2018年度公務労協情報 5 2017年11月28日
公務公共サービス労働組合協議会
公務員労働組合連絡会

人事院・内閣人事局へ2018年度基本要求を提出−11/28

 公務員連絡会は11月28日、人事院、内閣人事局に対して「2018年度賃金・労働条件に関わる基本要求事項の申入れ(資料1、2参照)」を提出した。公務員連絡会からは幹事クラス交渉委員が交渉に臨み、それぞれ誠意ある回答を示すよう求めた。
 それぞれの交渉経過は次の通り。

<人事院との交渉経過>
 人事院への提出交渉は、13時30分から行われ、人事院からは池本職員団体審議官、前薗職員団体審議官付参事官が対応した。
 要求提出にあたり、大塚副事務局長が「給与法等改正法案が成立することを前提に、本日要求書を提出することにした。十分に検討いただき、12月には誠意ある回答をお願いしたい」と述べたうえで、基本要求を次の通り説明した。

(1) 一の給与関係は大きく3つの課題がある。第1は、来年度も、日本経済全体に波及力のある賃上げ実現が官民共通の課題だ。人事院としても、来年度にむけて公務員給与の引上げのため、作業を進めていただきたい。
  第2に、官民比較方法については、当面、これを堅持して、ラスパイレス比較を原則とした正確な民調作業を行っていただきたい。
  第3に、諸手当については、とくに住居手当が課題になる。考え方や支給額の算定方法など、総合的な見直しを重ねて求めておく。さらには、同一労働同一賃金ガイドラインに鑑みて、非常勤職員や再任用職員への適用について率先して見直すべきだ。
(2) 二の労働時間、休暇・休業等について、最重要課題は超過勤務の縮減、長時間労働の是正であり、まずは、客観的かつ厳格に把握できる勤務時間管理の仕組みを直ちに導入することだ。公務員には労働協約締結権がなく、自らの意思で労働時間を規制できない。代償機関たる人事院の使命として、上限規制の法制化に踏み込むべきだ。
  公務における両立支援制度の問題は、必要な時に必要な制度を活用できるかどうかだ。管理職の職場における業務運営や個々の職員の状況把握を前提として、一層の円滑な活用に向けて制度のわかりやすい周知等に努めてもらいたい。また、育児に係る子の年齢要件について、職員の必要、実態に即して早急に改善することを重ねて求めておく。
(3) 三の女性公務員の労働権の確立については、男女を問わず、当然の権利を行使するときに「後ろめたさ」を感じさせないようにするため、職場環境や職員の意識を改めていく必要がある。人事院の役割をしっかりと果たしていただきたい。
(4) 四の福利厚生等関係では、ストレスチェックの実施状況について、府省間におけるバラつき解消と一層の活用を期すよう各府省に対する指導を求めたい。
  また、ハラスメントについて、公務では上意下達という業務運営の在り方もかかわってパワハラが最も多く、職員への影響は深刻だ。その他のハラスメントも含め、各府省、とくに管理職に対する働きかけ等を強めてもらいたい。
(5) 六の雇用と年金の接続について、再任用制度の限界は明らかであり、すでに定年の引上げは遅きに失している。現状を踏まえた、新たな定年引上げを政府に求めることを強く要請する。
(6) 七の非常勤職員関係について、非常勤職員も公務運営に重要な役割を果たしており、国公法附則の権限に基づく対応というのは異常だ。本則に明記し、その上で均等処遇原則に基づいて関係法令等を適用すべきだ。
  改正された給与決定指針等に基づく処遇となるよう人事院としての対応を求めるとともに、慶弔に関わる休暇等について、直ちに常勤職員と同様に付与すべきだ。
  また、育児時間の取得要件の差別的扱いも直ちに改めていただきたい。

 申入れに対し、池本審議官は「本日の要求については承った。十分検討の上、然るべき時期に回答させていただく。本日は、いくつかの点について現時点での私レベルのコメントを申し上げる」として、現時点での見解を次のように示した。

(1) 賃金に関わる要求について
  来年の春闘について、連合は、2018春季生活闘争方針案において、昨年に引き続き「賃上げ要求水準は、それぞれの産業全体の「底上げ・底支え」「格差是正」に寄与する取組を強化する観点から2%程度を基準とし、定期昇給相当分を含め4%程度とする」との基本構想を打ち出しているものと承知している。
  また、10月26日の経済財政諮問会議において、総理は「3%の賃上げが実現するよう期待したい」と発言し、経済界に対して積極的な賃上げを促したところである。
  一方、足下の年末一時金の妥結状況を見ると、調査機関により結果は区々であり、今後の景気や賃金の動向については、依然として予断を許さないものがある。
  国家公務員の給与は、情勢適応の原則に基づき、民間準拠により決定されることから、民間の春闘結果が直接反映されることとなるため、連合の「定昇分を除き2%程度、定昇込みで4%」という春闘基本構想がどう実現するか注視して参りたい。
(2) 労働時間、休暇及び休業等に関わる要求について
  超過勤務の縮減については、従来から勤務環境の整備に係る重要な課題として、政府全体で連携しつつ取り組んできたところである。
  ご案内のとおり、本年の勧告においては、超過勤務予定の事前確認等の徹底など職場におけるマネジメントの強化や、組織全体としての業務の削減・合理化等の必要性を指摘したところである。
  人事院としても、官民の参考事例の提供などを通じて各府省の取組を支援するとともに、民間法制の動向等も踏まえ、皆さんのご意見も聴きながら長時間労働の是正に向けた実効性ある措置を検討していくこととしている。
(3) 女性公務員の労働権確立に関わる要求について
  女性の活躍の推進については、人事行政における重要な施策の一つとして、男女ともに働きやすい勤務環境の整備や、女性国家公務員の採用・登用拡大を積極的に進めているところである。
  平成26年には「国家公務員の女性活躍とワークライフバランス推進のための取組指針」が策定されるなど、政府としての取組が加速しているところであるが、引き続き、両立支援策の一層の活用を促進するとともに、女性を対象とした人材確保活動や女性職員の登用に向けた研修等を通じて各府省の取組を支援して参りたい。
(4) 非常勤職員制度等に関わる要求について
  非常勤職員の給与については、常勤職員の給与との権衡をより確保しうるよう、本年7月に、勤勉手当に相当する給与の支給に努めることを追加するなど指針の改正を行ったところであり、この内容に沿った処遇の改善が行われるよう、引き続き各府省を指導していくこととしている。

 続いて、各交渉委員が職場実態に基づき、@上限規制を含めた実効性ある超過勤務縮減策、A客観的勤務時間管理の導入、B住居手当を含めた諸手当の改善、C改正指針等に基づく非常勤職員の処遇改善、Dハラスメントへの対応、E希望通りの再任用実現と定年引上げに向けた具体的検討、などについて積極的な対応を要請した。

 最後に大塚副事務局長が、「労働基本権の制約が維持されている限り、人事院には代償機関としての位置づけを含め、すべての職員の利益保護という役割をしっかりと果たしてもらいたい。公務員の雇用と賃金・労働条件がより良きものとなるよう、われわれと真摯に向き合ってその改善に努めてもらいたい。申入れ内容を十分に精査していただいて、12月には誠意ある回答をお願いしたい」と求めたのに対し、池本審議官が了としたことから、この日の交渉を終えた。

<内閣人事局との交渉経過>
 内閣人事局への提出交渉は、15時から行われ、内閣人事局からは稲山内閣審議官らが対応した。
 要求提出にあたり、大塚副事務局長が「給与法等改正法案が成立することを前提に、本日要求書を提出することにした。十分に検討いただき、12月には誠意ある回答をお願いしたい」と述べたうえで、基本要求を次の通り説明した。

(1) 一の雇用と賃金・労働条件の関係では、第1に、公共サービス基本法に基づき、公務員や公共サービス従事者に、社会的に公正な賃金・労働条件と人件費予算を確保することが必要だ。
  第2に、雇用と年金の接続については、当面フルタイムを中心とした、職員の希望通りの再任用実現が不可欠であり、定年引上げの場合も含めて必要な定員を確保してもらいたい。
  第3に、来年度の人事院勧告・報告への対応に向けては、われわれと十分交渉・協議を行って、公務員労働者の賃金引上げをめざしてもらいたい。その際、公務員給与について社会的な合意を確立すべく、公務員の人事行政に責任をもつ立場での役割を果たしていただきたい。
(2) 二の労働時間、休暇・休業等について、最重要課題は超過勤務の縮減、長時間労働の是正であり、引き続き内閣人事局と議論を継続していく。まずは、使用者の責務として、客観的かつ厳格に把握できる勤務時間管理の仕組みを速やかに措置するよう求める。
  国を挙げての働き方改革の一環として、民間の36協定に関わる上限規制の法制化がめざされているが、公務員は労働協約締結権がなく、公務員労働者は健康と安全を守るために自らの意思で労働時間を規制できない。したがって、法令で直接上限規制を行う必要がある。少なくとも民間レベルの上限規制を先取った対応を求める。
(3) 三の女性公務員の労働権の確立については、男女を問わず、当然の権利を行使するときに「後ろめたさ」を感じさせないようにするため、職場環境や職員の意識を改めていく必要がある。使用者としての責務をしっかりと果たしていただきたい。
(4) 四の福利厚生関係では、国家公務員健康増進等基本計画の初めてのフォローアップが行われているが、一層の改善に向け、結果について公務員連絡会と十分議論させていただきたい。
(5) 六の雇用と年金の接続について、再任用制度の限界は明らかであり、すでに定年の引上げは遅きに失している。定年引上げの政府方針を決断し、早急に具体的に制度化すべき。定年引上げまでは再任用となるが、定員を含め、必要な措置を講じていただきたい。
(6) 七の非常勤職員制度については、公務員連絡会が参加する検討の場を設けていただきたい。
  改正された給与決定指針等に基づく処遇となるよう、予算の確保支援など内閣人事局としての対応を求める。また、非常勤職員の給与改定に当たっては、4月から継続勤務している非常勤職員も少なくないことも踏まえ、常勤職員に準じることを基本とし、政府全体での統一的対応を図るべきだ。
(7) 八の公務員制度改革については、国家公務員制度改革基本法の自律的労使関係制度を確立することが課題であり、引き続き、われわれと十分話し合いながら検討作業を進めていただきたい。
(8) 九の精神障害者の課題は、目標未達とならないよう、着実な対応を求めておく。

 続けて、交渉委員から職場実態に基づき、「希望どおりの再任用実現及び定年引上げに向けた具体的対応」について強く訴えた。

 これらに対して、稲山内閣審議官は「要求の趣旨は承った。要求事項は多岐にわたっているため、検討させていただいた上で、しかるべき時期に回答を行いたい」と回答した。

 最後に、大塚副事務局長は「内閣人事局も発足以来三年半が経過し、公務員の使用者たる中央人事行政機関としてその役割を果たしつつあると認識している。来年度に向けては、さらに踏み込んで、われわれの要求に誠実に応え、公務員の労働諸条件を改善することによって使用者としての責任を果たしていただきたい。12月には誠意ある回答をお願いしたい」と重ねて要請し、この日の交渉を終えた。

資料1.人事院への基本要求書

2017年11月28日

人事院総裁
 一 宮 なほみ 様

公務員労働組合連絡会
議 長  石 原 富 雄


2018年度賃金・労働条件に関わる基本要求事項の申入れ

 有効求人倍率がバブル期を超え、失業率も改善しているものの、非正規労働者の割合は高止まりし、労働者総体の賃金収入が伸び悩んでおり、社会保障などの将来不安もあいまって、個人消費は低迷しています。日銀がデフレ脱却の指標としている消費者物価上昇率は安定目標の2.0%に程遠く、達成時期がさらに先送りされています。
 加えて、総理が消費税の10%への引上げによる5兆円の使途に係る国民との約束を変える判断をし、2020年度のプライマリーバランス黒字化目標の達成が困難になることから、国民の信を問うため衆議院を解散した結果、財政再建は一層遠のき、不安感が高まっています。
 国民生活の改善や将来不安の払拭は依然として不透明なままであり、国民の安心・安全を支える公務・公共サービスの基盤も揺らぎかねない厳しい状況のもと、公務員労働者は日夜自らの職務遂行に邁進しています。しかし、定員削減が継続され、長時間労働が改善せず、長期病休者も少なくないなど、国民の期待に応えていくには厳しい労働条件、勤務環境に置かれています。
 良質な公共サービスを確実に提供していくためには、人材確保の観点も含め、公務員労働者の雇用や賃金・労働条件の改善・確保が不可欠です。その意味で、人事院が、労働基本権制約の代償機関であることを含め職員の利益保護の役割を十全に果たすことが求められています。
 貴職におかれましては、こうした点を十分認識され、下記の基本要求事項の実現に向けて最大限努力されることを強く申し入れます。


一、賃金に関わる事項
1.給与水準及び配分等について
(1) 給与水準の確保
 @ 職務の責任や仕事の内容に相応しい社会的に公正な月例給与水準を確保することとし、公務員労働者のゆとり・豊かな生活を保障すること。
   2018年度の給与勧告においては、生活水準を維持・改善するため、公務員の賃金水準を引き上げること。
 A 期末・勤勉手当については、民間実態を精確に把握し、支給月数を引き上げること。
(2) 公正・公平な配分
 配分については、別途人事院勧告期に提出する要求も含め、公務員連絡会と十分交渉し、合意に基づき行うこと。
(3) 社会的に公正な官民給与比較方法の確立
 当面、現行の比較企業規模を堅持することとし、社会的に公正な仕組みとなるよう改善すること。また、一時金についても、月例給と同様に、同種・同等比較を原則とするラスパイレス比較を行うこと。

2.諸手当について
(1) 諸手当について、社会経済情勢の変化、職員の職務や生活実態を踏まえて改善することとし、公務員連絡会と十分、交渉・協議し、合意に基づいて進めること。
(2) 住居手当については、公務員宿舎の削減及び宿舎使用料等の段階的引上げを踏まえ、総合的に改善すること。
(3) 1か月当たり45時間を超え60時間以内の超過勤務に対する割増率については、民間企業の実態を踏まえた引上げを行うこと。なお、超過勤務手当については、全額支給すること。

二、労働時間、休暇及び休業等に関わる事項
 ワーク・ライフ・バランスを実現するため、公務職場における「働き方改革」等を次の通り進めること。
1.年間労働時間の着実な短縮について
 公務における年間総労働時間1,800時間体制を確立することとし、次の事項を実現すること。
(1) 使用者の責務としてICT等を活用した厳格な勤務時間管理を直ちに行うよう措置すること。
(2) 他律的業務を含む超勤上限目安時間について、完全に遵守するよう各府省に対する指導を強めること。また、本府省における在庁時間削減の取組みについても、人事院として積極的役割を果たすこと。
(3) 新たに超過勤務縮減目標等を設定し、上限規制を導入するなど、より実効性のある超過勤務縮減の具体策を着実に実施すること。

2.休暇・休業制度の拡充等について
 ライフステージに応じ、社会的要請に応える休暇・休業制度の拡充などについて、次の事項を実現すること。
(1) 夏季休暇の日数を増やすこと。
(2) リフレッシュ休暇を新設すること。
(3) 産前休暇を8週間、多胎妊娠の場合の産後休暇を10週間に延長すること。また、妊娠障害休暇を新設すること。
(4) 不妊治療のための休暇を新設すること。
(5) 育児や介護に関わる両立支援制度の円滑な活用を図るとともに、育児短時間勤務、育児時間等について、子の年齢要件等取得要件を緩和し、その在り方を改善すること。
(6) 必要な休暇・休業制度が、非常勤職員を含め、男女ともにより活用できるよう、制度の改善や環境整備に努めること。とくに、家族介護を理由とした離職を防止するため、介護休業制度を整備すること。
(7) 休暇の取得手続きについて、公務員の休暇権をより明確にする形で抜本的に改善すること。

3.勤務時間制度等の見直しについて
(1) 公務における本格的な短時間勤務制度の導入に向けて、公務員連絡会と十分交渉・協議すること。
(2) 公務において、「勤務間インターバル」を確保すること。

三、女性公務員の労働権確立に関わる事項
(1) 公務における女性の労働権確立を人事行政の重要課題と位置づけ、人事院としての役割を果たすこと。
(2) 次世代育成支援対策推進法、女性活躍推進法及び「国家公務員の女性活躍とワークライフバランス推進のための指針」等に基づく各府省の「行動計画」「取組計画」等の着実な実行に向け、積極的な役割を果たすこと。
(3) 女性の労働権確立にむけ、女性が働き続けるための職場環境の整備に努め、女性の採用・登用・職域拡大を図るとともに、メンター制度の実効性を確保すること。

四、福利厚生施策等に関わる事項
(1) 公務員の福利厚生を勤務条件の重要事項と位置付け、職員のニーズ及び民間の福利厚生の正確な実態把握を行い、その抜本的な改善・充実に向けた提言を行うこと。
(2) 福利厚生の重要施策であるレクリエーションについて、事業が休止されている実態を重く受け止め、その理念の再構築と予算確保や事業の復活に努めること。
(3) ストレスチェックを確実に実施するとともに、「職員の心の健康づくりのための指針」等に基づいた心の健康づくり、カウンセリングや「試し出勤」など復職支援施策の着実な推進を図ること。
(4) ハラスメントについて、必要な対策を着実に実施すること。

五、人事評価制度に関わる事項
 中立・公正な人事行政や勤務条件を所管する立場から、人事評価制度の実施及び評価結果の活用状況を随時検証し、必要に応じて指導、改善措置等を講じること。

六、雇用と年金の接続に関わる事項
(1) 2011年の意見の申出を基本として、早期に定年延長を実現するため、その具体化に向けて、公務員連絡会と十分な交渉・協議を行い、合意に基づいて対応すること。
(2) 定年延長実現までの間は、2013年の閣議決定に基づき、フルタイムを中心とする職員の希望通りの再任用を実現するとともに生活水準を確保すること。
(3) 再任用職員の給与制度等については、その経済的負担、定年前職員との均衡を考慮して改善することとし、公務員連絡会との十分な交渉・協議、合意に基づいて進めること。

七、非常勤職員制度等に関わる事項
 非常勤職員制度等の抜本的改善をめざし、同一労働同一賃金をはじめとする均等処遇の原則に基づき、次の事項を実現すること。
(1) 非常勤職員を法律上明確に位置付け、勤務条件等について常勤職員に適用している法令、規則等を適用すること。
(2) 改正後の「非常勤職員給与決定指針」等に基づき、着実な処遇改善が行われるよう各府省を指導すること。
(3) 期間業務職員制度について、当該職員の雇用の安定と処遇の改善となるよう、適切な運用に努め、必要な改善措置を講じること。
(4) 非常勤職員の休暇制度の改善について、慶弔に係る休暇を速やかに措置するとともに、他の休暇についても具体化を図ること。

八、その他の事項
 公務遂行中の事故等の事案に関わる分限については、欠格による失職等に対する特例規定を設けること。

以上


資料2.内閣人事局への基本要求書

2017年11月28日


内閣総理大臣
 安 倍 晋 三 様

公務員労働組合連絡会
議 長  石 原 富 雄


2018年度賃金・労働条件に関わる基本要求事項の申入れ

 有効求人倍率がバブル期を超え、失業率も改善しているものの、非正規労働者の割合は高止まりし、労働者総体の賃金収入が伸び悩んでおり、社会保障などの将来不安もあいまって、個人消費は低迷しています。日銀がデフレ脱却の指標としている消費者物価上昇率は安定目標の2.0%に程遠く、達成時期がさらに先送りされています。
 加えて、総理が消費税の10%への引上げによる5兆円の使途に係る国民との約束を変える判断をし、2020年度のプライマリーバランス黒字化目標の達成が困難になることから、国民の信を問うため衆議院を解散した結果、財政再建は一層遠のき、不安感が高まっています。
 国民生活の改善や将来不安の払拭は依然として不透明なままであり、国民の安心・安全を支える公務・公共サービスの基盤も揺らぎかねない厳しい状況のもと、公務員労働者は日夜自らの職務遂行に邁進しています。しかし、定員削減が継続され、長時間労働が改善せず、長期病休者も少なくないなど、国民の期待に応えていくには厳しい労働条件、勤務環境に置かれています。
 良質な公共サービスを確実に提供していくためには、人材確保の観点も含め、公務員労働者の雇用や賃金・労働条件の改善・確保が不可欠です。その意味で、公務員の人事行政に責任を持つ中央人事行政機関として、内閣人事局がその役割を十全に果たすことが求められています。
 貴職におかれましては、こうした点を十分認識され、下記の基本要求事項の実現に向けて最大限努力されることを強く申し入れます。


一、雇用と賃金・労働条件に関わる事項
(1) 公共サービス基本法に基づいて良質な公共サービスが適正かつ確実に実施されるよう、公務員等公共サービス従事者の社会的に公正な賃金・労働条件と人件費予算を確保すること。
(2) 事務・事業の円滑な遂行とディーセントワークを保障するとともに、当面、職員の希望通りの再任用を保障するため、必要な定員を確保すること。
(3) 職務の責任や仕事の内容に相応しい社会的に公正な給与水準を確保することとし、公務員労働者のゆとり・豊かな生活を保障すること。2018年度においては、生活水準を維持・改善するため、人事院勧告の取扱いを含めて、公務員連絡会との交渉・協議に基づき公務員労働者の賃金水準を引き上げること。また、使用者の責任において、実態に見合った超過勤務手当の支給、独立行政法人等を含めた公務員給与の改定に必要な財源の確保に努めること。
(4) 公務員給与のあり方に対する社会的合意を得るよう、使用者責任を果たすこと。

二、労働時間、休暇及び休業等に関わる事項
 ワーク・ライフ・バランスを実現するため、公務職場における「働き方改革」等を次の通り進めること。
(1) 公務における年間総労働時間1,800時間体制の確立と、ライフステージに応じ、社会的要請に応える休暇・休業制度の改善・拡充などを実現すること。
(2) 政府全体として超過勤務縮減のための体制を確立し、使用者の責務としてICT等を活用した厳格な勤務時間管理を直ちに実施すること。
(3) 働き方改革実行計画ロードマップ等を踏まえ、職員の勤務状況の把握や超過勤務事由の事前確認の徹底、その他講じるべき措置を政府全体で着実に実施すること。あわせて、各府省における取組状況を把握し、必要な措置を講じること。
(4) 新たに超過勤務縮減目標等を設定し、上限規制を含むより実効性のある超過勤務縮減策を直ちに実施することとし、その具体化に向けて公務員連絡会と協議すること。
(5) 公務における本格的な短時間勤務制度の具体的検討に着手すること。
(6) 公務において、「勤務間インターバル」を確保すること。

三、女性公務員の労働権確立に関わる事項
(1) 公務における女性の労働権確立を人事行政の重要課題と位置づけ、政府全体として積極的に取り組むこと。
(2) 次世代育成支援対策推進法、女性活躍推進法及び「国家公務員の女性活躍とワークライフバランス推進のための取組指針」等に基づく各府省の「行動計画」「取組計画」等の着実な実施に向け、積極的な役割を果たすこと。
(3) 女性の採用・登用・職域拡大、メンター制度の実効性確保に向け、使用者として必要な取組を着実に実施すること。

四、福利厚生施策等に関わる事項
(1) 公務員の福利厚生を勤務条件の重要事項と位置付け、職員のニーズ及び民間の福利厚生の正確な実態把握に基づき、その抜本的な改善・充実を図ること。
(2) 「国家公務員健康増進等基本計画」の着実な実施を図るため、政府全体としての実施体制を確立し、使用者としての責任を明確にして積極的に対応すること。
(3) ストレスチェックを確実に実施するとともに、引き続きストレス原因の追究と管理職員の意識改革に努めることとし、必要な心の健康づくり、カウンセリングや「試し出勤」など復職支援施策を着実に実施すること。
(4) 2018年度の予算編成に当たっては、健康診断の充実など、職員の福利厚生施策の改善に必要な予算を確保すること。なお、予算の取扱いについては、公務員連絡会と十分交渉・協議を行い、合意に基づいて進めること。
(5) 福利厚生の重要施策であるレクリエーションについて、事業が休止されている実態を重く受け止め、その理念の再構築と予算確保や事業の復活に努めること。
(6) ハラスメントについて、必要な対策を着実に推進すること。

五、人事評価制度に関わる事項
 人事評価制度について、円滑に運営されるよう、引き続き制度の周知や評価者訓練の徹底等に努めること。

六、雇用と年金の接続に関わる事項
(1) 人事院の意見の申出等を踏まえ、公務運営を確保する観点からも早期に定年延長を実現することとし、その具体化に向けて、公務員連絡会と十分な交渉・協議を行い、合意に基づいて対応すること。
(2) 定年延長実現までの間は、2013年の閣議決定に基づき、フルタイムを中心とする職員の希望通りの再任用を実現するとともに、生活水準を確保すること。
(3) 職員の希望通りの再任用を保障するため、必要な定員の確保に向け、弾力的扱い等について公務員連絡会と十分交渉・協議すること。

七、非常勤職員制度等に関わる事項
 非常勤職員制度の抜本的改善をめざし、同一労働同一賃金をはじめとする均等処遇の原則に基づき、次の事項を実現すること。
(1) 非常勤職員制度について、公務員連絡会が参加する検討の場を設置し、政府全体として解決に向けた取組を推進すること。
(2) 非常勤職員を法律上明確に位置付け、勤務条件等について常勤職員に適用している法令、規則等を適用すること。
(3) 改正後の「非常勤職員給与決定指針」等に基づき、予算の確保など必要な措置を講じること。また、非常勤職員の給与改定について、政府全体として統一的に対応することとし、常勤職員と同様に措置すること。
(4) 期間業務職員制度について、当該職員の雇用の安定と処遇の改善となるよう、適切な運用に努め、必要な改善措置を講じること。

八、公務員制度改革に関わる事項
 ILO勧告に則り、国家公務員制度改革基本法に基づく自律的労使関係制度を確立するため、国家公務員制度改革関連四法案(2011年6月3日国会提出)における措置について、国家公務員法等改正法案の附帯決議(2014年3月12日衆議院内閣委員会及び同年4月10日参議院内閣委員会)に基づく、公務員連絡会との合意により実現すること。

九、その他の事項
(1) 障がい者雇用促進法に基づき、2018年4月からの精神障がい者に対する新たな措置も踏まえ、障がいの別をこえた雇用促進を図ること。
(2) 国が民間事業者等に業務委託や入札等により事務事業の実施を委ねる場合においては、公正労働基準の遵守を必要条件とすること。

以上