公務員連絡会は3月23日、委員長クラス交渉委員が一宮人事院総裁、梶山国家公務員制度担当大臣と2018春季段階の最終交渉を行った。この交渉で人事院総裁、国家公務員制度担当大臣はそれぞれ、春の段階における最終的な回答を示した。(資料1、2)
これに対して、公務員連絡会は代表者会議で、「これらの回答は、課題認識を共有するとともに公務員連絡会の意見を聞く姿勢を確認したものの、われわれの要求に具体的で明確には応えていない。しかし、人事院勧告による賃金・労働条件決定制度のもと、財政再建を含め公務をめぐる極めて厳しい情勢の中で、春の段階における交渉の到達点と受け止め、人事院勧告期、賃金確定期に向け闘争態勢を堅持・強化していく。」との声明(資料3)を確認。26日の第3次全国統一行動では、人勧期の取組の決意を固める時間外職場集会等の行動を実施することを決定した。
この日行われた人事院総裁、国家公務員制度担当大臣との交渉経過は次の通り。
<人事院総裁交渉の経過>
一宮総裁との交渉は、13時30分から行われた。
冒頭、石原議長が、2018春季段階の最終回答を求めたのに対して、総裁は本年の民間春闘の動向について述べた上で、現段階の考え方等を資料1の通り回答した。
この回答に対し、石原議長は次の通り見解を述べた。
(1) 連合の春季生活闘争では、先行・大手組合が5年連続の賃上げを獲得し、その水準は昨年を上回っており、引き続き、「底上げ・底支え」「格差是正」を実現するため、中小組合や地域の取組に全力を尽くしている。また、本年は、36協定の見直し、勤務間インターバル制度の導入や非正規職員の待遇改善も進められている。夏の勧告では、非常勤職員を含めた賃上げの実現、働き方改革の推進に向け、積極的な対応を求める。
(2) 民間を待つまでもなく、公務において「働き方改革」を着実に実施し、すべての職員が良好な労働条件の下で、働き甲斐を持って勤務できるようにすることが喫緊の課題だ。そのため、適切な勤務時間管理と上限規制による長時間労働の是正、同一労働同一賃金などを具体化するとともに、両立支援策をはじめとした諸制度の改善と円滑な活用を図っていく必要がある。
(3) 東日本大震災から7年、熊本地震から2年となるが、その後の災害を含め、復興・再生を被災地と当該自治体の責に帰することなく、改めて国はもとより国民全体で共有する必要がある。公務公共サービスの果たすべき役割は大きく、公務員労働者が健康を害することなく職務に臨めるよう、良好な労働条件を確保していただきたい。
(4) 多くの再任用者が短時間勤務を余儀なくされ、生活水準の確保も不十分であり、再任用制度の制度的限界は明らかだ。定年の早期引上げに向けて、人事院が改めて意見を表明することを強く求める。
最後に石原議長は、「きょうの回答で、諸課題について、お互いに認識の共有ができたと考えるので、今後も、公務員連絡会の意見を聞きながら検討を進めていただきたい。本日の回答は、人事院の春の段階の最終回答として受け止め、組織に持ち帰って協議したい」と述べ、この日の交渉を終えた。
<国家公務員制度担当大臣交渉の経過>
梶山国家公務員制度担当大臣との交渉は、17時30分から行われた。
冒頭、石原議長が、2018春季段階の最終回答を求めたのに対して、梶山国家公務員制度担当大臣は、資料2の通り回答した。
この回答に対し、石原議長は次の通り見解を述べた。
(1) 連合の春季生活闘争では、先行・大手組合が5年連続の賃上げを獲得し、引き続き、「底上げ・底支え」「格差是正」を実現するため、中小組合や地域の取組に全力を尽くしている。また、本年は、36協定の見直し、勤務間インターバル制度の導入や非正規職員の待遇改善も進められている。梶山大臣におかれては、賃上げ等による処遇改善が良質な公務公共サービスにつながるとの認識のもと、積極的な役割を果たしていただきたい。
(2) 民間を待つまでもなく、公務において「働き方改革」を着実に実施し、すべての職員が良好な労働条件の下で、働き甲斐を持って勤務できるようにすることが喫緊の課題だ。そのため、適切な勤務時間管理と上限規制による長時間労働の是正、同一労働同一賃金などを確実に進めなければならない。
(3) 東日本大震災から7年、熊本地震から2年となるが、その後の災害も含め、復興・再生を被災地と当該自治体の責に帰することなく、改めて国はもとより国民全体で共有する必要がある。公務公共サービスの果たすべき役割は大きく、公務員労働者が健康を害することなく職務に臨めるよう、必要な定員や予算の確保を含めて、良好な労働条件を確保していただきたい。
(4) 多くの再任用者が短時間勤務を余儀なくされ、生活水準の確保も不十分であり、再任用制度の制度的限界は明らかだ。検討会の論点整理に基づく定年引上げが速やかに実現するよう、一層の努力を求める。
(5) 自律的労使関係制度の検討は政府の法的責務であり、その進展に向け、われわれと向き合い、真摯に対応することを強く要求する。
そのうえで石原議長は、「きょうの回答では、大臣からは、引き続き、労使関係に基づいて、公務員連絡会の意見を聞きながら、誠意をもって話し合っていくとの決意が示されたことを確認する。本日の回答は、国家公務員制度担当大臣の春の段階の最終回答として受け止め、組織に持ち帰って協議したい」と公務員連絡会としての意見を表明し、この日の交渉を終えた。
資料1−人事院の2018春季要求に対する回答
人事院総裁回答
2018年3月23日
1.賃金の改善について
○ 人事院としては、労働基本権制約の代償措置としての勧告制度の意義及び役割を踏まえ、情勢適応の原則に基づき、必要な勧告を行うことを基本に臨むこととしています。
○ 俸給及び一時金については、国家公務員の給与と民間企業の給与の実態を精緻に調査した上で、その精確な比較を行い、適切に対処したいと考えています。
○ 諸手当については、民間の状況、官民較差の状況等を踏まえ、必要となる検討を行っていきたいと考えています。
2.労働時間の短縮、休暇等について
○ 人事院としては、職員の健康保持や仕事と家庭生活の両立に加え、魅力ある公務職場の実現のため、長時間労働の是正の重要性はかつてなく高まっていると認識しています。
昨年の勧告時報告で述べたとおり、長時間労働の是正のため、職場におけるマネジメントの強化を図るとともに、組織全体として業務の削減・合理化に取り組むこと等が必要であり、また、職員の健康管理の観点からは、適切な方法により職員の勤務実態を把握することが重要であると考えています。
長時間労働の是正のための制度等については、今後、各府省の取組や、国会における民間労働法制の議論等を踏まえ、各府省や職員団体の皆さんの意見を聴きながら、実効性ある措置を検討することとしています。
人事院としては、引き続き関係機関とも連携しつつ、長時間労働の是正に向けた取組を強力に推進していきたいと考えています。
○ 両立支援制度を含む職員の休暇、休業等については、これまで民間の普及状況等を見ながら改善を行ってきたところであり、引き続き、職員団体の皆さんの意見も聴きながら必要な検討を行っていきたいと考えています。
3.非常勤職員の処遇改善について
非常勤職員の給与については、昨年7月に改正した指針の内容に沿った適切な処遇が図られるよう取り組んでいきたいと考えています。
非常勤職員の休暇については、「同一労働同一賃金」についての国会における議論等を踏まえて、慶弔に係る休暇等について、必要な検討を進めていきたいと考えています。
4.高齢期雇用施策について
○ 定年の引上げについて、人事院としては、質の高い行政サービスを維持していくためには、高齢層職員を戦力として、その能力及び経験を本格的に活用することが不可欠と考えています。そのためには、公務員の高齢期雇用について、65歳までの定年の引上げによって対応することが適当であると考えており、昨年の勧告時報告でもその旨を述べ、論点整理を進めてきたところです。
今般の政府からの検討要請も踏まえつつ、今後、定年の引上げに係る人事管理諸制度の具体的な設計を行うに当たり、平成23年以降の諸状況の変化に加え、民間の諸情勢を参考とするとともに、各府省や職員団体の皆さんの意見、行政現場の実態も聴きながら、鋭意検討していきたいと考えています。
○ 再任用職員制度については、民間企業の再雇用者の給与の動向や各府省における再任用制度の運用状況等を踏まえつつ、定年の引上げに向けた具体的な検討との整合性にも留意し、引き続き再任用職員の給与の在り方について必要な検討を行っていきたいと考えています。
5.女性の活躍推進について
人事院としては、女性の活躍推進を人事行政における重要な課題の一つと認識しており、女性の採用・登用の拡大や両立支援策の拡充など様々な施策を行ってきているところです。
引き続き、女性を対象とした人材確保活動や女性職員の登用に向けた研修、両立支援施策等により、各府省の取組が進むよう支援していきたいと考えています。
6.健康・安全確保等について
心の健康づくりをはじめとした健康管理対策やハラスメント対策の推進については、公務全体の共通の課題として、各職場においてきめ細かい対応が重要であるとの認識に基づき、これまでも各府省と協力して積極的に取り組んできたところです。
人事院としては、引き続き、各府省と連携して健康安全対策の取組を進めていきたいと考えています。
資料2−政府の2018春季要求に対する回答
国家公務員制度担当大臣回答
2018年3月23日
○ 平成30年度の給与については、本年の人事院勧告も踏まえ、国政全般の観点から検討を行い、方針を決定してまいりたい。その際には、皆様とも十分に意見交換を行ってまいりたい。
○ 非常勤職員の処遇改善については、民間における同一労働同一賃金の実現に向けた取組等も踏まえながら、皆様のご意見も伺いつつ、昨年の各府省申合せに沿った処遇改善が着実に進むよう、関係機関とも連携して、必要な取組を進めてまいりたい。
○ 女性活躍とワークライフバランスの推進については、長時間労働を是正するためにも「働き方改革」を一層着実に進めていくことが重要であり、政府一丸となって取り組んでまいりたい。あわせて、両立支援制度が一層活用されるよう、引き続き、皆様のご意見も伺いつつ、実効ある施策を推進してまいりたい。
○ 国家公務員の定年の引上げについては、その論点を整理し、人事院に検討を要請したところであり、人事院における検討を踏まえた上で、皆様の意見も伺いつつ、具体的な制度設計を行い、結論を得てまいりたい。
また、定年退職者の再任用については、引き続き、平成25年の閣議決定に沿って政府全体で着実に推進してまいりたい。
○ 自律的労使関係制度については、多岐にわたる課題があることから、皆様と意見交換しつつ、慎重に検討してまいりたい。
○ 最後になるが、今後とも公務能率の向上と適正な勤務条件の確保に努めるとともに、安定した労使関係を維持する観点から、職員団体とは誠意を持った話合いによる一層の意思疎通に努めてまいりたい。
資料3−2018春季生活闘争に関わる公務員連絡会の声明
声 明
(1) 本日、公務員連絡会は、国家公務員制度担当大臣、人事院総裁と交渉を持ち、2018年春季要求に対する回答を引き出した。
(2) 連合の2018春季生活闘争は、先行・大手組合が5年連続の賃金引上げを獲得し、それを中小組合、地場に確実に広げていくため、引き続き、全力を尽くしての闘いが進められている。また、本年は、36協定の見直し、勤務間インターバル制度の導入や非正規職員の待遇改善等働き方改革も着実に進められている。
公務員連絡会は、連合に結集し、「底上げ・底支え」と「格差是正」を図るため、非常勤職員を含む公務・公共部門で働くすべての労働者の待遇改善をめざし、公務員労働者の賃金引上げ、公務における働き方改革の推進、超過勤務の縮減とワーク・ライフ・バランスの確保、雇用と年金の接続と定年引上げの実現などを最重要課題として位置づけ、具体的な取組を進めてきた。
(3) 委員長クラス交渉委員による最終交渉で、国家公務員制度担当大臣の回答は、@2018年度賃金については、公務員連絡会の意見を聞く、A非常勤職員の処遇改善については、公務員連絡会の意見を聞きながら必要な取組を進めていく、B長時間労働を是正するためにも「働き方改革」を一層着実に進める、C定年の引上げについて、人事院に検討を要請したところであり、公務員連絡会の意見も聞きながら結論を得ていく、D公務員連絡会とは誠意を持った話合いによる一層の意思疎通に努めていく、などとなっている。また、人事院総裁の回答は、@賃金については、情勢適応の原則に基づき、必要な勧告を行う、A長時間労働の是正、健康管理の観点から適切な方法で勤務実態を把握する、B非常勤職員の給与について、改正した指針に沿った処遇が図られるよう取り組む、C定年の引上げについて、政府からの検討要請も踏まえつつ、制度の具体的設計に当たり、公務員連絡会の意見も聞きながら鋭意検討していく、などとなっている。
これらの回答は、課題認識を共有するとともに公務員連絡会の意見を聞く姿勢を確認したものの、われわれの要求に具体的で明確には応えていない。
しかし、人事院勧告による賃金・労働条件決定制度のもと、財政再建を含め公務をめぐる極めて厳しい情勢の中で、春の段階における交渉の到達点と受け止め、人事院勧告期、賃金確定期に向け闘争態勢を堅持・強化していく。
(4) 東日本大震災から7年、熊本地震から2年となるが、その後の災害を含め復興・再生は被災地と当該自治体の責に帰することなく、改めて国はもとより国民全体で共有する必要がある。そのためにも国民のセーフティネットである公務公共サービスに課せられた役割は大きい。われわれはその責務をしっかりと果たしていく。
連合・公務労協に結集し、中小及び地域民間構成組織、独立行政法人等関係組合と連帯し、すべての労働者の賃金引上げ、雇用の安定確保を実現するため、全力をあげる。
2018年3月23日
公務員労働組合連絡会
以上