っていると認識している。人事院としては、各府省からの要望があれば、級別定数査定においてできる限りの配慮に努めているところ。
(6) 非常勤職員については、昨年、給与決定指針に関するフォローアップを行い、必要に応じて各府省に対する指導をしており一定の改善が図られたと認識している。今後も、指針に基づく運用の徹底を図ることとしており、指針の改正は引き続きの課題だ。

 最後に、大塚副事務局長が「一人ひとりの公務員労働者が、意欲を持って働くための労働条件や職場環境を作っていくことが重要だ。本日の回答は、多岐にわたってはいるものの、残念ながら、これで確実に改善するという展望は開けていない。来年2月に改めて春季要求書を提出するが、公務員の賃金・労働条件の改善のみならず、人事行政全般の改善に向け、引き続き努力することを強く求める」と重ねて要請し、要求回答交渉を終えた。

<内閣人事局との交渉経過>
 内閣人事局との交渉は15時から行われ、内閣人事局は稲山内閣審議官らが対応した。
 冒頭、大塚副事務局長が、基本要求に対する回答を求めたのに対し、稲山審議官は「先日受け取った基本要求事項について、この時期における私からの回答をさせていただく」と述べ、次の通り答えた。

一、賃金と雇用・労働条件に関わる事項
 国家公務員の給与改定に当たっては、国家公務員の給与を社会一般の情勢に適応させるとの原則の下、人事院勧告制度を尊重することが基本姿勢と考えている。
 平成29年度の給与改定については、人事院勧告も踏まえ、国政全般の観点に立って総合的に検討を行った上で方針を決定してまいりたいと考えている。その際には、皆様とも十分に意見交換を行ってまいりたい。
二、労働時間、休暇及び休業等に関わる事項及び三、ワークライフバランスの推進、女性の労働権確立に関わる事項
 「国家公務員の女性活躍とワークライフバランス推進のための取組指針」や「霞が関の働き方改革を加速するための重点取組方針」等に沿って、働き方改革、育児・介護等と両立して活躍できるための改革、女性の活躍推進のための改革に取り組んでいるところ。
 内閣人事局としても、各府省の取組を毎年度フォローアップするとともに、その中から優良事例となるものを選定し、各府省と共有することで、男女全ての職員のワークライフバランスの実現と女性職員の採用・登用の拡大に向け、取組を推進してまいりたい。
 超過勤務の縮減や休暇等の取得促進については、7月・8月に「ワークライフバランス推進強化月間」と「ゆう活」を実施したところ。フォローアップ調査結果から、「ゆう活」の取組が着実に浸透し、ワークライフバランス推進に一定の成果があったと考えている。「ゆう活」の成果を今後の具体的取組につなげていくことが重要であり、「働き方改革」を更に進めてまいりたい。
 また、フレックスタイム制については、本年4月から原則として全ての職員を対象に拡充されたところであり、職員がより柔軟な働き方ができるよう、制度の円滑な運用に向けて適切に対応していきたい。
 加えて、本年の11月に、育児休業等の対象となる子の範囲の拡大、介護休暇を請求できる期間の分割可能化、介護時間の新設などを内容とする法案が可決・成立したところ。各府省に対し、職員への周知等を促す等、適切に対応してまいりたい。
 職員の皆さんが、その能力を存分に発揮できるよう、皆様のご意見も伺いながら、超過勤務の縮減等に政府一丸となって取り組んでまいりたい。
四、福利厚生施策等に関わる事項
 本年3月に改正した「国家公務員健康増進等基本計画」に基づき、職員の心身の健康の保持増進等に努めて参りたい。
 この中で、心の健康づくり対策については、ストレスチェック制度を適正実施するとともに、管理監督者の職場マネジメント業務の一部であることから、管理職員、課長補佐及び係長等に昇任した際に、e−ラーニング講習の活用により、心の健康づくりやハラスメント防止に関する研修の受講を必修化するなど、管理監督者を対象とした研修を強化することとしたところである。
 また、本府省、地方支分部局等を問わず、必要とする職員が専門家に相談できる体制の整備に努めることとしている。
 生活習慣病対策等の健康増進対策については、管理監督者等が要医療に該当した職員や二次健診の対象となった職員の医療機関や二次健診の受診の有無を確認し、未受診者に対し受診を指導するなどして受診の確保を図ることとしている。
 計画の的確な実施のため、具体的目標を定め、フォローアップを行っていくこととしており、福利厚生施策の効率的かつ効果的な推進に努めて参りたい。
五、人事評価制度に関わる事項
 評語区分のレベル感の整理・徹底及び所見欄の充実など、評語区分の趣旨の徹底を図っているところである。
 また、人材育成等への一層の活用として、職員の能力開発やスキルアップ、さらには組織のパフォーマンスの向上につながるように指導・助言を行うなど面談での対応の仕方等、被評価者への指導に役立つ評価者訓練の充実等を図っているところである。
 今後とも、皆様とも十分意見交換し、御理解をいただきつつ、円滑かつ効果的に制度を運用していきたいと考えている。
六、雇用と年金の接続に関わる事項
 引き続き平成25年3月の閣議決定に沿って、定年退職者の再任用を政府全体で着実に推進していく方針である。
 なお、組織の活力を維持しつつ、再任用職員の能力や経験をより一層本格的に活用していくための方策について、各府省の協力を得ながら引き続き検討してまいりたい。
 また、本年の人事院勧告時の報告において、再任用職員の給与について、民間企業の再雇用者の給与の動向、各府省における再任用制度の運用状況等を踏まえ、引き続き、その在り方について必要な検討を行っていくこととされており、政府としても人事院における所要の検討を踏まえ、適切に対応してまいりたい。
 今後の雇用と年金の接続の在り方については、同閣議決定において、年金支給開始年齢の段階的な引上げの時期ごとに、再任用制度の活用状況や民間の高年齢者雇用確保措置の実施状況等を勘案し改めて検討を行うこととされており、検討に際しては、皆様も含めた関係者の意見も聞きつつ、進めてまいりたい。
七、非常勤職員制度等に関わる事項
 非常勤職員については、その処遇について把握するため、@勤務時間や任期に関する事項、A募集・採用時における職務内容や勤務条件の説明等に関する事項、B給与等に関する事項等の実態調査を行い、本年9月にその調査結果を公表したところ、その実態を把握できたことは、一定の意義があるものと考えている。
 なお、各府省等において、非常勤職員を採用する場合、採用予定者に対して、勤務条件等の内容を適切かつ明確に説明する旨、先日、課長級の申合せを行ったところ。これは、@国家公務員法、人事院規則、通知等の関係法令等、A労働基準法等に基づく民間での労働条件の説明事項・方法、B実態調査結果を踏まえたものである。
 引き続き、民間の同一労働同一賃金の実現に向けた検討を含む「働き方改革」の動向等も注視しつつ、関係機関と連携し、今後の対応について検討してまいりたい。
八、公務員制度改革に関わる事項
 国家公務員制度改革基本法第12条において「政府は、協約締結権を付与する職員の範囲の拡大に伴う便益及び費用を含む全体像を国民に提示し、その理解のもとに、国民に開かれた自律的労使関係制度を措置するものとする」とされている。
 この自律的労使関係制度については、多岐にわたる課題があり、引き続き慎重に検討する必要があると考えている。皆様とは、引き続き意見交換をさせていただきたい。
九、その他の事項
 障害者雇用については、障害の種別をこえた雇用への理解、促進を図るため、本府省の担当者を対象とした連絡会を開催するほか、昨年度に引き続き、内閣人事局で実施している「障害者ワーク・サポート・ステーション」から各府省に障害者を派遣し、実際に業務指示をしてノウハウを取得してもらう等の取組を進めているところ。

 これに対して、公務員連絡会側は次の通り質すとともに重ねて要請を行った。
(1) 給与改定については、人勧尊重が基本との回答だが、基本権制約の下では当然だ。
  来年度に向けても、着実に賃上げを実現し、日本経済の自律的成長と国民生活の安定を図っていくことが課題となる。公務員の賃金は勧告制度の下で民間準拠となっているが、内閣人事局として、公務員の処遇改善の重要性を訴えるべきだ。人材確保を含めて、積極的な姿勢を示してもらいたい。
(2) 労働時間、休暇・休業等とWLB、女性の労働権は一体の課題であり、まずは、ワークをディーセントにすることが基盤であり、3点要請する。
  第1に、来年1月からは育児や介護に関わる制度が改善されるが、職場からは管理職の理解不足、あるいは業務量に比べて人が足りない中では取得しづらいという声が寄せられている。定員問題を含めた環境整備に力を入れていただきたい。
  第2に、超勤縮減に向けて、システムによる客観的な勤務時間管理と事前命令を徹底してもらいたい。
  第3に、定員確保の課題だ。ワークライフバランス推進強化月間のアンケート結果では、「業務量が過大」との回答が過半数で人員不足であることは明らかだ。この際、定員管理の在り方を再検討していただきたい。
  いずれにしても、超勤縮減全般について引き続き議論をさせてもらいたい。
(3) 今回新たに要求した勤務間インターバルについて、加藤担当大臣も積極的な発言をしており、人事局としても「隗より始めよ」の観点で取り組んでもらいたい。
(4) 心の健康づくりの取組みについて、職員個人の問題ではなく、管理職が果たす役割が大きい。研修の義務化という話もあったが、管理職のマネジメントに関する懇談会の議論も含め、自己達成感のある職場作りに努めてもらいたい。また、健康増進計画のフォローアップについて、今年度から実施されているストレスチェックを含めて丁寧な点検を行い、計画を着実に進めてもらいたい。
  レクリエーション費については、「非計上」が続いているが、職員がみんなで楽しむことによって、職場が活性化する。レクリエーションの意義を再認識し、予算の復活を含めた対応を改めて求める。
(5) 雇用と年金の接続については、遅くとも年金支給開始年齢が63歳になるときまでには、定年延長を確実に実施していただきたい。当面の再任用についても、一億総活躍という政府全体の方針のもと、まずは政府自身が使用者責任を果たすべきだ。定員管理を弾力化して、希望通りの再任用を保障することで、職員の経験や能力、意欲を十分に活かしてもらいたい。
(6) 非常勤職員の課題について、民間企業においては、非正規労働者の処遇改善が課題とされており、公務においても、均等処遇を基本した対応を求めておく。
(7) 公務員制度改革については、自律的労使関係制度を措置することが政府の責務であり、引き続きわれわれとの真摯な議論を求めておく。
(8) 「障害者ワーク・サポート・ステーション」の取組みをすすめているとのことであるが、今後は各府省が直接障害者を雇用していくべきだ。

 これに対し、稲山審議官は次の通り答えた。
(1) 給与については、民間の賃金水準を反映する人勧尊重の立場で引き続き対応してまいりたい。
(2) 超過勤務縮減策については、2014年10月に公表した「国家公務員の女性活躍推進とワークライフバランス推進のための取組方針」に基づき、超過勤務の必要性の事前確認、各府省等にまたがる調整業務による超勤縮減などの取組みがすすめられている。また、「霞が関の働き方改革を加速するための重点取組方針」を受けて「国家公務員の労働時間短縮対策について」についても改正を行ったところ。引き続き勤務時間管理の徹底に取組んでまいりたい。
(3) 勤務間インターバルについては、内閣人事局としては「ゆう活」等の取組みを行っており、「国家公務員の女性活躍推進とワークライフバランス推進のための取組方針」に、「早出遅出勤務の更なる活用促進」を盛り込んでいる。また、人事院からも疲労蓄積防止のための早出遅出のモデル例が示されていると認識している。
(4) 雇用と年金の接続については、本年の人事院勧告時報告においても指摘があり、重要な課題だと認識している。再任用職員の能力と経験をより一層本格的に活用するための方策については、引き続き検討してまいりたい。
(5) 非常勤職員の処遇改善ついては、「働き方改革実現会議」における、「同一労働同一賃金」のガイドライン案なども踏まえ、引き続き検討してまいりたい。

 最後に、大塚副事務局長が「一人ひとりの公務員労働者が、意欲を持って働くための労働条件や職場環境を作っていくことが重要だ。本日の回答は、多岐にわたってはいるものの、残念ながら、これで確実に改善するという展望は開けていない。来年2月に改めて春季要求書を提出するが、公務員の賃金・労働条件の改善のみならず、人事行政全般の改善に向け、引き続き努力することを強く求める」と重ねて要請し、要求回答交渉を終えた。

以上