2019年度公務労協情報 19 2019年3月20日
公務公共サービス労働組合協議会
地方公務員部会

地公部会が、総務省から春の段階の回答引き出す-3/20


公務労協地方公務員部会は3月20日、書記長クラス交渉委員が、大村公務員部長ほかと2019春季段階の最終交渉を行った。冒頭、福島企画調整委員代表が「2月20日、石田総務大臣に要求書を提出し、これまで交渉・協議を積み重ねてきたが、本日はこうした交渉経過を踏まえながら、公務員部長から春の段階の最終回答をいただきたい」と、求めたのに対し、大村公務員部長は次のように答えた。

1.2019年度の賃金改善について
平成31年度の地方財政計画における給与関係経費については、その所要額を適切に計上している。
地方公務員の給与については、地方公務員法の趣旨を踏まえ、各団体の議会において条例で定められるべきものである。
総務省としては、国民・住民の理解と納得が得られる適正な内容とすべきものとの考え方に立ち、必要な助言を行っていく所存。

2.労働時間、休暇及び休業等について
(1) 長時間労働の是正
時間外勤務の適正な管理のためには、各地方公共団体において、職員の勤務時間を的確に把握することが重要である。
総務省からはこれまで、各地方公共団体に対して、「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」を周知し、これに基づき適切に対応するよう要請するとともに、職員の時間外勤務のより一層の縮減に取り組むよう要請している。
また、総務省としても、長時間労働の是正は重要な課題と考えており、今後とも、各団体における時間外勤務縮減の取組を支援してまいりたい。
(2) メンタルヘルス・ストレスチェック
職員の健康管理体制や職場の安全衛生管理体制の確立については、任命権者が労働安全衛生法の趣旨にのっとり主体的に実施するものであり、各地方公共団体において着実に実施されてきているものと認識している。
総務省においては、従来から、地方公共団体における労働安全衛生法の遵守やメンタルヘルス対策に資するため、地方公共団体に対して情報提供や助言を行ってきている。
特に、メンタルヘルスに対し注目が高まる中、これまでも事業場の規模に関わらず、全ての職員にストレスチェックを実施するなど、対策の推進をお願いする旨の通知を発出しているところである。
また、ストレスチェックの実施に要する経費については、各地方公共団体の標準的な財政需要となるため、普通交付税による措置を講じている。

3.臨時・非常勤等職員の雇用確保と待遇改善について
これまで総務省では、改正法に係る運用上の留意事項や円滑な施行のために必要と考えられる事項について示した「事務処理マニュアル」の配布をはじめ、都道府県、指定都市に対する準備状況等に関する調査ヒアリングにおける具体的な助言、条例提案時期等の調査や、制度の検討内容を自己点検するためのチェックリストの配布、各都道府県における説明会の実施など、各地方公共団体の施行に向けた準備への支援を行ってきたところ。
平成31年度は施行の前年度であることから、再度調査を実施して各地方公共団体の準備状況を把握し、必要な助言を行うなどさらなる支援を行ってまいりたい。
今後とも、総務省としては、「会計年度任用職員」制度の定着状況や民間の動向、国家公務員に係る制度・運用の状況などを踏まえ、また、厳しい地方財政の状況にも留意しつつ、会計年度任用職員に係る適正な任用や勤務条件の確保に向け、取り組みを進めてまいりたい。

4.公共サービス基本法に基づく適正な労働条件確保等について
地方公共団体の職員が、個々人のライフステージに応じ、実力を存分に発揮できる環境・仕組みを作ることは、質の高い行政サービスの提供を図る上で必要なものと考えている。
そのため、総務省としては、
・超過勤務の縮減と年次有給休暇の取得、女性職員の活躍や職員のワークライフバランスに向けた取組など、地方公務員の働き方改革を推進するため、各種会議等の場で助言するとともに、優良事例等の情報提供を行う、
・臨時・非常勤職員の適正な任用・勤務条件の確保に向けた会計年度任用職員制度の導入
などを通じ、地方公共団体に対する支援に取り組んでいる。
また、これまでも、地方公共団体に対し、公共サービスの実施に関する業務の委託に当たり、受託事業者等において労働条件への適切な配慮がなされるよう留意すること等について助言を行っており、今後とも、公共サービス基本法の趣旨を踏まえ、必要に応じて、助言等を行ってまいりたい。

5.新たな高齢雇用施策の充実について
地方公務員の定年引上げについては、昨年8月の人事院の意見の申出や国家公務員の制度設計を踏まえ、地方公共団体の意見も伺いながら検討を進めてまいりたい。
地方公務員の再任用については、平成25年3月の総務副大臣通知「地方公務員の雇用と年金の接続について」の中で、
@定年退職者が再任用を希望する場合、任命権者は、公的年金の支給開始まで、常時勤務を要する職(フルタイム職)に当該職員を再任用することを基本とすること、
A再任用に関する条例が未制定の場合は速やかに条例の制定をすること
など、地方の実情に応じて必要な措置を講ずることを要請したところ。
平成29年度における再任用の実施状況をみると、フルタイム勤務が50,086人、短時間勤務が59,930人となっている。
再任用職員数は年々増加してきており、中でもフルタイム勤務再任用が増加傾向にある。
なお、都道府県、政令指定都市及び市区町村における条例制定率は、平成30年10月1日現在で99.8%となっている。
また、再任用応募者数に対する採用者数の割合は、平成29年度実績で98.5%となっており、再任用希望者はほぼ全員採用されていることから、概ね全ての地方公共団体で、雇用と年金の接続に向けた再任用の取組が、着実になされているものと考えている。
さらに、昨年度に引き続き本年度も、専門家による講演の実施等を通じ、各団体における再任用制度の適切な活用の取組を推進してきたところであり、引き続き、地方公共団体に対する助言等を行うこととしている。

 回答を受け、福島企画調整委員代表は次のように述べた。
1.賃金改善について
回答があったように、地方公務員の給与は、当該地方自治体の議会において条例で定めるべきものだが、地方自治の本旨に基づき、労使交渉・協議を経て、その自治体の自主的・主体的判断のもと決定されるべきものであることを、改めて強調しておく。
2.労働時間、休暇及び休業等について
(1) 長時間労働の是正
長時間労働の是正については、民間・公務ともに超過勤務命令の上限に係る制度が4月1日より実施される。
地方公務員については、36協定締結義務のある職員、ない職員、給特法が適用される教育職員に、それぞれ対応が必要であり、総務省として、昨年10月以降、通知や事務連絡を発出し、周知徹底に努めていることは承知している。しかし、別表第一に掲げる事業に従事する職員について、36協定の締結やその内容、各地方自治体における別表第一の取扱いについては、地方の判断に任せず、地方公務員制度を所管する総務省としても把握すべきだと考える。
また、労基法が適用される職員は、学校現場においても、事務職員、学校栄養職員、技能労務職員等が該当するため、教育委員会を通じて十分浸透されるよう、文科省と連携したさらなる周知徹底を求める。
別表第一に掲げる事業に従事する職員以外については、いわゆる特例業務の具体をたびたび追求してきたが、具体的な回答は示されていない。地方の実態が異なることや4月1日以降、実際に運用されてみないと明らかにならないため、今後の課題であることを確認しておきたい。
給特法が適用される教育職員については、「学校における働き方改革」の総合的な方策の一環として、1月に文科省が「上限ガイドライン」を策定した。国家公務員の人事院規則はもとより、人事委員会規則等と比べれば、法令の代償となり得るのか、また、これにより長時間労働が是正されるのかが課題となるため、引き続き、文科省と情報共有・情報交換をしながら推進していくことを求める。
長時間労働の是正については、今回の制度改正が、あくまでスタートであるという認識のもと、今後浮かび上がる課題への対応を求めるとともに、この改正が長時間労働の是正につながらなければ本末転倒であることを確認しておく。
(2) 職員の健康管理体制、労働安全衛生体制について
働き方改革の推進には、長時間労働の是正に加え、職員の健康確保が重要だ。
地方公務員安全衛生推進協会の調査結果によると、「精神及び行動の障害」の長期病休者全体に占める割合は年々増加していることが明らかになった。
メンタルヘルス不調を未然に防止し、職員の健康確保をはかる上でも、客観的な勤務時間管理、全ての職員へのストレスチェックの実施などの具体的措置が講じられるよう、引き続き地方自治体への支援を求める。
3.臨時・非常勤職員の待遇改善、雇用安定について
会計年度任用職員制度の導入に関して、議会提案予定及び施行に向けた検討状況は、概ね9割の自治体で進んでいるとのことだが、制度の円滑な導入に向け、さらなる周知徹底、支援、必要な財源確保を強く求める。
4.公共サービス基本法に基づく適正な労働条件の確保等について
公共サービス基本法第11条では、「公共サービスの実施に従事する者の適正な労働条件の確保、その他の労働環境の整備に関し必要な施策を講ずるよう努める」とされている。
自治体職場においては、職員が、災害への対応をはじめ、それぞれの持ち場で日夜自らの職務に全力を尽くしているが、その労働環境は大変厳しいものとなっている。質の高い公務・公共サービスを確実に提供していくためには、公共サービス基本法第11条に基づく職員の適正な労働条件確保や労働環境の整備が不可欠であることに留意されたい。
5.雇用と年金の確実な接続について
定年引上げについては、国家公務員の制度改正を早期に、着実かつ確実に実現されるよう関係府省に強く働きかけることを求める。また、地方公務員についても、国家公務員と同様に措置するとともに、地方公務員部会との十分な交渉・協議を行い、合意に基づき対応するよう強く求める。
定年引上げまでの間は、再任用制度の確実な運用が重要だが、職員の希望通りの再任用となっていない自治体も見受けられることから、全自治体における適切な制度確立と希望通りの再任用の実現とともに、高齢期の生活を支える給与、適切な労働条件が確保されるよう要望する。 

地方公務員部会は、本日の交渉を春の段階の一定の到達点として受け止め、公務労協、公務員連絡会に結集し、人勧期に向けた取組を検討していくとともに、引き続き、総務省との交渉・協議・意見交換等をすすめていく。

以上