公務員連絡会は12月20日、幹事クラス交渉委員が人事院、内閣人事局との交渉を実施し、2018年度の基本要求に対する回答を引き出した。回答は多岐にわたるものの展望を開くものとはなっておらず、不満な内容に止まったが、公務員連絡会は、春季生活闘争に引き継いでいくこととし、基本要求に関わる交渉・協議に区切りを付けることとした。
それぞれの交渉経過は次の通り。
<人事院との交渉経過>
人事院との交渉は13時30分から行われ、人事院は池本職員団体審議官、前薗職員団体審議官付参事官が対応した。
冒頭、大塚副事務局長が、基本要求に対する回答を求めたのに対し、池本審議官は「今後引き続き検討すべき事項が多いが、主な要求事項について現時点での検討状況等について申し上げる」として次の通り人事院の現段階の見解を示した。
一、賃金に関する事項
(1) 給与水準について
公務員給与の改定については、情勢適応の原則に基づき、民間準拠により適正な給与水準を確保するという基本姿勢に立った上で、職員団体の皆さんの意見も聴きながら適切に対処していきたいと考えており、来春の春闘における民間の動き等を注視していきたいと考えている。
(2) 官民の給与の比較方法について
官民給与の比較方法については、公務と民間で同種・同等の業務を行っている者同士を比較するという民間準拠方式の下、民間企業従業員の給与をより広く把握し国家公務員の給与に反映させるため、必要な見直しを行ってきており、比較対象企業規模を含め、現行の取扱いが適当と考えている。
(3) 諸手当について
住居手当については、本年の勧告時報告で述べたとおり、公務の状況、民間の状況等を踏まえ、必要な検討を行うこととしている。その他の諸手当についても、民間の状況、公務の実態等を踏まえ、職員団体の皆さんの意見も聴きながら、必要となる検討を行ってまいりたい。
二、労働時間、休暇、休業に関する事項
(1) 超過勤務の縮減について
超過勤務の縮減については、人事院としても、従前より、重要な課題として取り組んできている。近年、長時間労働の是正が我が国全体の課題とされる中、本年9月に民間企業の時間外労働に係る上限規制の導入等を盛り込んだ働き方改革関連法案の要綱について厚生労働省労働政策審議会の答申がなされたところである。公務においても、職員の健康保持や仕事と家庭生活の両立に加え、魅力ある公務職場の実現のため、長時間労働の是正の重要性はかつてなく高まっており、従前の取組にとどまらない、実効的な取組を推進していく必要があると認識している。
本年の勧告時報告において、長時間労働の是正のため、超過勤務予定の事前確認等の徹底など職場におけるマネジメントの強化を図るとともに、府省のトップが先頭に立って、組織全体として業務の削減・合理化に取り組むことなどが必要である旨を述べたところであり、人事院としても、官民の参考事例を収集・提供すること等により、各府省の取組を支援していくこととしている。
また、職員の健康管理の観点からは、超過勤務手当が支給されない管理職員も含めて、適切な方法により職員の勤務実態を把握することが重要であると考えており、その旨勧告時報告においても述べたところである。
さらに、長時間労働の是正のための制度等についても、今後、各府省の取組や、上限規制に係る民間労働法制の議論等を踏まえ、各府省や職員団体の皆さんの意見も聴きながら、実効性ある措置を検討することとしている。
人事院としては、引き続き関係機関とも連携しつつ、長時間労働の是正に向けた取組を強力に推進してまいりたい。
(2) 休暇、休業制度について
職員の休暇、休業については、従来より情勢適応の原則の下、民間における普及状況に合わせることを基本に、適宜見直しを行ってきたところである。ご要求のうち、不妊治療の支援については、本年の勧告時報告において、民間の動向等を注視していく旨言及したところであり、その他の休暇等も含め、引き続き民間の動向等を注視してまいりたい。
(3) 両立支援制度について
両立支援制度の活用については、制度説明会やリーフレットの配布等を通じての制度の周知を図るとともに、指針の発出、連絡協議会の設置などにより各府省の着実な取組を促すなど、その活用がより図られるよう人事院として取り組んできており、本年1月からは人事院規則10−15を施行したところである。また、本年8月の勧告時報告で言及したとおり、指針の改正を予定しており、こうした取組を含めて、引き続き、環境の整備等に取り組んでまいりたい。
(4) 勤務時間制度について
勤務間インターバル制については、本年の勧告時報告においても民間における導入状況を注視していく旨言及したところであり、引き続き民間労働法制に係る議論や民間企業における導入状況等を注視してまいりたい。
また、従前、早出・遅出勤務について各府省にモデル例を示して活用を依頼する等の取組を行ってきたところであり、引き続き、各府省において、公務の円滑な運営に配慮するとともに、職員の健康及び福祉を十分に考慮した組織運営が行われるよう、一層の配慮を要請してまいりたい。
三、女性公務員の労働権確立に関する事項
人事院としては、男女共同参画社会の実現に向けた取組を人事行政における重要施策の一つと位置付け、国家公務員法に定める平等取扱の原則、成績主義の原則の枠組みを前提とした女性の参画のための採用・登用の拡大、両立支援など様々な施策を行ってきているところである。
今後とも、女性を対象とした人材確保活動や女性職員の登用に向けた研修、両立支援等により、次世代育成支援対策推進法や女性活躍推進法等に基づく各府省の取組の支援や男女ともに働きやすい勤務環境の整備についての所要の検討などを進めてまいりたい。
女性の採用拡大については、女性を対象とした人材確保活動を強化するとともに、働き方改革の取組やワークライフバランスの実践例、職業生活への多様な支援等に関する効果的な情報提供を行うことで、より多くの有為の女子学生等の進路選択につなげていくこととしている。
四、福利厚生施策に関する事項
(1) 心の健康づくり対策について
平成16年3月に発出した「職員の心の健康づくりのための指針」を基本として様々な施策を展開しているところであり、引き続きそれらの取組を進めてまいりたい。
さらに、昨年度より、各省各庁の長に対して、職員に医師等によるストレスチェックの受検機会を付与すること及び職員からの申出に応じて面接指導を実施することを義務付けることなどを内容とするストレスチェック制度が実施されているところであり、各府省と連携し、同制度の着実な実施に努めてまいりたい。
(2) ハラスメント対策について
本年1月に、性的指向や性自認をからかいの対象とする言動等もセクシャル・ハラスメントに当たること等が明確になるような運用通知改正と、妊娠、出産、育児又は介護に関するハラスメントの防止等に関する新たな人事院規則を施行した他、従来からセクハラ防止週間の設定、各種シンポジウム、講演会等により意識啓発等を進めているところである。
また、パワー・ハラスメントの防止については、これまでに、講演会等の他、「パワー・ハラスメントを起こさないために注意すべき言動例」や「パワー・ハラスメント防止ハンドブック」を作成・配布し周知を図ってきたところであり、引き続き民間の動向に注視しつつ、今後、典型的な事例や防止のための効果的事例の紹介等も行っていきたいと考えている。
ハラスメントは、職員の尊厳や人権を侵害する行為であり、その防止を図るため、引き続き取組を進めてまいりたい。
五、雇用と年金の接続に関する事項
本院としては、平成23年の意見の申出においても述べたように、雇用と年金の接続が確実に図られるとともに、採用から退職までの人事管理の一体性・連続性が確保され、かつ、それぞれの職員の意欲と能力に応じた配置・処遇も可能となることから、公務員の高齢期雇用について、定年の引上げによって対応することが適当であると考えており、本年の勧告時報告でも述べたところである。
こうした認識に基づき、定年の引上げに係る人事管理諸制度の見直しについて、平成23年以降の諸状況の変化も踏まえ、関係各方面と連携しつつ、職員団体の皆さんの意見も聴きながら、論点の整理を行うなど必要な検討を鋭意進めてまいりたい。
再任用職員については、当面の措置として、新規採用者を一定数確保しながらフルタイム中心の再任用が実現できるような定員上の取扱いについて関係機関に働き掛けを引き続き行うなど必要な取組を行うこととしている。
再任用職員の給与については、公務における人事運用の実態や民間企業の再雇用者の手当の支給状況を踏まえ、平成27年4月から単身赴任手当を支給することとするなど、見直しを行ってきているところである。
人事院としては、各府省における円滑な人事管理を図る観点から、民間企業の再雇用者の給与の動向や各府省における再任用制度の運用状況等を踏まえつつ、定年の引上げに向けた具体的な検討との整合性にも留意し、職員団体の皆さんの意見も聴きながら、引き続き再任用職員の給与の在り方について必要な検討を行ってまいりたい。
六、非常勤職員制度に関する事項
非常勤職員の任用、勤務条件等については、その適切な処遇等を確保するため、法律、人事院規則等に規定しており、期間業務職員制度、育児休業など、これまで職員団体の皆さんの意見も聴きながら見直しを行ってきたところである。
非常勤職員の給与については、本年7月、常勤職員の給与との権衡をより確保し得るよう、非常勤職員の給与に関する指針を改正したところであり、各府省において指針の改正内容に沿った処遇の改善が行われるよう、適切に対応してまいりたい。
非常勤職員の休暇については、業務の必要に応じてその都度任期や勤務時間が設定されて任用されるという非常勤職員の性格を考慮しつつ、民間の状況との均衡や常勤職員の状況を踏まえて、必要な措置を行ってきているところである。
政府においては、働き方改革の一環として、同一労働同一賃金の実現に向けた議論が進められており、昨年12月に働き方改革実現会議で示された「同一労働同一賃金ガイドライン案」においては、慶弔に係る休暇等について言及がなされているところである。今後、ガイドライン案については、国会審議等を経て確定することとなるものと承知しており、人事院としては、そこでの議論等を踏まえて、慶弔に係る休暇等について、必要な検討を進めてまいりたい。
人事院は、期間業務職員を含む非常勤職員の任用、勤務条件等について、今後とも、関係方面と協力しながら、適切に対応してまいりたい。
これに対して、公務員連絡会側は、次の通り質すとともに重ねて要請を行った。
(1) 来年度に向けても、賃上げを実現し、「経済の自律的成長」と「社会の持続性」を確実にしていくことが課題となる。公務員の賃金は勧告制度のもとで民間準拠だが、公務員が国民の期待に応えていくため、賃金の引き上げという形で労働条件を具体的に改善する必要がある。足元の労働需給の逼迫、将来にわたる少子高齢化のもと、とくに地方で公務への有為な人材確保が一層困難になっており、人事院としての積極的な対応を求める。
官民比較方法については、今年と変わらないと受け止める。
(2) 労働時間、休暇・休業等とWLB、女性の労働権は一体の課題であり、働き方改革を公務が率先して推進していくことが重要。3点要請しておく。
第1に、超過勤務については、厚労省が示している「労働時間の適正把握ガイドライン」のようなものを公務でも定めるべきではないか。まずは客観的な勤務時間管理に踏み込むべきだ。
第2に、超勤縮減の具体的進め方について、府省トップの取組姿勢や管理職の果たすべき役割は大きい。使用者がその管理責任を果たすよう、具体的な取組みを強めていただきたい。その際、720時間を超えた職員について、その原因を具体的に把握し、その原因を踏まえた対策実施を各府省人事当局に求めるべきだ。
第3に、時間外労働の上限規制の問題。来年の通常国会で労働基準法が改正されれば、年間720時間を超える時間外労働が罰則付きで禁止される。民間と公務は違うといわれるが、公務の場合、労働基本権制約のもと、労使協定で上限を設けることができない。であるとすれば、公務においてこそ明確な上限を設けるべきだ。基本権制約の代償機関である人事院は、その役割を十全に果たしていただきたい。
(3) 雇用と年金の接続について、定年引上げ検討会が開催されている。この際、再任用の制度的限界を明確にして、定年を早期に引き上げるための具体的検討を進めてもらいたい。
なお、職員の希望に基づく再任用にしても、定年引上げにしてもこれまでのような硬直的な定員管理では円滑な実施は困難であり、その転換に向け、制度官庁への明確な働きかけを求めたい。
さらに、再任用者の給与については、整合性がない部分が残っており、さらなる改善を求める。
(4) 非常勤職員については、同一労働同一賃金が原則であり、改正後の給与決定指針に基づく待遇改善を実現するため、各府省を指導していただきたい。あわせて、慶弔休暇をはじめとする休暇について直ちに改善するとともに、育児時間の取扱いについても是正すべきだ。
これに対し、池本審議官は次の通り答えた。
(1) 勤務時間管理については、超勤縮減の観点からも重要な課題であり、厳正に把握することが必要だと認識している。公務における超過勤務は、命令に基づいて行うものであり、人事院としても、管理職員による超過勤務予定の事前確認の徹底など職場でのマネジメントの重要性等を示してきたところ。超勤縮減のためには、各府省においてどのような要因によって超過勤務が発生しているのかを分析し、それを共有することが必要であると認識している。
人事院としては、引き続き、官民の参考事例を収集・提供すること等により、各府省における取組を支援してまいりたい。
時間外労働の上限規制については、職員の健康管理の観点からも重要な課題であると認識している。民間労働法制の動向等を注視しながら、皆さんのご意見も踏まえつつ、より実効性ある施策について検討してまいりたい。
(2) 雇用と年金の接続について、人事院としては平成23年の意見の申出以降、一貫して定年引上げの必要性について述べてきているところであり、引き続き、皆さんのご意見も聞きながら、必要な検討を行ってまいりたい。また、フルタイムを中心とした希望通りの再任用についても、定員上の弾力的な取扱い等について関係機関への働きかけ等に取り組んできているところであり、今後も必要な対応を行ってまいりたい。
(3) 非常勤職員制度について、人事院としてはこの間、本年7月に改正した非常勤職員給与決定指針の内容等を各府省に対し丁寧に説明するとともに、必要に応じて指導してきているところ。これまでもフォローアップを行ってきているが、今後も状況に応じて適切に対応してまいりたい。
続いて、各交渉委員が職場実態を踏まえ、@管理職員のマネジメントに対する指導A心の健康づくり対策、B超勤縮減と年休取得促進、C上限規制を含む長時間労働是正に向けた具体的対応、D再任用職員への手当支給など労働条件整備、E定年引上げに向けた職場全体での合意形成、などについて積極的な対応を要請した。
最後に、大塚副事務局長が「来年度に向けては、賃上げを実現するとともに、働き方改革を公務が率先垂範する必要がある。本日の回答については、多岐にわたってはいるものの、残念ながら、公務労働の将来は明るいという展望は持てない。来年2月に改めて春季要求書を提出する。賃金・労働条件が改善されるよう、引き続き努力することを強く求めておく」と重ねて要請し、要求回答交渉を終えた。
<内閣人事局との交渉経過>
内閣人事局との交渉は15時から行われ、内閣人事局は稲山内閣審議官らが対応した。
冒頭、大塚副事務局長が、基本要求に対する回答を求めたのに対し、稲山審議官は「本日は、先に提出された要求書について、現時点における回答を行う」と述べ、次の通り答えた。
一、雇用と賃金・労働条件に関わる事項
国家公務員の給与改定に当たっては、国家公務員の給与を社会一般の情勢に適応させるとの原則の下、人事院勧告制度を尊重することが基本姿勢と考えている。
平成30年度の給与改定については、人事院勧告も踏まえ、国政全般の観点に立って総合的に検討を行った上で方針を決定してまいりたいと考えている。その際には、皆様とも十分に意見交換を行ってまいりたい。
二、労働時間、休暇及び休業等に関わる事項
平成26年10月に取りまとめた「国家公務員の女性活躍とワークライフバランス推進のための取組指針」に基づき、政府一丸となって、長時間労働を前提とした働き方を改める意識改革や業務の効率化等を通じた超過勤務の縮減、テレワークや、フレックスタイム制などによる働く時間と場所の柔軟化等に取り組んできたところ。
本年4月からは、超過勤務を実施する際に、その理由や見込時間等を上司が把握するなど、勤務時間の適切な管理を更に徹底することとしたところ。今後とも、リモートアクセスとペーパレスの推進、管理職をはじめとしたマネジメント改革等にも積極的に取り組みつつ、全ての職員が存分に能力を発揮できる環境づくりに努めてまいりたい。
三、女性公務員の労働権確立に関わる事項
男女双方のワークライフバランス及び女性職員の活躍については、平成27年8月に成立した女性活躍推進法や平成27年12月に閣議決定された「第4次男女共同参画基本計画」等を踏まえ、昨年1月に改正した「国家公務員の女性活躍とワークライフバランス推進のための取組指針」や「霞が関の働き方改革を加速するための重点取組方針」等に沿って、取組みを進めているところ。
内閣人事局としては、これら取組指針や取組方針に基づき、各府省の取組みを引き続きフォローアップし、優良事例を共有すること等により、職員のワークライフバランスを実現し、女性活躍の動きを更に加速してまいりたい。
四、福利厚生施策等に関わる事項
福利厚生施策等については、昨年3月に改正した「国家公務員健康増進等基本計画」に基づき、職員の心身の健康の保持増進等に努めてまいりたい。
基本計画には数値目標を導入しているが、このうち、昨年度におけるストレスチェックの実施はほぼ100%であり、管理職員等に対するハラスメント防止に関する研修の受講率は約9割、二次検診の受診率は約6割などとなっている。
引き続き各府省における基本計画の実施状況を把握し、各府省において必要な措置が講じられるよう取り組んでまいりたい。
五、人事評価制度に関わる事項
人事評価制度については、評語区分のレベル感の整理・徹底及び所見欄の充実など、評語区分の趣旨の徹底や、人材育成等への一層の活用として、職員の能力開発やスキルアップ、さらには組織のパフォーマンスの向上につながるように指導・助言を行うための面談手法等、被評価者への指導に役立つ評価者訓練の充実等を図っているところである。
今後とも、皆様とも十分意見交換し、御理解をいただきつつ、円滑かつ効果的に制度を運用していきたいと考えている。
六、雇用と年金の接続に関わる事項
国家公務員の雇用と年金の接続については、引き続き平成25年3月の閣議決定に沿って、定年退職者の再任用を政府全体で着実に推進していまいりたい。
また、定年引上げに関する検討に当たっては、各府省からのヒアリング等も行いながら、組織活力の維持のための施策や総人件費の在り方なども含め、様々な検討事項について幅広に議論を進めているところ。
現時点で何らかの方向性や時期について案が固まっている段階にないが、いずれにせよ雇用と年金の接続については、様々な機会において、皆様のご意見を伺ってまいりたい。
七、非常勤職員制度等に関わる事項
非常勤職員の処遇改善については、本年5月に、非常勤職員の基本給・特別給・給与改定に係る来年度以降の取扱いについて全府省で申し合わせたところであるが、皆様とも引き続き意見交換を重ねつつ、各府省において申合せに沿った処遇改善が進むよう、関係機関とも連携しながら必要な取組を進めてまいりたい。
八、公務員制度改革に関わる事項
自律的労使関係制度については、国家公務員制度改革基本法第12条において「政府は、協約締結権を付与する職員の範囲の拡大に伴う便益及び費用を含む全体像を国民に提示し、その理解のもとに、国民に開かれた自律的労使関係制度を措置するものとする」とされている。
この自律的労使関係制度については、多岐にわたる課題があり、引き続き慎重に検討する必要があると考えており、皆様とは、引き続き意見交換をさせていただきたい。
九、その他の事項
障害者雇用については、障害の別を越えた雇用への理解、促進を図るため、本府省の担当者を対象とした連絡会、地方ブロックにおける人事担当課長会議を開催するほか、昨年度に引き続き、内閣人事局で実施している「障害者ワーク・サポート・ステーション事業」において各府省に障害者を派遣し、実際に業務指示をしてノウハウを取得してもらう等の取組を進めてまいりたい。
これに対して、公務員連絡会側は次の通り質すとともに重ねて要請を行った。
(1) 給与改定については、「人勧尊重が基本」との回答だが、基本権制約のもとでは当然のことだ。
来年度に向けても、賃上げを実現し、「経済の自律的成長」と「社会の持続性」を確実にしていくことが課題となる。公務員の賃金は勧告制度のもとで民間準拠となっているが、内閣人事局として、公務員の待遇改善の重要性を訴えるべきだ。足元の労働需給の逼迫、将来にわたる少子高齢化のもと、公務への有為な人材確保を含めて、積極的な姿勢を示してもらいたい。
(2) 労働時間、休暇・休業等とWLB、女性の労働権は一体の課題であり、働き方改革を公務が率先して推進していくことが重要。3点要請する。
第1に、超勤問題について、「勤務時間の適切な管理を更に徹底する」との回答だが、厚労省が示している「労働時間の適正把握ガイドライン」のようなものを公務でも定めるべきではないか。客観的な勤務時間管理に直ちに踏み込むべき。
第2に、時間外労働の上限規制の問題。来年の通常国会で労働基準法が改正されれば、年間720時間を超える時間外労働が罰則付きで禁止される。民間と公務は違うといわれるが、生身の人間であり、健康・安全を確保するための規制は同じでなければならない。まして公務の場合、労働基本権制約のもと、労働者の意思として労使協定で上限を設けることができない。であるとすれば、公務においてこそ、明確な上限を設けるべきだ。
第3に、定員確保要求に対して具体的回答がなかったが、ワークライフバランス推進強化月間のアンケート結果では、「業務量が過大」であるためにワークライフバランスが確保できないという回答が昨年よりも増えている。要員不足ということであり、改めて、希望通りの再任用実現を含めて、定員管理の在り方の転換を求めておく。
(3) 雇用と年金の接続について、検討会において定年引上げの「方向性や時期」はまだ固まっていないとのことだが、人事院の意見の申出からすでに6年が経過している。この間、再任用で対応してきたが、制度的限界は明らかだ。重ねて、定年引上げという政府方針を決定し、できるだけ早く実施するために具体的な検討に踏み込むことを強く求める。
(4) 非常勤職員の課題について、申合せ及び改正後の給与決定指針に基づく対応を実現するために、同一労働同一賃金の原則を踏まえ、内閣人事局としての役割をしっかりと果たしていただきたい。回答の「必要な取組」について、具体的なものがあれば示されたい。
(5) 公務員制度改革については、自律的労使関係制度を措置することが政府の責務であり、引き続きわれわれとの真摯な議論を求めておく。労働条件については、労使が交渉で決めることが大原則であることを強調しておきたい。
(6) 精神障害者の新たな対応を含め、すべての府省が目標を達成できるよう、内閣人事局として取り組んでいただきたい。また、この間、取り組まれている「障害者ワーク・サポート・ステーション事業」について、各府省が障害者を直接雇用すべきと考えるが、進んでいないのはどこに問題があるのか。
これに対し、稲山審議官は次の通り答えた。
(1) 超過勤務については、昨年9月に改正した「国家公務員の労働時間短縮対策について」に基づき、超過勤務を実施する際にその理由や見込み時間を上司が把握することにより、超過勤務の適切な管理を徹底するよう各府省と申合せを行っている。また、勤務時間管理の在り方については、より有効かつ効率的な方法について、民間事例を参考にしながら関係機関と連携し検討してまいりたい。
(2) 非常勤職員の処遇改善について、5月の申合せを踏まえた各府省の予算要求については、われわれも関心を持っており、申合せ内容に沿った取組みがどう進んでいくかについては一定のフォローしていく必要があるとは考えている。
(3) 内閣人事局として「障害者ワーク・サポート・ステーション事業」を実施し、障害者の方に各府省において経験を積んでいただくことで、チャレンジ雇用の推進につなげてまいりたい。
続いて、各交渉委員が職場実態を踏まえ、@管理職のマネジメント改革、A非常勤職員の待遇改善、B定員管理などについて強い要望が出された。
最後に、大塚副事務局長が「来年度に向けては、賃上げ実現とともに、働き方改革を公務が率先垂範して推進する必要がある。本日の回答については、多岐にわたってはいるものの、残念ながら、公務労働の将来は明るいという展望は持てない。来年2月に改めて春季要求書を提出する。公務員の賃金・労働条件のみならず、人事行政全般の改善に向け、引き続き努力することを強く求めておく」と重ねて要請し、要求回答交渉を終えた。
以上