2018年度公務労協情報 28 2018年8月1日
公務公共サービス労働組合協議会
公務員労働組合連絡会

月例給・一時金両方の引上げの見通しに言及−8/1
−人勧期要求をめぐり人事院給与局長と2度目の交渉−

 公務員連絡会書記長クラス交渉委員は、1日15時から、2018年人勧期要求に関わり森永人事院給与局長と2度目の交渉を行った。

冒頭、吉澤事務局長が「7月26日の交渉の議論を踏まえた現段階の検討状況を回答されたい」と求めたのに対し、森永給与局長は以下の通り答えた。

1 勧告について
 勧告日は、来週半ばで調整中である。具体的な日程は、総裁会見の際にお伝えすることができると思われる。
2 官民較差等について
(1) 官民較差と月例給について
 官民較差については、現在、最終的な詰めを行っているところであるが、今年の民間企業の春季賃金改定状況を反映して、若干のプラスとなる見通しである。
(2) 特別給について
 特別給についても、現在、最終的な集計を行っているところであるが、支給月数が若干の引上げとなる見通しである。
 なお、支給月数の引上げがある場合には、勤勉手当に配分することを考えている。
 また、平成31年度以降については、期末手当・勤勉手当ともに、6月期と12月期の支給月数が均等になるよう配分することを考えている。
3 本年の改定の考え方について
 仮に、官民較差を埋めるため引上げ改定が必要となった場合には、基本的な給与である俸給の引上げを行うことを考えている。
4 諸手当について
(1) 初任給調整手当について
 国の医療施設に勤務する医師に対する初任給調整手当について、医療職俸給表(一)の改定状況を勘案し、医師の処遇を確保する観点から、所要の改定を行うことを考えている。
(2) 宿日直手当について
 所要の改善を行うことを考えている。
5 定年の引上げについて 
 定年の引上げに関する意見の申出に向けて、最終的な詰めを行っているところである。
 定年の引上げに関する主な措置の内容について、次のとおり考えている。
1 定年制度の見直し
(1) 定年を段階的に65歳に引き上げる。
(2) 定年の段階的な引上げ期間中、暫定的な措置として、現行の再任用制度を存置する。
2 役職定年制の導入
(1) 新陳代謝を確保し組織活力を維持するため、当分の間、役職定年制を導入する。
(2) 役職定年の対象は、本府省、地方支分部局等の管理又は監督の地位にある職員(指定職俸給表適用官職及び俸給の特別調整額適用官職)とし、役職定年年齢は、原則として60歳とする。
(3) 例外的に、引き続き同じ役職定年対象官職に任用することや、他の役職定年対象官職に任用することができる制度(特例任用)を設ける。
3 定年前の再任用短時間勤務制の導入
 60歳以降の職員の多様な働き方を可能とするため、定年前の再任用短時間勤務制を導入する。
4 60歳を超える職員の給与
 民間企業の60歳を超える従業員の給与の状況等を踏まえ、60歳を超える職員の年間給与は、60歳前の7割の水準に設定することが適当であると考えている。
(1) 俸給
 職員が受ける号俸の俸給月額の70%の額とする。また、役職定年により任用換された職員の俸給は、任用換前の俸給月額の70%とするが、その額は任用換後の職務の級における最高号俸の俸給月額を超えてはならないものとする。
 なお、勤務成績が特に良好である場合を除き、昇給しないこととする。
(2) 諸手当
 俸給月額の水準と関係ある諸手当等は、60歳前の7割を基本に手当額等を設定する。
 扶養手当等の手当額は60歳前の職員と同額とする。
(3) その他
 暫定再任用職員の給与は、現行の再任用職員と同様の取扱いとする。
 定年前再任用短時間勤務職員の給与は、現行の再任用短時間勤務職員と同様の取扱いとする。
 特例任用の職員の俸給は、「引き続き同じ役職定年対象官職に任用」する場合は、原則、俸給を引き下げず、「他の役職定年対象官職に任用」する場合は、原則、7割水準に引き下げる。
5 定年の引上げに関連する取組
(1) 職員の在職期間を通じて能力・実績に基づく人事管理を徹底するなど、人事管理全体を見直す必要があり、人事評価に基づく昇進管理の厳格化など所要の取組について必要な検討を行う。
(2) 勤務実績が良くない職員等に、降任や免職等の分限処分が適時厳正に行われるよう、人事評価の適正な運用の徹底を図る必要があり、分限について必要な見直しを行うほか、各府省に対し、分限処分の手続整備等の内容の周知徹底等の必要な支援を行う。
(3) 定年引上げを円滑に行うため、
 @ スタッフ職が必要な役割を適切に果たし得る執行体制の構築や、複線型のキャリアパスの確立に努めた上で、60歳を超える職員が能力及び経験をいかせる職務の更なる整備を検討すること。
 A 定年引上げ期間中も、真に必要な規模の新規採用を計画的に継続していくための措置を講じること。
 B 職員の自主的な選択としての早期退職を支援するため、退職手当上の措置や、高齢層職員の能力及び経験を公務外で活用する観点から必要な方策を検討すること。
 等について、人事院も含め関係制度官庁が協力しながら、公務全体で取り組むことが必要である。

 回答に対し、吉澤事務局長は、次の通り局長の見解を質した。
(1) 配分については別途議論させてもらうこととするが、本俸重視を基本として、第1に、総合的見直しの現給保障が終了したことをふまえて、高齢層を含めた全世代に配慮した配分を求める。第2に、非常勤職員に配慮し、初任給や若年層職員重視を求める。
(2) 一時金について、去年とは逆の構図となり、製造業が好調で非製造業やサービス産業は月例での引上げが多く心配していたが、去年と今年の民間動向をどう捉えているか。また、比較方法について改めて議論する必要があることも含めて対応を求める。
(3) 一時金の引上げを勤勉手当に充てることについて、政府をあげて少子化対策や働き方改革をしている最中にあって、育児休業の職員や非常勤職員の処遇にとって問題となる。非常勤給与決定指針についても、人事院の責任をもった対応を強く求める。
(4) 定年引上げについては意見の申出で対応すると前回交渉で回答があったが、2011年の意見の申出との関係をどう整理しているか。
(5) 60歳超の給与水準について、われわれの要求である8割水準に満たないことは不満であるが、最低限の要求として、@60歳前の給与カーブの見直しは行わない、A現行再任用職員の給与水準から実質的に引き上がる、B当該世代の生計費を満たす、ものであることを確認したい。一方、60歳以下も含めて、基本は同種同等ラス比較をするべきということが原理原則だと考えるが人事院の認識如何。
(6) 定年前の7割水準に設定したことについて、政治的、社会的理解を得るため、人事院の責任としてしっかりと説明を行っていくべきだ。
(7) 役職定年を出先機関の管理職に適用するということについては反対だが、少なくとも引き上げられる定年のところまで、任用が確保されるよう人事院の対応を求める。
(8) 定年も分限の一つであるが、降任・免職とは別であると理解してよいか。

 これに対し、森永給与局長は次の通り回答した。
(1) 官民較差が十分にないため、配分の裁量の余地も少ない。昨今の新卒労働需給の逼迫もあり、民間は初任給が大幅に引上げられている。公務においても初任給改善の必要性を認識しているが、課題として積み残してきている。長期的な人材確保の観点も含めて、調和をとった配分としたい。
(2) 一時金については、各種調査結果ほど期待したものにはなっていないと考えている。
(3) 一時金の支給方法については、民間の考課査定分と勤勉手当の比率を合わせており、公務の勤勉手当が民間の効果査定分の割合に達していないことを踏まえた。引き続き民間動向を把握し対応したい。また、非常勤職員給与決定指針に基づく対応については、指針で示した水準に届くよう今後も各府省に対し個別に指導を行っていく。
(4) 2011年の意見の申出は、年金支給開始年齢が引き上げられたことで実施できず、新たな意見の申出により、前の意見の申出は全面的に上書きされ、実質的な意味を失うと考えている。
(5) 定年前の給与カーブについてはおおむね均衡しており、これを見直すと、民間の給与カーブとの乖離が生じるため、直ちに見直すことは適切でないと考えている。今後の官民比較については今の時点でまだ決まっていないが、情勢適応原則、官民準拠の原則に変わりはない。
(6) 今回の意見の申出にも、7割の根拠を明確に示すこととする。世間、マスコミ等に対しても、説明していく。
(7) 役職定年後任用換された職員の身分保障については、役職定年前と変わることはない。
(8) 定年と降任・免職は各々分限処分の一類型ではあるが、異なるものである。

 最後に吉澤事務局長が、配分については別途議論するよう求め「今回の西日本豪雨などの大災害をはじめ、極めて厳しい現場で奮闘する人たちの期待に応えるものとなるよう、最終回答のギリギリまで寄り添った対応を求める」と強く要請し、この日の交渉を締めくくった。

以上