2018年度公務労協情報 9 2018年2月5日
公務公共サービス労働組合協議会
地方公務員部会

地公部会が、全人連に対し2018春闘期要請書を提出-2/5

 公務労協地方公務員部会は、2月5日、全国人事委員会連合会(全人連)に対して、2018年度地方公務員の賃金・労働条件等に関する要請を行い、要請書に対する回答を引き出した。
要請書を手交する二階堂議長(左)と青山会長(右)
 14時30分から都内で行われた全人連への要請には、地方公務員部会からは二階堂議長(全水道委員長)のほか、企画調整委員代表、事務局長、幹事が出席し、全人連からは青山会長(東京都人事委員会委員長)をはじめ、都道府県人事委員会のブロック代表および政令市の代表者が対応した。

 冒頭、二階堂議長は要請書(資料1)を提出し、次の通り述べた。
(1) 政府は、2017年12月、2018年度予算案を閣議決定し、これまでの歳出改革の取組を強化しつつ、経済再生と財政健全化を両立するとしている。地方財政については一般財源総額が確保されたが、高齢化に伴う社会保障費の増加等、地方の財政状況は依然として厳しい状況にある。地方創生、地方の活性化が求められる中で、地域の行政需要を的確に反映させ、地域公共サービスの実態に見合った財源の保障が必要だ。
(2) 他方、総務省調査によると、地方公共団体の総職員数は対前年比で約5,000人増加しているが、行政サービスの多様化、それに対応するための仕事量の増大等、職員の超過勤務・多忙化解消は喫緊の課題だ。中教審の学校における働き方改革に関する中間報告案では、教育委員会に対し教員の業務量の具体的削減目標を設定するよう求められるなど、その機運は高まりつつある。公務職場全体において実効性のある超過勤務縮減等の具体策を構築していかなければならない。
(3) 国民の期待に応え、質の高い公務・公共サービスを確実に提供していくためには、公務労働者の雇用の安定と賃金・労働条件の改善・確保が不可欠だ。そのためにも、各人事委員会が、労働基本権制約の代償機関の立場から、職員の利益保護の役割・使命を十分認識され、これから申し上げる事項の実現に向け最大限の努力を払われるよう要請する。

 続いて、加藤事務局長が要請書の趣旨を説明した。
 こうした地方公務員部会の要請に対し、青山全人連会長は以下の通り回答した。

<全人連会長回答>

平成30年2月5日

 全人連会長の青山です。
 私から全国の人事委員会を代表してお答えいたします。
 ただいまの皆様からの要請につきましては、確かに承りました。
 早速、全国の人事委員会にお伝えします。
 さて、折角の機会ですので、現在の状況認識等について、ご存じのこととは思いますが、一言、申し上げます。
 まず、最近の経済状況を見ますと、本年1月19日に発表された政府の月例経済報告では、景気について「緩やかに回復している」との判断が示されております。また、先行きについては、「緩やかな回復が続くことが期待される」としつつも、「海外経済の不確実性や金融資本市場の変動の影響に留意する必要がある」としております。
 そのような中、既に始まっている本年の春季労使交渉では、賃上げについて様々な議論がなされているところであり、どの程度の水準の賃上げが実現するのか、賃上げの手段等を含め、今後の行方を注視していく必要があると考えております。
 また、賃上げに加えて、長時間労働の是正など働き方改革も昨年に引き続き焦点となっており、各企業における協議の動向にも注目してまいります。
 さらに、政府において進められている公務員の定年引上げに関する検討についても、引き続き注視してまいります。
 現在、人事院及び各人事委員会では、民間給与の実態を的確に把握できるよう、本年の民間給与実態調査の実施へ向け、その準備を進めているところです。
 今後、各人事委員会においては、社会経済の動向なども踏まえながら、本日の要請内容も含め、本年の勧告に向けた検討を進めていくことになろうかと思います。
 改めて申すまでもありませんが、公務員の給与等の勤務条件について、社会情勢に適応した適正な水準を確保することは、人事委員会の重要な使命であると認識しております。
 全人連といたしましては、本年も各人事委員会の主体的な取組を支援するとともに、人事院、各人事委員会との意見交換に努めてまいります。
 私からは、以上です。

(資料1)

2018年2月5日

全国人事委員会連合会
 会 長  青 山  ●(やすし) 様

公務公共サービス労働組合協議会
地方公務員部会議長 二階堂 健男


要 請 書

 各人事委員会における地方公務員の給与・労働条件の改善に向けたご努力に敬意を表します。
 さて、政府は、2017年12月、2018年度予算案を閣議決定しました。「経済・財政再生計画」の集中改革期間の最終年度の予算として、これまでの歳出改革の取組を強化しつつ、経済再生と財政健全化を両立するとしています。地方財政については、景気回復に伴い地方税の増収が見込まれるため、地方交付税の減少と臨時財政対策債の増加が圧縮され、一般財源総額も確保されましたが、高齢化に伴う社会保障費の増加等、地方の財政状況は依然として厳しい状況にあります。地方創生、地方の活性化が求められる中で、地域の行政需要を的確に反映させ、地域公共サービスの実態に見合った財源の保障が必要です。
 他方で、総務省調査によると、地方公共団体の総職員数は対前年比で約5,000人増加していますが、行政サービスの多様化、それに対応するための仕事量の増大等、職員の超過勤務の縮減・多忙化解消は喫緊の課題です。特に、公立学校教職員の働き方改革に関して、中教審がまとめた中間報告案は、地方自治体の教育委員会に対して、教員の業務量の具体的な削減目標を設定するよう求めています。国会における働き方改革の審議が焦点となる中、学校現場だけでなく、公務職場全体における実効性のある超過勤務縮減等の具体策の構築は必至です。
 国民の期待に応え、質の高い公務・公共サービスを確実に提供していくためには、職員の雇用の安定と賃金・労働条件の改善・確保が不可欠です。
 そのためにも、各人事委員会が、労働基本権制約の代償機関の立場から、職員の利益保護の役割・使命を十分認識され、下記事項の実現に向け最大限の努力を払われますよう要請します。



1.2018年度の給与改定に当たっては、民間賃金実態を精確に把握するとともに、公民較差については給料表を中心に確実に配分するなど、地方公務員の生活を改善するため、賃金水準を引き上げること。

2.公民給与比較方法について、当面現行の比較企業規模を堅持するとともに、社会的に公正な仕組みとなるよう、抜本的に改善すること。また、一時金の公民比較は、月例給と同様に、同種・同等比較を原則とするラスパイレス比較を行うこと。

3.諸手当の改善については、地域の実情を踏まえつつ、組合との十分な交渉・協議に基づくこと。

4.臨時・非常勤職員の任用や待遇について、地方公務員法及び地方自治法の改正法を踏まえ、人事委員会として改善に向けて努力すること。

5.定年延長に関わっては、国の動向等に注視し、地方自治体においても国に遅れないよう確実に実現すること。定年引上げまでの間は、職員の希望通りの再任用等を実現するとともに、高齢期の生活水準と適切な労働条件を確保するための対応を図ること。

6.公立学校教員の給与に関わり、各人事委員会が参考としうるモデル給料表を作成する際には、関係労働組合との交渉・協議を行うこと。

7.公務における超勤縮減、ワーク・ライフ・バランスの実現に向けて、年間総労働時間を早期に1,800時間程度に短縮し、引き続き次の事項の実現に努めること。
 (1) 厳格な勤務時間管理や超過勤務縮減目標等の設定など、上限規制を含むより実効性のある超過勤務縮減の具体策の構築
 (2) 年次有給休暇取得の促進
 (3) 労働時間短縮のための人員確保等の施策の構築

8.各種休暇制度を新設・拡充し、総合的な休業制度を確立すること。とくに、家族介護を理由とした離職を防止するための介護休業制度の整備をはかること。また、育児休業・介護休暇の男性取得促進のための必要な措置を行うこと。

9.公務職場における男女平等の実現を人事行政の重要課題と位置づけ、必要な施策の確立をはかること。

10.実効性あるハラスメント防止策を引き続き推進するため、積極的な対応をはかること。

11.公務職場における障がい者、外国人採用を促進すること。とりわけ、障がい者雇用促進法に基づき、2018年4月からの精神障がい者に対する新たな措置も踏まえ、障がいの別をこえた雇用促進を図ること。

12.各人事委員会の勧告に向けた調査や作業に当たっては、組合との交渉・協議、合意に基づき進めること。

以上