公務労協地方公務員部会は3月22日、書記長クラス交渉委員が、佐々木公務員部長ほかと2018春季段階の最終交渉を行った。冒頭、福島企画調整委員代表が「2月21日、野田総務大臣に要求書を提出し、これまで交渉・協議を積み重ねてきたが、本日はこうした交渉経過を踏まえながら、公務員部長から春の段階の最終回答をいただきたい」と、求めたのに対し、佐々木公務員部長は次のように答えた。
1.2018年度の賃金改善について
平成30年度の地方財政計画における給与関係経費については、その所要額を適切に計上している。地方公務員の給与については、地方公務員法の趣旨を踏まえ、各団体の議会において条例で定められるべきものである。
総務省としては、国民・住民の理解と納得が得られる適正な内容とすべきものとの考え方に立ち、必要な助言を行ってまいりたい。
2.労働時間、休暇及び休業等について
(1)上限規制・超過勤務縮減
時間外勤務の適正な管理のためには、各地方公共団体において、職員の勤務時間を的確に把握することが重要である。
総務省からは昨年2月8日に、各地方公共団体に対して、厚生労働省の発出した「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」を周知するとともに、これに基づき適切に対応するよう要請した。
また、長時間労働は、健康の確保だけでなく、仕事と家庭生活の両立を困難にし、少子化の原因や、女性のキャリア形成を阻む原因、男性の家庭参加を阻む原因になっていることから、総務省としても、是正に向けた取組は重要と考えており、各団体の時間外勤務縮減の取組を支援してまいりたい。
(2)メンタルヘルス・ストレスチェック
職員の健康管理体制や職場の安全衛生管理体制の確立については、任命権者が労働安全衛生法の趣旨にのっとり主体的に実施するものであり、各地方公共団体において着実に実施されてきているものと認識している。
総務省においては、従来から地方公共団体における労働安全衛生法の遵守やメンタルヘルス対策に資するため、地方公共団体に対して情報提供や助言を行ってきている。
特に、メンタルヘルスに対し注目が高まる中、これまでも事業場の規模に関わらず、全ての職員にストレスチェックを実施するなど、対策の推進をお願いする旨の通知を発出しているところである。
また、ストレスチェックの実施に要する経費については、各地方公共団体の標準的な財政需要として、普通交付税による措置を講じている。
3.臨時・非常勤等職員の雇用確保と待遇の改善について
昨年5月の改正法により、従来、制度が不明確であり、地方公共団体によって取扱いにばらつきのあった臨時・非常勤職員について、統一的な「会計年度任用職員」制度が整備されることは、適正な任用や勤務条件の確保に向けて継続的な改善を図っていく上での重要な制度的基盤になるものと認識している。
また、昨年8月には、臨時・非常勤職員の適正な任用や勤務条件を確保するという改正法の趣旨を踏まえ、運用上の留意事項等を示した「事務処理マニュアル」を地方公共団体に提供するとともに、都道府県ごとの説明会の場などを通じて、その周知を図っているところ。
総務省としては、「会計年度任用職員」制度の定着状況や民間の動向、国家公務員に係る制度・運用の状況などを踏まえ、また、厳しい地方財政の状況にも留意しつつ、今後とも会計年度任用職員に係る適正な任用や勤務条件の確保に向け、適宜、必要な検討を行ってまいりたい。
4.公共サービス基本法に基づく適正な労働条件確保等について
地方公共団体の職員が、個々人のライフステージに応じ、実力を存分に発揮できる環境・仕組みを作ることは、質の高い行政サービスの提供を図る上で必要なものと考えている。
そのため、総務省としては、超過勤務の縮減と年次有給休暇の取得、女性職員の活躍や職員のワークライフバランスに向けた取組など、地方公務員の働き方改革を推進するため、各種会議等の場で助言するとともに、優良事例等の情報提供を行う、臨時・非常勤職員の適正な任用・勤務条件の確保に向けた会計年度任用職員制度の導入などを通じ、地方公共団体に対する支援に取り組んでいる。
また、これまでも、地方公共団体に対し、公共サービスの実施に関する業務の委託に当たり、受託事業者等において労働条件への適切な配慮がなされるよう留意すること等について助言を行っており、今後とも、公共サービス基本法の趣旨を踏まえ、必要に応じて、助言等を行ってまいりたい。
5.新たな高齢雇用施策の充実について
地方公務員の定年は、国家公務員の定年を基本として決定すべきものであると考える。また、去る2月16日に取りまとめられた論点整理においては、地方公務員の定年引上げについて、組織の規模、職員の年齢構成、財政状況などは地方公共団体ごとに様々であることから、各地方公共団体の実情も踏まえつつ、国家公務員との均衡等を勘案し、今後検討する必要があるとされている。
総務省としては、今後、人事院における検討や国家公務員の制度設計を踏まえ、地方公共団体の意見も伺いながら適切に検討を進めてまいりたい。
再任用制度について、平成28年度における再任用の実施状況をみると、都道府県、政令指定都市及び市区町村における条例制定率は99.7%となっている。
また、再任用応募者数に対する採用者数の割合は98.3%となっており、再任用希望者はほぼ全員採用されていることから、概ね全ての地方公共団体で、雇用と年金の接続に向けた着実な取組がなされているものと考えている。また、本年度は、専門家による講演の実施等を通じ、各団体における再任用制度の適切な活用の取組を推進してきたところであり、引き続き、地方公共団体に対する助言等を行うとともに、再任用に関する条例が制定されていない残り6団体に対しても、条例の制定について働きかけてまいりたい。
再任用職員の給与については、国の再任用職員の給与の取扱いに準じた措置を講じるよう助言しているところであるが、最終的には、地方公務員法の職務給の原則や均衡の原則等を踏まえ、各団体の条例において適切に定められるべきものと考えている。 定年延長後の地方公務員給与については、国の動向も踏まえつつ、今後検討していく。
回答を受け、福島企画調整委員代表は次のように述べた。
1.賃金改善について
これまでも申し上げてきたが、地方公務員の給与は、労使の協議を経て当該地方自治体の条例で定めるものであることを改めて強調しておく。
2.労働時間、休暇及び休業等について
政府では、働き方改革の議論がされているが、民間だけでなく公務職場においても超過勤務縮減、多忙化解消等は喫緊の課題である。特に長時間労働の是正に関わり、職員の勤務時間管理や超過勤務縮減目標の設定等が十分でないことからも、地方自治体における具体的な施策あるいは適切な対応が必要だ。
また、ストレスチェックの実施率は全体として高い数値が並んでいるが、メンタルヘルス不調を未然に防止する観点から、50人未満の事業場も含め、全ての職員に実施するよう対応されたい。
3.臨時・非常勤職員の雇用確保と待遇の改善について
臨時・非常勤職員の制度改正に関わり、地方自治体への説明のため、全国各地へ出向いていただいたことに敬意を表する。
今後、地方自治体が地方の実情に即した制度改正を検討することになるが、制度の円滑な導入に向けさらなる周知徹底をお願いするとともに、実態調査・ヒアリング等を通して、臨時・非常勤職員の待遇改善につながるよう、支援されたい。また、厳しい財政状況ではあるが、必要な財源の確保にご尽力いただきたい。
私たち労働組合としても、臨時・非常勤職員の待遇改善、雇用安定に向け、積極的に自治体当局との交渉・協議を強化していく。
4.公共サービス基本法に基づく適正な労働条件確保等について
公共サービス基本法第11条は、「公共サービスの実施に従事する者の適正な労働条件の確保、その他の労働環境の整備に関し必要な施策を講ずるよう努める」ことを求めている。つまり、公共サービスの質は、労働条件や労働環境に大きく左右されるということである。
各自治体職場においては、災害への対応をはじめ、それぞれの持ち場で日夜自らの職務に全力を尽くしているが、その労働環境は大変厳しいものとなっている。必要なときに必要な質の高い公務・公共サービスを確実に提供していくためには、公共サービス基本法第11条に基づく職員の適正な労働条件確保や労働環境の整備が不可欠であることに留意されたい。
5.新たな高齢雇用施策の充実について
定年の引上げに関わっては、国に遅れないよう制度設計を進めるとともに、地域の実情等も把握した上での対応が不可欠だ。今後も、地方公務員部会との協議や情報交換を適宜お願いしたい。
再任用制度の条例制定率は99%以上となっているが、未だに制定されていない自治体に対しては働きかけを強化いただくとともに、希望通りの再任用となるよう引き続き周知徹底に努めていただきたい。あわせて、再任用職員の生活を支える給与及び適切な労働条件となるよう、自治体に対する支援をお願いしたい。
地方公務員部会は、本日の交渉を春の段階の一定の到達点として受け止め、公務労協、公務員連絡会に結集し、人勧期に向けた取組を検討していくとともに、引き続き、総務省との交渉・協議・意見交換等をすすめていく。
以上