公務員連絡会書記長クラス交渉委員は、3月13日13時10分から、内閣人事局人事政策統括官との交渉を実施し、2019春季要求に対する現段階における回答を引き出した。
冒頭、吉澤事務局長が現段階の回答を求めたのに対し、植田人事政策統括官は次の通り答えた。
1.2019年度賃金について
国家公務員の給与改定に当たっては、国家公務員の給与を社会一般の情勢に適応させるとの原則の下、人事院勧告制度を尊重することが基本姿勢と考えている。
本年の給与改定については、人事院勧告も踏まえ、国政全般の観点に立って総合的に検討を行った上で方針を決定してまいりたいと考えている。その際には、皆様とも十分に意見交換を行ってまいりたい。
2.非常勤職員等の雇用、労働条件の改善について
非常勤職員の処遇改善については、平成29年5月に、非常勤職員の基本給・特別給・給与改定に係る平成30年度以降の取扱いについて各府省間で申合せを行っており、昨年、内閣人事局において調査を行ったところ、期末手当や勤勉手当について、平成28年の調査では2〜3割弱の支給率であったのに対し、9割超の非常勤職員に対し支給される予定となるなど、着実に処遇改善が進んでいる。皆様とも引き続き意見交換を重ねつつ、この申合せに沿った処遇改善が進むよう、必要な取組を進めてまいりたい。
3.労働時間、休暇及び休業等について
長時間労働の是正については、平成26 年10 月に取りまとめた「国家公務員の女性活躍とワークライフバランス推進のための取組指針」に基づき、政府一丸となって、
・長時間労働を前提とした働き方を改める意識改革や業務の効率化等を通じた超過勤務の縮減
・テレワークや、フレックスタイム制などによる働く時間と場所の柔軟化
等に取り組んできたところ。
また、平成29年4月からは、超過勤務を実施する際に、その理由や見込時間等を上司が把握するなど、勤務時間の適切な管理を更に徹底することとしたところ。今後とも、
・リモートアクセスとペーパレスの推進
・管理職をはじめとしたマネジメント改革
等にも積極的に取り組みつつ、全ての職員が存分に能力を発揮できる環境づくりに努めてまいりたい。
なお、本年2月に人事院規則が改正され、超過勤務命令を行うことができる上限の時間を設定するなどの措置について、本年4月から施行されると承知している。
このような制度改正を踏まえ、政府としても、職員の超過勤務時間管理など、同制度の適切な運用をはかりつつ、その運用状況を見ながら、必要に応じて、適切に対応してまいりたい。
4.障害者雇用について
関係閣僚会議において決定された「公務部門における障害者雇用に関する基本方針」に基づき、職場実習の実施や講習会の開催、障害者雇用マニュアルの整備などにより、障害者が意欲と能力を発揮し、活躍できる環境の整備や、職員の理解促進に取り組んでまいりたい。
5.女性公務員の労働権確立について
男女双方のワークライフバランス及び女性職員の活躍については、「国家公務員の女性活躍とワークライフバランス推進のための取組指針」等に基づき、各府省の取組を引き続きフォローアップし、その取組を促進させるようなサポートを行うことにより、職員のワークライフバランスを実現し、女性活躍の動きを更に加速してまいりたい。
6.高齢者雇用施策について
国家公務員の定年の引上げについては、人事院の意見の申出も踏まえつつ、国民の理解が得られるよう、政府として更なる検討を重ね、結論を得てまいりたいと考えているところであり、その際、皆様も含めた関係者の意見も聞きつつ、進めてまいりたい。
なお、定年退職者の再任用については、引き続き平成25年3月の閣議決定に沿って、政府全体で着実に推進してまいりたい。
7.福利厚生施策の充実について
平成28年3月に改正した「国家公務員健康増進等基本計画」に基づき、職員の心身の健康の保持増進等に努めているところであり、引き続き、各府省における基本計画の実施状況を把握し、必要な措置が講じられるよう取り組んでまいりたい。
8.公務員制度改革について
自律的労使関係制度については、多岐にわたる課題があり、引き続き慎重に検討する必要があると考えている。皆様とは、引き続き意見交換をさせていただきたい。
これに対して、吉澤事務局長は次の通り人事政策統括官の見解を質した。
(1) 長時間労働の是正に向けては、新たな仕組みのもとで労使で汗をかいていかなければならない。われわれも超勤縮減に向けて覚悟と決意をもって臨んでいく。一方、改正された人事院規則において、他律的業務の範囲、特例業務などの判断を各府省が行うことは極めて問題であり、これでは現実的に規制とはならない。各府省間や職員間における公平性、統一性の確保や超過勤務縮減の実効性について懸念している。政府として超過勤務縮減に取り組む覚悟と決意を示されたい。
(2) 人事院の国家公務員給与等実態調査によると、超過勤務時間の年間総時間数、これはあくまで手当支給の対象時間数であり、ここ数年の状況はほとんど変化がないが、潜在的な不払いが相当程度あると考えている。統計の上で超過勤務時間数を縮減する場合、時間数が減るだけで、不払いが増えることを危惧しているが、内閣人事局の認識如何。
(3) 「人勧尊重」と「国政全般の観点」との整合性について見解を示されたい。
(4) 非常勤職員給与について、給与改定時期を内容とする各府省の申合せに基づいた対応状況は如何。各省労使に任せるのではなく、政府として定期的に調査するよう求めておく。
(5) 定年引上げについて、通常国会に法案提出されなかったことは極めて遺憾だが、次の機会にむけた決意を伺う。また、法案提出の際には、事前にわれわれとの十分な交渉・協議、合意に基づいて進めていくことを強く求める。自民党行革本部が60歳以降の給与7割水準の見直しを求めたことが報道されているが、仮に、労働基本権の代償機関である人事院の意見の申出と異なる判断が行われるとすれば、定年引上げの是非を超える大問題であり、断じて認められるものではないことを強く指摘しておく。
これらに対して、植田人事政策統括官は次の通り回答した。
(1) 人事院規則が改正され4月から新しい仕組みが始まる。今までも超過勤務の縮減にしっかりと取り組んできたが、今後も大きな重要課題の一つとして政府全体として取り組む必要がある。これまで同様、長時間労働を前提とした働き方を改めて生産性の高い働き方へと変えていくことなど今までやってきたことに引き続き取り組むとともに、政府としては、新しい制度の運用状況を適切に把握し、超過勤務の縮減をはかってまいりたい。
(2) 超過勤務命令に従い、勤務した時間に対して、超過勤務手当が支給される。あくまでも今まで通り超勤縮減の実現をはかっていくことが重要だ。
(3)「人勧尊重」、「国政全般の観点」の両者については矛盾するものではなく、両者を考えながら、最終的に政府が取り扱い方針を決定、法案提出し国会審議を経るというプロセスになる。「人勧尊重」というスタンスは変わらない一方で国の財政状況や、経済・社会情勢から、「国政全般の観点」を踏まえて決定している。
(4) 非常勤職員の給与について、給与改定についての措置は、昨年10月の調査では94.6%が各府省の申合せに沿った対応を予定しているという結果が出ており、以前よりも状況は改善している。今後の調査予定については現時点では検討していないが、引き続き、各府省の状況を注視していくとともに、必要な取組を行ってまいりたい。
(5) 定年引上げについて、昨年8月の人事院による意見の申出をふまえて検討を行ってきた。時期についての明言は避けるが、論点は多岐にわたっており、引き続き検討してまいりたい。その際には、皆様からの意見も踏まえながら、進めてまいりたい。
回答を受け、吉澤事務局長は「人勧尊重」の前提として、人事院勧告が労働基本権制約の代償措置の根幹をなしているということを付け加え、春の段階での基本姿勢として確認し、給与改定期における実践的、現実的な議論に委ねると指摘した。
また、交渉委員からは、厳しい定員削減によりフルタイム再任用を希望しても短時間での再任用を強いられている現状を改善すべきとの要望が出された。
最後に、吉澤事務局長は「交渉委員から実態について話が出されたが、それだけに定年引上げは早期に実施されるべきだ。20日の国家公務員制度担当大臣との交渉においては、改めて要求に沿った前向きな回答がされるよう求めておく」と強く要請し、本日の交渉を終えた。
以上